こ、これがエーテリアス化か……(違う) 作:エーテル「何それ知らん、怖っ。」
共生ホロウ。
それは新エリー都と切っても切り離すことが出来ない超自然災害……ドーム状の空間の中は無秩序とエネルギーであるエーテルに満ちており、右へ行けば上へ、左に行けば地下深くへ行ってしまう事も珍しくない、まさに災害である。
オマケにホロウの中にはエーテリアスと言う化け物もうようよ居るわ、ホロウの中に長時間居続けたらエーテル適正のない人間はエーテリアスになってしまう。
巻き込まれたら結構な確率で死ぬかもしれない、そんな災害だ……そして、俺は現在進行系でその災害の危機にさらされている。
そう……俺こと、
「あぁ、くっそ……」
……まさかバイト帰りに適当に寄り道した公園でホロウが起こるとはな……オマケに……
「や、やべぇよ!?ここホロウ」
「すっげぇ初めて見た!!」
……公園で遊んでた推定小学生の男児二人と一緒。
自動的に最年長になっちまう……マジで無理だ……こちとら叔父の経営してる喫茶店の手伝いしてるだけのフリーターだぞ。
「……ガキのお守りはゴメンだぜ。マジで。」
俺は誰にも聞こえないような音量で呟いてしまう……本当に荷が重いんだよ。子供の重りとか。俺は純然たる完璧で幸福な一般市民、ホロウの地図たるキャロットなんて物はもってないんだ。
……だが、ガキ共は初めて見るホロウにある種の好奇心を持っているらしい。何故だか目を輝かせて辺りを見て回っている……悪ガキがぁ、相当ヤベェ状況なんだぞコレ。
「おい!あんま動き回んな!変な所に飛ばされるぞ!」
「すっげぇなここ!」
「なんか光ってらあ!」
俺が呼びかけても声は耳に入っていない様だ……つか、胆力すげぇな最近の子供。
……ホロウ内は、本当に何の拍子で何処にどうワープするかも分からない。そこん所分かってるのかと聞きたくなる……まぁ、ガキに問い詰めるような野暮な真似はしませんよ、大人!!……ですから。
そんな事もあるから、ホロウに入ったら取り敢えず出口を探すよりもその場でじっとしている方が得策だ。ソッチのほうが、ホロウ調査員や治安官に見つかりやすくなると教わってきた。
まぁ、見た所近くのエーテル結晶に夢中みたいだから良いか……これで変な所飛ばされたら俺まで探しに行かなくちゃならない……それは嫌だ。
「ったく、ガキは気楽で……?」
次の瞬間、カチャリカチャリと妙な足音が聞こえる……確かにこちらに近づいている、足音に思える……ホロウ調査員か、治安官だろうか?
だとしたら有り難い、助けが来たということにほかならないのだから……
流石にガキ共も気付いたようで、振り返り足音へと駆け寄る。
「おっ!助けが来たみたいだ!」
「もうちょっと見てたかったけど……早めに助けが来てくれたのは良かったな!」
「お、おおい!」
俺が呼び止めても聞く耳を持たない……俺の事は完全無視か……そう思っていると、ガキの一人が俺を見て声を掛ける。
「あ、おじさん!居たのか。来なくて良いのか?助けが来たんだぞ?」
「何度も呼んだのに気づかなかったのかよ……大体俺はまだ20にもなってな――」
俺は呆れ気味に頭を掻きながら前を観る……すると、ガキの行った先にある物陰から人影が現れる――いや、人影と言うには、あまりに人の姿を成していなかった。
岩のように、結晶の様にゴツゴツした体表。顔面はブラックホールのような吸い込まれそうなほど真っ黒の球体……片手は全てを断てそうな程の大剣が、もう片方にはあらゆる技を跳ね返しそうな盾が備わっていた。
――そう、あれがエーテリアス。ホロウに住む化け物……前にホロウ対策本で見た事がある……あの種名は――デュラハン。そう、デュラハンだ。
……それだけ分かれば後は咄嗟だ。俺は先まで鬱陶しかったはずのガキ共に向かって一直線に走り出していた。
別にあのまま逃げてもよかったんじゃ?なんて……黒い考えもよぎってくる。一瞬そうしようかとも考えた。
俺は善人じゃないからな。助かるためならガキだって見殺しにしたって構わないと思ってた。
だけど、違う……俺ぁガキは嫌いだ……けどな、子供二人助けようとする度量も見せらんねぇ様な奴になるのは、死んでもゴメンだ。
「下がれっ!」
「うわっ!?」
「ひっ!?」
俺は二人のガキの襟を掴んで、思いっきり引き寄せて後ろへと下がらせる。ガキは俺の方を振り向いていたせいで、俺がそうした事で初めてデュラハンが来たことに気付いたようだった。
「え、エーテリアス……?」
「で……出たぁ……」
「良いから逃げて隠れろ!!死ぬぞ!」
俺は、もはやほぼ何も考えずにデュラハンの前に出る……何をやってるんだ俺は。相手は上級とも言われるエーテリアス。相対する俺は唯のパンピー。
……戦う術なんか知らない、俺ぁ治安官気取ってんのか?馬鹿らしい。
けど……このまま逃げたとしても同じ事。せめて、適当な場所に移させれば……なんとか、俺ごと穴に入って逃がす位は……
そうでなくても、このまま逃げ続けていたら上手いこと調査員か治安官が助けに来てくれないかなと願ってしまう。現実、そううまくいくかは分からないが……
「―――!!
