でも、変人であることを直さなくてもいいと僕は思うんですよ。
自分の個性を他人に変えられてたまるかって訳ですし。
だから僕は変人であることは直そうとは思いません。
このことを隠蔽します。
午後一時。今日は四限のみの授業で、午後の部はない。
学校から帰宅し、マンション近くのファストフード店にて。
僕は彼女、アルファベーターに昨日の事について詳細の話を聞いていた。
「なぁ、なんで杉田さんはあんな怪物になってしまったんだ?
強いストレスでそうなるっていうのは元々知ってたけどさ。
植物に覆われるなんて..」
「そうですね..ヒノキスギ花粉については知っていますよね?」
「学校で習ったレベルだけど、一応。」
「なら”善性ヒノキスギ花粉”については知っていますか?」
「善性....名前しか。」
悪性ヒノキスギ花粉があるのなら、善性の花粉だって当然存在する。
しかし、中学生では悪性ヒノキスギ花粉についてしか勉強していない。
「知っている人は少ないはずです。善性については政府が隠蔽している節がありますからね。」
「なんで隠蔽する必要があるの?」
「善性の花粉は悪性に比べてあまり悪影響を及ぼさないんですよ。なので明確な悪影響を及ぼす悪性ヒノキスギ花粉の方を知ってほしいのでしょう。」
「なるほど..善性の花粉ってじゃあ何なの?」
「魔法少女になった以上多少の情報は知ってもらいます。
そうですね..分かりやすく伝えるため、例としてロボットを使いましょう。善性の花粉はいわゆるロボットの武器みたいなものです。
この例えで悪性の花粉を表すと、ロボットを作るパーツです。
そして花粉である以上、善性も悪性も空気中にあります。」
「そうなの?でも僕、花粉症なのに全然症状とか出ないよ?」
「ヒノキスギ花粉は普通の花粉よりかなり重いので、身体に接触する前に物質の表面などに不時着してしまうのでしょう。
それに恐らくですが、ヒノキスギ花粉は食べ物にも付着してしまう可能性があるので..ストレスで胃に穴が開いてしまう時に雑草に飲み込まれるのでしょう。」
「つまりここの商品にも付着しているのか....食べ物が胃で消化されると花粉が体内に着床するのかな?」
「話を戻しますね。悪性の花粉が体内に着床する能力を持っているように、善性の花粉にも能力があります。」
「それは一体..?」
「”悪性の花粉の繁殖能力を極限まで高める能力”です。」
「....精力剤?」
「下手すればそれ以上です。
この地球がヒノキスギに覆われたのもこの能力による繁殖が原因でしょう。」
「そうか..よく考えたらそうだ。花粉っていうのは植物の精子だから、繁殖能力が高くないとおかしいか..」
「そうです。つまり、雑草に飲み込まれるという事はヒノキスギの繁殖能力が向上してしまった..ということです。」
「..ところでなんでそんなに詳しいの?」
「ここよりずっと上..雲の中に天使たちが住んでいる天界があるのです。そこからちょっとしたモニターでこの星を見守っていて....おのずと。」
「そうなんだ..というか機械とかあるんだ。」
「魔法使いですもの、そういう知識だってありますよ。」
「あぁ..科学を否定しない魔法使いだ。」
科学と魔法を組み合わせた最強の種族かもしれない。
「というか..道理さん、なんだか腹減りませんか?」
「あー腹減ったなぁ....あ、タッチパネルから注文出来てなかった。」
「えぇ..」
今度こそ注文を確定し、数分後、
無事にアルターちゃんのハンバーグと僕のカルボナーラが届く。
「アルファベーター..名前の由来とかってあるの?」
「そんなに深い意味は無いんですけどねぇ..
