私本:ゆかいな仲間たちよ   作:黒木紫雨

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子供のロビン、王女とであう

当作品はWonderland Warsの二次創作作品であり、公式とは無関係です。

 

参考にした資料

 

Wonderland Wars ゲーム中テキスト

Wonderland Wars Library Records Awake

西川秀和『ロビン・フッド原典集成』

ハワード・パイル『ロビン・フッドのゆかいな冒険』

ジェニファー・ロバースン『森の姫君』『新緑の騎士』『樹下の調べ』

 

ただしこれらはあくまで参考であり、独自解釈も多く含まれております。

 

また、本投稿は紙の本用に作った作品のWEB版として編集しています。

横書き、パソコンもしくはスマホで読むことを前提に改行を増やすなどの調整をしております。

 

 

   *

 

 

 精霊の森を育むことで《闇》を封じた。之、シャーウッドの森と呼ぶ。

 

                         ――ある王家に伝わる口伝より

 

 

【子供のロビン、王女とであう】

 

 

 少年はまだ、父親に手をひいてもらう年頃だった。

 生まれたときから森にすんでいて、いつかこの森の番人になる使命があった。

 鹿の駆ける音も、体がおさまる程度の木の洞も、ぜんぶ少年にとっての世界だった。

 小さな小石も少年を転ばせることはかなわないから、ほんとうは手をつながなくてもいいのに、今の番人は森だけでなくて息子にも過保護だったのだ。

 

 その日連れられたのは森のさらにふかい領域、エルフのお城だった。

 石造りの建物の空気は、なにもしらない少年であってもひきしまるような緊張感があった。

 森のどうぶつや樹々ばかりが友達であった少年には、新鮮なことばかりで、どきどきと心臓がうるさくて、なにも頭にはいってこなかった。

 

「伯爵もご機嫌うるわしく」

「その呼び方はやめてくれと言っているだろう」

「連れている子が次代の《シャーウッドの番人》なの?」

「かわいいだろう」

 

 わしゃわしゃと頭に手を突っ込まれ(それは撫でるとか優しさのある手付きじゃなかった)ようやく父親以外のしゃべるひとを認識した。背丈の差があって、少年の顔を覗きこもうかがんで顔が近いときだった。

 

 ――瞳がきれいだった。

 

 少年の知っている色は、葉の緑、樹々の隙間から見える空、樫の木の幹、鹿肉の断面、それを焼いたもの、父親の髪の毛(少年ほど明るい色ではないが金髪だ)、それくらいだった。

 だというのに彼女の瞳は、しいて言うなら赤色なのだが、鹿肉のと同じ表現を使うのが憚られるような美しさだった。未来をも見通せるような、底の見えない透明な紅色。彼女の髪は、大好きな樹々の色をそのまま写し取ったかのよう。このひと自身が森そのものかと錯覚しそうなくらいに似合っていた。

 エルフの特徴でもある長い耳に、自分の心臓の音とか聞かれてしまっているのではないかとはらはらしてしまった。

 

 ――あたしはマリアン。ちゃんと名乗ってみてよ。

 

 返事ができず、ぎゅっと父の手を握った。

 この先代の番人、ストライダー・シャーウッドが行方をくらますまでここから数年あったが、その中でこの日より印象深い出来事はなかった――そう、今代の番人になるロビン・シャーウッドは思い返す。

 森が退屈というわけではない。ただ、眩しいものは眩しかったのだ。

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