トランスジェンダー、というと身体的と心理的な性別が異なる人の事や、性転換をした人の事を指すらしい。
中学生になり、保健体育で学習した僕はトランスジェンダーという存在に興味を抱いていた。
「僕もトランスジェンダーなのかな」
僕は男性だ。少なくとも、身体的・生理的には。しかし、僕は"魔法少女"という存在なのである。
何故僕が魔法少女なのか、何故僕が選ばれたのか、そもそも、魔法少女とはなんなのか。
それが僕、「
――――――
雨の降るとある日。中学二年生となった僕の最初の放課後、帰り道のこと。
初めて会った時は矛盾した綺麗な子だな、と思った。
濡れた銀色の長い髪。濡れた灰色のレインコート。
空一面の雲はズレており、偶然なのだろうか、地面に倒れる小さな少女には太陽の光が差していた。
神秘的だった。同時にとある偏見も持った。
「彼女は捨てられたのだろう」と。
別にこのまま家に帰っても生活に支障は無いだろう。
しかし見捨てることは僕には出来ない。
「ねえ君、大丈夫?」
「........................................」
「これは大変だ..とりあえず、家に連れていこう。」
僕の家はマンション「夕やみ」の7階にある。姉、「
姉は今、行方不明だ。
こんなことを言われても信じられないと思うが、”姉は怪生物に喰われた”。
この地球は、数十年前に世界が崩壊するレベルの大災害を受けた。
太平洋と大西洋の海底火山がほぼ同時に大噴火。
火山の熱に加え地球温暖化の影響で南極大陸の消滅。
噴火によって露出した太古の植物。
そして誕生してしまった悪魔の植物、「ヒノキスギ」。それにより草に覆われてしまった地球。
ヒノキスギは悪性の花粉をまき散らし、怪生物「雑草」を生み出してしまった。
悪性ヒノキスギ花粉は過剰なストレスを受けている生物の体内に着床し、体内で増殖。
そして最終的に雑草へと変貌させてしまう。
雑草は凶暴で、視界に映るものを全て破壊したり、捕食したりするのだ。
結果的に「全国家の急激なグローバル化」「差別・ジェンダーギャップ問題の解消」といった様々な社会問題が解消されたのだが、それでも世界は深刻なダメージを受けてしまった。
(因みにこれは全部、中学一年生の教科書から引用している言葉である)
ダメージを受けた人々は、コロニーを作ることで、生きることができるようになった。
僕が住んでいるここも「コロニーロイル」というコロニーの一つだ。
姉は、雑草に喰われてしまったのである。
でもきっと、姉は生き延びている。
完璧超人な姉が、たかが雑草なんかに負ける訳がない。
しかも姉は雑草と戦う組織に就いていたはずだ。そう簡単には負けないはず。
昔の思い出を懐かしんでいると、家に着いた。
ドアを開け、靴を脱ぎ、リビングにたどり着く。
僕は困った。
小さい女の子の服を脱がすことは犯罪だ。
しかし、このままだと意識不明の彼女の体調は悪化するだろう。
どうしようか。今ここで僕が犯罪を犯すか、この少女を見過ごすか。
二者択一である。
「うぅ............こ、ここは......?」
「あ、起きたんだね。良かった良かった。」
犯罪を犯さずに済んだみたいだ。
「雨の中、倒れていたものだからビックリしちゃったよ。とりあえずそうだなぁ..シャワーでも浴びる?」
「すいません....お借りします。えっと、貴方の名前は..?」
「道理。僕の名前は稀代 道理だ。気軽にみっちゃんとでも。」
「道理さん、ありがとうございます。」
「スルーされちゃった..まあ良いってことだよ。その代わり、後で話を聞かせてくれ。
何故、君があそこで倒れていたか。」
みっちゃん呼びをしてくれなかった事に少しダメージを受けながら、彼女を洗面所まで送る。
待っている間、僕は台所へと向かい、お粥を作る準備をする。
彼女は一体何者なんだろうか?そんなことを考えながら火を付ける。
雨は今も降っている。
――――――
「ありがとうございます。無事温まることができました。心も、体も。」
「そっか、お粥も作ったからもっと熱くなっといて。」
「何から何まで..ありがとうございます。この恩、忘れはしません。はふっ」
彼女はお粥を口に入れる。
そこまで美味くはないはずなのだが、顔をほころばせながら食を続ける。
「さて....単刀直入に聞くよ。君はどうしてあんな所で倒れていたのかい?」
雨の降る路地裏に君は倒れていた。僕の帰り道がたまたま一緒じゃなかったら君は今も倒れたままだったかも知れない..
