呪詛返シ請負人   作:とも667

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同族の呪い

ある時のこと。一人の男の子……吉田 良太が、中学校でいじめを受けていた。どこの学校でも、よくある光景だ。服を剥かれ、蹴り飛ばされて地面を転がる。

 

「うぐっ、あ……!!」

 

「ざまぁみろ、バーカ!!」

 

「悔しかったら殴ってみろよ、まぁ無理だろうけどな!!」

 

 家でも吉田の苦難は終わらない。家に帰れば、父親による教育虐待が吉田を待ち受けているのだ。

 

「おい良太!! どうしてこれもできない!? 貴様は本当に無能だな!!」

 

「ご、ごめんなさい……うっ、うぅ……」

 

「泣いてんじゃねぇ、このクズが!! お前ができないのが悪いんだよ!!」

 

 周りもそれを止めず、吉田は精神も肉体もどんどんズタボロになっていく。それは毎日、吉田に容赦なく襲いかかり続ける。

 

「オラ、もっと殴ってやれよ!!」

 

「おいハサミ持ってこい、こいつの髪切ってやれ!!」

 

「がぁぁっ、ぎ……!!」

 

 刃物を持ち出されて、体を切られても……父親は登校を強制した。絶対に行けと言われていて、行かなければ恫喝されるから。

 

「これくらいできろ!! 舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

「もう嫌だ……!!」

 

「嫌だぁぁ!? 嫌だだとォ!? ふざけるなぁぁぁ!!! お前に選択権はねぇんだよォ!!! テメェはもう何もするな、一生引きこもってやがれ!!!」

 

 罵詈雑言に暴力を、延々と浴びせ掛けられ続ける日々。学校を卒業しても、苦痛は終わらない。行くことになった障害者支援施設にて、吉田は残り物を食べさせられ続けていた。

 

「おっ、おぇぇぇぇ……」

 

 ──ビチビチビチ。

 

 洗面所で吐瀉物を吐き続ける。家でのストレスもあって、吉田は既に限界を超えていた。弁当を持っていく許可を得ようと、何度もそう訴えたが……その結果は、恫喝で返された。

 

「ママの弁当がいるのか!? 本当にいるのか!? その歳にもなってか!? えぇっ!?」

 

「ひっ、ひぃぃ……わかりました……!!」

 

「そうだろ!? みんな我慢して食ってんだよ、美味しい飯は家で食べていろ!!」

 

 無茶苦茶な理論を振りかざされて、ここですら怒鳴られて、信頼していた先生にも裏切られた。吉田の周りには、敵か自分に無関心な者しかいなかったのだ。そこを退所したあと、吉田は部屋に引きこもっていた。

 

『死ねよ、ゴミ!!』

 

『このクソ野郎が!!』

 

『生意気な障害者め!!!』

 

 吉田は必死に考える。どうして、自分があんな目に遭ったのかと。自分が何をしたのかと。自分が無能だったからか? ただ自分は、普通に授業を受けていただけなのに。勉強だって、自分なりに頑張っているのに。お弁当を持っていきたいだけなのに。

 

「……ふざ、けるな」

 

 止まらない吐き気が、突如収まる。その代わりに、凄まじい憤怒が吉田を支配した。とんでもない勢いで歯軋りしながら、憎い相手を睨みつける。

 

「お前らを……許さない」

 

 先生も、警察も、親も。何もかも自分の敵だ。そう判断した吉田は、ついに堪忍袋の緒が切れた。死に物狂いで筋トレを行い、まず筋肉をつける。そして、ネットで情報を集め……自分に『攻撃』した相手を見つけた。

 

「こいつら、だな……?」

 

 吉田の顔に、恐ろしい笑みが浮かぶ。家を飛び出して、その者達を見つけた。拳を握りしめて、復讐の炎に身を焦がす。

 

「そんでさ~……」

 

「なんだそれ、ウケるわー」

 

「じゃあ、俺はこの辺で!!」

 

 三人が解散したのを見て、吉田はまず主犯格の跡をつけることにした。人気のない場所に来たところで、目の前に立つ。

 

「おい」

 

「えっ、どこの誰?」

 

「吉田良太だ。覚えてるか?」

 

 その男はしばらく悩むような仕草をして、あの日と同じように吉田を笑った。

 

「あ、思い出した!! あの時の情けねぇカスだ!! 今頃何しに来たんだ、またイジめられに来たのか?」

 

「『殴れるものなら殴ってみろ』だったな」

 

「はぁ? お前、なに言ってんだ? 俺に勝てると思って……げごぁぁぁぁ!?」

 

 ──ボゴォッ!!

