決着の時だ。
如月が、エレベーターから出て周りを見渡す。真っ白な通路に蛍光灯があるだけの、殺風景な通路。
「あの時は見てなかったが……こうして改めて見ると、目に悪い通路だな」
──カツ、カツ、カツ。
耳が痛くなりそうな程の静寂に、靴の音がよく響く。如月は辺りを見回しながら、どんどん進んでいっている。しばらくすると、如月の目に見覚えのある牢屋が飛び込んできた。
「まだ人が囚われてるだろう。出してあげないとな……」
「あぁ、そこの人……お願いです、助けてください!!」
「やはり囚われてるか……今出してあげますからね」
カードキーを専用のタッチパネルにかざす。すると、ドアのロックが解除された。牢屋からその人が出てくる。
──ガチャン。
「ありがとうございます、もう限界で……!!」
「よく頑張ってくれました。他の人たちも出してあげましょう」
「お願いします、みんな死にかけていて……!!」
そう言われて、如月が他の牢屋に歩いていこうとすると。突然、スピーカーから声が発された。
『あー、聞こえていますか? 田中さん、速やかに牢屋に戻りなさい。繰り返します、速やかに牢屋に戻りなさい』
「ひ、ひぃっ!! 如月所長!!」
「出やがったな、クソ野郎共の元締め!!」
如月がそう言うと、スピーカーから驚いたような声がした。
『お前は……あぁ、出来損ないの息子? すっかり忘れてたわ、お前のこと……久しぶりね。なんの用?』
「簡単なことだ。お前達を殺しに来たんだよ……!!」
『殺す? 職員の次は肉親殺し? お前、落ちるところまで落ちたな』
自分達のことを棚に上げて非難され、如月はどうしようもない程の怒りに襲われた。如月は怒りと憎しみを、言葉に乗せて叫ぶ。
「肉親殺しを非難するとは……お前だって俺を使い潰して殺そうとしたくせに、よく言えたものだな!!」
『馬鹿らしい。いい? 価値のある者と価値のない者がこの世にはいるの。お前も、そこにいる奴も障害者なのよ。そして、私は健常者……ここまで稼げてるんだから間違いない。下等生物は私たちに奉仕することでのみ、生きることを許されるのよ』
「ふざけるな!! お前らみたいな真の悪魔が、健常者であってたまるか!! この犯罪者集団が!!」
如月は所長の非難を続けているが、所長はため息をついている。全く応えていないようだ……
『はぁ、障害者にこっちの話をしたのが馬鹿だったわね。いいわ、私を殺したいならここまで来てみなさい。そうすれば正当防衛で殺せるでしょう?』
「上等だ、覚悟しろ!! クソッタレが!!」
「ど、どうするんですか!? あんなこと言って、本当に殺されちゃいますよ!?」
田中が、如月に必死で警告する。所長の危険性を自分で味わって、知っているからだ。しかし、如月はそれを田中よりも強く知っていた。
「大丈夫です。俺はあいつの息子ですから……ケジメは俺がつけますよ。これを」
「えっ、これは……」
「みんなを出してあげて、早く逃げてください。ここにいると危険です、何をしてくるかわからない……構造も変わってるかもしれないし、まだあなたの方が詳しいかと思いまして」
そう言って、如月は前に進む。田中はその背中を見つめることしかできない。
「……分かりました。あとはお願いします、如月さん」
「任せてください。行ってきます」
「おーい、誰か助けてくれぇ……」
その声の方向に、田中は走っていった。そして如月が全力で叫ぶ。
「クソ親ァァァァ!! 俺はここだぞ、俺を狙えッ!!! 殺せるもんなら殺してみろォ!!!」
──ガチャッ。
如月が警戒を最大まで高めた瞬間、立っていた部分の床が抜けた。それを躱すと、後ろから銃を持ったアームが発砲してくる。
──バンッ!!
──カヒュンッ!!
