ご注文はうさぎです!Re 作:新生兎丸
ラビットハウスでの仕事にも、最近ようやく慣れてきた。
ラテアートもなんとか形になり、注文の取り方やコーヒーの淹れ方も一通り学んだ。仕事が段々と楽しくなってきた今日この頃……だが、どうもチノの機嫌が悪い。
いつも以上に口数が少なく、いつも以上にムスッとしている。その矛先は、主にココアへと向けられていた。
「チノのやつ、なんか機嫌悪そうだな」
空いた皿を片付けていたリゼが、ふと隣で呟く。俺も気になっていたので、すぐに言葉を返した。
「ああ。ココアに対しての当たりが、心なしか……いや、明らかにキツいよな」
「何かあったのか? ちょっと本人に聞いてみるよ」
俺とリゼは、能天気にテーブルを拭いているココアに声を掛けた。
「なあ、ココア。今日チノの機嫌が悪くないか? 特にお前に対して」
「へ? そうかなぁ? いつも通り、可愛いチノちゃんだよ?」
……お前、いつもあんな扱いを受けてるのか。それでよく平然としていられるな。まあ、そこがココアの凄いところというか、図太いところというか。
これは直接、チノ本人に聞くしかないだろう。
あまり深入りしたくはないが、仕事仲間の不和を放置するのも寝覚めが悪い。俺とリゼは互いに顔を見合わせて頷くと、カウンターでコーヒーを淹れているチノに小声で話しかけた。
「なあチノ、ちょっといいか?」
「な、なんですか……?」
「少し聞きたいことがあるんだ。できれば、ココアがいないところで」
「……はい。分かりました」
チノは一度手を止め、不安そうな面持ちで俺たちの後をついてきた。
「今日、なんか機嫌悪いみたいだけど……ココアと何かあったのか?」
更衣室の前。
リゼが単刀直入に問い詰めると、チノは気まずそうに視線を泳がせ、ぽつりぽつりと口を開いた。
「……この前、二人で遊んでいる時にパズルをしていたんです。でも、私が少しお手洗いに行っている間に、ココアさんが……勝手に完成させてしまったんです」
うわぁ……。
「しかも、最後の一ピースが足りなかったんです……」
うわぁぁ……! ココア、お前やったな! 完全にやってしまったな!
パズル好きにとって、それは最もやってはいけない禁忌。ましてや、几帳面なチノにしてみれば、積み上げた楽しみを根こそぎ奪われたようなものだろう。
「それで今日、あんなにピリついてたんだな」
「はい……八つ当たりだとは分かっています。気に障るような態度を取って、申し訳ありません」
シュンとして頭を下げるチノ。
「いや、チノが謝る必要はない。気に障るどころか、これは10対0でココアが圧倒的に悪い」
「容赦ないな、ジン……」
「事実だろ」
ともあれ、原因が分かれば対処のしようがある。
どうせ本人は気づいていないだろうから、きっちり伝えてやることにした。
「というわけで、チノはお怒りだ」
早速、俺とリゼはココアを呼び出して事実を告げた。
「それとなく」伝えると言ったが、あれは嘘だ。これくらいハッキリ言わないとココアには通じない。
「ふえぇ!? 私、チノちゃんが喜ぶと思って頑張ったのに!」
「良かれと思ってやったのが一番タチ悪いんだよ……」
「で、でも! パズルのピースは最初っから無かったよ?」
「無くしたのがココアだとは思ってないだろうけど、楽しみを奪われたショックは相当だぞ」
「そ、そんなぁ! 私、お姉ちゃん失格だぁ~!!」
悲痛な叫びを上げながら、ココアは脱兎のごとくラビットハウスを飛び出していった。
「……その前に謝れよ」
「嵐のようなやつだな」
俺たちはココアの奇行をスルーし、残された仕事を片付けるべく持ち場に戻った。
それから一時間が経過。
一向にココアが帰ってくる気配がなく、流石にみんなの顔に心配の色が混じり始める。
「……ココアが帰ってこないな。悪気はなかったんだし、チノ、あいつが帰ってきたら許してやってくれないか?」
「……あんな態度を取ってしまった以上、今さら普通に話すのが恥ずかしくて……」
(そもそもココアは、チノが怒ってたことに気づいてなかったけどな)