 

 吉田は男の顔面を、思いっきり殴った。男は、為す術なく吹っ飛んで側溝に落ちる。

 

「お前は俺の敵。敵は、許さない」

 

「て、テメェ……!! 訴えてや……ごはぁっ!?」

 

 ──バギャア!!

 

「黙れ」

 

 マウントポジションを取り、何度も何度も殴り続ける。あの日、自分がされたことと同じように。

 

「がごっ、ごぶぅっ、がっ……ま、待て、待って!! 謝るから……ゆ、許して……!!」

 

「お前は許さなかった。だから、俺も許さない」

 

「そ、そんな……ぐぁぁぁぁぁ!!!」

 

 吉田は怒りが収まるまで、延々と男を殴り続けた。自分の拳から血が出ても、相手が血を吐いても、ずっと。

 

「はぁ、はぁ……」

 

「が、ぎ……」

 

「次は、あいつの番だな……」

 

 次に狙いをつけたのは、その協力者だった。同じように追い詰めて、殴る。吉田が考えついたことは、それだけだ。

 

「お、お前は……ぐぎゃあぁぁ!?」

 

「報いを受けろ」

 

「ごぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そいつもボロ雑巾のようになるまで殴り、放り投げた。三人目も、同じようにボコボコにする。

 

「オラッ、オラッ、オラァァ!!」

 

「ぐっ、ぎ……」

 

「終わったな。次は……親父だ」

 

 冷酷な目で、次の獲物を見つめる。その姿は……如月によく似ていた。帰ってくる頃を見計らい、拳を握っておく。飯の時間が終わった辺りで、吉田が話をする。

 

「親父。覚えてるか? 俺に何もするなと言ったこと」

 

「あぁ、覚えてるよ。お前が悪いんだからな? 無能の引きこもりが」

 

「……俺がジュースを零して、寒い中外に追い出したこともあったな」

 

「お前が悪いんだろ?」

 

 自分の非は一切認めず、謝ろうともしない父。吉田はもう、肉親だろうと許す気はなかった。

 

「バカとかクズって、毎日のように言ってきたな。勉強がわからない俺に……無理やり教えたくせに」

 

「だからなんだ? 俺が悪いって? ふざけんな、テメェみたいなのには当然の扱いだろ。俺ができるんだから、できて当然だよ」

 

「……クズはお前じゃねぇのか、クズが」

 

 吉田はそう言って、父親の怒りを煽った。無論黙ってはいない、父親は拳を振りかぶる。

 

「なんだと、テメェ……今すぐ撤回しろ!!」

 

「嫌だね」

 

「お前ぇぇぇぇぇ!!! ……は?」

 

 吉田を殴り飛ばそうとしたところで、父はその拳が動かないことに気がついた。吉田は、父の腕を掴んでいたのだ。

 

「もういい……死ね」

 

 ──バゴォン!!

 

「ごぶぁっ!!」

 

 ──バギャギャギャギャ!!

 

「り、良太ッ!! 何してるの!! やめなさい!!」

 

 そこで母親が止めにかかるが、吉田はそれを睨みつけて止めた。

 

「今頃遅いんだよ。それとも……お前も、同じ目に遭わせてやろうか!?」

 

「ひっ、ひぃぃ!!」

 

「ぎゃっ、がはぁ!! あがっ、げぇ……!!」

 

 殴る。『敵』が動かなくなるまで、一心不乱に殴る。殴られた父親は、最初は抵抗していたが……その気力も無くなって、恐怖に震えている。

 

「やめっ、やめてくれ……俺が、俺が悪かったっ!! もう、拳を振りかざして脅したりしないからさ……!!」

 

「本当だな……?」

 

「あ、あぁ、もちろん……!!」

 

 吉田は立ち上がって、全員に冷たい目を向ける。そして、全員に言い放つ。

 

「今まで、よくもやってくれたな。もう俺は、お前らに脅される人間じゃない。今度は、お前らが恐怖に怯える番だ」

 

「は、はい……!!」

 

「……俺は部屋に戻る。後で飯を持ってこい」

 

 そう言って、吉田は部屋に戻った。痛めつけていた者に、逆に痛めつけられた人達……その様子はまるで呪詛返しをされたかのように、怯えきっていた。行った障害者事業所でも、吉田は迷惑なことをしていた。

 

「それにしても、あの野郎……ムカつくことばかりしやがって……」

 

