実力至上の学校に入学しました(いいタイトルが浮かばないので仮題) 作:シュンちゃん
遂に迎えた水泳の授業、意気揚々と移動する男子と渋々といった感じで移動する女子。まるで正反対である。そりゃそうだ、堂々とセクハラ発言してる奴と水泳なんてしたくないだろう。俺だって嫌だ。
「なぁ、飛鳥って身体鍛えていたのか?」
「少しね。ある程度筋肉が必要な環境だったから」
「筋肉が要る環境...山奥にでもいたのか?」
「うーん、山といえば山だけど、そこまで奥じゃないかな」
なんだかんだ筋肉は大事だ。あの暗殺教室を通して、転入当時の身体ではとてもじゃないけど暗殺なんて出来はしない。烏丸さんの訓練で基礎として筋トレを行い、卒業までずっと続けていた。そのおかけで中高生の平均以上の筋肉が備わった。筋肉isパワー!ヤー!
「おぉ、かなり広いな」
綾小路と更衣室から出るとそこには50mのプールがあった。上には見学用のフロアとプールサイドにはビーチベッドまで設置されている。絶対授業で使わないだろ。
「うわ~、凄い広さ。中学の時より全然大きい~」
「き、来たぞ!?」
それから男子に続くように女子グループの感嘆の声と、池君の声が聞こえて来る。ここまで聞けばもう分かるだろう。彼が見たかった水着女子の登場だ。プールサイドに出てから綾小路は池らと話しているが、同類とは思われたくないので、1人寂しくストレッチを始める。その間に綾小路は池から女子と話しているようだった。彼女も水泳には参加するようだが、男子を見る目はゴミを見る目をしていた。というか殆どの女子はその目をしていた。ドMのご褒美かよ。
「よーし始めるぞ、お前ら集合しろー」
まさに体育会系と言ったようなマッチョのおっさんが声を上げる。その大きな体から出る声はよく通るらしく、バラバラに別れて話していたクラスメイト達が集合した。
「見学者は16人か……随分多いようだが、まあいいだろう」
普通に考えて多すぎだし、サボりだろう。主に男子のせいで。それでも「まぁいい」で済ませるのはやはりおかしい。が、咎めるつもりは無い。これが日本式の高校の授業と言われたらそれまでだし。
「綾小路は水泳得意か?」
隣に立った綾小路に話掛ける。
「人並み程度だ。飛鳥はどうなんだ?」
「自慢出来る程じゃないよ、同じく並程度」
「の割には楽しみそうだな」
「まぁね、ちゃんとしたプールは日本では初めてだから。ワクワクしてる」
「ちゃんとしてないプールってなんなんだ...」
川を塞き止めて1日かけて水を貯めた大自然のプールが懐かしいな。殺せんせーの自分ルールはウザかったのもいい思い出だ。
集まるのを確認してから先生がパンと手を叩いて話し始めた。
「お前らの実力を見たいから、準備体操が出来たら早速泳いでもらうぞ」
「先生、俺あんまり泳げないんすけど……」
1人の生徒が不安げに手を挙げる。
「大丈夫だ、俺が教える限り必ず泳げるようさせてやる」
「いや、別にいいですよ。無理して泳げるようにしてもらわなくても」
補習までして泳げるようになりたいという生徒は居ないだろう。ここじゃ海も無いし、プールだって行こうとしなければ泳ぎは必要ないからね。
「そうはいかん。今は泳げなくてもいいが、克服はさせる。泳げるようにしとけば必ず役に立つぞ? 必ず、だ」
という事はそのうち泳ぎに関する試験とかあるという事だろうか。まあ泳げる者は問題ないだろう。ま、教師として泳げるようにしてやりたいって気持ちがあるのだろう。それから準備体操を終え、50mを流しで泳いだ。泳ぎ切れない生徒は底に足をつけても構わないらしい。このプール、深いっ!