「これくらいはしてくるよな……だが!! 甘いぞ!!」
如月は銃の射線に入らないようにしながら、着実に前に進んでいく。どうしても射線に入ってしまった時は、アームをよく見て横に跳んで躱す。多少の掠りは問題ない、如月にとっては許容範囲だ。銃弾が見当外れの方向に飛んでいき、壁に当たって反射し……止まった。如月は注意を自分に向けるために、挑発を続ける。
「どうした!? こんなものか、クソ野郎!! もっと本気出してこいよ、それともこれで限界なのか!?」
『……生意気なクソガキが、調子に乗るなよ!! そんなにお望みなら、喰らえ!!』
「それでいい……!!」
──ガチャン!!
武器が次々に降りてくる。アームには銃だけではなく、チェーンソーや火炎放射器といった危険な兵器が握られている。それらが全て、如月に牙を剥く。
「躱しながら進んでやるさ、こんなもの!!」
『いつまでそう言っていられるかな!!』
「ッ、挟み撃ちか!!」
銃に挟まれた。普通なら、このまま撃ち殺されるところだが……復讐を誓った如月は、誰よりも強い。フックをかけたロープを、アームに投げつけて……撃たれる直前に、方向を無理やり曲げた。
「ぬぅあぁぁぁっ!!」
『なにっ!? しまった……!!』
──バンッ!!
──バギャア!!
「銃はもらっていくぜ?」
火を吹いた銃が、もう一方のアームをへし折って叩き落とした。しかし、如月が前に進もうとすると目の前の道の床が落ちて、大きな穴になってしまった。所長が高笑いしている。
──ガコンッ!!
「これは……!!」
『ハハハ、残念だったな!! これなら通れまい!!』
「このくらい、通り抜けてやるさ!!」
そう言って如月は、折り畳み梯子を取り出した。如月はそれを立てて、その上に登る。
『どうした、それを横にしても前には進めんぞ!?』
「知ってるさ、だから、こうするんだよ!!」
『な、なにっ!?』
梯子から如月はロープを投げて、片方のフックを梯子に固定する。そして如月は、ロープを滑り降りた。
「ざっとこんなもんだ。言っただろ、甘いってな」
『ぬううううっ……調子に乗るなよォ!!!』
「今度は……うぉっと!?」
──ズダァァァン!!!
如月がさっきまでいた場所に、針付きの天井が降ってきた。それが高速で戻って、また落ちてくる。目の前の道を、天井が塞いでいるのだ。天井と天井の間に空間も用意されていない……
『クソ!! 運の良いやつめ……!! しかし、これならどうにもできまい!?』
「いや、墓穴を掘ったな」
『なんだとォォ!?』
如月は所長の怒声を聞きながら、銃を両手で前に出して、しっかりと構えた。狙うは天井が落ちてきた一瞬。
「……当たれ!!」
──パァンッ!!
──カヒュンッ!!
『ワハハハ、何をやっている!? ハズレだぞ!!』
「なら、当たるまでやるだけだ!!」
──バンッ!!
──バキィィッ!!
如月はもう一度同じように構え直して、発砲。今度は命中して、針天井が戻らなくなる。如月は針天井の鎖を撃ち抜いたのだ。
『なんだと……!? い、いや!! まだ二つあるぞ、撃つのは相応に難しいはずだ!!』
「甘いな。さっきは位置の都合上、ある程度離れて撃つ必要があったが……針天井に登れば、近くで撃てる!!」
『し、しまった……!! 針天井を撃ち抜くなんてことを、どうしてやったのか気になっていたが……そういうことか!!』
如月は針天井に登って、銃を構えた。落ちてきたところで、至近距離で鎖に弾を撃ち込んでいく。二つとも、あっさりと天井が落ちてしまった。
──バキンッ!!
──ガキャアァァッ!!
「残念だったな、進ませてもらうぞ」
『くっそぉぉっ……!!』
「そろそろ終点は近いか……ん?」
上から出てきた、一本の管。それに嫌な予感を覚えて、如月が鞄を漁る。
──プシュウゥゥゥ!!!
