呪詛返シ請負人   作:とも667

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 決着の時だ。


始まりの終わり

如月が、エレベーターから出て周りを見渡す。真っ白な通路に蛍光灯があるだけの、殺風景な通路。

 

「あの時は見てなかったが……こうして改めて見ると、目に悪い通路だな」

 

 ──カツ、カツ、カツ。

 

 耳が痛くなりそうな程の静寂に、靴の音がよく響く。如月は辺りを見回しながら、どんどん進んでいっている。しばらくすると、如月の目に見覚えのある牢屋が飛び込んできた。

 

「まだ人が囚われてるだろう。出してあげないとな……」

 

「あぁ、そこの人……お願いです、助けてください!!」

 

「やはり囚われてるか……今出してあげますからね」

 

 カードキーを専用のタッチパネルにかざす。すると、ドアのロックが解除された。牢屋からその人が出てくる。

 

 ──ガチャン。

 

「ありがとうございます、もう限界で……!!」

 

「よく頑張ってくれました。他の人たちも出してあげましょう」

 

「お願いします、みんな死にかけていて……!!」

 

 そう言われて、如月が他の牢屋に歩いていこうとすると。突然、スピーカーから声が発された。

 

『あー、聞こえていますか? 田中さん、速やかに牢屋に戻りなさい。繰り返します、速やかに牢屋に戻りなさい』

 

「ひ、ひぃっ!! 如月所長!!」

 

「出やがったな、クソ野郎共の元締め!!」

 

 如月がそう言うと、スピーカーから驚いたような声がした。

 

『お前は……あぁ、出来損ないの息子? すっかり忘れてたわ、お前のこと……久しぶりね。なんの用?』

 

「簡単なことだ。お前達を殺しに来たんだよ……!!」

 

『殺す? 職員の次は肉親殺し? お前、落ちるところまで落ちたな』

 

 自分達のことを棚に上げて非難され、如月はどうしようもない程の怒りに襲われた。如月は怒りと憎しみを、言葉に乗せて叫ぶ。

 

「肉親殺しを非難するとは……お前だって俺を使い潰して殺そうとしたくせに、よく言えたものだな!!」

 

『馬鹿らしい。いい? 価値のある者と価値のない者がこの世にはいるの。お前も、そこにいる奴も障害者なのよ。そして、私は健常者……ここまで稼げてるんだから間違いない。下等生物は私たちに奉仕することでのみ、生きることを許されるのよ』

 

「ふざけるな!! お前らみたいな真の悪魔が、健常者であってたまるか!! この犯罪者集団が!!」

 

 如月は所長の非難を続けているが、所長はため息をついている。全く応えていないようだ……

 

『はぁ、障害者にこっちの話をしたのが馬鹿だったわね。いいわ、私を殺したいならここまで来てみなさい。そうすれば正当防衛で殺せるでしょう?』

 

「上等だ、覚悟しろ!! クソッタレが!!」

 

「ど、どうするんですか!? あんなこと言って、本当に殺されちゃいますよ!?」

 

 田中が、如月に必死で警告する。所長の危険性を自分で味わって、知っているからだ。しかし、如月はそれを田中よりも強く知っていた。

 

「大丈夫です。俺はあいつの息子ですから……ケジメは俺がつけますよ。これを」

 

「えっ、これは……」

 

「みんなを出してあげて、早く逃げてください。ここにいると危険です、何をしてくるかわからない……構造も変わってるかもしれないし、まだあなたの方が詳しいかと思いまして」

 

 そう言って、如月は前に進む。田中はその背中を見つめることしかできない。

 

「……分かりました。あとはお願いします、如月さん」

 

「任せてください。行ってきます」

 

「おーい、誰か助けてくれぇ……」

 

 その声の方向に、田中は走っていった。そして如月が全力で叫ぶ。

 

「クソ親ァァァァ!! 俺はここだぞ、俺を狙えッ!!! 殺せるもんなら殺してみろォ!!!」

 

 ──ガチャッ。

 

 如月が警戒を最大まで高めた瞬間、立っていた部分の床が抜けた。それを躱すと、後ろから銃を持ったアームが発砲してくる。

 

 ──バンッ!!

 

 ──カヒュンッ!!