無視することは出来ない、大事な質問だ。
「無理なら言われなくてもいいけど、教えてくれると嬉しいな。」
「……すみません、私の事は他人には言えないのです。
大丈夫です、別に病気にかかっているなどではありませんから。」
「ならせめて..名前を教えて。偽名でもいいから、ね?」
「名前..そうですね。あだ名でもいいですか?」
「いいよ、呼び名を知りたいだけだから。」
「分かりました。私の事はアルターちゃん、とでも。」
alter....意味は確か、何かを変えるとか、改造するとかだったか。
「おっけー。アルターちゃん、お粥美味しかった?」
「あ、はい!それはとても..!本当にありがとうございました!」
「それは良かった。君は帰るところはあるのかな?」
「………………」
「ないんだね。うん、なんとなく察してたよ。
そうだな....。――僕の家、使う?無論、タダじゃないけどね。」
「い、いいんですか!?」
「実質一人暮らしみたいなものだから、気にしないで。
家事を手伝ってくれれば、それでいいから。」
「素晴らしい提案、なのですが....」
....正直、自分でも怪しい提案だと思う。
僕にメリットはほとんど無く、アルターちゃんにしかメリットが無いように見える。
彼女が訝しぶのも無理はない。
僕だって訝しぶだろう。
でも僕は、彼女を放っておくことは出来なかった。
「別に、今すぐ決めなくてもいいよ。
僕は買い物に出かける。君も付いてくるかい?」
お粥を作るとき、冷蔵庫の中には調理料と薬味しかないことを思い出す。
本当はうどんとかもあったら作ろうかなと思っていたのだが、まさか何も無いとは。
「それでは、お供します。こう見えて私、力持ちなんですよ。」
「心強いね。僕、買い貯めするタイプの人だから、助かるよ。」
雨はもう止んでいて、傘は無くても大丈夫だと思っていた。
――――――
「わぁ......!見てください道理さん、ドーナツですよ!」
「ん?あぁ、”マストリ”だね。」
買い物帰り。マンションからおおよそ2キロメートル先のスーパーマーケット。
僕ら二人は表参道を歩いていた。
行き交う人々の何人かは、この先にある店で買ったであろうデザートを持っている。
外はオレンジ色に染まっている。夕方だ。
「....?ますとり、とは?」
「”マストリング・ドーナツ”っていうチェーン店だよ。僕はモッチリングドーナツが好き。
あのもっちりした食感、作った人は本当に天才だと思うよ。」
モッチリングドーナツ。マストリング・ドーナツ..略してマストリが流行った理由の商品だ。
雲のような形が集まったようなフォルムはどこか幻想的な見た目をしている。
作った人..「
そういえば、最近そういったデザートを食べていない。......そうだ。
「帰りに寄って行こうか。僕も久しぶりに食べたくなった。」
「え!?いいんですか?」
「買い物、付いてきてくれたお礼みたいなものだよ。さ、行こ?」
「わぁ..!ありがとうございます!」
僕らはマストリに向かって、歩を進めた。
――――
「い、いいい、一体、どうなっているんだ..!?