天使軍組番が12番なんですよ、それでギリシャ文字の1番と2番..アルファとベータを合わせただけの名前です。」
「天使......ねぇ。未だに実感が湧かないよ。まさか君が天使だなんて。」
「当然ですよ。基本的に天使はあまり人間界には来ませんもの。そもそも、一般の天使は天界から離れることはしません。」
「あ、その気になれば来れるんだ。
そういえば、悪魔も天使と同じようにここに来ることは無いの?」
「そうですね。悪魔の方々は一般の方でも簡単に人間界に行くことが出来ますが、そもそも行きたがらないんですよ。」
「え。じゃあ悪魔が攻めてくる事もあるかもしれないの?」
「そんなことは絶対ありませんよ。
というかそもそも、悪魔だって天使と同じ友好的な方々しかいませんよ!攻めてくるなんて万が一にもありません。」
「へぇ....悪い天使が出てくる物語はあった気がするけど、友好的な悪魔だけっていうのは初めて聞いたよ。」
アルターちゃんは先ほど届いたハンバーグを食べやすいように切り分けながら話す。
「そもそも、”悪”が付いてるからって皆さんが勘違いしてるんですよ!」
「勘違い?悪魔って、悪い魔物..とかじゃないの?」
「皆さんはそう思っているみたいですけどね。
彼らは、彼らの正式名称は"悪を滅する正義の魔法使い"なんですよ。」
「悪滅魔法使い..それじゃあ天使も違うの?」
「私たちは皆さんのイメージとあまり変わりません。"天から見守る慈愛の魔法使い"です。」
どちらかを悪者に仕立て上げようとするのは人間の悪い所ですよねぇ....と彼女は嘆く。
名前や雑草については聞いた..
他にもっと大切なこと..そうだ。雑草と戦っていた時、彼女が召喚していた武器についてだ。
「ねえアルターちゃん。あの時のライフルや盾は一体何なの?」
「アルファ・レイピアガードとベータ・マツバシューターの事ですか?」
「多分?名前とか知らないから分からないけど。」
「あれは私専用の魔法武器です!」
「魔法武器?あぁ、確かになんかビームのレイピアとか出してたね..あれ、今その二つどこにあるの?初めて会ったときにも持ってなかったし..」
「知りたいですか..。何処にあると思います?」
彼女はニヤニヤしながら顔をこちらに近付ける。
何故だか無性に腹が立ってくる。
「....アルターちゃん大食いだし、お腹の中?」
「そんな訳ないじゃないですか!....ほんのちょっぴり、食べ過ぎちゃう時もありますが、大食いではありませんよ。」
「絶対に嘘だよ....それで?何処にあるの?」
「こほん。あの武器達は天界にある私の部屋にあります。」
「え?戦闘する時わざわざ取りに行くの?凄い手間かかりそうだけど..」
「ちっちっち、それが、そうでもないんですよ!」
「さっきから何か腹立つ! ....あ、もしかして。さっき言ってた天使の科学とか?」
「惜しいですね。というかほとんど正解かも?」
「ごめん、ギブアップ。流石に分からない。」
「天使の力を使って天界までのワープゲートを作って家から持ち出しています。」
「???」
何を言っているのかまるで分からない。
「前にすごい天使は水分を操れるっていうことは話しましたよね?」
「あぁ..自分の身体の水分を弄って女の子になる~って言ってたっけ。」
「その力を応用して、私の家がある雲から私の武器をそのまま転移させているのです!」
「そんなこと出来るの?どうやって?」
「雲の成分を記録して、ほとんど同じような雲を作りだすのです。そこから天界科学で武器などを呼び出しているんですよ。」
「その雲がワープゲートってこと?」
「そうですそうです!実はあの時も雑草と戦う前に雲を作ってましたよ。」
「天使って、すごいなあ」
僕はパスタをフォークで巻きながら答えた。
「あ、そうだ。アルターちゃん、聞いてくれよ。」
「どうかしましたか?」
「今日の学校で思ったことなんだけどさ....」
――――
時はさかのぼり、僕の教室にて。
「なあみっちゃん!あの時さ!お前いたよな!」
「....あの時って?」
「マストリ・エクストリーム・ボンバー事件だよ!略してマーボー事件!」
「何だか辛そうな名前だな」
独特なネーミングセンスを持っている彼は友人の一人である
変な奴だ。
「俺さ!こう見えてニュース見る系の情報屋のイケてるJKなんだけどさ!」
「ニュース見てるのは偉いと思うけどそれで情報屋名乗ったらいけないと思うよ」
「まあ俺普通に男なんだけどね」
JKについて特にツッコまなかった僕の配慮を返してほしい。
「それで?マストリの事件を見て、どうしたの?」
「お前ドーナツ食べたいって言ってたから災難だったな」
「あぁ..いやまあそうだけど....他に何かないの?」
「別に特にないけど..あ!そうだお前....!」
ニュースで僕の姿が映ったということは、魔法少女についても見られた可能性がある。
だ、大丈夫だろうか....?
