砂塵にとける共犯者たち   作:黒木紫雨

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当作品はSEGAのアーケードゲーム『Wonderland Wars』の非公式二次創作です。
公式とは一切関係ありません

設定資料集ネタバレを含みます

人を選ぶ描写が含まれています

 ・ジーンとラクスの軽めのキス描写
 ・ジーンとムーニャの軽めのキス描写

 ・名無しモブの死を示す描写(ネームドは死にません)
 ・ジーンの女癖を示唆する描写

 ・ジーンの性指向はノンケ

約6万文字弱のうち一行だけ、生成AI由来の小説執筆補助アプリ「AINovelChat」で推敲したときいいなと思った文をそのまま使っています。
AIがミリでも絡むことが嫌な人は適切な距離をとってください。

この思想に挿絵を提供してくださった方は無関係です。無関係な相手へ攻撃を行った場合は然るべき対応を検討します。



0 寝室未遂 -ラクス-

【登場人物】

 

  ジーン:盗賊。夢は世界中のお宝を手に入れること

 

  セイン:情報屋を名乗る青年。ジーンに付きまとう

  ムーニャ:指輪に宿る魔神。道具に関する魔法が得意。

 

  ライラ王女:〝幻の都〟の姫君。あまり人前には出てこない

  スルタン:〝幻の都〟の領主。街の発展に尽力する、が……

 

  ラクス:自称〝まほうつかい〟の踊り子。掴みどころのない言動をする

  モルジアナ:ある盗賊団の頭領。四十人を束ねる巨斧使い。

 

  魔法のランプ:とてつもない力を持つ秘宝

 

これは若者が魔法のランプを手に入れるまでのお話である

 

 

 

【0 寝室未遂 -ラクス- 】

 

 

 焚かれたアロマの香りが充満する一室。真夜中にひとりの男――青年ジーンは音もなくそこに滑りこんだ。気まぐれに吹き荒れる砂嵐を退けるため、このあたりの建造物はだいたい窓や小さくドアは硬い。だがそんな場所でも手慣れた盗賊にとって障害にならない。フードを下ろすと銀髪がこぼれ、美形が顕になる。

 

「来てやったぜ」

 

 椅子に気だるげに座っていたシルエットが立ち上がった。装飾が控えめに擦れあう金属音。昼間と同じ衣装のままなら、この音はヒップスカーフに付けられたコインの擦れ音。

 

「待っていたわ、盗賊さんっ。昼間のダンスも最高だったでしょ? 夜のダンスはお預けだけどね」

 

 傍らにあるランタンは消されており、互いの姿かたちはよく見えない。だがジーンはこの女が街一番の踊り子で、ラクスという偽名――ラクスは彼女の踊るダンスそのものの名前だから本名のハズがない――で活動し、珍しい紫色の髪と透けるようなヴェールを巧みに組み合わせて舞い、そして今日の公演でジーンのことを『ご指名』した。人気者の寝床、そこへの地図までこっそり渡されたら来ないわけにはいかない。ただいざ来てみたら、ベッドで踊る気はないという。

 

「ふふん、盗んでほしいものがあるの」

「俺の顔が気に入ったからお呼ばれしたのかと思ったぜ。ここから盗まれてほしいのなら光栄だが、やわらけえ女ってのは、担ぐには重てえな」

 

 くびれた腰へ腕を回したのに、ラクスはスナネズミのようにするりと抜け出しフェイスヴェールの向こうでくすくす笑っている。濡れた唇を赤い舌が舐める。

 そして人気者の娘が盗賊を求める理由を口にした。

 

「魔法のランプと魔法の指輪。〝幻の都〟が抱える繁栄の秘密そのものよ」

「うさんくせー!」

 

 大げさに額に手を当てながら椅子に沈んだ。

 確かに、盗賊を本業とするジーンの野望は世界中の財宝探しだ。そのために各地を巡っているが、まだこの砂の大地すらも踏破できていない。地平線の果てにはオアシスどころじゃない水の塊もあって、そこまでいくと水平線なんてものも見えるらしいと書物で読んだこともある。だが本物の水平線とやら拝んだことはないくらいだ。その程度の見識であっても、彼なりの結論があった。

 

「浪漫はさ、あぁ大事。だが魔法なんて信じられないね」

 

 ラクスは黙って、チェストに置かれていた縦笛を手にした。ヴェールを持ち上げて口に当てる。

 まるで鳥のさえずりのような音色と共に、発光する珠がいくつも周りに現れた。ラクスのイメージカラーのよう、紫色だ。ランタンを用いた手品かと思って、そのタネを暴いてやろうとジーンは手を伸ばした。だが感触はなく、空を切る。珠はボールのように飛んでいき、壁に当たると音を撒き散らしながら弾けた。

 

「私は〝まほうつかい〟なの。これで魔法の存在は信じてくれたかしら?」

 

 蜃気楼に騙されたような心持ちで、ジーンは慎重に発する言葉を選ぶ。敵か味方か、企みがあるか、いずれにしても厄介な相手だ。

 

「なるほどすげえ手品、マジックだ。だが俺は盗賊だぜ? 手に入れたお宝はそのまま懐に入れちまう。あんたにメリットがない」

「大丈夫。今の貴方には想像もつかないような目的があるから」

 

 考える。目的があることを素直に吐くのなら、乗ってやってもいいかもしれない。伝説になっている〝幻の都〟への興味そのものはあるのだ。

 蜃気楼で浮かび上がっては消えるという街。だが幻影の向こうから時に財宝を持ち帰ってくる旅人や商人も時にいるという。あまりに美味しい話ゆえ抱えておきたいのか、遭遇したという人間たちに当たってみてもみな口をつぐんでいた。

 

「この《物語》だと、魔神宿りし指輪は違う場所にあるの。まずはそっちに当たってちょうだい。指輪が〝幻の都市〟へと導いてくれる」

(この物語?)

 

 気になる物言いだったが、問うたところでまた煙に巻かれるだけだ。「で、どこだよ?」と続きを促す。

 薄闇の中で、ラクスの足音がこちらへと近づく。指をジーンの唇に当てて、くすくす、くすくすと笑って囁く。

 

「言ったでしょ? 私は〝まほうつかい〟。まずは指輪の場所まで送り届けてあげる」

 

 彼女の顔が近づく。唇に触れていた指が動き、頬に手を当てられる。ずっと部屋に充満していた匂いがいっそう強まり――極度の眠気のような、意識の断絶。

 

 

「新しい《誰も知らない物語》を紡いでいってね……」

 

 部屋から青年ジーンは消えていた。彼女の囁きは届いていない。

 

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