俺とリゼの心の声がシンクロする。
だが、チノの気まずい気持ちも分からなくはない。俺だって喧嘩した相手と仲直りするのは苦手だ。だが、相手はあのココアだ。きっと向こうから距離を詰めてくるだろう。
「チノちゃーん!」
その時、勢いよく店の扉が開いた。
帰ってきたココアの手には、抱えるほどに大きな箱。
「新しいパズル買ってきたから、許して~!」
「……は、8000ピース!?」
チノの絶叫が店内に響く。
おい、それ完成させるのに何日、いや何ヶ月かかるんだよ。
数時間後。
ラビットハウスのテーブルは、膨大な数のパズルのピースで埋め尽くされていた。
「協力してほしいって……」
「これのこと?」
「手伝って~!」
「よく来てくれました、二人とも……」
結局、四人では終わる気配がしなかったため、シャロと千夜を助っ人に呼んだ。
人数が増えれば早く終わる――はずだったが、8000ピースの壁は高すぎた。
「これ、一回崩して箱に戻さない?」
「勿体ないよぉ!」
「ここまで仕分けるだけでも一苦労したんだからな!」
「それに……今のリゼちゃんを止めることなんて、誰にもできないわ……」
シャロの視線の先では、リゼが職人のような目つきでピースを捌いていた。
「た、楽しい……!」
「た、確かに…………!」
今のリゼに「中止」を提案できる空気ではない。
俺も黙々と手を動かす。
「仕方ないわね。私も手伝ってあげるわ」
「すまんシャロ、助かる」
「というか、なんでジンはそんなに疲れてるのよ」
「ここまで、ほとんどジン君がベースを組み立ててくれたからね~」
チノはともかく、ココアとリゼは気合が空回りしてあまり進んでいなかったのだ。
「ジグソーパズルなんて久しぶり。端っこから固めていくのがセオリーよね」
千夜も参戦したが、彼女は独特の感性でピースを眺めるばかりで、なかなか手が進まない。
「一枚も合わせられない役立たずの私は、ここにいてもいいのかしら……」
「パズル一つでそんなに絶望するなよ」
「……そういえば」と、シャロがふと手を止めて俺を見た。
「ジンがこうやって、私たちの輪に入ってるのって珍しいわね」
「そうか?」
「たしかに。いつもは部屋に籠もってゲーム三昧の寂しいお前にしては、稀に見る社交性だな」
「本人を前にして毒を吐くな、リゼ」
だが、ココアがパッと顔を輝かせて言った。
「でも、ジン君がいてくれて、私すっごく楽しいよ!」
「はい。私も、ジンさんがいてくれて助かっています」
「ふふ、私もよ。ジン君がいると賑やかでいいわね」
「ま、まあ! 私も人は多い方が……楽しいというか、なんというか!」
「そうだな。お前が急にいなくなったりしたら、流石に寂しいよ」
普段はからかってばかりの連中に、そんなことを堂々と言われると流石にくるものがある。
少し鼻の奥がツンとするのを隠すように、俺は俯いて呟いた。
「……ま、まあ、俺も。お前らといるのは、悪くないと思ってるよ」
「あら? ジンくん、少し顔が赤いわよ?」
「照れてるんですか? ジンさん」
「か、からかうな! 集中しろ!」
ワイワイと騒ぎながら、ピースが一つ、また一つと合わさっていく。
この居心地の良さは、本物だ。そう確信した時、俺はある「致命的なミス」に気づいてしまった。
……俺たちは今、店のテーブルに直接パズルを広げている。
「ところでこれ……下にマットとか、何も敷いてないよな?」
俺の一言に、その場の時間が凍りついた。完成しても動かせない。糊付けもできない。明日も店は営業する。
沈黙の中、誰が口を開くのか。張り詰めた緊張感に耐えきれず、俺はそっと視線を逸らした。
「その……なんか…………スマン」
俺はとりあえず、謝るしかなかった。
パズルを開始してから、すでに数時間が経過していた。
途中でシャロの腹の虫が鳴り、腹ごしらえにとチノとココアがキッチンへパンケーキを作りに行った。
「……あの二人、いつの間にか自然に仲直りしたみたいだな」
リゼの言葉に、俺も手を止めて頷く。