 

「これくらいはしてくるよな……だが!! 甘いぞ!!」

 

 如月は銃の射線に入らないようにしながら、着実に前に進んでいく。どうしても射線に入ってしまった時は、アームをよく見て横に跳んで躱す。多少の掠りは問題ない、如月にとっては許容範囲だ。銃弾が見当外れの方向に飛んでいき、壁に当たって反射し……止まった。如月は注意を自分に向けるために、挑発を続ける。

 

「どうした!? こんなものか、クソ野郎!! もっと本気出してこいよ、それともこれで限界なのか!?」

 

『……生意気なクソガキが、調子に乗るなよ!! そんなにお望みなら、喰らえ!!』

 

「それでいい……!!」

 

 ──ガチャン!!

 

 武器が次々に降りてくる。アームには銃だけではなく、チェーンソーや火炎放射器といった危険な兵器が握られている。それらが全て、如月に牙を剥く。

 

「躱しながら進んでやるさ、こんなもの!!」

 

『いつまでそう言っていられるかな!!』

 

「ッ、挟み撃ちか!!」

 

 銃に挟まれた。普通なら、このまま撃ち殺されるところだが……復讐を誓った如月は、誰よりも強い。フックをかけたロープを、アームに投げつけて……撃たれる直前に、方向を無理やり曲げた。

 

「ぬぅあぁぁぁっ!!」

 

『なにっ!? しまった……!!』

 

 ──バンッ!!

 

 ──バギャア!!

 

「銃はもらっていくぜ?」

 

 火を吹いた銃が、もう一方のアームをへし折って叩き落とした。しかし、如月が前に進もうとすると目の前の道の床が落ちて、大きな穴になってしまった。所長が高笑いしている。

 

 ──ガコンッ!!

 

「これは……!!」

 

『ハハハ、残念だったな!! これなら通れまい!!』

 

「このくらい、通り抜けてやるさ!!」

 

 そう言って如月は、折り畳み梯子を取り出した。如月はそれを立てて、その上に登る。

 

『どうした、それを横にしても前には進めんぞ!?』

 

「知ってるさ、だから、こうするんだよ!!」

 

『な、なにっ!?』

 

 梯子から如月はロープを投げて、片方のフックを梯子に固定する。そして如月は、ロープを滑り降りた。

 

「ざっとこんなもんだ。言っただろ、甘いってな」

 

『ぬううううっ……調子に乗るなよォ!!!』

 

「今度は……うぉっと!?」

 

 ──ズダァァァン!!!

 

 如月がさっきまでいた場所に、針付きの天井が降ってきた。それが高速で戻って、また落ちてくる。目の前の道を、天井が塞いでいるのだ。天井と天井の間に空間も用意されていない……

 

『クソ!! 運の良いやつめ……!! しかし、これならどうにもできまい!?』

 

「いや、墓穴を掘ったな」

 

『なんだとォォ!?』

 

 如月は所長の怒声を聞きながら、銃を両手で前に出して、しっかりと構えた。狙うは天井が落ちてきた一瞬。

 

「……当たれ!!」

 

 ──パァンッ!!

 

 ──カヒュンッ!!

 

『ワハハハ、何をやっている!? ハズレだぞ!!』

 

「なら、当たるまでやるだけだ!!」

 

 ──バンッ!!

 

 ──バキィィッ!!

 

 如月はもう一度同じように構え直して、発砲。今度は命中して、針天井が戻らなくなる。如月は針天井の鎖を撃ち抜いたのだ。

 

『なんだと……!? い、いや!! まだ二つあるぞ、撃つのは相応に難しいはずだ!!』

 

「甘いな。さっきは位置の都合上、ある程度離れて撃つ必要があったが……針天井に登れば、近くで撃てる!!」

 

『し、しまった……!! 針天井を撃ち抜くなんてことを、どうしてやったのか気になっていたが……そういうことか!!』

 

 如月は針天井に登って、銃を構えた。落ちてきたところで、至近距離で鎖に弾を撃ち込んでいく。二つとも、あっさりと天井が落ちてしまった。

 

 ──バキンッ!!

 

 ──ガキャアァァッ!!

 

「残念だったな、進ませてもらうぞ」

 

『くっそぉぉっ……!!』

 

「そろそろ終点は近いか……ん?」

 

 上から出てきた、一本の管。それに嫌な予感を覚えて、如月が鞄を漁る。

 

 ──プシュウゥゥゥ!!!