「さっきから後ろにいる女の子って誰?」
「......は?」
後ろを振り返ると、誰もいない。
「あ、ごめん!気のせいだったわ」
「気のせいかい!焦った....」
「女の子に焦る、と。初心ですなあ」
「べ、別にそんなんじゃねえよ!」
「金髪の小っちゃな子がいたような気がしたんだけどなあ」
「金髪?金髪の女の子は知らないよ。」
「そっか。ところでさ....
小悪魔系ギャルってどう思う?」
「随分溜めて言うのがそれかよ!別にどうも思わないけど..」
「小悪魔には興味なかったかぁ..なら大天使には?大天使系ギャルはどうよ?」
「逆に気になるなそれは。何だよ大天使系ギャルって。包容力高そうだな。」
「天使には興味があるんだね。ママみが好きなの?」
「......」
「え?もしかして本当に?」
「ちげえよ、はぁ..急に鋭くなるからなあこいつ..本当に変な奴だと思うよ。」
「それが俺のアイデンティティだぜ!へへ。」
「全く..それじゃ僕はもう帰るよ。それじゃあな。」
「あ、待った。これを。」
教室のドアへ歩を進めると柚木に手を引っ張られる。
「俺の連絡先!そういえば友達なのに交換してなかったよな。」
「そういえばそうだったな。それじゃ、バイバイ。」
――――
「....ということがあったんだけど、魔法少女の事を周りに知られたらマズいかな?」
「そりゃマズいですよ!魔法少女の存在を知られたら雑草に太刀打ち出来なくなっちゃうじゃないですか!」
「そうなの?普通に前みたいに協力すれば倒せるんじゃ?」
「それは私の存在が知られてなかったからですよ!
”魔法少女はこんな攻撃をしてくるぞ”と知られたら雑草に対策されちゃうじゃないですか!」
「あー、そっか。前の戦いはニュースとかで広まっちゃったからもう戦い方は知られてるのか。」
「そうですよ、もう..ただでさえ魔法少女の宣言は良くないと後悔してるのに....」
「いやぁごめんね。何かジュース淹れてくるよ。何がいい?」
「オレンジジュースでお願いします....」
カルボナーラを食べ終え、僕は彼女のオレンジジュースとコーヒー(砂糖とミルクがたくさん入っただけのブラック)を淹れに行く。
飲食店にあるコーヒーメーカー特有の少しうるさい音が鳴る。
ふと真横から気配がする。
「やあ、まさかこんな所で会うなんて!俺たちは運命の赤い糸で結ばれているのかもしれない....ぽっ」
「あ、朝倉ぁ!?」
僕の隣には、ロングコートにジーパンを履いている朝倉 柚木がいた。
........。
「お前、おま、おまえ!!何でここにいんだよ!」
「君もオレンジジュースが好きなんだね..同じだ」
「無視すんな!」
「ん?ああ、そうだね..たまたま、かな」
「たまたま?マジかよ..」
「ねえ、君に妹っていたっけ?」
「え?いないけど。」
「そう?じゃあ、あの銀髪の女の子は誰?」
柚木は席に座っているアルターちゃんを指す。
「あの子、見たことあるんだよね..ニュースで。」
「そ、そうなんだ!僕ニュースなんて見てないから分からないかな!」
「そう?でも道理ちゃん、やけに女の子を気にしてなかった?」
「そ、そんな訳ないじゃん!」
「あとさ、"金髪の女の子は知らない"って言ってたよね。
これさ、他の髪の女の子なら知ってるって受け取れそうじゃない?」
「も、妄想激しいぞ!」
「あの時、"急に鋭くなるからなあこいつ"とも言ってたよ。俺の推理が当たってるって事だよね?」
「......」
「大丈夫。もし君が魔法少女だったとしても、絶対に言いふらしたりはしないよ。」
「....本当?本当に本当?」
「そうだな..じゃあ一つお願いをさせてもらおうかな。」
「え?なんで?」
「君が本当に魔法少女なのかを確かめるため。
それに、こっちの方が信用してくれるでしょ?」
「まぁ、確かに。」
「それじゃ、君のテーブルに向かわせてもらおうかな。」
「あっ、ちょっと!待てって!」
「道理さん。遅かったですね....どなたですかこの人?」
「朝倉 柚木。さっき話した人。」
「こんにちわ。柚木です。君のお名前は?」
「え..えーと、アルター..です。」
「うんうん。アルファベーターの略称だね。魔法少女の。」