キッチンからは、二人の楽しげな話し声が聞こえてくる。
「ふぇ!? 喧嘩してたんですか!?」
「気づかなかったのか? さっきまでチノのやつ、いつも以上に口数が少なかっただろ」
俺の指摘に、千夜とシャロは顔を見合わせた。
「ええ? いつもあんな感じじゃないんですか?」
「チノちゃん、照れ屋だもんね」
……どうやら、この二人には喧嘩に見えなかったらしい。まあ、確かに激しい言い争いをしたわけじゃないが。それでも、険悪な空気が消えたのは喜ばしいことだ。
仲直りしたなら万々歳だ。今のうちにパズルを進めて、今日中に終わらせてしまおう。
俺は再び集中力を高め、ピースをはめていく。だが――。
階段を激しく駆け上がる音が響き、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
「チノちゃんが口をきいてくれないよぉ~!!」
涙目のココアが飛び込んできた。
……仲直りしたんじゃなかったのかよ。
「今度は何をやらかしたんだ」
「ホットケーキを宙に浮かせてひっくり返そうとしたら……チノちゃんの顔に、ペチャって……」
「ホントに何やってんのよアンタは!?」
シャロのツッコミが冴え渡る。この女、学習能力というものがないのか。
「自分でなんとかしろ。自業自得だ」
リゼの容赦ない一言に、ココアは肩を落とし、フラフラと幽霊のように一階へ戻っていった。
「せっかく仲直りしたのにねぇ」
「振り出しに戻った、どころかマイナスだな……」
千夜たちが同情の声を漏らすが、俺はもう構っていられなかった。
極限まで高まった集中力は、すでにココアの失態をノイズとして処理していた。
あともう少し……あと数ピースで、この8000ピースの怪物が完成するんだ……!
「大変です! ココアさんがケチャップで死んでます!」
「ケチャップでどう死ねるんだよ!?」
突然現れたチノの報告に、思わず全力でツッコミを入れてしまった。
ラビットハウスの夜は、パズルよりも複雑怪奇だ。
「ごちそうさまでした~」
「美味しかったわね」
ようやく焼き上がったパンケーキ(ケチャップまみれではない方)を食べ終えた後。
俺は黙々と作業を続け、ついにパズルを完成させた。
他の五人はすでに飽きたのか、知恵の輪を囲んで談笑している。チノとココアも、いつの間にか先ほどの惨劇を忘れたかのように会話を交わしていた。
「この知恵の輪、難しいね~」
「おじいちゃんが作ってくれたんです。私はまだ解けなくて……いつか自分の力で解いて、おじいちゃんを驚かせてやるのが目標なんです」
「チノならすぐ解けるだろ。お前、頭いいしな」
パズルを片付けながら俺が口を挟むと、チノはパッと顔を明るくした。
「はい。 ありがとうございます、ジンさん」
そんなやり取りを眺めていたリゼが、ふと思い出したように呟く。
「しかし、最初にやってたパズルの欠けたピース、一体どこに行ったんだろうな?」
「そういうのって、忘れた頃に見つかるものよね」
千夜がのんびりと応じる。
「そういえばシャロちゃん、昔ランドセルを学校に忘れて帰ってきて、『明日学校に行けない!』って泣いてたわよね」
「ちょ、千夜! リゼ先輩の前でその話はやめてよ!」
シャロが真っ赤になってベッドを叩く。その衝撃で、上に乗っていたティッピーが跳ね上がった。
次の瞬間、ティッピーの毛の中から「コロン」と小さな何かが床に転がった。
「ん……? これ」
チノがそれを拾い上げる。見覚えのある、独特の凹凸。
「パズルのピース……です」
「あ! チノちゃん、これで元のパズルも完成だね!」
「はい!」
ようやくすべてが解決し、大団円。……そう思っていたのに。
「あ、取れた」
カチャリ、と金属の乾いた音が響く。
見れば、ココアの手の中で、チノがあんなに苦労していた知恵の輪がバラバラになっていた。
一瞬の静寂。
チノの顔が、怒りでみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「ココアさん……!!」
