【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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投稿が遅れました。メンデル編詰めなのでまとめ書きしていました。人の業とかいろいろ行きますよ。でもほんとこの話のクルーゼさんノリノリで楽しそうでした。


第97話 絶滅戦争

 第97話 絶滅戦争

 

 アスカ兄妹の動きはドミニオンにも伝わっていた。

 その報告を聞いたアリスは艦を停止したまま動かない。

 丁度アズラエルが席を外していたのも幸いだった。

 

 「私が命令するまで報告は艦長に直接伝えるように」

 

 そう言って艦橋は静かになった。

 その後アズラエルがシャワーから戻ってくる。

 

 「何か新しい報告はあるかね」

 

 「何もありません」

 

 「そうかい。しかし暇だな」

 

 「アズラエル理事の退屈と当艦の効率を上げる良い方法があります」

 

 「ほう。聞かせて貰おうか」

 

 「アズラエル理事が帰還すればいいんです」

 

 「……それって僕がいると邪魔という事かい?」

 

 「そう言っています」

 

 相変わらずアリスは手厳しい。

 実際アズラエルは邪魔だ。

 何かにつけ口を出したがる。

 だから報告を秘匿し、指揮系統にちょっかいをかけるのを止めさせた。

 つまりアズラエルには情報を与えないようにする。

 

 「そうはいかない。NJCを手に入れるためにはな」

 

 NJC。

 ニュートロンジャマーキャンセラーがあれば核が使えるようになる。

 まさか核兵器を使う気じゃないよねとアリスは考えた。

 

 「まさかとは思いますが、核兵器を使うつもりじゃないでしょうね?」

 

 「そうだと言ったらどうするつもりだ?」

 

 「そのからっぽの頭の中身をぶちまけてホウ酸で脳漿を消毒したいくらい正気を疑いますが……人類を滅ぼすつもりですか?」

 

 「コーディネイターは人類ではない。別の生き物だ」

 

 「常軌を逸しています」

 

 「天才クンにはわからんと思うがね」

 

 どうやら無駄らしいのでアリスは会話を打ち切った。

 後にアリスは後悔する事になる。

 この時にアズラエルを殺しておけばよかったと。

 

 ◆◆◆

 

 L4コロニーにあるメンデル

 ここでは激闘が行われていた。

 いや違う。

 正確に言うと戦ってはいなかった。

 

 「撃たないで!!話を聞いてください!!」

 

 ニコルの呼びかけに対する答えはイザークの放ったビームライフルの射撃だった。

 リジェネレイトはその巨体に似合わず機敏な動作で避けているが、いずれ被弾するだろう。

 隣を飛ぶアスランのジャスティスを庇っているのだ。

 

 「アスラン!!なぜ俺たちを裏切った!!」

 

 「俺はザフトを裏切ってはいない」

 

 「なら降伏しろ!!降伏してザラ議長に釈明しろ!!」

 

 イザークは苛立っていた。

 仲間だと信じていた戦友が二人そろってザフトを脱走したばかりか、自分たちの敵として現れたのだ。

 無論イザークも当てようとして射撃しているのではない。

 二人に降伏して欲しくてそうしている。

 ライバルだと信じていたアスラン。

 仲間だと信じていたニコル。

 二人ともイザークにとって大切な仲間だ。

 かつて仲間だったというべきか。

 

 「おいイザーク、話だけでも聞いてみたらどうだ?」

 

 ディアッカのバスターがイザークのデュエルの肩を掴み制止しようとする。

 戸惑いは当然あるが、イザークが先に暴発したので機先を削がれたのだ。

 

 「そうだよイザーク、これじゃ何にもならないだろ」

 

 ラスティはもっと過激だった。

 ZGMF-600ゲイツでデュエルを羽交い絞めにする。

 イザークを実力で止めないと無理だとわかっているのだ。

 

 「なあ話だけでも聞いてみようぜ。アスランもニコルも理由なしに俺たちを裏切ったりしないはずだぜ」

 

 ミゲルも加わってイザークを止める。

 だがエマとジャンヌはそれに加わらない。

 今までならディアッカより先に動いたはずだ。

 明らかに二人の態度は冷ややかだ。

 イザークはディアッカとラスティとミゲルに押さえられてようやくビームライフルを置いた。

 

 「いいだろう。話があるなら話せ」

 

 「ではお互いMSから降りて話をしましょう」

 

 そう言ってニコルがメンデル・コロニーの地表を指さす。

 そしてリジェネレイトを降下させた。

 今なら間違いなく命中させられる無防備な体勢だがニコルに恐怖は無い。

 何故ならイザークは約束を守る人物だと知っているからだ。

 その様子を見てアスランもジャスティスを降下させる。

 そして敵意が無い事を証明する為にコクピットを開いて両手を上げて出て来た。

 

 「…っ馬鹿どもが」

 

 イザークが毒づいたあとデュエル、バスター、ZGMF-600ゲイツが四機降り立った。

 風が強いのはこのコロニーの自転が狂っているからかもしれない。

 イザーク、ディアッカ、ラスティが前列に、ミゲル、エマ、ジャンヌが後列に位置して油断なく身構えた。

 アスランとイザークはお互い拳銃を抜いている。

 突き付けてはいないがいつでも撃てる体勢だ。

 

 「アスラン!!何故父親を、ザラ議長を裏切った!!」

 

 「俺は父上にナチュラルとの和平をするように言った」

 

 「ナチュラルと和平だと!?」

 