「道理さん!!バレてるじゃないですか!!」
「だって....急になんか探偵みたいに賢くなったんだもの!」
「ただのオタクの考察だけどね。いやぁ、まさか本当にその通りだったとは..。君の表情で丸分かりだったよ。」
「道理さん!!」
「しまった!こいつ心理学習ってたんだった!!」
「趣味の範疇だよ」
てんやわんや。
――
「はぁ....まあ、とりあえずその。お願いというものを聞かせて貰ってもいいですか?」
「そうだね。でも柚木、お前ってその気になれば自分で願い事とか叶えられそうじゃないか?」
「それがそうでもないんだ。少なくとも、俺には出来ないんだ。」
「そんなこと無いと思うけど....それで、お願い事は?」
「俺の存在を消してほしい。」
「..........は?」
「し、死にたい..って..こと。ですか....?」
「落ち着いてくれ、そういうことじゃなくてだね。」
「じゃ、じゃあどういう事ですか!!そ、そんな発言..もうそうとしか考えられないですよ!」
アルターちゃんは声を荒げる。
「柚木、流石の僕もそれは無理だ。友達を殺すなんて絶対に嫌だよ。」
「それじゃあそうだな..──もし今、会話している朝倉 柚木が偽物の存在だったとしたら?」
「偽物..だって?」
「魔法少女アルファベーター..君たち二人に俺の秘密を教えてあげよう。」
「秘密とは..?」
「“解離性同一性障害“って聞いたこと、あるかな?」
「..聞いたことはある。分かりやすく言うと多重人格の病だよね。」
「そうだね。大正解。」
「待ってください....私は貴方のことを知りませんが、もしかして..貴方は..」
「そうそう、俺は何故か生まれた朝倉 柚木の別人格だ。
名前はきっと無いのだろう。」
「別..人格....。」
「で、でも!貴方の存在を消してほしいなんておかしいですよ!人格を消したいだなんて..!」
「彼、本物の朝倉 柚木はずっと俺の存在に苦しんでるんだよ。今日だって、道理ちゃん。君へこの事を相談するために..」
「..!」
僕のカバンから着信音が響く。
『こうして、GPSの付いた特殊な連絡先を送ったろ?』
「最初から、柚木は僕を頼ろうとしてたのか..」
「この星にはそんな便利な連絡先があるんですね..」
「とりあえず..何をすればいいの?」
「そうだね..まずは主人格の方に人格についてを忘れさせる、とかはどうだろう?」
「忘れさせる..ハンマーで叩けば忘れるかな?」
「死んじゃいますよ!もっと他に何か..無いですかね?」
「ロボトミー手術とか?」
「他人格が危ないから危ない手術するって本末転倒じゃないか!」
「とにもかくにも主人格..俺の知ってる柚木と話してみるよ。」
「そうですね、それが一番ですよ..」
「とにもかくにも、”俺の存在を消す”..これが俺のお願い事だ。..さようなら。」
「そうだな..。またね。」
――――――
次の日の昼休み。
「なぁみっちゃん。今ちょっと時間貰ってもいいか?」
「ああいいぞ、お弁当食べながらでもいい?」
ついに来たか、と僕は机を近づける。
「当然だ。なあ、聞きたいんだけどさ。」
「どうしたの?」
「あのさ、俺って変な奴だよな?嘘とかそういうの無しで教えてくれ。」
「変な奴。」
「そうか、..やっぱそうだよな!俺もなんか俺自身が嫌だわ!お前もそうだろ?」
「別に、そうでもないけど。」
「....なんだって?」
「別に、お前がお前を嫌でもいいけどさ..僕はお前を、いや違うな。
朝倉。僕は結構気に入ってるんだ、変な奴であることが。..あまり卑下すると怒るぞ。」
「そうか..なあ、道理。相談したいことなんだが....実は「多重人格について..でしょ?相談したいことは。」
「え..なんでそれを..」
「昨日、学校を帰ってからお前の別人格さんに会ったんだ。」
「え..あいつに?」
「そうだよ。特殊連絡先を使われてね。」
「そうか..本当は昨日相談するつもりだったんだけどな」
「..お前は、あの人格についてどう思う?」
「正直、良く分からない..名前も、性格も、何故生まれたか、も。」
「そうなのか..」
「そうだな、決めた。俺、帰ったらあいつと相談するわ。」
「そっか、もしもの時は僕に連絡すること。分かった?」