「は、はい……あ、お姉ちゃんって呼んで――」
「呼びませんッ!!」
……ああ、パズルは完成したけど、仲直しは未完成だったな。
「ううぅ……ジンくん、助けてよぉ……」
夜。
なぜか俺の部屋にココアが転がり込み、頭を抱えて悶絶していた。
「いい加減、自分の部屋に戻れ。ゲームに集中できないだろ」
「だってチノちゃん、今度こそ本当に許してくれないんだよぉ!」
そりゃそうだ。楽しみを奪うことに関しては、ココアは天才的な才能がある。
結局、リゼたちも気まずそうに帰ってしまった。千夜だけは「いいネタが見れたわ」と言わんばかりの笑顔だったが。
「……ったく、しょうがねぇな。俺からも許してやってくれって言ってくる」
「ホントに!? 恩に着るよ~!」
いつまでも部屋に居座られてはこっちが困る。俺は重い腰を上げ、チノの部屋へと向かった。
「チノ、起きてるか?」
軽くノックすると、ドアが数センチだけ開いた。隙間から覗くチノの目は、まだ少し潤んでいる。
「その……ココアも本気で反省してるみたいだし、そろそろ許してやってくれないか? あいつ、悪気だけはないんだし」
ココアの名が出た途端、チノは不満げに頬を膨らませた。まだお怒りモードか。
「……ジンさんが、私の相談に乗ってくれるなら、許してあげなくもありません」
「相談?」
なんだ、そんなことでいいのか。別に交渉材料にしなくても、いつでも乗るのに。
「分かったよ。相談に乗るよ。断る理由もないしな」
「……では、中へどうぞ」
招き入れられたチノの部屋は、どこか甘く、落ち着く香りがした。
パジャマ姿のチノは、いつもよりずっと幼く、そして無防備に見えて……正直、目のやり場に困る。
「それで、悩みってなんだ?」
俺が床に座ると、チノはベッドの縁に座り、膝に置いたうさぎのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
「最近……ある人と一緒にいると、胸がポカポカ温かくなるんです」
消え入りそうな声だったが、静かな部屋にはよく響いた。
「でも……その人が他の女の人と親しそうに話しているのを見ると、すごく苦しくもなるんです。これは、一体何なのでしょうか」
まさか、そんな直球な質問が来るとは思わなかった。
大人びていても、やはり彼女も中学生。恋に恋する年頃か。
俺は少しだけ寂しさを感じつつも、兄貴分として誠実に答えることにした。
「それは……『恋』だと思うぞ」
「恋……ですか」
「ああ。チノはその人のことが好きなんだよ。だから心地いいし、嫉妬もする。全部、好きだから起こることだ」
「……私は、その人のことが、好き……」
チノは自分の感情を噛みしめるように呟くと、顔を真っ赤にしてぬいぐるみに顔を埋めた。
可愛い……が、そうか。チノにも好きなやつが。
嫁に出す父親の心境というのは、こういうのを言うのだろうか。
「あの……ジンさんは、私のこと、どう思っていますか?」
「え、俺? ……そうだな」
少し考えて、俺は素直な気持ちを口にした。
「可愛くて、頼りになる、最高の妹……って感じかな」
「……クスッ。ココアさんみたいなこと、言うんですね」
チノが少しだけ呆れたように、でも嬉しそうに微笑む。
「そ、そうか? あいつと一緒なのは心外だが……まあ、可愛いと思ってるのは事実だしな。いや、むしろ俺の方が『可愛い』の評価は上だぞ。ココアの倍は可愛いと思ってる」
「そ、そんなに連呼しなくていいですから……っ!」
赤面して俺の口を塞ごうとしてくるチノ。
本当の兄妹みたいで、心が温かくなった。
「それじゃ、お休みチノ」
「はい。おやすみなさい、ジンさん」
部屋を出ていくジンさんにそう声を掛けます。
私にとって、ラビットハウスは安らぎの場所であると同時に、守らなければならない「箱」でした。
おじいちゃんがいて、お父さんがいて、私がいる。
そこにココアさんが嵐のようにやってきて、リゼさんが加わり、賑やかすぎるほどの毎日。それはとても幸せでしたが、どこかで私は、自分が「しっかりしなくては」と背伸びをしていたように思います。