「また始まったよ……もう嫌だ」

 

「ほっとけ、何言っても直らねぇし……怒らせたらどうなるかわかんねぇぞ」

 

 吉田はその憎しみを、周囲にまで振りまいていた。被害者だった者は、ありとあらゆる者に呪詛を振りまく、加害者となっていたのである。

 

「ちょっと、やめてください……」

 

「あぁ、すみません……それにしても、あいつ……またやってやろうか?」

 

「無理だって、ほっとけよ」

 

 吉田はもう完全に、加害者と化していた。二度と被害者にならないように、と。しかし、それをされる周囲からすれば、たまったものではない。

 

「……次は、あいつらだな」

 

 自分を恫喝した、前の障害者事業所。そこに、目をつける。

 

「覚悟しろ」

 

 吉田はそう言って、歯を剥き出しにして笑う。殺意と憎しみを、滾らせながら。

 

 

 

 時間は少し飛んで、ここは新設された如月の事務所。終わった報告書を、ゴミ箱に投げていく。しかし、それらはやはり入らない。

 

「……やっぱり入ってないな。才能ないのかな?」

 

 そう言いながら、如月が露骨に残念そうな顔をする。そして、また事務作業に戻ろうとした時……インターホンが鳴った。如月が立ち上がり、玄関に向かう。

 

「はい、今行きます」

 

「すみません。『呪詛返し』の請負人さんがいるのって、ここですか?」

 

「はい。僕がそうです」

 

 そこにいたのは、三人の女性と子供たち。事が大きいことを察して、如月が覚悟を決める。三人の差し出した名刺を取ると、そこには『松田 ミキ』『秋月 ハルカ』、『鈴木 サユリ』と書いてあった。

 

「よかったぁ……その、今回は私たちの夫を助けて欲しくて……!!」

 

「わかりました、こちらへどうぞ」

 

「お願いします、パパを助けてください!!」

 

 そう言われて、如月はサムズアップと笑顔で返す。子供達に頼まれては、助けない訳にもいかない。

 

「……それで、今回はどのような件ですか?」

 

「それが、夫が暴力沙汰に巻き込まれたみたいでして……警察に頼ろうとしても、『それだけはダメだ』って言って止めてきて……何も話してくれないし、何もできないんです。部屋から絶対出てこないから、警察の事情聴取とかもできないし」

 

「私達も同じで……なにかに怯えてる、みたいなんですが」

 

 事態は、大分深刻らしい。そう思った如月は、更に深く聞く。犯人像を絞り込まなければ、調べようがない。

 

「犯人像はわかりますか?」

 

「いえ、本当に何も言ってくれないので……」

 

「あ、私は名前だけなら……」

 

 名前さえ分かれば調べられる、そう思って如月は名前を尋ねた。

 

「なんという名前ですか?」

 

「吉田良太って……そう言ってました」

 

「あら、そいつなら聞いたことあるわね。今引きこもってる息子が、『吉田良太は、ずっと愚痴と恨み言ばかり言ってる。こっちの気まで滅入るよ』って」

 

 それで如月が思い出したのは、サトウだった。友也くんの時の、太った男。あの時と同じなら、嫌がらせも行われていそうだと、如月は思った。

 

「……報酬は三人分で、50万円でよろしいですか?」

 

「わかりました、よろしくお願いします」

 

「じゃあ、三人で分けて払いましょうか」

 

 それが決まって、とりあえず如月はアプローチする相手を考える。そして、狙いを定めたのは……サユリの息子。

 

「では、サユリさんの家に行ってもよろしいですか? 息子さんに話を聞きたいので」

 

「パパ、元気になるかな?」

 

「きっと元気になるよ、心配しないで」

 

 そう言って如月は、ミキとハルカとその家族を見送り、サユリの家へと向かった。そして、部屋の前でサユリが息子を呼ぶ。

 

「大希ー? 出てきなさい、如月さんよ」

 

「如月……如月さんって、ネットで噂の?」

 

「こんにちは。如月です、はじめまして」

 

 大希と呼ばれた男の目が、明るくなる。有名人に会えて、とても喜んでいるようだ。

 

「わぁぁぁぁ……夢みたいだ!! 如月さんに会えるなんて!! 呪いを使って悪を成敗……まるで、漫画のヒーローみたいで、めっちゃ尊敬してます!!」

 

「いや、それほどでも……今日は、吉田良太について聞かせて欲しくてね」

 

「はい!! 如月さんのためなら、いくらでも!!」

 

