実力至上の学校に入学しました(いいタイトルが浮かばないので仮題) 作:シュンちゃん
皆さんどんな1年でしたか?
入学式も恙無く終え、放課後。教室では既にいくつかグループが出来ており、それぞれにこの箱庭での生活をエンジョイしようとしていた。カラオケやらショッピングやらゲームやら、早速貰った10万ポイントを散財しようという魂胆らしい。そんなクラスメイトを放って俺は1人職員室へ向かう。茶柱先生に聞きたいことがあるのだ。途中端末がバイブするがスルーした。
「茶柱せんせー居ますかー?」
「どうした、飛鳥」
茶柱先生に名前を呼ばれると、室内の人間のほぼ全員が俺を見た。いやん、はずかちい。
「ちょっと聞きたいことがいくつかあるので質問に来ました」
「ふむ、いいだろう。答えてやるが、場所を移動した方がいいか?」
「いえ、このままでいいですよ」
この視線を気にしてくれたのかな。優しい。惚れないけど。
「じゃあ早速、今朝先生は『ポイントで買えないものは無い』と仰ってましたね?」
「ああ、間違いない。この学校の敷地内にあるものは全てポイントで取引出来る」
「じゃあそれを踏まえて...『自宅にある私物を持ち込む権利』を売ってください」
「ほぅ...それは【物】でないだろう」
「確かに【権利】ですから【物】ではないですね。しかし、捉え方、解釈の仕方によっては【権利】も【物】だと思うんですよ。ほら、○○が『権利を持つ』みたいに言うじゃないですか。つまり【権利】も【所有『物』】だと思う訳ですよ」
「面白い考えだな。確かに校内では何かをする【権利】もポイントで取引されている。いいだろう。しかし内容が少し特殊だからな、上の者に掛け合って見よう。明日の朝には答えも帰ってくるはずだ。ポイントもその時でいい。ちなみに何を持ち込みたいんだ?」
「パソコン1式です。あれが無いと『仕事』が出来ないので」
「仕事?...ああそうか、お前は『仕事』もしていると言っていたな。それならそのことも含めて報告しておく。多分大丈夫だろう」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
パソコンが無いと話にならない。今の時代、なんでもかんでもデジタルだから、パソコンくらい持ってないと。
「話は以上か?」
「今のところは、はい、そうですね」
「ならば行きたまえ、お前も校内を見てみたくて仕方ないだろう。」
「あ、バレてます?」
「初めての場所だからな。誰でもソワソワするものだ。」
「じゃあ今日はこれで。さようなら」
「気をつけて帰れよ」
ちょっと冷たい雰囲気な人と思ったけどめっちゃ生徒思いのいい先生じゃん。椚ヶ丘の先生も見習って欲しいね。
その後はショッピングモールに移動。今朝リストアップしたものを探しに探索ついでにモール内をウロウロ歩き回る。どうやら大体の施設や飲食店はこのモール内に在るのがほとんどで、買い物するならここか、外にあったコンビニくらいだろうか。今回買いに来たのは生活用品だからそこまでバラけた店にある訳でもなく、2、3店くらいで買い揃えることが出来た。後は家電屋に寄って行こう。パソコン関連の機材がどれくらいあるか確認したい。
家電屋に来たが、うん、家電屋だった。モール内にパソコン関連を扱うのはここだけみたいだから期待していたが、ゲーミングやSSDやモニターなど周辺機器の数は少なく、店舗の奥の角っちょに押し込められていた。学生には敷居が高いのか、値段が高いのか、売上優先の店では仕方ない事だが、なんとも言えない気持ちだね。ここ、ネット通販とか出来ないかな。あ、カタログ置いてあるから貰ってこ。カタログの裏を見ると取り寄せはしてくれるみたい。じゃいいかな。
店を出ようとすると覚えのあるピンク髪の女子生徒の姿。佐倉さんがカメラコーナーに居た。
「こんにちは、佐倉さん」
「...ひぇ!?こ、こんにちは...」
やはり声をかけ慣れていないのか、緊張するのか、控えめな声で挨拶を返してくれる。挨拶出来て偉いね。
「佐倉さん、カメラ買うの?」
「え、えぇ...まぁ...はぃ...」
「て事は写真撮るんだ。人物?風景?」
「えと...風景を...」
「そっかぁ、夕日が入る廊下とか教室とか綺麗だもんね」
こういう手合いの相手をする時は基本否定をしないこと、相手の趣味に興味があるように見せること。そうすれば大体の人は乗っかってくれる。
「飛鳥君も写真、取るんですか?」
「いやぁ、写真も好きだけど俺は描く方かな。風景画とか」
俺がずっと続けている趣味。アメリカに居た時も、日本に来てからも、暗殺教室の中でも続けた趣味だ。
「良かったら今度描いたの見せてあげるよ。デジタル化して保存してるのがあるんだ」
「いいんですか?...なら私も...お気に入りの風景の写真を」
「おぉ!それ見てみたい!」
「私もデータ持ってるので、今度持ってきますね」
「いやぁ楽しみだなぁ」
「私も楽しみです...」
「じゃ俺は他に行くとこあるからもう行くね、バイバイ」
「は、はい。さようなら」
そうして俺は彼女を置いて家電屋から離れていく。
「...」
佐倉愛理に向けられたおぞましい視線に気づきながらも...
