Alterna Story   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

プシットとラクスは、地球をケバインクで覆い尽くそうとするクマサンを止めるために戦う。
クマサンの攻撃をかわしながら、金イクラを集めてラクスを強化する。
ラクスはオオジャケに進化し、クマサンと対決する。
クマサンはケバインクを使って地球に哺乳類を復活させようとするが、
プシットとラクスはそれを阻止しようとする。
いよいよ地球の未来をかけた最終決戦が始まろうとしていた。


第22話 哺乳類の帰還

 地球の命運をかけた3分33秒の決戦が、始まった。

 

「魚介類の未来を守るために、僕はクマサン、あなたと戦います!」

「ならば、私は哺乳類の代表として迎え撃つよ」

 プシットはタコツボキングのハッチに乗り込み、早速タコツボキングを操縦する。

 タコツボキングは真っ直ぐクマサンのコアに向かっていった。

 彼の身体には不気味に蠢く丸い玉がいくつかある。

「あれを吸い込めばいいんですね」

 プシットはキューインキを伸ばし、クマサンのコアを吸い込んでいく。

 だが、その途中で二体の毛だらけのタコがタコツボキングを襲撃してきた。

「早く倒さなければ!」

 プシットはヒーローシューターを取り出すと、素早く二体のタコを処理していく。

 その後、もう一度タコツボキングに入り、キューインキを取り出してコアを吸い込んだ。

 ある程度吸い込み終わると、クマサンの腕が黄色いインクに覆われた。

 

「おおッ! 効いておるぞィ!」

「まだまだコアあるよ! 次ー!」

 プシットはアオリの言葉に頷いて、ヒーローシューターで地面を塗る。

 敵襲に備えて、自陣を有利にして動きやすくするためだ。

「コアのニセモノが浮いておる! 注意されたしーッ!」

「ニセモノはキューインできないかもね、ヤバそ~」

 残り時間3分、ハッチが開くとプシットはすぐにタコツボキングに乗って

 偽物のコアを避けながらクマサンのコアに向かっていく。

 偽物のコアはクマサンの風船の形をしていて、避けるのは比較的簡単だった。

「わっ!」

 クマサンはオオジャケに向けて腕を振り下ろし、オオジャケはクマサンの身体に噛みつく。

 近付くと巻き込まれるため、できるだけ離れて、

 かつキューインキの距離が届く位置で吸い込んだ。

(ラクスがあんなに頑張ってるんだ……だから、僕も頑張らなくちゃ!)

 自分の相棒も、クマサンを止めるために一生懸命に戦っている。

 だから自分も、負けるわけにはいかなかった。

 残り時間2分42秒、絶妙な距離を保ちながらプシットはキューインキでコアを吸い込み、

 クマサンの身体を黄色いインクで塗り潰した。

 

「よーし、あと2個じゃ!」

「ギギ! イイゾ!」

「ウツホ……タコワサ……」

 プシットはウツホとタコワサの応援を貰ってハッチが開くまでに地面を塗り自陣を有利にする。

 クマサンとオオジャケは取っ組み合いをしていて、ほぼ互角の戦いを繰り広げている。

 タコツボキングはクマサンの背後に回り、しばらくするとハッチが開いた。

「背中がガラ空きどすえ~!」

「エイー!(キューインさせてもらうよ!)」

 プシットはタコツボキングに乗り込むと、

 回転する偽物のコアを見事に避け、クマサンのコアに向かう。

 そしてキューインキでコアを吸い込もうとすると、

 二体のタコスタンプと一体のビートタコスタンプがタコツボキングに乗り込んできた。

「わわッ、乗り込んできたー!!」

「ならば倒せばいいだけです!」

 残り時間2分22秒、プシットはヒーローシューターやボムを使ってタコ達に応戦する。

 タコスタンプはジャンプしながら飛び掛かるが、プシットは落ち着いて攻撃をかわし、

 背中目掛けてヒーローシューターを連射する。

 三体のタコを倒した後、プシットはもう一度、

 タコツボキングのキューインキでクマサンのコアを吸い込んだ。

 攻撃は着実にクマサンに効いているようで、クマサンのコアは徐々に傷ついていった。

 