 

『ハッハッハ、油断したなぁ!! 毒ガスは効くだろう!? 躱すことはできんぞ!!』

 

「……それくらいしてくると思ってたよ」

 

『なっ……ガスマスク!?』

 

 ガスマスクをして毒ガスを無効化し、如月は頃合と見て、所長に言ってやる。

 

「そういえばお前、忘れていないか? 捕らえていた人達のことを」

 

『……ん? そういえば、どこに行った?』

 

「見てみろよ、そこの監視カメラで」

 

 所長が驚愕の声を上げる。所長は、如月の作戦にまんまと嵌ったのだ。

 

『なっ……そんな!! 全員いないだと!?』

 

「俺に集中しすぎたな。一つのことに集中すると、周りの大事なことを忘れてしまう……そういえばこれ、障害者の特性だったような気がするなぁ?」

 

『ふざけるなァァァァッ!!!』

 

 ──ガチャチャチャチャッ!!!

 

 所長は怒り狂いながら、自分の持てる武器を全て出して振るう。しかし、怒りに任せた乱雑な攻撃は最早意味をなさない。

 

「あの扉……あそこだな!?」

 

『死ね!!』

 

「おっと……その手は食わんぞ」

 

 ──ズァァッ!!!

 

 床が穴だらけになって、槍が飛び出す。如月はそれも避けたが……今度こそ如月は進めない。

 

『しかし進めないだろう!? 私の勝ちだ、ハッハッハッハ!!!』

 

「それはどうかな?」

 

『まだ何かあるのか!?』

 

 如月は鞄の中から、サバイバルナイフを取り出した。しかし、それだけでは全ての槍を切るには途方もない時間がかかる。

 

『それでどうする、全部切っていくつもりか!? その間に逃げてやる!!』

 

「……全部切るなんて、一言も言ってねぇぞ」

 

『なに!?』

 

 目の前に出てきた、一番端の槍のみを切る。そして、そこから一歩ずつ端を進んでゆく……

 

「さぁ、これで最後だな……!! オラッ!!」

 

『く、くそぉぉ……畜生ッ!!』

 

「……よう。クソ女、10年振りだな」

 

 所長は拳をわなわなと震わせて、怒りを露わにしている。

 

「ふざけるな、ふざけるなぁっ!! 私は、私は終わらんぞ……!! 障害者は、貴様は!! 私の奴隷でいればいいんだぁッ!!」

 

「これで終わりだ、死ね!!」

 

「……なんてね? やっぱり詰めが甘いわね、障害者」

 

 そう言って、嫌らしい笑みを浮かべた所長がスイッチを押す。すると……如月の上から、大きな網が降ってきた。大きすぎて躱しきれなかった如月が、それに捕まる……

 

「なっ、しまった……!?」

 

「喰らえ!!」

 

「まずっ……ぐぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 網に高圧電流が流れて、如月が絶叫した。所長はその姿を嘲笑っている……

 

「最後の最後で詰めが甘かったなぁ!! お前は終わりよ、下等生物はやはり人間様には勝てんッ!!!」

 

「……くそ、が……!!」

 

「銃? せめてもの抵抗ってこと? それなら、お生憎さま」

 

 所長は、如月の眉間に銃口を押し付けた。網からは、出られない。

 

「くそったれ、が……」

 

「一か八か撃ってみる? まぁ、そんなことしても……これ着てるんだけどね」

 

「防弾、チョッキ……!!」

 

 如月が悔しさに歯を食いしばる。勝てずに死ぬ、その事実が何より悔しかった。

 

「下等生物が私に逆らったのが、そもそもの間違いなのよ。ここを抜け出したあの日に、お前の破滅は決まっていたの……残念ね」

 

「くそっ、くそぉぉ……貴様、なんぞに……!! 殺されてやれるか……!!」

 

「それが最後の言葉でいい? それじゃあ、さようなら」

 

 如月が目を瞑る。しかし、いつまで立っても激痛も血も現れない。如月が目を開くと、所長は別の何かに目線を向けていた。

 

「……何が、起きた?」

 

「き、貴様らは……何故ここに!?」

 

「あなた達は……!?」

 

 そこにいたのは、如月が助けた障害者達だった。何故だ、逃げたはずではなかったのか? その者達が、所長の眉間に向かって銃を構えている。

 

「動かないでもらいましょう、所長」

 

「如月さん、大丈夫ですか?」

 

「ああ、何とか……しかし、どうしてここに? 逃げろと言ったはずだが」

 

 如月がそう言うと、銃を構えている田中が言った。

 

「逃げている最中で、直感的に思ったんですよ。あなたはこのままだと、殺されるってね」

 

「恩人が殺されたとなっては、寝覚めが悪いですから。それに、こいつらを放置しておいたら僕らはまた、搾取されるでしょうしね」

 

