実力至上の学校に入学しました(いいタイトルが浮かばないので仮題) 作:シュンちゃん
いい感じに時間が経ち、今は教室に向かっている。廊下を歩きながら他の教室に目を向ける。そこには既に登校してきた俺と同じ新入生達が新しい仲間と親交を深めているようだった。そしてそれは我がDクラスも同じで、今日初めて会う人間だけにも関わらず既にいくつかのグループが出来上がっていた。それだけなら何処の学校とも変わらない普通の光景だった。天井に設置されたアレが無ければだけど。
俺の席は真ん中列の後ろの方で1個前に女の子が座っている。どうやら男女でごっちゃ、名前順とかでも無いらしい。わっけ分かんねぇな。まぁまずは近隣住民から仲良くしましょうか。
「はじめまして。飛鳥巡です。よろしくね」
1個前ちゃん(仮)の前に出て声を掛ける。
「...?」
ぼーっとしていたのか、焦点のあまり定まらない瞳でこちらを見上げる。うわっ、何この子可愛いくない?こんな子街にいたら皆振り向いちゃうね。
「飛鳥巡です。よろしくね」
もう1回名前を言う。
「あっ...佐倉...愛里です...」
「佐倉さんね、よろしく」
「ひゃっ!?」
机の上に載せていた手を掴んで握手をしたが、何も言わず握ったことに驚いたのか手を振り払われてしまった。
「ああごめんねいきなり握っちゃって」
「いえ...すいません...」
そしてそのまま下を向いてしまった。せっかく可愛いんだから顔上げとけばいいのに。ちょうどそのタイミングで明らかに学生と違う、スーツ姿の女性が教室に入ってきた。
「新入生諸君、私がDクラス担任の茶柱佐枝だ。担当教科は日本史。初めに言っておくが、この学校には学年ごとのクラス替えは存在せず、卒業までの三年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。今から一時間後に入学式があるがその前に、この学校に設けられている特殊ルールについて書かれた資料を配る。もっとも、以前入学案内と合わせて配布してあるがな」
佐倉さんから回ってきたプリントを受け取る。そこに書いてあるのは見覚えのあるプリント。記憶と照らし合わせても一言一句違いは無い。
全生徒寮生活の強制。例外を除き外部との接触を禁止、敷地から出るのも禁止という校則だ。代わりにこの学校の敷地内には様々な施設が存在している。カラオケ、シアタールーム、カフェ、ブティックなどがある。3年所か一生でも居られるような環境だ。しかし、この学校の敷地内で日本の通貨『円』は使用出来ない。ではどうするのかと言うと。
「今から配る学生証カード、それを使えば敷地内の全ての施設を利用することが出来る。勿論、売店などで商品を購入することも可能だ。端的に言えばクレジットカード、電子マネーのようなものだな。ただし消費されるのは現金ではなく、この学校内でのみ流通しているポイントだ。この学校においてポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能だ」
このポイントがこの箱庭内の通貨となる。無償で配られるので恐らく国民の血税だろう。
「施設では機械に学生証を通すか、あるいは提示することで使用できる。それからポイントは毎月一日に生徒全員に自動的に振り込まれることになっている。お前たちには既に一人十万ポイントが支給されているはずだ。尚、このポイントは一ポイントあたり一円の価値がある。分かりやすくていいな?」
えーつまり俺たち新入生には一律で10万円配られたって事ね。教室内もザワつく。そりゃただの高校生になったばかりの子供にポンと10万渡してるんだ。ざわつかない方がおかしいってもんだ。
「支給額に驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たした時点で、お前たちにはそれだけの価値と可能性があると学校側は判断した。それはお前たちに対する評価の表れだ。遠慮なく使え。ただし、ポイントは卒業後には全て学校側が回収する。現金化などは不可能だから貯め込んでいても得にはならんぞ。ポイントはどのように使おうがお前たちの自由だ。仮に必要ないと言うのであれば誰かに譲渡してもいい。だがカツアゲのような真似はするなよ? 学校はその手の問題に厳しくに対処する」
大事な事いっぱい言ってるな、価値と可能性。評価の表れ。現金化不可。つまり貰える額はその評価とやらで上下するのか。流石に0にはならないよな?