あれ、気持ち悪かったな。なんて言うか...鷹岡ほど邪悪ではないけど、とにかく気持ち悪い感じ。まぁ実害が出なきゃいいけど。そんなことよりご飯ご飯。佐倉さんと別れてからスーパーに行き、食料の買い込み。米なら炊いて冷凍すればいいし、麺みたいに茹でる手間が無い。麺の方が手軽って言う人もいるけどまぁそこは個人の好みだと思う。米の方が重いけど。
スーパーを散策していると気になるコーナーを見つけた。『無料コーナー』とな。これは貰うしかない。タダより安いものは無い。ということで上限の3コ分、野菜を頂いていく。うまうまうみゃうみゃ。
しかし無料か...ポイントがない生徒への救済措置だろうか。優秀な人間をーとか言ってるけど甘いんじゃないか?そういった苦難を乗り越えるのも実力だと思うけど。まぁ今は気にしなくていいか。出費を抑えるために使えるものは使わせて貰おう。という訳で会計して帰ります。
帰宅途中にコンビニを見つけたので、1度部屋に荷物を置いてそこに向かう。コンビニには地方限定とかコンビニ限定とか限定品がいっぱいあるからね。一応確認。中は普通のコンビニと変わらない内装をしているので、迷わずカップ麺コーナーへ。特に地方限定はないので、奥のジュースコーナーへ。そこでまさかの光景を見た。恐らく同じ新入生だろう、真新しい制服に身を包んだ女子がジュースを手に持ったまま周りを見渡しているではないか。俺は周りに気づかれないよう端末を操作しカメラを起動する。ま、まさか、やるのか?女子は肩に掛けたカバンにこっそりジュースを入れようとする。やるんだな!?今ここで!?しかしカバンの口を開けた瞬間に人が通り、女子は諦めたのかジュースを戻し、立ち去っていく。俺はその後を追ってコンビニを出る。だってよ、結構な美少女なんだぜ?コンビニを出て少し行った場所で声を掛ける。
「はーいそこの彼女」
「...」
「返事くらいして欲しいなぁ」
「...何あんた」
「1年Dクラスの飛鳥巡と言います」
「そっ。その飛鳥さんが私になんの用?」
「さっきコンビニで万引きしようとしてたね?」
「見てたの?でも盗ってないわよ」
「だとしても窃盗未遂だ。これは報告しないといけないよ」
盗ったか盗らなかったの問題じゃない。未遂でも捕まる事がある。この日本だって法治国家だ。盗らなかったで何もなしじゃ法もクソもない。
「証拠がないわ。口だけで信じられると思う?」
「ある。証拠くらい。ここに」
と先程撮影した映像を見せる。
「バッチリ映ってるわね。盗撮よ?」
「万引き犯を捕まえられるなら盗撮くらいするよ。それに、犯罪者を捕まえる為に必要なんだ、これくらい見逃してくれるさ」
端末をしまいながら続ける。
「でももし、俺のお願いを聞いてくれるならこの動画は消すし、報告もしないでおくよ」
「お願いって何?まさかいやらしいこと?」
後ずさる彼女。
「君の想像しているようなことじゃないよ。スケベさん」
「うっさい。だったらなんなのよ」
「なに、難しいもんじゃないさ。デッサンのモデルになって欲しいんだ」
こうして俺は入学初日に専属モデルを手に入れるのだった。ぶい。
新年跨いじゃったよ。
あけましておめでとうだよ。
年明け早々何やってんだよ...
よろしくお願いします。