けど、ジンさんは少し違いました。
最初の印象は、「少し無愛想で、何を考えているのか分からない人」でした。
部屋に籠もってゲームばかりしているし、ココアさんのノリにもどこか冷めたように対応したり、一緒に悪ノリしたり。けれど、彼はいつの間にか、当たり前のようにそこにいました。
「……チノ、それ貸して」
コーヒー豆の麻袋を運んでいた私から、彼はひょいと荷物を取り上げました。
「大丈夫です」と言いかける私の言葉を遮るように、「女の子が持つもんじゃない」とぶっきらぼうに付け加えて。
彼は、決して甘い言葉をくれるわけではありません。
でも、私が誰にも言わずに抱えていた小さな「大変さ」を、まるでパズルのピースを埋めるように、ごく自然に掬い取ってくれるのです。
あの日、ココアさんが私の大切にしていたパズルを勝手に完成させてしまった時。
私は悲しいというより、自分の「楽しみ」というささやかな聖域を土足で踏み荒らされたような、言いようのない虚しさを感じていました。
それを、ジンさんは「10対0でココアが悪い」と言ってくれました。真っ先に私の「嫌だった」という感情を肯定してくれた。
(ああ……この人は、ちゃんと見てくれているんだ)
そう思った瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなったのを覚えています。
その熱は、今日、私の部屋で確信に変わりました。
『それは……恋だと思うぞ?』
ジンさんにそう言われた時、心臓が跳ねる音が耳元まで届くかと思いました。
「その人」とは、あなたのことなんですよ――。
そう喉まで出かかった言葉を、私は必死に飲み込みました。
だって、ジンさんは私のことを「妹」だと言ったから。
ココアさんに向けるのと同じような、家族としての「可愛い」という言葉。
それが今は少しだけ悔しくて、でも、彼の言葉が私の心を撫でた時の心地よさに、結局は甘えてしまうのです。
「……ジンさんはバカです。気づいていないのは、あなたの方なんですよ」
部屋を出ていく背中に、声にならない声で呟きます。
鏡の中の私は、自分でも驚くほど真っ赤な顔をしていました。
知恵の輪を解くよりもずっと難しい、この「恋」という問題。
いつか、私の力だけで解いて見せます。
その時は、おじいちゃんじゃなくて、ジンさん。あなたをあっと言わせて見せるつもりですから。
「いい天気だね~!」
「全く、調子のいいやつだな」
翌朝。俺の「口添え」のおかげで、ココアは無事にチノからの許しを得ていた。
二人で登校の道を歩いていると、校門の前で千夜の姿を見つける。
「おはよー! 千夜ちゃん!」
「おはよう二人とも。……ココアちゃん、チノちゃんの機嫌は直った?」
「うん! 朝になったら許してくれたよ~!」
俺のお陰でな、と心の中で付け加えておく。
「あれ? 千夜ちゃん、ストッキングに穴が開いてるよ」
ココアの指摘に、千夜は自分の足元を見て「あら」と困り顔をした。彼女の色白な肌のせいで、黒いストッキングの破れはかなり目立っている。
「大変! 絆創膏で塞ぐのと、マジックで肌を黒く塗るの、どっちがいい!?」
ココアがバッグから救急キットと油性ペンを取り出した。二択のどちらも地獄である。
「大丈夫よ」
千夜は微笑むと、その場でおもむろにストッキングを脱ぎ捨てた。
「「その手があったか!!」」
ココアと見事に声が重なった。
どうやら今日も絶好調のようだ。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
誤字、脱字、不自然な箇所等ありましたらご報告頂けると幸いです!
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シャロの続き
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