「よし……!」

 残り時間2分14秒、安心するプシットだったが、

 またタコツボキングに二体のタコが襲い掛かった。

 しかも、今度は飛び跳ねるタコホッパーだ。

「タコホッパーなど、僕の敵ではありません!」

 しかし、プシットは冷静に、飛んでくるインクをかわしながらタコホッパーを撃ち抜いていく。

 あっという間に、二体のタコトルーパーは倒れた。

 そしてそのまま、三つ目のコアも吸収し、いよいよ残る四つ目のコアに向かおうとした。

 

「よっしゃー! 次で最後だ!!」

「踏ん張りどころだよ、プシット!!」

 オオジャケとクマサンは取っ組み合いをしている。

 クマサンが多少優位になっているが、

 魚介類の力を借りたオオジャケが負けるわけがないとプシットは思った。

「どうやら、魚介類は必死に戦っているようだね。

 けれど、この奮闘もいずれは終わる。そして地球は、再び哺乳類が支配するんだ」

「そう、みんなは今を守ろうとしている」

 残り時間2分3秒、もう少しでクマサンの全てのコアを吸収する時が来る。

 アオリとホタルの応援に頷いたプシットは、落ち着いてタコツボキングの地面を塗っていった。

 追い詰められていながらそれでも落ち着いた態度を崩さないクマサンに

 逆にプシットは怖気づこうとするが、ここで負けてしまっては魚介類の星を守れない。

 プシットはますます、攻撃の手を強めた。

 

「だから、この星は魚介類が守るんです!」

 この星をクマサンから守るために、プシットはクマサンとの交戦を続けた。

 ハッチが開いた後、プシットはすぐにタコツボキングに乗り込み最後のコアの吸引に向かった。

 オオジャケはクマサンの身体に噛みつき、クマサンの動きをがっちりと止めている。

 コアを吸い込むなら、今がチャンスだ。

 

「うおー! オオジャケ様、今じゃ! そこじゃーーっ!!」

「そのまま押さえといておくれやす!!」

 すりみ連合はオオジャケを応援しており、プシットは真剣な表情で操縦している。

 彼らの応援を受け取りながら、タコツボキングは真っ直ぐに飛んでいく。

 

「待っててくださいね……!」

 プシットが操縦するタコツボキングは、偽物のコアを避け、最後のコアに向かう。

 ここまで来たなら、もう勝利は目と鼻の先だ。

 

「なんで来るんですか! ラクス! 助けてください!!」

 しかし、その途中でまたもやたくさんのタコがプシットに襲い掛かってきた。

 激しい攻撃をしてきて、プシットは何とかヒーローシューターやボムを使って応戦する。

 だが、あまりにも敵の数が多すぎて、プシットだけでは対応できなかった。

 オオジャケに助けを求めたかったが、クマサンとの戦いに夢中だったため、

 プシットに力を貸す事はできなかった。

「みんな……ごめんなさい……」

 そして、プシット目掛けて、大量のインクが降り注いだ。

 ペンダントの石は粉々に砕け散り、プシットは謝罪の言葉を呟いてその場に倒れた。

 

「あかん! もう間に合わへん……!!」

「ぐわー! バンカラ街がーーーッ!!」

「エイ……(全部遅すぎたんだ……)」

 すりみ連合の無念の声が響き渡る。

 地球を救えなかった事を悔やむような、とても悲しい声色だった。

 

「ワシらの……青い星が……」

「イカモ タコモ スベテガ オワル……」

 アタリメとタコワサも、悲しげな声を上げた。

 

「おじいちゃん……助けて……!」

「そんな……地球が……」

「はは、は、ははははは、は、はははは……」

 アオリとホタルも、絶望した表情で空を見上げた。

 セピアは、心が壊れてしまったのか、狂ったように笑い続けていた。

 

 天から降り注ぐ無数のケバインク。

 ケバインクが当たったバンカラ街の住民は悲鳴を上げながら毛玉に変わっていき、

 街の建物や施設もケバインクに覆われ崩壊する。

 

 ケバインクが降ってきた場所は、バンカラ街だけではなかった。

 ハイカラシティも、ハイカラスクエアも、ありとあらゆる場所を例外なくケバインクが覆う。

 そして地球はあっという間にケバインクに包まれクマサンの笑い声が聞こえたような気がした。

 

《その日、宇宙に巨大な毛玉が誕生しました》

 不気味な毛で覆われた地球に対して、イルカは淡々とそう言った。

 

 すると、辺りは光に包まれ――

 

「……起きぬか、プシット!!