「これは他の職員達から奪い取ったものです。他の皆さんも帰ってきていて、全員で叩きのめしましたから」

 

 所長が認めたくないと言わんばかりに、首を横に振りながら叫ぶ。

 

「有り得ない!! 道中の武器達はどうした!? あいつは全てを壊してはいないはずだぞ!!」

 

「あぁ、それなら。悪いですが、気絶した職員さんに盾になってもらいましたよ」

 

「ひ、人を殺したのか!? 狂っているぞ!! どうして、そう躊躇なく……」

 

 そう尋ねられて、田中が答えた。

 

「あなたのおかげですよ。あなたが四六時中、僕らの悲鳴を聞かせてくれて……体から溢れ出る血にも、慣れていましたから。死体だって見たことがある……」

 

「そ、そんな馬鹿なっ……!!」

 

「どうやら、お前は尽く墓穴を掘ったらしいな。クソ女さんよ」

 

 所長が怒りに任せて、銃を構えた。しかし、如月はその間にもう……銃を所長の足に向けていた。

 

 ──バンッ!!

 

「黙れ!! 死……がはっ!?」

 

「黙るのは、お前の方だ」

 

「や、やめろ……何をする気だッ……!?」

 

 腹を撃ち抜かれて、動けなくなった所長に……如月は冷静になった声で、言い放つ。

 

「言ったはずだ。共倒れになってもらうとな」

 

「く、くそっ……逃げなければ……!!」

 

「逃がすな。俺の指示する場所に連れて行け」

 

 そう言って如月は、所長を羽交い締めにして持ち上げた。

 

「やめろ!! 実の母に何をする気だ!?」

 

「こうするんだよ」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 如月はカードキーと鍵を奪い取り、牢屋の中に所長を放り込んだ。

 

「なるほど、閉じ込めておけば逃げられない……」

 

「や、やめて!! お願い福司、死にたくないよ!! 反省するから許して!! 親子でしょう!?」

 

「……俺がそう言っても、アンタは許してくれなかったよな。行きましょう」

 

 そう言って、如月達はその場を後にする。

 

「待って!! 福司ぃぃ!!! お願い、私を置いていかないでぇぇぇ!!!」

 

「……くっ、こんな時に刻印が……!!」

 

「大丈夫ですか? 肩貸しますよ」

 

 如月は田中に肩を貸してもらって、なんとか立ち上がる。如月はふと、疑問に思った。自分の過去と照らし合わせて、助ける理由がないような気がしたのだ。

 

「どうして皆さんは、僕にそこまで……? 危険なことはわかっていただろうに……」

 

「あなたが、僕たちを助けてくれたから」

 

「俺が……助けたから……」

 

 あの時自分は、一人で逃げ出した。生き残ることだけに、必死だった。しかし……今回は違う。

 

「助けてもらったのに、見殺しになんかできませんよ」

 

「そうか……俺は、成長したんだな」

 

「ほら、早く行きましょう?」

 

 如月は笑みを浮かべながら、エレベーターに乗った。そして……如月は地上に出て、気絶している職員の山が夕陽に照らされているのを見た。そこには無論、片山もいる。

 

「片山。貴様とも、ここでお別れだ」

 

「どうするんですか、如月さん?」

 

「こいつらにトドメを刺します。この者達を室内に押し込んでおいてください」

 

 そう言われた元利用者達が、建物の中に乱雑に奴らを投げ込んでゆく。

 

「できましたよ、如月さん」

 

「ありがとうございます。こちらも、準備は終わってますので……皆さん、僕の周りに集まってください」

 

「えっ? は、はい」

 

 この場にいてくれる利用者全員の呪いを、この施設そのものにぶつけるために。無論、自分自身の呪いも。

 

「『天地(あめつち)八方(やも)に蠱毒の(まじな)い』」

 

「これは……俺たちの体から、黒いモヤが……!?」

 

「『(たが)える八つに六度(むたび)十文字(とおふみ)』」

 

 全員の体から、黒いモヤが出る。しかし如月からは、それとは比べ物にならない量の呪いが噴出していた。

 

「これ、全部『呪い』ってやつなのか……!?」

 

「『引きて祓えば装うなかれ』」

 

「すごい量だ……!!」

 

 全員の体から刻印が消えて、その全てが黒い塊となって浮き上がる。

 

「汝、許しに報復を、信頼に裏切りを、希望に絶望を、光あるものに闇を、生あるものに暗い死をもたらすもの」

 