「ああ、頼らせてもらうぜ..やっべ、休み時間もうあとちょっとだ。」
「なんだって!?」
僕らは大急ぎで弁当を口の中に入れる。
この時間はただただ平和であった。
――――
「柚木ぃぃぃぃぃーーーーーーーー!!!」
「朝倉さーーーーーーーーーーーん!!!」
僕とアルターちゃんは彼の家へ向かっていた。
彼の家は大木の根に覆われ、屋根には、葉。
これらが意味することは”雑草”の出現。ただ一つである。
「ドアが木の幹で固定されています!」
「ふんッ!!..ダメだ!硬すぎる!」
「しょうがないです、雲を発生させます!」
アルターちゃんが手りゅう弾のような物を地面に向けて投げると、辺りが霧に包まれる。
霧が晴れると、前回と同じライフルと、盾の代わりに小さなδ状のリングを持っていた。
「デルタ・インパクトチャクラムです。てやぁ!」
リングの持ち手に付いている大きなバネを圧縮し、リングの外側をドアに固定する。
するとゴムの反発力により固定したリングがドアへ勢いよく向かう。ドアに付く木の幹を切断するほどまでに!
「よし、幹を切断できました。これでドアを壊さずに開けれます!」
「ぬあああ!!!」
「わざわざドアを蹴り飛ばして入る必要ありました!?」
これで中に入れる。
――――
「柚木ぃぃぃー!!何処だぁぁぁー!!返事しろぉぉぉー!!」
家の中は暗く、草木が生い茂っている。
床や天井は穴が空いており、ツタが垂れていて、壁は土で汚れ、木の枝が群がる。
「気をつけてください道理さん..これだけ暗いと雑草が近くにいても分かりません。」
「大丈夫、一応僕も武装してきてるから。」
そう言って僕はナイフを構える。
牡羊式のナイフだ。ある程度は雑草と渡り合える。
「僕は二階を探す。アルターちゃんは....っ!!??」
アルターちゃんに指示をしようとした瞬間、天井からツタが伸びてくる。
僕は避けることが出来ず、上へ上へと引っ張られる。
「う、うわぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「み、道理さぁぁぁん!!!」
彼の家は屋上付きの3階建て住居。
僕に巻き付くツタの元を見ると日光が少し見える。
「行き先は屋上か..!」
怪生物と化した柚木達のことを思う。
早く彼らを助けなければ..!
――――
『ヤあ、まサカコんな所で会うナンテ..俺たチは運命の赤い糸デ結ばれてイルノかもシれナイ....なんてね』
「別人格..!!」
『別人格なんて長い言い方はやめてよ。柚木って呼んでくれ。』
「........なんで僕を連れて来たの?」
『決まってるじゃないか。一人ずつ確実に仕留めるため。』
「なるほどね、賢いんじゃない?」
『変人は天才ばかりさ。最も、俺は天才じゃないけどね。』
「そうだったら嬉しいな、もしかしたら僕死ななくて済むかも。」
『それじゃあ、頑張って生き延びて?』
──善性の花粉はいわゆるロボットの武器みたいなものです。
この例えで悪性の花粉を表すと、ロボットを作るパーツです。
「....こんなのって」
『木刀、という名の本物に限りなく近い偽物さ。これで君の首を落としてあげる。』
「....ちょっとは慢心してほしかったな」
『負け惜しみ?』
「人生のね。..ねえ、冥土の土産に教えてよ。
どうして君は暴走してるの?」
『冥途の土産ならいいよ。大ゲンカの結果さ。』
「大ゲンカ..?一体どうして....」
『知りたい?知りたい?』
「ああ、知りたい。」
『そうかそうか..教えると思う?』
「教えてくれないの?」
『教えるさ、冥途だろ?』
「当然さ、死ぬのなら聞きたいよ。」
『..嘘だな、魔法少女ちゃんが来るまでの時間稼ぎでしょ?』
「..やっぱりバレてた?」
『当然さ、ということでさっさと始末させてくれ。』
刀が振り下ろされる。
「....やぁだね!」
咄嗟に横へと避ける。
『!!..何故ナイフが..!?』
「牡羊式甲型ブレードナイフ..仕込んどいて良かったよ。」
スタンガンを改造して”切断”することに特化させたナイフ。
いざという時使えるように、腕に装着していたのだ。
「喰らえぇぇぇ!!!」
そのまま僕はナイフを構えて雑草の元へ突撃する。
