Alterna Story   作:アヤ・ノア

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~前回までのあらすじ~

プシットはクマサンと対峙し、タコツボキングを操縦してコアを吸い込もうと奮闘する。
タコ達の襲撃や偽物のコアに苦しみながらも、仲間の応援を受けて戦い続ける。
残り時間が迫る中、プシットは最後のコアを吸収し、クマサンを止めるために全力を尽くす。
そしてクマサンは敗北を認め、過去に縋る事をやめる。
プシット達は地球を守り、未来を担う者としての道を歩み始めるのだった。


第23話(最終話) 魚介類の帰還

 哺乳類と魚介類の地球をかけた戦いは、魚介類の勝利で幕を閉じた。

 クマサンは宇宙へ放逐され、魚介類の前に姿を現す事はなくなった。

 今もなお、遠い遠い空では一頭の熊が宙を飛び交っているという。

 

(……ケバインクによる哺乳類の帰還は、失敗してしまったようだ……。

 でも、12000年間の思考は、無駄ではなかった。そう、信じたい気持ちでいっぱいだ。

 そういえば、この地球には僅かに哺乳類が生き残っているという話がある。

 もしかしたら……いや、何でもない。私の仕事は終わったんだ。今はゆっくり身体を休めよう)

 

 それから、一週間後。

 バンカラ街で、すりみ連合のニュースが流れる。

 

「さあさあ、お立ち合い! バンカラ代表のイカした三人組、すりみ連合がお送りする……」

「バンカラジオの時間じゃー!!!」

「エイ!(始まるよ!)」

「今日もスミからスミまでずずずい~っと塗ってみせやしょう!」

「エイエイ!(いよっ! ホホジロ屋ー!)」

 すりみ連合がニュースの始まりを伝える。

 マンタローは持っているテレビを見て言った。

「……エイ!(……これは!)」

「なんじゃ、マンタロー?」

「エイ、エイ!(臨時ニュース! 臨時ニュース!)」

 再び臨時ニュースがバンカラ街に流れる。

 テレビには、塔に巻き付いたオオデンチナマズの姿が映っていた。

 よく見ると、オオデンチナマズの頭には一本の毛が生えている。

 ケバインクに長く浸かっていたのだろうか、その影響がオオデンチナマズに残っていた。

 

「ほう! オオデンチナマズが戻ってきたじゃと?」

「ほんまや~!」

 テレビの左上には「おかえり オオデンチナマズ!!!」と映っていて、

 電力源の帰還を物語っていた。

「……前からあんなんやった?」

 フウカがオオデンチナマズに生えた毛を見て言う。

 彼女はじかでオオデンチナマズを見ていないため、首を傾げるのも無理はないようだ。

「ともあれ、無事で何よりじゃ! 次、次!」

 しかし、楽観的なインクリングのウツホは、そんな事を気にせずに次のニュースを伝えた。

 

「エイ! エイ!(まだあるよ! 臨時ニュース!)」

「なんやマンタロー、今日はえらい騒がしいなぁ……ん?」

 フウカがテレビに目を向けると、一匹のクラゲがアオリとホタルの描かれた紙を持っていた。

 どうやら、彼女達のグループである「シオカラーズ」の新曲が発売されたという。

「ん……? この顔……どっかで見た事あるような……」

「エイ……(まさか……)」

「こ……これはアネゴ達じゃ! アネゴ達のニューシングルじゃ!!」

 シオカラーズの姿を見て、1号と2号の正体をようやくすりみ連合が理解した。

 彼女達はイカ世界の有名アイドルにして、New!カラストンビ部隊の一員だったのだ。

「アネゴ達のニューシングル……このすりみ連合が! 全身全霊!!

 気合い入れて応援させてもらいます!!!」

「よっ、ホホジロ屋ー!」

 アオリとホタルを知ったウツホ達は、彼女達を全力で応援する事を決めた。

 その後、テレビでシオカラーズの新曲「シオカゼの星」が流れ、

 バンカラ街は大きく盛り上がるのだった。

 

 地球の危機は一人のインクリングの少年と、彼に付き添っていた一匹のコジャケが救った。

 しかし、そんな事はほとんどのインクリング、そしてオクトリングも知る由もなかった。

 バンカラ街に新たな文化が訪れた、それだけを彼らは享受していた。

 

 そして、シオカラキャンプでは――

 

「ただいま……」

 地球を救ったプシットが、宇宙からシオカラキャンプに降り立つ。

 プシットは、アオリとホタル、そしてセピアに向けて笑みを浮かべていた。

 彼の首にはあの石は輝いていなかったが、地球を救った事は、皆には分かっていた。

 そして、プシットの傍には、小さなシャケがいる。

 何でも食べて、時に大きくなる、やんちゃで頼りになるシャケが。

 

「プシット! プシットー! よかったー、無事みたいだねっ! さっすがー!」

「お帰り~」

 アオリが元気に手を振り、ホタルが傘を差しながら暢気に手を振る。

 彼女達は、プシットの無事な帰還を喜んでいた。

「よかった。皆さん、無事だったんですね」

「プシットとラクス君の活躍、見とったよ」

「地球を救ったヒーローだね! 街のみんなは気づいてないけど!」

「そうですか……ありがとうございます。僕がヒーローか……なんだか照れますね」

 プシットはアオリとホタルにお礼を言った。

 シオカラ節は元々彼女達の音楽なので、それを応援歌にしたプシットは大いに感謝した。

 全てのイカにはシオカラ節のグルーヴが宿っており、タコが育てたプシットも例外ではない。

 彼女達のおかげで、プシットはいつも以上に力を出す事ができたという。

 

「ふ……ヒーローとは、孤独な存在なんじゃ」

「そうとは限りませんよ?