辺りは大混乱だ。
行き交っていた人々は逃げようと足を動かし、
車やバスは伸びるツタに絡まっている。
しかも、最悪なことに、ツタの一部分は車のせいで燃えている。
阿鼻叫喚。この状況を表すに最適な四字熟語だろう。
「これは......!!すみません、道理さん!!」
「ど、どうしたんだアルターちゃん!?」
「私は..私の役割は..この状況を止めることです!!」
そうアルターちゃんが言うと、彼女はマストリに向かって飛んで行った。
――飛んで行った?
「ええええぇぇぇぇ!!!!!?????
ととととと飛んで行ったぁああああああああ!!!!!!!???????
アルターちゃぁあああああああああん!!!!!!!!!?????????」
「道理さん!貴方は逃げてください..!早く!」
「そんな..!アルターちゃんは!?何してんだよ!!」
「私がここを何とかします!!私はそれが出来る..ので!!」
「なら僕も手伝う!!僕だってもう中学二年生だ!!」
「すいません、正直、足手まといになるかと....」
「くっ....こんちきしょう!!!!!!
分かったよ!絶対死ぬんじゃないぞ!」
脳裏に思い浮かぶは、姉の姿。
僕は、また何もできないのだろうか....?
とにかく今は、家まで逃げることに集中した。
――――
走って、
走って、
走って。
ようやく家に、マンション”夕やみ”の7階に。
僕の部屋のリビングに、リビングにある隠し金庫に。
僕の成長の証へと手を伸ばす。
「――”乙女式 時限型除草ミサイル”、”蠍式 慣性展開型滑空パラソル”、"水瓶式 七連装填型キャノン砲"!!」
僕はあがる姉さんが怪生物に喰われてから、対雑草用戦闘道具デザイナーとして生活していた。
姉さんの所属していた組織から補助があるとはいえ、一人で暮らしていくには働くしかない。
ならば、せめて姉さんのような雑草と戦う人のためのアイテムを作りたい。
そう思って、僕はずっと戦闘道具を作り続けてきた。
窓を覗くと、姉さんが所属していた組織だろうか?軍隊がマストリのお店に接近していた。
そこから目を凝らして覗くと、アルターちゃんがどこからか武器を取り出して、姉さんを飲み込んだ雑草と同じような怪物と戦っていた。
こうしてはいられない。
僕は窓から飛び出した。
「パラソル、展開!」
空を滑空できる傘を広げ、彼女のもとへ行く。
向かったところで、無駄死にするだけかもしれない。
彼女が言った通り、足手まといにしかならないかもしれない。
けど、その嫌な期待通りにはならないだろう。
僕の思い浮かぶ期待通りになる。そうしてみせる。
なんてったって、僕は
――――――
マストリの屋上。水瓶式キャノン砲に乙女式時限型除草ミサイルを七発全てを装填する。
「これだけあれば、ツタの被害は何とか除草できるはず....!」
「アルターちゃんに被害が及ばないように........撃つ!!」
キャノン砲から放たれた七つのミサイルは自動で核となる部分を探し出し、
着弾後、辺りに自家製の除草剤を噴射させる。
並大抵の植物は、十分もしない内に枯れてしまうだろう。
「..!?これは..誰かの援護でしょうか?」
「アルターちゃん、大丈夫!?」
「道理さん!?逃げてといったでしょう!?なんでここに....!」
「空から来た!伸びてるツタはそのうち枯れる。あとはこの..なんだこいつ?」
それは簡単には形容できるが、脳が理解を拒む大きな植物だった。
百合の花のような頭部。茶色の巨木のような胴体、ひげ根が巨大化したような無数の足。
名づけるならこうだろうか。
「百合茶色の雑草だ....!!」
その怪物はこちらをにらむように佇んでいる。無数の足をロープのようにこちらへ伸ばしながら。
「!話はあとです!今はこっちに..!」
「分かった!」
伸びる足を避けながら、広場へと向かう。
戦闘へ適した所だ。空間は広い方がいい。
『gggaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』
「きゃっ..!!」
「アルターちゃん!?この野郎..!」
アルターちゃんが勢いよく蹴られた。
彼女は良くも悪くも広場へ到着すること自体はできた。
しかし、打ちどころが悪かったのか、彼女は動かない。
「アルターちゃん!アルターちゃんッ!!」
「うぅ......みち、り、さん....」
彼女は息も絶え絶えだ。無理もない、彼女はあの怪物とずっと戦っていたのだ。
最悪、彼女は死んでしまうのではないか....