『ハッハッハ、油断したなぁ!! 毒ガスは効くだろう!? 躱すことはできんぞ!!』
「……それくらいしてくると思ってたよ」
『なっ……ガスマスク!?』
ガスマスクをして毒ガスを無効化し、如月は頃合と見て、所長に言ってやる。
「そういえばお前、忘れていないか? 捕らえていた人達のことを」
『……ん? そういえば、どこに行った?』
「見てみろよ、そこの監視カメラで」
所長が驚愕の声を上げる。所長は、如月の作戦にまんまと嵌ったのだ。
『なっ……そんな!! 全員いないだと!?』
「俺に集中しすぎたな。一つのことに集中すると、周りの大事なことを忘れてしまう……そういえばこれ、障害者の特性だったような気がするなぁ?」
『ふざけるなァァァァッ!!!』
──ガチャチャチャチャッ!!!
所長は怒り狂いながら、自分の持てる武器を全て出して振るう。しかし、怒りに任せた乱雑な攻撃は最早意味をなさない。
「あの扉……あそこだな!?」
『死ね!!』
「おっと……その手は食わんぞ」
──ズァァッ!!!
床が穴だらけになって、槍が飛び出す。如月はそれも避けたが……今度こそ如月は進めない。
『しかし進めないだろう!? 私の勝ちだ、ハッハッハッハ!!!』
「それはどうかな?」
『まだ何かあるのか!?』
如月は鞄の中から、サバイバルナイフを取り出した。しかし、それだけでは全ての槍を切るには途方もない時間がかかる。
『それでどうする、全部切っていくつもりか!? その間に逃げてやる!!』
「……全部切るなんて、一言も言ってねぇぞ」
『なに!?』
目の前に出てきた、一番端の槍のみを切る。そして、そこから一歩ずつ端を進んでゆく……
「さぁ、これで最後だな……!! オラッ!!」
『く、くそぉぉ……畜生ッ!!』
「……よう。クソ女、10年振りだな」
所長は拳をわなわなと震わせて、怒りを露わにしている。
「ふざけるな、ふざけるなぁっ!! 私は、私は終わらんぞ……!! 障害者は、貴様は!! 私の奴隷でいればいいんだぁッ!!」
「これで終わりだ、死ね!!」
「……なんてね? やっぱり詰めが甘いわね、障害者」
そう言って、嫌らしい笑みを浮かべた所長がスイッチを押す。すると……如月の上から、大きな網が降ってきた。大きすぎて躱しきれなかった如月が、それに捕まる……
「なっ、しまった……!?」
「喰らえ!!」
「まずっ……ぐぁぁぁぁぁっ!!!」
網に高圧電流が流れて、如月が絶叫した。所長はその姿を嘲笑っている……
「最後の最後で詰めが甘かったなぁ!! お前は終わりよ、下等生物はやはり人間様には勝てんッ!!!」
「……くそ、が……!!」
「銃? せめてもの抵抗ってこと? それなら、お生憎さま」
所長は、如月の眉間に銃口を押し付けた。網からは、出られない。
「くそったれ、が……」
「一か八か撃ってみる? まぁ、そんなことしても……これ着てるんだけどね」
「防弾、チョッキ……!!」
如月が悔しさに歯を食いしばる。勝てずに死ぬ、その事実が何より悔しかった。
「下等生物が私に逆らったのが、そもそもの間違いなのよ。ここを抜け出したあの日に、お前の破滅は決まっていたの……残念ね」
「くそっ、くそぉぉ……貴様、なんぞに……!! 殺されてやれるか……!!」
「それが最後の言葉でいい? それじゃあ、さようなら」
如月が目を瞑る。しかし、いつまで立っても激痛も血も現れない。如月が目を開くと、所長は別の何かに目線を向けていた。
「……何が、起きた?」
「き、貴様らは……何故ここに!?」
「あなた達は……!?」
そこにいたのは、如月が助けた障害者達だった。何故だ、逃げたはずではなかったのか? その者達が、所長の眉間に向かって銃を構えている。
「動かないでもらいましょう、所長」
「如月さん、大丈夫ですか?」
「ああ、何とか……しかし、どうしてここに? 逃げろと言ったはずだが」
如月がそう言うと、銃を構えている田中が言った。
「逃げている最中で、直感的に思ったんですよ。あなたはこのままだと、殺されるってね」
「恩人が殺されたとなっては、寝覚めが悪いですから。それに、こいつらを放置しておいたら僕らはまた、搾取されるでしょうしね」
「これは他の職員達から奪い取ったものです。他の皆さんも帰ってきていて、全員で叩きのめしましたから」
所長が認めたくないと言わんばかりに、首を横に振りながら叫ぶ。
「有り得ない!! 道中の武器達はどうした!? あいつは全てを壊してはいないはずだぞ!!」
「あぁ、それなら。悪いですが、気絶した職員さんに盾になってもらいましたよ」
「ひ、人を殺したのか!? 狂っているぞ!! どうして、そう躊躇なく……」
そう尋ねられて、田中が答えた。
「あなたのおかげですよ。あなたが四六時中、僕らの悲鳴を聞かせてくれて……体から溢れ出る血にも、慣れていましたから。死体だって見たことがある……」
「そ、そんな馬鹿なっ……!!」
「どうやら、お前は尽く墓穴を掘ったらしいな。クソ女さんよ」
所長が怒りに任せて、銃を構えた。しかし、如月はその間にもう……銃を所長の足に向けていた。
──バンッ!!