「あぶねっ!!」
俺はデュラハンの剣を間一髪で避ける……とんでもないスピードだ。どんな腕力してるんだ?このままだと確実にお陀仏だ。
せめて……何処かに、別の場所に繋がる道は無いのか?――そんな事を考えながら俺はデュラハンの攻撃を只管走って避ける……だが、すぐに壁を背にすることになって終わってしまう。
「いや、早えよ……流石エーテリアスだな。本当に元人間か?」
最早軽口を言葉にするのすら滑稽に思えて来た……少し離れた所から、デュラハンは大剣を引きずってやってくる。
「くっそ……まだ時間稼げるか?……」
俺はなんとか動こうとするが……駄目だな。腰が引けてる、足もガクブルだ……やべぇ、動こうと思っても身体が言う事を聞かねぇ。
……あぁ、もうぶっちゃけます!怖い!滅茶苦茶怖い!調査員とかホロウレイダーとかなんでこんなの相手にしようとか思えるんだよ!?キ◯ガイか!?俺今漏らしてねぇかすっげぇ心配なんですけれど!?
……駄目だ、いくら頭で明るく振る舞っても怖いのが拭いきれねぇ。
だが、そんな俺の目にも逆転の目が映った。
ほんの一瞬、ほんの一瞬だが……目の前のデュラハンの後ろに歪みが見えた、あれが……『道』だろうか?
……助かる可能性が見えてきた。あの歪みにデュラハンを上手いこと落っことしてやれば……まぁ、出来なかったら皆仲良く死ぬだけだが……
だが、突き落とすくらいなら俺でも出来るかもしれない。全力でタックルしてやれば或いは……俺の助かる道も見えてきた……
そう考えたら自然と足の震えも収まってくる……よし、行ける――――
そう思った矢先だった。
パリッ……嫌な音が俺の腕から響いてきた。
俺なその音を聞いて、恐る恐る右腕を見てみる……すると、そこにはさっきまで生えていなかった小さな結晶が、まるで鱗のように生えてきていた。
「……はっ?」
……知っている。なんども本で見た……『ホロウに長く滞在したものは、身体から結晶が浮き出て――最後には、エーテリアスと成り果てる。』
……俺は今すぐ苛立ちと共に何かに当たりたい気分だった。折角……可能性が低くとも、助かる可能性が出てきたのに……
どうやら、俺のエーテル適正は普通の人よりも低かったらしい………けどなぁ……侵蝕症状も起きずにエーテリアス化なんてふざけてるだろ!?警告くらいしろよ馬鹿ぁ!!!嗚呼、クソッタレ。死ね、神。くたばれ、神……あぁ……糞が糞が糞が糞が糞が糞が糞が糞がぁ!!!!
兎に角俺は心と頭の中で世の中の不平等さに只管に石を投げる。暴言を吐き捨てる……だが……まだだ。まだ俺には『理性』はある。
(ガキは……まだ隠れたままか。)
……ならよぉ……せめて、せめて目の前のデュラハン位追っ払って見せようじゃねぇか。
何がデュラハンだよ、気取った名前しやがって……舐めてゆっくり歩いてきやがって…………お陰で脳の整理がついちまったじゃねぇか!!!