そんなのは嫌だ。
「くそっ..死ぬな!アルターちゃん!なんとか持ちこたえてくれ!軍の人も来てる!」
「........みちり..さん..一つだけ、わがまま、きいてくれま..せん..か....?」
「一つでもいくつでもいい!僕は何をすればいい!!??」
「ばん..ざい..して..ください....。理由は..聞かないで....ください....。」
「バンザイ!?分かった!ばんざーい!」
「あと..は....私....が....ッ!!」
アルターちゃんの指示した通り、僕は両手を上げ、彼女もまた、何故か同じように両手を上げる。
はっきり言って、意味が分からなかった。けど、彼女が頼んだことなのだ。特別な意味があるのだろう。
僕と彼女が出会って数時間。されど数時間。
正直、僕は彼女が怪しい人だな、と思っている。
だけど、僕は見たのだ。部屋の窓から、逃げ遅れた人を守りながら戦う彼女を。
その姿が、かっこいい姉と重なって。
今こそ、勇気を振り絞るときだと思ったのだ。
彼女は何を考えているかは分からないが一つ、僕と共通している思いがあるはずだ。
――――アイツを、止めなければならない。
その時、僕らは一つになった気がした。
「道理さん..本当に変な人。見ず知らずの私を助けてくれて、今も私のことを信じてくれました。
――魔法少女"アルファベーター"参上!!
ありがとうございます、貴方のおかげで、私は戦えます。」
「ど、どうなっているんだ..?」
僕の目の前には、大きなアルターちゃんがいる。
さっきまで小学生ほどの大きさだったのが、僕と同じぐらいの大きさになったアルターちゃんが目の前にいる。
そして肝心な僕は。
「......え?へ?あああ、
アルターちゃんになってるぅぅぅ!!!!!!??????」
文字通り、
「あああアルターちゃん!!一体どうなってるの!?」
彼女は少し間を置いて言った。
「――私は、いわゆる”魔法少女の天使”なのです!変身者がいなくても戦えますが..変身者と協力して悪に染まった怪生物と戦う事を使命とした天使なのです!!!
そして、貴方が私を助けてくれて。絆を繋いでくれたおかげで....
貴方の体を使って変身することが出来るのです!!」
「はぃ!!??!?!?」
意味分かんないや。
「悪に染まった悲しき百合茶色の雑草よ!今、私たちが苦しみから解放してみせます!!」
「ドーナツ買いに行こうとしただけなのに..こうなったらヤケだ!アルターちゃん!後で詳しい話を聞かせてもらうからな!
..この身体でキャノン砲は扱えるかは分からないけど....それでもやってやる!」
今ここに、悪に染まった雑草と戦う魔法少女のコンビが誕生した。
一人は努力の結晶であるキャノン砲を。もう一人は自前の武器であろう盾とライフルを構える。
「ミサイル、装填完了。標準を定め、距離を取り、発射する!!」
決戦の火蓋は三発のミサイルによって切られた。
――――――
おまけ 大体こんな感じ?