「黙れ!! 死……がはっ!?」
「黙るのは、お前の方だ」
「や、やめろ……何をする気だッ……!?」
腹を撃ち抜かれて、動けなくなった所長に……如月は冷静になった声で、言い放つ。
「言ったはずだ。共倒れになってもらうとな」
「く、くそっ……逃げなければ……!!」
「逃がすな。俺の指示する場所に連れて行け」
そう言って如月は、所長を羽交い締めにして持ち上げた。
「やめろ!! 実の母に何をする気だ!?」
「こうするんだよ」
「ぐはぁっ!?」
如月はカードキーと鍵を奪い取り、牢屋の中に所長を放り込んだ。
「なるほど、閉じ込めておけば逃げられない……」
「や、やめて!! お願い福司、死にたくないよ!! 反省するから許して!! 親子でしょう!?」
「……俺がそう言っても、アンタは許してくれなかったよな。行きましょう」
そう言って、如月達はその場を後にする。
「待って!! 福司ぃぃ!!! お願い、私を置いていかないでぇぇぇ!!!」
「……くっ、こんな時に刻印が……!!」
「大丈夫ですか? 肩貸しますよ」
如月は田中に肩を貸してもらって、なんとか立ち上がる。如月はふと、疑問に思った。自分の過去と照らし合わせて、助ける理由がないような気がしたのだ。
「どうして皆さんは、僕にそこまで……? 危険なことはわかっていただろうに……」
「あなたが、僕たちを助けてくれたから」
「俺が……助けたから……」
あの時自分は、一人で逃げ出した。生き残ることだけに、必死だった。しかし……今回は違う。
「助けてもらったのに、見殺しになんかできませんよ」
「そうか……俺は、成長したんだな」
「ほら、早く行きましょう?」
如月は笑みを浮かべながら、エレベーターに乗った。そして……如月は地上に出て、気絶している職員の山が夕陽に照らされているのを見た。そこには無論、片山もいる。
「片山。貴様とも、ここでお別れだ」
「どうするんですか、如月さん?」
「こいつらにトドメを刺します。この者達を室内に押し込んでおいてください」
そう言われた元利用者達が、建物の中に乱雑に奴らを投げ込んでゆく。
「できましたよ、如月さん」
「ありがとうございます。こちらも、準備は終わってますので……皆さん、僕の周りに集まってください」
「えっ? は、はい」
この場にいてくれる利用者全員の呪いを、この施設そのものにぶつけるために。無論、自分自身の呪いも。
「『
「これは……俺たちの体から、黒いモヤが……!?」
「『
全員の体から、黒いモヤが出る。しかし如月からは、それとは比べ物にならない量の呪いが噴出していた。
「これ、全部『呪い』ってやつなのか……!?」
「『引きて祓えば装うなかれ』」
「すごい量だ……!!」
全員の体から刻印が消えて、その全てが黒い塊となって浮き上がる。
「汝、許しに報復を、信頼に裏切りを、希望に絶望を、光あるものに闇を、生あるものに暗い死をもたらすもの」
「なんだかよくわからないけど、行けー!!」
「『悪因には悪果あるべし』」
どんどん体から、刻印が消えて……その代わりに、如月の頭の上の塊が大きくなってゆく。
「『善因には善果あるべし』」
「『呪詛には呪詛を』」
「『報賀には報賀を』」
ついに塊が、最大の大きさになった。これまでにない程、大きな呪い。それを、解き放つ。
「因果応報、人を呪わば穴二つ……!!」
「行け、如月さん!!」
「消えろ、クソ野郎共!!! 天罰覿面!!! 吹きて放てよ……」
呪 詛 返 シ !!!