「なんだかよくわからないけど、行けー!!」

 

「『悪因には悪果あるべし』」

 

 どんどん体から、刻印が消えて……その代わりに、如月の頭の上の塊が大きくなってゆく。

 

「『善因には善果あるべし』」

 

「『呪詛には呪詛を』」

 

「『報賀には報賀を』」

 

 ついに塊が、最大の大きさになった。これまでにない程、大きな呪い。それを、解き放つ。

 

「因果応報、人を呪わば穴二つ……!!」

 

「行け、如月さん!!」

 

「消えろ、クソ野郎共!!! 天罰覿面!!! 吹きて放てよ……」

 

 呪 詛 返 シ !!!

 

 如月が目を見開いて、塊を施設に投げつける。それが炸裂し……アクティング一体を黒が包んだ。

 

「……終わったのか?」

 

「ここを離れましょう。この規模です、僕にも何が起きるかわかりません」

 

「は、はい!!」

 

 如月は全員にそう呼びかけて、全員を連れてその場を離れた。

 

「……じゃあな、母さん」

 

 

 

 その後、しばらくして。片山達が目を覚ました。

 

「う、うぅ……」

 

「ここは……そうだ、障害者共は何処だ!?」

 

「すみません主任、全員やられて……!!」

 

 片山はそれを聞いて、全員を怒鳴りつけた。

 

「なんだと!? このクソ野郎共めが……!! もういい、貴様らも呪いの押しつけ先にしてやる!!」

 

「そ、そんな……それだけはご勘弁を!!」

 

「そんなことより、所長はどこに……まさか、まだ地下にいらっしゃるのか!? 早く行かないと……」

 

 片山が職員達の嘆願を無視して、地下に向かおうとしたその時。職員の一人が、地面が揺れていることに気づいた。

 

 ──ゴゴゴゴゴ……

 

「あれ? 地面が揺れて……」

 

「は?」

 

「えっ……」

 

 ──ズガッシャアァァァッ!!!

 

 大きな地響きが鳴り響き、辺りの地面や建物内が破壊されてゆく。

 

「地震だッ!! みんな逃げろぉぉ!!!」

 

「うわぁぁぁっ!! 死にたくないっ!!!」

 

「おい、逃げるな貴様ら!! ぐっ……!!」

 

 崩れてきた棚の物にぶつかって、片山は上手く動けていない。そんな時、逃げていた職員の踏みしめた地面に地割れが起きた。職員は青ざめて、手足を振り回しているが……もう、遅すぎた。

 

「ひっ……!! いやだ、待っ、助けっ……!!! おあぁぁぁぁっ!?」

 

「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「待て貴様ら、私を誰だと思っているんだァァッ!? ぐはっ!?」

 

 次々降ってくる瓦礫の雨。それによって、片山の逃げ道が塞がれる。文句を言う前に逃げれば、こうはなっていなかっただろう。

 

「お、おのれェェェッ!!! 私は健常者で、この会社の主任なんだぞォォォォッ!!!」

 

「障害者、共がァ……!!!」

 

「ヴァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 獣のような叫びを上げながら、片山は崩れてゆく建物の中で瓦礫の海に沈んだのだった。そして、地下にいた所長も例外ではない。

 

「な、なんだ!? これは……まさか、如月の呪い!?」

 

 大地震で、天井が崩れてくる。それを見てゾッとした所長が、鉄格子を掴んで必死に叫ぶ。

 

「嫌ぁぁ!! 死にたくない!! 助けて、福司ぃぃぃ!!! お願いだからぁぁぁぁ!!!」

 

 しかし……ストレスを、呪いを誰かに押し付け続けた者に、ずっと一人でいることを選んだ者に……助けが来るはずもなかった。

 

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁっ!!!」

 

「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 そうして、所長も片山と同じ末路を辿り……株式会社アクティングは、今ここに倒産した。

 

 

 

 数日後。このことは、無論ニュースになった。

 

「それでは、次のニュースです。山奥にあった株式会社アクティングが、超局地的な直下型地震によって倒壊しました。専門家によりますと、この真下に大きな断層が通っていたとのことです。また、アクティングの倒壊跡からは、片山 金美さんと如月 花子さんが発見されました。二人とも治療を受けましたが、植物人間状態で回復の見込みはないとのことです。それでは、次のニュース……」

 

 こうして、如月に呪いを押し付けた人間達は……その呪いによって、因果応報の末路を辿ったのだった。




次回、エピローグです。
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