――――――
『ggaaaaaa!!!???』
雑草が短い呻き声を上げる。
ミサイルが無事、着弾したのもあるだろうが、
ミサイルに合わせて雑草に向けて接近していたアルターちゃんがライフルを連射したのもあるだろう。
彼女はライフルの残弾数も気にせずに撃ち続けている。
かかかか、とライフルの弾が切れたことを表す音が聞こえる。
その隙をついて雑草はまた足を伸ばす。
しかし彼女は盾で防き、足を弾く。パリィだ。
彼女はリロードするために後ろに跳んだ。
そうなると、必然的に距離が近い自分が狙われるはずだ。
なので僕はミサイルを自分の足元へ向けて撃つ。
普通のミサイルだと、単なる自爆行為にしかならないが、このミサイルは違う。
乙女式 時限型除草ミサイル。八月の中旬に量産に完成した対雑草用ミサイル。
このミサイルは大量の火薬と引き換えに、高密度の気体型除草剤がたっぷり積まれている。
大量に吸引すると人体に悪影響を及ぼすが、ミサイルは時限式だ。ある程度爆発までの猶予がある。
それに、当然回避する手段を用意してある。
蠍式 慣性展開型滑空パラソル。雨を避ける傘とは違い、空を滑空するグライダーのようなアイテム。
パラソルは非常に短距離だが浮遊、ホバリングをすることができる。かなり、頑丈だ。
ミサイルが起動し、気体が勢いよく吹き出す。
僕へ向けて伸びる無数の足は除草剤によって枯れてゆき、僕の身体は除草剤の爆風を受けたパラソルによって上空へ行く。
『ggggggggggggguuuaaaaa…………!!!!!!!』
槍のように鋭く、棍棒のように太い足が僕のもとへ飛んで行く。
「パラソルには六つのジェット機があるんだよッ!!」
パラソルの向きを変え、足を避ける。
僕の身体は今、アルファベーター..アルターちゃんの物になっている。
いつもと勝手が違うので、上手く空を舞うことが出来ない。
そしてそのままジェット機を起動し、近くのビルを地面に走る。
窓の段差、ミサイルで除草しきれなかったツタに不慣れな身体。
もたれかかるようにビルに突き刺そうとする無数の足で上手く走れない。
足は壁に突き刺さり、攻撃するための足は数えるほどしかない。
攻撃手段を失ったのならば、自由に飛べる。
ビルから僕は空へと飛び移る。
その慣性によりパラソルは上手く軌道に乗らない。格好の的だ。
百合茶色の雑草の視点は、上空を舞う僕に釘付けだった。
「隙だらけですよっ!!!」
その隙を、ライフルのリロードを終えた彼女が逃さない。
放たれた銃弾の嵐によって、ビルに突き刺さった足は飛んで行く。
支えを失った雑草は、伐採された大木のように倒れてゆく。
雑草の手は巨大な胴体を起こすには力が足りない。絶好の機会だ。
僕は彼女のもとへ滑空する。
「アルターちゃんで合ってる..よね?今ならこう、倒せそうだけど!?」
「後は..そのキャノン砲、この銃弾も撃ち出せますか?」
「え?構造的に多分装填はできないけど、一発ずつなら撃ち出せるかも!」
「一発で十分です、それを雑草本体の核にぶつけてください!」
「核!?....あれのことか!喰らえぇッ!!」
どこん、と核に当たる音が響く。
『goggggggggggg....geuaaaaaauaaaaaaaeeuuu!!!!!!』
ライフルから放たれたエネルギー弾が雑草の核に突き刺さる。
「――今です!ガンマ・ストライク・レイピアズ!!」
「うえ!?何それ!?」
アルターちゃんは持っていたライフルに盾を繋げた。
そして、盾を引き抜くと刀を抜刀するかのようにビーム状のレイピアが出現した。
一突き。
核に突き刺さるエネルギー弾を彼女がレイピアで更に突き刺す。
エネルギー弾は内側へと入り込んで行く。
次第に体全てにエネルギーが巡る。
そしてどうやら、彼女のレイピアは突くだけでなく、斬ることも出来るようで。
突き刺している状態から左斜め上へと斬りあげ、そのまま彼女はヨー軸に一回転。
そして右斜め上から真下へ向けて斬り進める。
そして核に「γ」の文字。
「―――ガンマンズ・ガンマ・スラッシュ!!!」
彼女が必殺技を言い終わったその瞬間、百合茶色の雑草の核から植物全体へとエネルギー体が波打って行く。
数秒後、
中から汚れたマストリの仕事服を着た人がゆっくり倒れてゆく。
どうやら、今回の雑草に蝕まれてしまった被害者はマストリの店長....杉田 運さんだったようだ。
――――
『gg....オ、オれ..ハ..いっタイ..どうな..ッタンだ..?....?」
「貴方は自らの悪しき心の雑草に飲み込まれていたのです..