如月が目を見開いて、塊を施設に投げつける。それが炸裂し……アクティング一体を黒が包んだ。
「……終わったのか?」
「ここを離れましょう。この規模です、僕にも何が起きるかわかりません」
「は、はい!!」
如月は全員にそう呼びかけて、全員を連れてその場を離れた。
「……じゃあな、母さん」
その後、しばらくして。片山達が目を覚ました。
「う、うぅ……」
「ここは……そうだ、障害者共は何処だ!?」
「すみません主任、全員やられて……!!」
片山はそれを聞いて、全員を怒鳴りつけた。
「なんだと!? このクソ野郎共めが……!! もういい、貴様らも呪いの押しつけ先にしてやる!!」
「そ、そんな……それだけはご勘弁を!!」
「そんなことより、所長はどこに……まさか、まだ地下にいらっしゃるのか!? 早く行かないと……」
片山が職員達の嘆願を無視して、地下に向かおうとしたその時。職員の一人が、地面が揺れていることに気づいた。
──ゴゴゴゴゴ……
「あれ? 地面が揺れて……」
「は?」
「えっ……」
──ズガッシャアァァァッ!!!
大きな地響きが鳴り響き、辺りの地面や建物内が破壊されてゆく。
「地震だッ!! みんな逃げろぉぉ!!!」
「うわぁぁぁっ!! 死にたくないっ!!!」
「おい、逃げるな貴様ら!! ぐっ……!!」
崩れてきた棚の物にぶつかって、片山は上手く動けていない。そんな時、逃げていた職員の踏みしめた地面に地割れが起きた。職員は青ざめて、手足を振り回しているが……もう、遅すぎた。
「ひっ……!! いやだ、待っ、助けっ……!!! おあぁぁぁぁっ!?」
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
「待て貴様ら、私を誰だと思っているんだァァッ!? ぐはっ!?」
次々降ってくる瓦礫の雨。それによって、片山の逃げ道が塞がれる。文句を言う前に逃げれば、こうはなっていなかっただろう。
「お、おのれェェェッ!!! 私は健常者で、この会社の主任なんだぞォォォォッ!!!」
「障害者、共がァ……!!!」
「ヴァァァァァァァァァッ!!!!」
獣のような叫びを上げながら、片山は崩れてゆく建物の中で瓦礫の海に沈んだのだった。そして、地下にいた所長も例外ではない。
「な、なんだ!? これは……まさか、如月の呪い!?」
大地震で、天井が崩れてくる。それを見てゾッとした所長が、鉄格子を掴んで必死に叫ぶ。
「嫌ぁぁ!! 死にたくない!! 助けて、福司ぃぃぃ!!! お願いだからぁぁぁぁ!!!」
しかし……ストレスを、呪いを誰かに押し付け続けた者に、ずっと一人でいることを選んだ者に……助けが来るはずもなかった。
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁっ!!!」
「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
そうして、所長も片山と同じ末路を辿り……株式会社アクティングは、今ここに倒産した。
数日後。このことは、無論ニュースになった。
「それでは、次のニュースです。山奥にあった株式会社アクティングが、超局地的な直下型地震によって倒壊しました。専門家によりますと、この真下に大きな断層が通っていたとのことです。また、アクティングの倒壊跡からは、片山 金美さんと如月 花子さんが発見されました。二人とも治療を受けましたが、植物人間状態で回復の見込みはないとのことです。それでは、次のニュース……」
こうして、如月に呪いを押し付けた人間達は……その呪いによって、因果応報の末路を辿ったのだった。
次回、エピローグです。