ご注文はうさぎです!Re   作:新生兎丸

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お疲れ様です!

舞い戻って来ました!


ラビットハウス

 木組みの家と石畳の町。

 

 この異国情緒あふれる落ち着いた町へ、ついこの間引っ越してきたばかりだ。

 

 高校入学を目前に控え、下宿先自体は無事に決まったのだが――肝心の場所が、さっぱり分からない。

 

 「母さん……せめて地図くらい持たせてくれよな……」

 

 右も左も分からない見知らぬ土地に放り出された挙げ句、地図すら渡してもらえない始末。

 

 どれも似たような造りの建物ばかりが並ぶこの町で、自力で下宿先を見つけるなんて不可能に近い。

 

 かれこれ一時間近くは彷徨っている。同じ景色を何度も見ている気がする。

 

 というか、さっきから同じ場所をぐるぐると回っているだけじゃないか?

 

 ……え、もしかして俺、下宿先どころか帰り道すら見失ったのか?

 

 冗談じゃない。

 

 不安と疲労のせいで、生きるために最低限必要な筋肉しか持ち合わせていない俺の足は、すでに限界を迎えていた。

 

 「腹減ったし、歩き疲れた……どこかで一休みしたい……」

 

 すがるような思いで周囲を見回すと、近くに『ラビットハウス』と書かれた看板を掲げた店を見つけた。休憩がてら小腹でも満たそうと、手触りの良い木製のドアを押し開ける。

 

 カランコロン、と控えめな鈴の音が響く。

 

 店内は穏やかな空気に包まれており、焙煎されたコーヒーの芳醇な香りが鼻腔をくすぐった。

 

 直感する。もしかしてこの店、当たりなんじゃないか?

 

 「いらっしゃいませ」

 

 出迎えてくれたのは、淡い青色の長い髪が特徴的な少女だった。

 

 あまり感情を表に出さないタイプなのか、見事なポーカーフェイスで佇んでいる。

 

 バイト……なのだろうか。

 

 だが、外見から判断する限り、どう見ても十四歳に届いているかどうかだ。普通、そんな年齢の子を働かせるだろうか。

 

 しかも、何より奇妙なのは――彼女の頭の上に、見たこともない丸くて白い、珍しいうさぎが乗っていることだ。非常に異様な光景だった。

 

 ただ、そのうさぎはあまりにもモフモフとしていて、思わず手を伸ばして触りたくなるような不思議な魅力を放っている。

 

 いや、そもそもあれは本当にうさぎなのだろうか?

 

 とりあえず適当な席に腰を下ろし、メニューを開く。

 載っている品々は、ごく一般的な喫茶店とそれほど変わりはなさそうだ。

 

 「ご注文はお決まりでしょうか?」

 

 メニューに視線を落としていると、少女が静かにオーダーを取りにやってきた。

 

 「じゃあ……サンドイッチと、アイスコーヒーを」

 

 「コーヒーの銘柄はどうしますか?」

 

 「め、銘柄……!?」

 

 思わず声が裏返りそうになった。

 メニューのどこを見ても、そんな選択肢は書かれていない。

 

 「えっと、あまり詳しくないので……おまかせでお願いします」

 

 「分かりました」

 

 少女は小さく頷くと、せっせとカウンターの向こうへ向かい、コーヒーを淹れる準備を始めた。

 

 手際よく動く姿を見つめながら、やっぱり小学生くらいにしか見えないな、と思う。

 

 親が経営している店の手伝いだろうか。とてもよく働く、真面目な子だという強い印象が胸に刻まれる。

けれど、店を手伝っているにしても、肝心の店長らしき大人の姿が見当たらない。

 

 彼女一人で注文を取り、コーヒーを淹れ、軽食まで作るのはさすがに大変ではないだろうか。確かに客足はそこまで多くない時間帯だが、ワンオペで回すにはちとキツイ気がする。

 

 そんな余計な心配をしながら、のんびりとコーヒーが運ばれてくるのを待つ。

 

 思えば、うちの母親もコーヒーには妙に精通していた。そのせいで昔、色々とコーヒーの知識を仕込まれた記憶がうっすらとある。……まあ、ほとんど忘れてしまったけれど。

 

 さっきだって、銘柄を聞かれてまともに答えられなかったしな。

 

 必死に何かを学ぼうとしていた記憶だけが、暖炉の残り火のように胸の片隅に燻っているだけだ。

 

 「お待たせしました」

 

 テーブルの上に、コーヒーとサンドイッチの乗った皿が静かに置かれた。

 

 まずはコーヒーを一口、喉に流し込む。

 

 その瞬間、香ばしい薫りが口いっぱいに広がった。

 

 口当たりの柔らかな酸味と、全体を心地よく引き締める上品な苦味。

 

 ――不思議だ。銘柄の名前自体は思い出せないのに、この味が「極上の一杯」であることだけは、自分の舌がはっきりと理解していた。

 

 彼女は本当にコーヒーを淹れるのが上手い。相当な修練を積んできたのだろう。

 

 これほどの腕前なら、一人で店を任されているのも納得がいく。

 

 息を吹き返した俺が贅沢な時間を堪能していると、カランコロン、と再び店の扉が開いた。

 

 また一人、新しい客が迷い込んできたらしい。

 

 特に気に留めることもなく、俺はサンドイッチを頬張る。

 

 しかし、開かれた扉の先。

 そこに佇んでいたのは、まるで物語の始まりを告げるかのように、目をキラキラと輝かせた少女だった。




文体も多少変わって居るかもしれませんが、あまり違和感なく読めるように努めました!

これからまたがんばります!

お次は誰のlfストーリーが見てみたいですか?

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