先ほど私たちが貴方を雑草の手から一時的に救い出しました。」
「ug........そうか....俺は.....」
どうやらさっき彼女が放った必殺技は一時的に雑草を消滅させるものらしい。
雑草というものは過剰なストレスや悪性の精神により発生するらしく、雑草が暴走する理由はストレスの発散らしい。
被害者から雑草を取り除くには主に二つの手段がある。
”ある程度雑草を暴れさせる”手段と”何らかの方法で内部の被害者と接触する”手段だ。
前者は言われなくても分かるだろう。
後者はいわゆる、「説得」だ。
”悪いことはしちゃだめだよ”と親が子に言うように、原因を突き止め、最後は話し合いで解決させる。
補助者。そんな職業がある。
「俺は..雑草に蝕まれたのか..?」
「ええ、貴方は雑草に取り込まれたのでしょう。周りの被害を見ると明らかです。」
「そう、だよな。俺が..やったんだよな..。..人々に、迷惑を..かけた?
また..またぁ!!また迷惑をかけてしまったのかぁッ!!!!ああぁあぁあぁあぁああぁあぁ!!」
「落ち着いてください!!深呼吸です、深呼吸です。ひっひっふー、です。」
「ぁあ、ぁ........それは、妊婦さんのやつです..よね..。」
「ラマーズ法じゃねえか!ボケてどうするんだよ!」
「でも、落ち着いたみたいですよ。えっと、貴方のお名前は?」
「え?稀代 道理だけど?」
「いや分かってますよ。ツッコミした後にボケるとか温度差で私の天使の翼凍りそうですよ」
「朧げながらに聞こえてきた......魔法少女..アルファベーター、と言ったか....」
「ええ、アルファベーターちゃんです。聞かせてください。何があったのですか?」
「....思い、出せないな..。」
「そうですか..”何があったのか”を覚えてないのですか?」
「..ああ。俺は何か知らずの間に、ストレスを受けてたみたいだ....。」
「まあ、良くある事だね」
「それでは、先ほどの”人に迷惑をかけた”ことに対して強く取り乱したのは何故ですか?」
「....それは、貴方が知るには、早すぎる....と思うぜ..。」
「僕は..そうは、思いません。僕は確かにそういった職には着いていませんが―」「違う..ね!....君は..子供じゃないか。分かる訳がない....。」
「なら何故今。私たちはここにいるのでしょう。」
「それ、は。」
「私の名前はアルファベーター、貴方を救うべく、天からやってきた魔法少女の天使です。」
「僕の名前は稀代 道理。その魔法少女をサポートする男子中学生です。今は何故か、女の子になっていますけどね。」
「そうだな....確かに、さっきまで..ここで戦っていたのは..君たちだったか..。」
「ゆっくりでいいので、話してくれませんか?」
「..ああ、そうだな..話すよ、君たちに。
俺はこう見えて、店長なんだ..このマストリング・ドーナツの本店の店長なんだ。
最初はちゃんと従業員から始まって、モッチリングドーナツを作り上げた功績で店長になれた。
実はあのモッチリングドーナツは..たまたま出来たんだ。
普通のプレーンのドーナツ生地にきな粉餅だったか..?を落としてしまって....それで出来てしまった。
俺は..運が良すぎるんだ。
中学のテストだったか、高校のテストもだったか。
平均点より少し上下を取れれば良かったのに、化学と数学の二つ。
分からなくて適当に英語やら数字を入れただけだったのに、奇跡が起きて、全問正解。
結果、帰ってきたテストの点数は98点だったかな。
間違いなく100点ではなかった。
最初は俺だって嬉しかったさ。親から、先生から、友人からも褒められた。
しかし、続いてしまったんだよ。その奇跡が。
俺は天才扱いだ。たまたま運がいいだけなのに皆は俺を天才と呼ぶ。
このプレッシャーが分かるか?