 イザークも別にナチュラル全てを殺そうとかいう視野狭窄の頑迷さは持っていないが、ユニウスセブンへの核攻撃などを見るとナチュラルとの和平など現時点では不可能だ。

 和平をするなら徹底的に叩きのめさないと駄目だとは思っているが、現時点で和平などナチュラルもコーディネイターも受け入れる筈もない。

 現に月基地に地球連合の艦隊が終結しているのだ。

 この大艦隊相手に皆が一致団結して戦わないといけないのに何故そんな事をするのかわからない。

 

 「父上はこう言った。ナチュラル全てを滅ぼせば戦争は終わると」

 

 ちなみにここにいるアスラン、ニコル、イザーク、ディアッカ、ラスティは全員親が高名な学者や科学者であり最高評議会議員だ。

 お金持ち=優秀な能力というコーディネイター間でも問題視されている能力格差だ。

 平民のミゲル、エマ、ジャンヌは余程の努力をしてアカデミー二十位以内のエリートに入ったので、遺伝子だけが全てではないとはいえ実家が重要なのはプラントも同じである。

 

 「そんな事をザラ議長は言ったのか?それは流石に言い過ぎだとは思うが」

 

 アスランの言葉にラスティが答える。

 ラスティの実家マッケンジーは特に過激でもないのでザラ派ほど反ナチュラルに振り切ってはいない。

 だからパトリック・ザラの過激思想に眉をひそめた。

 

 「俺はそんな父上の思想に共感できなかった。今までずっと戦い続けその先に平和があると信じていた。だが父上はもっと残酷な人になってしまった」

 

 悔しそうなアスランの言葉に彼が嘘をついていない事を知る。

 アスランは表裏がない人柄だからだ。

 続けてニコルが語る。

 

 「この戦争はどちらかが滅びるまで続く。少なくともプラント側はそう考えています。地球連合側もアラスカで味方ごとザフトを吹き飛ばすほどの憎悪のままに、平気で味方ごとコーディネイターを殺す事を選んだんです。このままナチュラルとコーディネイターのどちらか、あるいは両方が絶滅するまで続けるのですか?」

 

 ニコルの言葉にイザーク達も反論できなかった。

 コーディネイターはナチュラルを滅ぼせば戦争がなくなると考え、ナチュラルはコーディネイターを滅ぼせば戦争が終わると考えている。

 ニコルの言うとおりこのままではお互い滅びるまで戦い続ける事になるだろう。

 イザーク達が反論できないのは彼らも前線で直接見聞きしているからだ。

 ナチュラルとコーディネイターの両方とも捕虜は取らない。

 全て殺戮している。

 もはや戦争ではない虐殺行為が当たり前になりつつある。

 

 「僕にはナチュラルの親友もいます。ナチュラルにだって素晴らしい人がいるんです。だからナチュラル全てを滅ぼすような戦争に加担できません」

 

 迷いなくニコルは言った。

 これはもはや戦争ではない。

 ナチュラルとコーディネイターが互いに憎しみあい、ただ殺しあうだけだ。

 イザークもディアッカもラスティもミゲルも言葉を失う。

 ……だが。

 

 「なんでナチュラルを殺しちゃいけないのさ」

 

 エマがいつも通りの軽口で言うと皆がエマに振り返る。

 その隣ではジャンヌが至極尤もだという顔で頷いた。

 

 「今更なにを偽善者ぶっている。アスランもニコルも我々もみなナチュラルを沢山殺して来たではないか。何を迷う事がある。ナチュラルが降伏しないなら殺し尽くすしか無かろう」

 

 その言葉に呆気に取られたニコルが震えるような声を出した。

 

 「ふたりとも、本気で言ってるんですか?」

 

 「本気だ。絶滅戦争上等じゃないか。ナチュラルなど全員殺せばいい」

 

 「そうそう。大体逃げたフリーダムもアスランの乗ってるジャスティスもニコルの乗ってるリジェネレイトも、ナチュラルを効率的に殺すために作られた切り札じゃん。それに乗っておいて今更善人ぶってもね」

 

 エマもジャンヌに同調する。

 ニコルには納得も理解もできない。

 ナチュラルとコーディネイターはお互い殺しすぎるほど殺し合ったではないか?

 ナチュラル全てを滅ぼすという思想には共感できない。

 そんな事は許されないし容認できないと思うから今まで戦って来たのだ。

 なのになぜこの二人はナチュラルを絶滅させようなどと言えるのだろう?

 イザークやディアッカ、ラスティ、ミゲルさえも二人の発言にたじろいだ。

 まるで当然だとばかりに敵対した陣営を殺し尽くすと言われては流石に絶句する。

 

 「エマ、ジャンヌ、お前たち今までそんな素振りも見せなかっただろ?どうしちまったんだよ?」

 

 ディアッカが問い詰めるとジャンヌが答える。

 

 「つまりナチュラルを絶滅させる事にディアッカは反対なのだな?」

 

 「反対も何も、流石にやりすぎだろ?」

 

 ディアッカの言葉にジャンヌはため息をつく。

 ジャンヌから見れば好いた男が自分と違う考えなのに落胆した。

 残念に思うのではない。 

 今更何をと落胆したのだ。

 

 

 「いいだろう。ちょうどここはその証拠の場所だ。エマいくぞ」

 

 「了解。みんなついてきて。あたしたちの生まれ故郷に案内するよ」

 

 そう言ってエマとジャンヌはメンデル内部に向かって歩き出す。

 ニコル達もその後を追った。

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