全力でタックルすれば、斬られながらでも或いは……
「……南無三。」
俺は来世はもっとマシな人生歩めますようにと願いを込めて呟く。
俺はゆったりと歩くデュラハンを見据えて……次の瞬間、地面を思いっきり踏みしめて、駆け出す。
「ッッッッ!!!!!」
俺は全力で目の前のエーテリアスに自身の重荷をぶつけてやろうと突進する……だが、エーテリアスはそんなに優しい物でもなかった。
「――――!」
「……えっ?」
次の瞬間、まるで瞬間移動のように俺の目の前までデュラハンは移動して、俺の腹をその足で蹴り貫いて、後方へと叩きつける。
「ぐがっ――」
……腹を蹴りつけられ、壁に叩きつけられた俺は、うめき声にもならないような声を上げて、壁にもたれかかる。
(……使えよ、ソレ……始めっから……期待させんなよ……)
俺は心の底からそう思う。はなから希望とか期待とか、持たせないでくれ。頼むから。
衝撃で砕けた瓦礫が俺の体を打ちつけてくるが……もはや、当たってる感覚すら無い。首も若干据わってるか怪しい……腹は、解んないけど多分潰れてる。
アドレナリンドバドバだからかな、クソ痛いけど叫ぶほどじゃない。……叫ばないのは良かった。ガキに変なトラウマは植え付けるもんじゃないからな。
俺はかろうじて動く眼球を移動させて、目の前のエーテリアスを……デュラハンを見る。すでにその大剣を引きずり、俺に対してぶつけようとする気概が見て取れる。
……ここまでかな。俺、パンピーにしては良くやったろ?皆そう思うと思う。
それに何より、こんなフリーターが一人死んだ所で、誰も世の中にもどんな意味ももたらさないだろう?そんな俺が少しでも抗えたんだ、満足だよ。
俺の家族は皆ホロウの中で逝っちまった。エーテリアスになっちまった、俺が風邪で寝込んで……皆が買い物に行った時にホロウに巻き込まれてた。
おめおめと生き長らえた俺には……お誂え向きな場所だ。俺は、本当は家族と一緒にホロウに放り出されて死ぬ運命だったのかもな。
……家族亡くしたのを引き取ってくれた叔父さんにゃ悪いが……まぁ、あの人は確りしてるし、悲しんでくれるが……すぐ立ち直ってくれるだろうからな。それだけで十分さ。
ダチ達は……まぁ、俺の他にもダチなんてたくさん居るだろ、あいつら。
マッポのセスさんは泣きわめきそうだな、あの人正義感強いし、なんで助けられなかったんだって……是非とも見てみたい。
アキラは……ビデオ屋のアキラは大丈夫か。アイツぜってぇ女遊びしてるし……そう言う顔してるもん、可愛い妹と居るし、イケメンは羨ましいぜハハッ。
叔父さんの店に来るライカンさんとかは……まぁ、叔父さんのコーヒー目当てだけど、悲しんでくれたら少し嬉しいな。
……なんて、俺が下らない妄言で気ををそらしている合間にも、腕が、エーテル結晶に包まれていく……俺が、俺じゃなくなっていくのを感じる。
だが、俺が俺じゃなくなるのを待つよりも前に、エーテリアスは俺にその刃を振り下ろしてくる。やけにその剣はスローに見えた。
ここまでだな。
――く、苦しい……嫌だっ!!――
何もがいてんだよ……
――俺じゃなくなる……嫌だ!!――
いい加減諦めろよ。
――諦めてたまるか!!――
もう良いじゃあねぇか。
――死んでたまるか!!――
もう良いって。
――良く、ねぇ!!――
――俺は……――
―俺は……!!―
俺は……!!!
俺はッ!!
「ッ!!俺はまだ人間でいたいんだッ!!!」
全身の力を使って出した最後の一声……泣き言は言わねぇと決めたはずなのに、口から出てしまった。そして身体を動かしてしまった、無理だと分かってても剣を止めようと手を伸ばしてしまった。
次の瞬間、俺は確かに
砕かれた結晶が雨のように落ちる中、振り下ろされたエーテリアスの刃を掴み受け止めている、確かな俺のもう一本の緑色の、やけに生物的な、生々しい腕を。
その緑色の腕と、伸ばした俺の腕が重なると、俺は自分の身体が
受け止めたデュラハンの刃に映る俺は――目の前のエーテリアスとは全く違う、異形の者が立ちはだかっていた。
全身緑の生物感溢れる姿、赤い複眼、額には黄色のシグナル。短い二本の角。腰に巻かれた金のベルト―――少なくとも、この姿を見て人だと思う者は、居ない。
「こ、これがエーテリアス化?」
ハッキリとしているのは、今ここに俺が……ツガワ・リョウと言う俺が、ここに居る事だけである。
名前の由来は
『津上翔一』+『氷川誠』+『葦原涼』
――アギト、いや、ギルスか。珍しいな。
ギルス滅茶苦茶格好いいからね、仕方がないね。
変身シーンはG4の映画でしたみたいに、ギルスがスタンドみたいな感じで現れて重なるイメージで。あの変身本当好き。