まだ俺は大学生なのに、この運のせいで、皆よりも浮いてしまう。
ただ、俺は仲良くしたいだけなのに、話しかけたとき。他の人と比べて態度が違うんだ。
そして、皆が天才と呼ぶなら、俺はそれに恥じないように生きていかなければならない。
店長として恥じぬように。
どうやら俺は経営者として才はあったらしく、それに対しても天才と呼ばれた。
店長ならその店の、マストリの事は全て分かる。
そうか、暴走した理由が分かった..
クレームだ。
日々入るクレーム、苦情の嵐。
「天才ならばもっと客の事を考えろ」といつも言われたよ。
天才店長としてのプレッシャー、そして幾つものクレーム。
店長として、クレームを受け、謝罪。
店長として、クレームを受け、謝罪。
店長として、クレームを受け、謝罪。
店長として、クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。クレームを受け、謝罪。
人様に迷惑をかけてはならない。
....俺だってもっと、自由に気ままに生きたいのに。だけど、店長だから、天才だから人のために生きなければならない。
そう思ったときに、身体と心の全てが痛くなって、
雑草に飲み込まれたんだな。とふと気づいたんだよ....................................」
「................................................、そうだったの、ですね。」
「なぁ、俺はどうしタらいいンだろうナぁ....運ナンテ、どうシヨウもなイもんナぁ..』
「..あ、この空気を壊しちゃうけど良い事を思い付いたよ!
僕のソシャゲのガチャ回してくれない?これでSSR乱獲してやるぜぇへへへ。」
「ホントに壊しちゃってどうするんですか!おバカ!
自分の事しか考えてないんですか!?」
『はァ....、これを押せばいいのか?」
「いや、別に受けなくてもいいですよ「はい、十一連ガチャお願いします!」
「........!!!』
「ああもう、その反応的に当てちゃったんですね..」
「いや..当たってない!!重複したみたいだ..。俺の幸運をどうにかできた....のか!!??」
「そりゃあどうにかできますよ。もうそのガチャ、SSRのキャラ出してますもの。」
「ずこー。ならなんで引かせたんですか!」
「だって、僕だって最強に運がいいもん。」
「俺と同じ..なのか?」
「えぇ。だって、運さんと同じ、この世に生まれることという良くも悪くも奇跡を起こしていますもの!
確かに天才扱いされて、プレッシャーをかけられるのも、クレームを受けるのも辛いでしょうけど、
解決方法はありますからね。
クレームを受けたら心の中でこっちの方が運良いしなぁ..と思えばいいし、
自覚の無い天才扱いにされるのが嫌なら、人を怒らせる天才になれば自覚のある天才になって、まだマシになれるでしょう。
なんなら”天才”的な幸運の持ち主を名乗ればいいんじゃありませんか?」
「私には良く分かりませんけど、まるで屁理屈みたいですね!」
「....そうか、そうだったのか。つまりは心のありよう、という訳か..」
「そうですよ!実際に凄いことはしたんですし、堂々と、調子乗っとけばいいんですよ!
学校ではお調子者であるこの僕のように。」
「..よし、決めた。 ――俺もそう生きてみる。君のような、強い心を持つ人間に。
人に迷惑をかけれる人間に、なってみせる..........ッ。」
「杉田さん!?大丈夫ですか!?」
「大丈夫..ただ、疲れただけみたいだ。すこし横になる....。」
「――......そうですか。今は横になってください。私たちが見守ります。」
彼からまた雑草が生えそうなことは無さそうだった。
僕たち二人の魔法少女のおかげで、恒常した奇跡は、向上させる軌跡に繋がったのだろう。
僕たちも、ここでゆっくり休むとしよう....。
初めての戦闘で疲れた....