 突然、アタリメの大声が聞こえてきた。

 

「えっ!?」

 プシットはタコツボキングの上で目を覚ます。

 周りには、毛が生えたタコは全くいなかった。

 ロケットは着実に地球へと迫っていたものの、プシットはまだ死んでいなかった。

 あの光景はプシットの諦観が作った夢だったのだ、とプシットはこの時、思った。

「僕、なんで生きてるんですか……? あの時、タコの攻撃を食らったはずなのに……」

「恐らく、おヌシのペンダントが……ああもう、時間がない!

 とっととコアを吸い込むのじゃ!」

「り、了解!」

 戸惑いながらもプシットはタコツボキングに乗り込み、

 クマサンのコアを目指して真っ直ぐ進む。

 残り時間1分30秒、ゆっくりしてはいられない。

 偽物のコアを避けながらプシットが操縦するタコツボキングはクマサンのコアに向かっていく。

 近付きすぎず、離れすぎず、絶妙な距離でクマサンのコアをキューインキで吸い取る。

「……っ、しつこい!」

 タコツボキングに再びたくさんのタコが現れる。

 恐らくは、これが最後のタコの群れだろう。

「これが最後なのに……邪魔ですよ!」

 じれったいと思ったプシットは、溜まったエネルギーを使って大ジャンプし、

 タコツボキングに勢いよく着地した。

 スーパーチャクチの威力は凄まじく、その場にいたタコを一掃した。

 

「もう少し……あと少し……!」

 残り時間55秒、プシットは精神を集中してクマサンのコアを吸い込んだ。

 エネルギーがどんどんタコツボキングの中に入り、クマサンの身体も僅かに小さくなっている。

 ここまで来たなら、後は時間との勝負だ。

 

「やりました! これで、クマサンは……」

 残り時間44秒、ついにプシットはクマサンの全てのコアを吸収した。

 これで、クマサンは動きを止める……はずだった。

 

 しかし。

 

「コア全部キューインしても止まらないよ! どーしよー!!」

 アオリの表情に喜びは見られなかった。

 何故なら、クマサンはまだ、地球を爛々と輝く眼で真っ直ぐ見据えているからだ。

 ケバインクを載せたロケットも、徐々に地球に迫っていき、大気がどんどん赤くなっていく。

 たくさんの真っ赤な石が、宇宙に浮かんでいる。

「無駄だ……地球は再び哺乳類のものになる……」

「もう……地球は終わるのですか……!?」

 残り時間38秒、万事休すかと思った、その時。

 

「アキラメルナ!」

「えっ?」

 タコワサが何かの装置を起動させる音を出す。

 彼は、プシットが諦めない事を信じているからだ。

「スイコンダ エネルギー、マトメテ カエス!!」

 残り時間30秒、タコワサがそう言うと、キューインキが変形し、射撃モードに移行した。

 吸い込んだコアのエネルギーをクマサンにぶつけ、

 クマサンにとどめを刺そうとしているようだ。

「な、何を……?」

 残り時間28秒、プシットはDJタコワサ将軍の言葉に狼狽えていた。

「諦めたらあかんよ、プシット!」

「ワシらの場所がかかってるんや」

「エイ!(頑張って!)」

 残り時間25秒、すりみ連合はプシットを全力で応援する。

 ケバインクだらけの地球になるのは、すりみ連合にとっても最悪の結末だからだ。

 ここでプシットが諦めるのは、全てを諦めるのと同じだろう、とすりみ連合も思っていた。

「わ、分かりました……」

 彼らの応援にプシットは慌てながらも頷き、タコツボキングのハッチに乗り込んだ。

 そして、射撃モードのキューインキを使って、クマサンに大量のエネルギーをぶつける。

 今ここで、全ての決着をつける時が来たのだ。

 