『ヤバい..という訳じゃないね。』
ナイフは雑草に刺さることは無く、地面から生えてきた木の幹に刺さる。
『これでナイフは封じた。だろう?』
「まだ封じられてないよ!」
『!!!?刺さ....ッ!!』
「えりゃあぁぁぁぁ!!!」
『うわアァァアアッッッ!!!????』
僕が”仕込まずに持っていた”二丁目のナイフが彼の胴体に突き刺さる。
そのまま彼は苦しみだす。
「目を覚ましてもらうよ!朝倉ぁぁぁ!!!」
『グウぅぅぅぅゥゥウゥ!!!』
そのまま彼の胴体からナイフを引き抜き、様子を見る。
『一本トラレタよ..そのナイフ、ハ?』
「牡羊式乙型スピアーナイフ。ちゃんとした武器さ。」
『道理ちャん..流石ダな....』
「なんで暴走したの..変な奴であることがそんなに嫌なの?」
『あぁ..モチロンだよ。変な奴は....独りぼっちだ。』
「僕がいるじゃないか..僕が友達なのは嫌か?」
『そんナワケ....でも、少ない。少ないんだよ..!!』
「少ないって..友達が?」
『そうだよ....俺達には友達が足りない..困った時、助けになる友達が!!』
「うわぁあ!!?」
強引にツタで壁に貼り付けられる。
ツタは彼の感情を表すように強く僕の身体を縛る。
『現に君はこうしてまた始末されそうになってるじゃないか。弱すぎる..』
「うぅ..!!」
『両手両足を縛られ、弱点は守るすべはない。まるで拷問みたいだね。』
「......」
『顔も俯いて..気絶してるのかい?』
「......」
『それじゃ....サヨナラさ。』
なんて、ね。
『....何が起きている!?』
「時間稼ぎ成功って事だよ。」
『後ろだと!?』
「なんとか、部屋を突き止めて。道理さんの身体の状態を聞くためわざと突撃せず。」
「奇襲を仕掛けた、という事だよ!」
『
「ぐっ....ギリギリで躱された..!」
『投擲武器ノ弱点!ソレは反撃手段が少ナい事!隙アリだァッ!!喰らエエエエエ!!!!』
木刀がアルターちゃんの身体を纏う僕に叩きつけられそうになる。
「隙あり!!」
『グアアアアア!!!!』
投擲した彼女のデルタ・インパクトチャクラムは雑草に向けて投げた。
しかし、それだけではない。
ブーメランは僕に入れ替わった
当然、全てのツタが切り裂かれた訳ではないが、ライフルを持つ右手を縛るツタは切られた。
「道理さん!!」
「こんなに銃弾を浴びたんだ、流石にダウンしたでしょ。」
『スキだ............』
「え........?」
「攻撃......床です!?」
刹那、家が揺れた。
――――――
..........痛い。
頭から足まで、全身に鈍い痛みが走っている。
....アルターちゃんは無事だろうか。
『道連レだよ....君たちも。』
「..........死なせる訳には行かないんですよ....!!」
アルターちゃんの声が聞こえる。
『マダ君は生きていたか....』
「道理さん..!道理さん..ッ!!」
『俺モそノまま死ぬトしよう....だが、君はどうしようか。』
「くっ....流石にもうダメ....!!」
『君タチに頼んだのは俺ノ消滅だった..なノに、道理ちゃん。君は何と言ったか。』
「――――――」
『....共存した所で、君ノような人間はそういない。十三歳になって悟ったコとだよ。』
「――――――」
『分かってクレる優しい人間はほんノ一握り。そんな優しい君を頼った結果がコれだよ。』
「――――――」
『..期待が外れた、と言おう。そんな君に何か一つ、別れの言葉を聞かせてくれないか?』
「――――僕と..死ねると思わないで....ッ!」
『......そうかい、それじゃあ..「まだ終わってないよ、文句はまだあるんだよね......ッ!」........じゃあ、言ってみて?』
「十三歳になるということは....ずっと前からいたんでしょ......?なら、なんで....」
『........ナンで?』
「なんで....ずっと、何も頼ってくれなかったんだっ......!なんで、なんで....」
『....頼ったところで、大事な友達が減るかもシレないじゃないカ。』
「そんなに....そんなに僕は頼りなかったかっ!そんなに友達は信じられないかっ!