「とりあえず殆どの者が泳げるようだな。では早速競争を行う。男女別50m自由形だ」
初回からいきなり競争か。実力を見るにはちょうどいいのかもしれない。
「1位になった生徒には、俺から特別ボーナスで5000ポイントを支給しよう。逆に一番遅かった奴は補習だから覚悟しとけよ」
ポイントで歓喜が上がりそうになったが、補習が出て来てブーイングが少し生まれた。どうやらとにかく泳げるようにしたいらしい。
「女子は人数が少ないから、5人を2組に分けて、一番タイムの早かった生徒の優勝にする。男子はタイムの早かった上位5人で決勝をやる」
競争に参加するのは見学者を除いた、男子が16人、女子が10人。まずは女子からスタートということで、男子たちはウキウキ気分でプールサイドに座り込み、女子を応援……品定めする。俺は後ろに座っているので見えないが、男子共はキモイ目で見ているだろう。あぁ、キモチワルイ...
女子のレースは水泳部所属の子が1位になった。2位とは大差にはならなかったが、水泳部としての意地は守れたようだ。女子が終わったので次は男子の番になる。俺は泳ぎはそこまで得意ではないので手を抜いて泳ごう。
泳ぎました、手を抜いて。なのに決勝に出る羽目になってしまった。クロールよりバタフライのほうが遅くなるって聞いたことがあったからバタフライで泳いだが勝ってしまった。いえい。
「24秒...だいぶ落ちたな」
「何言ってる、バタフライで24秒なら全然速いほうだぞ」
ちゃんとプールで泳いだのは2年ぶりだし、その間に筋肉とかかなりつけちゃったもんだから抵抗が大きくなってしまったのを実感した。
「昔はもっと速かったんですけどね」
なんて先生に適当に相槌をし、プールサイドを歩く。
「次は本気で泳ぎたまえ、ジーニアスボーイ」
そう声を掛けてきたのはDクラスの自由人、高円寺六助。23秒22で泳ぐポテンシャルの塊。
「俺のこと知ってるんだ?」
「君は自分がどれだけ有名か自覚したほうがいい。知らない人間のほうがおかしいというものさ」
「普通じゃないってことくらい自覚しているさ。だから普通を演じている」
「だとしたらとんだ大根役者だねぇ」
慣れないことをしてるってわかってる。
「挑発なら乗らないよ、でもご要望通り本気で泳いであげるよ」
「ではこれより、男子決勝を行う」
それぞれのレーンに俺や高円寺を含めた5人が並ぶ。
「まさか君の様な有名人がいるとは思わなかったよ。しかしわからないな、なぜ実力を隠す?」
「隠しているわけじゃない、機会がないだけだよ」
「ならここでその一端でも見せてもらおうじゃないか」
結果、勝ってしまった。
「はっはっはっは!完敗だねぇ!」
高らかに笑う高円寺。と俺を除いた全員が呆然としている。
「22秒9...」
その原因は俺の記録。水泳部、どころか運動部にすら所属していない野郎がたたき出した記録にまず先生が。そしてその記録を聞いた女子で最速だった子が。そしてその子からどれだけ速いか聞かされた皆が、言葉を失っていった。
「なぁ飛鳥、水泳部に入らないか?」
それさっきヤンキー君にも言ってましたよね?
「興味ないですし、もう美術部に入ってます」
「だが、なぁ...」
「この学校、生徒の自主性を重んじているんでしょ?部活まで強制しないでくださいよ」
「あ、ああ、すまない」
「あとポイントもちゃんともらいますから」
「わかっている。授業後に送っておく」
「今回は負けてしまったが、潔く負けを受け入れられる程、私は大人ではないのでね、リベンジさせてもらおう」
そう言って高円寺は更衣室に入っていった。授業はもう終わるが、せめてチャイムまで待てないのか。流石自由人。
教室に戻ったあたりから正気に戻ったのか、クラスメイト達から質問攻めにあったのはいい迷惑だった。あと5000ポイントはちょっと嬉しかった。ぶい。
この日以来、須藤にはさらに敵視され、女子からはこっそり株があがったり。