というか..喉が渇いた....
――――――
あれからの話をしよう。
彼は組織の人間に連行されていった。
別に逮捕とかではないらしい。
どうやら、雑草に飲み込まれた人用の補助があるらしい。
数週間後、彼は無事店長に戻ることが出来た。
「俺は天才ではありません。
モッチリングドーナツも私の運により出来たものです。
とある二人の魔法少女のおかげで俺が天才....天才的な運の持ち主だということを教えてくれました。
彼女..いや、彼にはいくら感謝してもしきれません!
このテレビを見ているかは分かりませんが、ここで言わせてください。
本当に、ありがとう!!!」
ニュースの会見で彼はこう言っていた。
でも、流石にマストリのプレミアム会員権はびっくりした。
普通の会員権にしてもらったよ。
そして、彼女。アルファベーターの事も忘れてはいけない。
次の日の朝。自宅のリビングにて。
「なぁ、アルターちゃん。あれは一体何だったんだ?
急に飛んで行ったと思ったら、俺がアルターちゃんになって、挙句の果ては魔法少女の天使?
情報量が多すぎて意味が分かんないよ。君は一体何なんだ?」
「最初からお話します。
実は..あの時倒れていたのは天界から降りた直後だったので体調が優れなかったのです。
そして貴方に気付いてもらえて、無事体調が元通りになったのです。」
彼女は続ける。
「私の身体は見ての通り小さな女の子で..誰かの身体と入れ替わらなければ戦えなかったのです。
貴方にばんざいを頼んだのは入れ替わりの魔法みたいなものです。
私と貴方の身体と心が合わされば精神を入れ替えれる、天使と悪魔だけが使える「テンアクアクセル」という魔法です。
一か八かの賭けでしたが、無事、あの時入れ替わることができて良かったです。」
「あぁ....なるほど。確かにあの時、僕の心も同じあの怪物をなんとかしなきゃ!っていう思いだったっけ。」
しかしそうなると一つ疑問が残る。
「君が持っていた武器は一旦置いておこう。
身体が入れ替わって僕がアルターちゃんになったのは分かる。
けど、あの時君は成長した姿みたいになったじゃないか。
僕の身体をどうしたの?」
当然だが、今は元の姿だ。特に身体の違和感は無いが....
「実は..貴方の身体の水分を少し弄って、女体化させたのです。
戦いやすい身体にするためにです。」
「えぇ?そんなこと出来るの?」
「これに関しては天使しかできません。それも上級の天使しか。」
「ちなみに危険性とかは..?」
「え?....ありませんよ。」
嘘つけ!!と心の中で叫んだ。
「はぁ....とりあえず、今はなんとかなってるしいいか。
そろそろ朝ごはんにしよう。ちょっと手伝って。」
「え?て、手伝いますけど....」
「なんだよその反応。”働かぬ者を食うべき”だっけ?ちゃんと働かないと食べるぞ!」
「突然のカニバリズム!働かぬ者食うべからずですよ!
って、そうじゃなくて!」
そうじゃないなら何なのだろうか?何かおかしい所はあっただろうか?
「えっと....このままこの家にいてもいいのでしょうか?」
なんだ。そんなことか。
「良いも何も、提案したの僕だよ。良いに決まってるじゃないか。」
「そう..ですか!ありがとうございます!」
「良し!そうと決まれば料理を......」
そういえば、あの戦場にエコバック置いたままだ。
「ごめん、今日は朝ごはん無しだ!」
「ええぇぇぇぇ~~!!!???」
僕らは朝ごはんをどうするかを朝を悩ますのであった。
この後、アルターちゃんが天使の力で瞬間移動してエコバックを取りに行ってくれた。
こんな感じのお話です。
どちらか言うとプリ〇ュアよりも仮面〇イダーの方が合ってるかも?