「質問は無いようだな。では、よい学生ライフを送ってくれたまえ」
そう締めくくると茶柱先生は教室から出ていった。しばらく驚きを隠せないでいるクラスメイトたちを眺めていると、
「皆、少し聞いて貰ってもいいかな?」
と1人の男子が声を上げた。
「僕らは今日から同じクラスで過ごす仲間だ。今から自発的に自己紹介でもして一日でも早く皆が仲良くなれれば思うんだ。入学式までまだ時間もあるし、どうかな?」
自己紹介大事。第一印象はここで決まるだろう。下手なことは出来ないから真面目にやろう。
「さんせー! 私たち、まだみんなの名前も全然わかんないし」
ギャルっぽい女子も賛同し、そのまま自己紹介の流れになっていく。
「じゃあ言い出しっぺの僕から。僕は平田洋介。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きかな。気軽に洋介って呼んでほしい。よろしく」
サッカー少年平田の模範的過ぎる完璧な自己紹介。顔もよく面食い女子でも受けの良さそうな顔立ち。俺が女だったら惚れちゃうね。ポッ
その後は彼に続いて自己紹介が行われていく。緊張だったりウケ狙いだったり、人それぞれの自己紹介が繰り広げられていく。
「じゃあ次は私だねっ」
元気よく立ち上がって黒板前に出てくる。
「私は櫛田桔梗と言います。中学からの友達はこの学校にはいないので一人ぼっちです。早く名前と顔を覚えて、みんなとも友達になりたいなって思ってます。私の最初の目標は、ここにいる全員と仲良くなることです。皆の自己紹介が終わったら、ぜひ連絡先を交換して欲しいです。それから放課後や休日は色んな人とたくさん遊んで、多くの思い出を作りたいので、どんどん誘ってください。ちょっと長くなりましたが、以上で自己紹介を終わりますっ」
嘘だ。誰彼構わず友達になんてなれるわけが無い。絶対にウマが合わない人間はいるし、相容れない考えの人間はいるだろう。俺もきっとここで出来た友達と遊びに行く事はあるだろうが、この嘘つきとは遊びたくない。それにあの目。覚えがある。周りを見ているようで自分しか見ていない、おぞましい目。あの鷹岡が初めて俺たちの前に現れた時と似た目をしている。
まぁ、関わらないようにすればいいか。
「じゃあ次──」
平田が促すように次の生徒に視線を送ると、その生徒は洋介くんを睨みを返す。髪を真っ赤に染め、顔にシワを作り怒りを露わにしている。
「俺らはガキかよ。自己紹介なんてやる必要ねぇ、やりたい奴だけやってろ」
ガキはどっちだ。自己紹介も出来ないとか小学生以下だぞ。ばぶぅ。あの寺坂だって出来るんだぞ?名前も知らないでどう呼ぶんだ?クズとかでもいいのか?てかこいつも同じ試験を受けたんだよな?
「僕には強制する権利はない。でもクラスで仲良くしようとすることは決して悪いことじゃないと思うんだ。もし不愉快な思いをさせたのなら謝るよ」
そう言い頭を下げる平田。別にお前は悪くないだろ。悪いのはそっちのクズ(仮)だろ。
「自己紹介くらいいいじゃない」
「そうよそうよ」
平田はこの僅かな時間で多くの女子生徒を味方につけ、それと同時に嫉妬する男子生徒も多く生み出した。なんて罪な男だ。
「うっせぇ、こっちは別に仲良しごっこしに来たわけじゃねぇんだよ」
うるせぇ、こっちは不良ごっこ見に来たわけじゃねぇよ。
その言葉と共にクズ(仮)は教室から出ていく。それに続く様に何人かも教室から出ていった。なお、佐倉さんも出ていった。ぴえん。ていうか今出ていった人たちクラス替え3年間ないけどいいのか。おい、とかお前、とかで呼ばれる様になっちゃうぞ。それかあれか、反抗期ってやつか。反抗するなら親だけにしとけ、俺はあんまり反抗しなかったけど。いい子いい子。
「悪いのは彼らじゃなく、勝手にこの場を設けた僕が悪いんだ」
「そんな、平田君は何も悪くないよ。あんな人たち無視して続けよう?」
今のやり取りを見てどちらが悪いかアンケートを取ったら絶対平田は悪くないに票が集まる。それだけの人望が既に平田には出来ている。
その後も自己紹介は進み、特にインパクトがあったのは高円寺六助という男。日本の大企業のひとつである高円寺コンツェルンの跡取り息子だそうで、住む世界が最初から違う。で、彼は醜いものが嫌いだそうで、まぁ彼も気に障ることをしなければ大丈夫だろう。
「じゃあ次は君、お願いできるかな?」
さあついに来ました、俺の自己紹介のターンだ。行くZE!
「はじめまして、飛鳥巡です。2年前までアメリカにいました。趣味は絵を描くことです。多分美術部に入ると思います。よろしくお願いします」
なにかすると思った?残念、無難な感じで行きました。
「うん、よろしく。2年前までアメリカに居たにしては日本語上手だね」
「まぁ両親は家では日本語だったし、日本来てからも中学の先生にみっちりやってたからね。日常会話に問題ないかな」
などと当たり障りのないように返していく。
俺の後も自己紹介が続いていく。印象的だったのは「あー」とか「えー」とか言って情けなさを感じる自己紹介をした『綾小路清隆』という男子。目にも覇気が無く、何ともぬぼ〜っとした感じだ。
暫くして入学式が始まった。俺は日本の学校の入学式は初めてだったので少し楽しみにしていたのだが、大人たちの長話ばかりで退屈だった。しかも内容もコピペしたのかってくらい似たり寄ったりで、後半なんて真面目に聞いてる生徒などほとんどいないだろう。ふぁ...ねむぅ
そして面白いことも無く入学式が終わるのだった。
もっと話端折って噛み砕いて短く作りたいネ
佐倉の後ろに主人公を置いたので席順が変わるけど、あんま本篇に影響はない、はず