 みんなが一緒にいてくれるから、ヒーローというものは成り立つんです」

 地球を救ったのはプシットだけではない。

 イカもタコも関係ないと共闘したタコワサ、シオカラ節を歌ってくれたシオカラーズ、

 ペンダントをくれたテンタクルズ、何だかんだあって和解したすりみ連合、

 そして一番の相棒であるコジャケら魚介類の仲間達も、プシットに協力した。

 彼らがいなかったら、きっとプシットは哺乳類に負けていたかもしれない。

 だから、プシットは協力者、仲間である彼らに、強く、心を込めた感謝をしたのだ。

「ま、それもそうじゃな」

 スルメになったアタリメは、うんうんと頷いた。

 この格好で頷けるかどうかは、微妙だったが。

 

「一段とイイ目になったな」

「セピア……いいえ、ここでは3号でしたね」

 地球を救ったプシットをセピアは大いに讃える。

 セピアはまだあどけない顔立ちをしていたが、その目は、一段と鋭い光を讃えていた。

「まさか、クマサンの正体が“熊”だったとはな」

「本当に信じられませんでした。でも、推測はできたと思います。

 だって、ラクスを危ないと言ってましたし」

 クマサンはラクスを脅威と認識したらしく、サーモンランの研修でも警戒していた。

 プシットも同じくクマサンを警戒していて、クマサンの正体に薄々感づいたという。

 

「そういえば、テンタクルズがくれたペンダントって……」

 プシットは首にかけていたペンダントを調べる。

 もう、あの石はどこにもなかったが、命を守ってくれたのならばどうでもいい。

「何のために、あれを渡したのでしょう」

 プシットがもう一度あの箱を開けると、テンタクルズの続きの音声が流れた。

【ピンチ! ピンチ! その時どうする?】

【このペンダントがアナタを守ってくれます】

【ネコは九回 イカタコ一回 それが命だZe】

【だから、自分の命は大事にしてくださいね】

【【塗りたく~る……テンタクル!!】】

 テンタクルズの音声は、ここで終わった。

 

「もしかして……あのペンダントは……」

 クマサンとの決戦で、プシットの命を救ったあのペンダントを、

 テンタクルズはプシットに贈ってくれた。

 きっと、テンタクルズは地球に迫る危機を感じ取っていたのだろう。

 しかしワールドツアーで忙しい身である自分達は地球を救う余裕などない。

 だから、自分にペンダントを贈ったのだと、プシットはこの時、思ったのだ。

「テンタクルズ……抜け目がないんですね」

 見えないところでもしっかり活動しているテンタクルズに、プシットはくすっと笑った。

 

 しばらくして、プシットはアオリとホタルの前でこう言った。

「……哺乳類も魚介類も、みんな、同じ生き物。僕がした事は……間違っていたのでしょうか」

 地球を守るためとはいえ、哺乳類(クマサン)と戦ったのは、彼にとっては少しやるせなかった。

 同じ生き物なのに、戦わなければならないのは、プシットは心が痛かったのだ。

 しかし、アオリとホタルは満面の笑みを浮かべて、プシットに明るい声でこう言った。

「そんな事ないよ! だって、この地球を守ったんだもん!」

「空にケバインク降らせるのは迷惑だったからね~」

「……そう、ですね。ありがとうございます」

 アオリとホタルがプシットを励ましたため、

 プシットは二人にお礼を言い、胸のしこりが取れたような気がした。

 地球を守った事に、変わりはないのだから。

 

「じゃ、今日も元気にいってみよー!」

「イカ、よろしく~~~!」

「……イカ、よろしくお願いします!」

 

 こうして、魚介類の地球は守られた。

 過去に囚われた一頭の熊の願望は、未来で進化した海洋生物達が阻止した。

 これは正義でも悪でもなく、生存競争。

 秘かに地球で行われた、しかしそれは強大な、過去の哺乳類と現在の魚介類の戦争。

 その代表として、一人のインクリングが選ばれ、迫り来る過去から現在を守ったのだ。

 

 そして、プシットはオルタナのその先へ向かう。

 オルタナの覇者になり、一人前以上のイカになるために――




これにてスプラトゥーン3、ヒーローモードの二次創作長編はおしまいです。
テンタクルズを端役として出したのは、長編の整合性を取るためです。
サイド・オーダーの短編小説は別所で出しているので、そちらも合わせてお読みください。

では、私の次の長編も、お楽しみに!
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