なんで....そんなに....これ以上友達を求めるんだっ!」
『......』
「友達は....数じゃないんだよ。」
『....じゃア、質か?』
「そうだよ....僕は君ぐらいしか素を出せる友達がいない....」
『素、か。』
「冷たくて、辛辣な僕を出せるのは君しかいないんだ....。」
『こんな酷い人格を持つ人にしか素を出せないなんて..』
「”にしか”でいいんだよ....僕は、君の..君達の返しが欲しいんだ。」
『こんな変な奴に....』
「変な奴は、普通とは違って楽しいよ。」
『そっか....』
「それに、勘違いしてるかもだけど....君だって、柚木と変わらないよ。」
『変わら......ない。』
「ねえ、最後に教えて。
君の名前は何と言う..の?」
『......ゆ、ゆめ....
....
「僕の名前は..
『み、みちりちゃん....』
「....友達は、これで足りないかな....?」
「..あの!私もいるんですけど!」
『まほう少女ちゃん....』
「アルターちゃんって呼んでください!..ここにも、いますよ。他の人たちとは違う者が。」
『..う..う、うわぁぁぁん!!ごめん、ごめんなさい!もっと、早く信じるべきだった!う..わぁん』
「全くもう。遅いんじゃないかな?」
「でも道理さん、貴方柚芽ちゃんのこと知らなかったんじゃ....」
「....そんなことないよ!!」
「嘘つけ!」
『ぅぅ、わふふ、ふふ....!』
「すっかり、元気になりましたね。」
『ありがとう、道理ちゃん、アルちゃん。もう、大丈夫だよ。
君達がいるから、僕も彼も、信じれる....』
「そっか......。なら今はそのまま..ゆっくり、おやすみ。」
『うん......』
そういって彼..いや、彼女..朝倉 柚芽は眠りについた。
僕も、そろそろ身体の限界が近づいてきた。
ゆっくり、目を閉じるとしよう。
――――――
あれからの話をしよう。
彼女と彼、朝倉の苗字を持つ二人はあれから存在をしっかり認知し、姉と弟のような状態になった。
壊れた家は前の時と同じように補填された。とても仕事が早い。
学校にも問題なく来ている。(柚芽は滅多に出てこないが)
柚木と柚芽は心の中でいつでも会話が出来るらしく、記憶も共有しているらしい。
そして今現在。
「なんて美味しいんだろう!モチモチしてて、噛むたびに味が出る!」
「そうかそうか!!そいつは良かったぜ!!なんせそれは俺の自信作だからな!!」
「杉田さん..ほんとにいいんですか?全部無料なんて..じゅるり。」
「当然じゃないか!プレミアム会員にさせてくれないならこっちから無料にするまでだ。」
「あんたすごいな....二人とも、抑えてね?」
僕らはマストリング・ドーナツでアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「あぁあぁ三十個近くあったドーナツのタワーが解体されていってる....」
「良い食いっぷりで俺も嬉しいよ、..金銭面以外は」
「馬鹿....」
いくら社長でもやはりこれだけ食べられると困るのだろうか?
「そういえば、杉田さんはもう大丈夫なんですか?」
「ストレスのことか?それはもう大丈夫だ。
十分休めた..精神も生まれ変われたよ。」
「本当に良かったです。自分の運とも向き合えますね?」
「当然だ!それに見てみろ、これ。」
「....!!SSRを四枚抜き..!?」
「....どや?」
「二人ともー!杉田さんがもっとドーナツ食べていいってー!」
「ちょっとそれは勘弁してほしいかな!?」
マストリング・ドーナツ本店は今日も平和です。