「ヤツを撃ち抜くんだ!」

「はい、セピア司令!」

 残り時間20秒。

 クマサンの身体は、少しずつ皆で協力して練り上げたインクに包まれる。

 

「絶対に諦めない! 戦場の鉄則ーーーッ!!!」

 残り時間15秒。

 地球とロケットは目と鼻の先といった距離だが、プシット達の表情に絶望はなかった。

 クマサンの、哺乳類を蘇らせるという目的を、魚介類の力で必ず阻止するためだ。

 

「「「行っけーーーーーーーーーーーッ!!!」」」

 残り時間10秒。

 アオリ、ホタル、プシットは、全力でエネルギーをクマサンの巨大な身体にぶつけ続けた。

 彼の身体は、みるみるうちに混沌としたインクに覆われていく。

 いよいよ、全てが終わろうとしていた。

 

 そして、残り時間3秒――

 

「……終わったか」

 ついに、クマサンは全身をインクで染め上げ、その動きを止めた。

 

「君達には負けたよ……あらゆる面においてね。

 所詮、哺乳類の帰還というのは、単なる夢物語だったのかもしれないな……」

 プシット達に敗北したクマサンだったが、そこには悔しさも、悲しさもなかった。

 哺乳類の帰還とは聞こえは良いかもしれないが、

 地球をケバインクだらけにしたところで、彼の願いは叶わなかった。

 何故なら、そんな地球に転がっているのは、自我を失った哺乳類のような何かだからだ。

 

 クマサンは決して愚かではない。

 むしろ普通の熊よりも高い知能を持っていて、自分がしようとした事が空虚な事だと理解した。

 だから、クマサンは素直に負けを認めたのだ。

 

「過去に戻りたいという気持ちは分かります。でも、もう、哺乳類(かこ)に縋るのはやめてください。

 今は僕達魚介類が時代を背負っていくんですから」

「ふむ……流石、今の地球を担う魚介類だ。

 過去を想うように強く、今と未来を見つめるのは、実に……実に難しいものだ。

 君のような前向きさが……羨ましいよ」

「……僕は、ただ思った事を言っただけです」

 プシットがクマサンに自身の思いを打ち明けるも、クマサンは最後の最後まで淡々としていた。

 その様子を見たプシットは、クマサンを痛々しく思うようになった。

 クマサン自身に強硬手段を取らせるほど、彼の未練が強すぎたからだ。

 いくら魚介類に敵対しているとはいえ、

 孤独に戦っていたと思うと、プシットは少々やりきれなかった。

 

「私の仕事もこれでおしまいかな。それじゃ……お疲れ様」

 そして、クマサンの身体は光に包まれ、大爆発した。

 黄色いインクと共に、その大きすぎる身体は宇宙の彼方に飛んでいった。

 

「よかった……地球は、僕達が守った……」

 タコツボキングのハッチから出たプシットは、

 辛うじて意識を保ちながらタコツボキングにしがみつく。

 彼の目線の先には、オオジャケが光に包まれてみるみるうちに縮んでいくラクスの姿があった。

 

 クマサンは、哺乳類が栄えた地球を自らの手で取り戻したかった。

 最後の最後まで、哺乳類を蘇らせるという使命のままに、クマサンは動いていた。

 だが、それは現在地球で栄えている魚介類を、強制的に哺乳類に変えるという手段だった。

 無論、そんな事が許されるはずがなかった。

 だから、プシットは今の地球を担う者として、過去に縋りつくクマサンを阻止したのだ。

 

「でもさっき、クマサンは『私の仕事も』と言ってましたよね。じゃあ、あれは……」

 プシットがそう言う間際にラクスは元に戻り、一人と一匹は地球への帰還を果たそうとした。

 彼らの一つの物語が、終わろうとしていた。




ペンダントはこのシーンのために作りました。
明日、最終回を投稿します。
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