 いきなり元気になったのを見て、サユリが少し呆れる。昨日まではご飯も食べなかったのに、と。

 

「現金な子だこと……」

 

「まぁまぁ、お母さん。元気な方が聞きやすいですし」

 

「吉田良太は……なんか、常に荒っぽいヤツですね。常にイライラしてるし、誰かの悪口ばっかり言ってるし……注意されてもやめないし。なんか、嫌なヤツです。俺もずっと聞いてて、精神やられちゃって……不甲斐ない!!」

 

 悔しそうにそう言う大希に、如月は優しい言葉をかけた。

 

「大丈夫。誰にでもあることだ……俺が来たからには、絶対に倒してみせるさ……他に知ってることは?」

 

「うーん……あ、あと。あいつ、『カタヤマ』とか『松田』、『秋月』……あと『鈴木』って聞こえました。誰のことなのか、わかんないですけどね。俺じゃないだろうし……父さんが、何かしら恨みを買ってたのか?」

 

「……なるほど。ありがとう、参考になったよ……そういえば、お父さんはどこに?」

 

 指さされたのは、南京錠のついた部屋。話すのはやはり無理そうだと、如月はそう思った。相手は大人、言葉だけで部屋の鍵を開けてもらうのは難しいという判断だ。

 

「あそこです」

 

「そうですか……わかりました。ところで大希くん、あいつが憎いか?」

 

「はい、そりゃもちろん!!」

 

 確認ができたので、如月は手間が省けたことを喜ぶ。

 

「それでいい。じゃあ、最後に……君が通っている事業所の、名前は?」

 

「あ、『たんぽぽ』です」

 

「わかった、ありがとう。十分だよ……あとは任せてください」

 

 如月はプランを固めた。何があったかは知らないが……相手の素性を暴いて、その上で追い詰めて『呪詛返シ』を行う。

 

「はい、どうかお願いします……!!」

 

「父さんを、よろしくお願いしますっ!!」

 

「任せておいてください、では」

 

 そう頼まれて、笑顔で手を振りながら家を出た如月は、即座に冷たい目になって吉田を見据えた。いつも通りの、悪に対して見せる目。

 

「覚悟しろ。お前の罪は重いぞ」

 

 そう言って如月は、調べ物をするために歩いていった。しかし、如月はまだ知らない。これが……

 

 自分の破滅を示唆する物だということを。

 

 

 

 如月は次の日、すぐに事業所に向かった。そして、様子を伺う……中では、吉田がブツブツと文句を言っているのが聞こえる。

 

「それにしても、あいつ……」

 

「やめろって、人の迷惑だよ!!」

 

「はい、ごめんなさい……チッ」

 

 口ではそう言っているが、全くやめる様子はない。その様子に、如月は呆れを隠せないでいる。

 

「……やはり、まともじゃないな」

 

 しばらく待ち、終了時間になった。吉田はイライラした様子で出てきて、歩いていく。恐らく、家に帰るのだろう。

 

「後をつけるか……」

 

 如月はバレないように隠れながら、跡をつける。到着したのは、やはり家だった。家に近づいて、会話を拾うと……吉田の命令が聞こえてきた。

 

「おい、お前!! さっさとしろ、また殴ってやろうか!?」

 

「ッ、すみません!!」

 

「早くしろ、この無能め……」

 

 どう聞いてもパワハラだ。その家族への暴虐が自分の母親と重なって、如月は強い不快感を感じた。

 

『この無能め、なんでこんなことも……!!』

 

「……ますます許す理由がないな」

 

「ない? ないなら買ってこい!!」

 

「は、はい!! 今すぐ……!!」

 

 それを聞いて、母親らしき人が外に出てこようとしていることを知り、如月は待ち伏せをする。

 

「……そこの人。お待ちください」

 

「す、すみません急いでいるので……きゃっ!?」

 

「吉田良太から、あなたを助けに来ました。あはたの名前は?」

 

 そう言って、如月が母親を物陰に連れていく。母親は怯えていて、痛々しい青痣を体中に作っている。

 

「吉田 洋子です……あ、あなたは一体? 警察ではない、みたいですが……」

 

「僕は如月 福司……『呪詛返シ請負人』です」

 

「あ、聞いたことあるかも……ということは、吉田がターゲットに?」

 

 如月が頷くと、母親は何故か複雑な表情をしている。その様子に如月は、疑念を抱いた。

 

「……どうしてそんな顔を? 呪詛返しをすれば、あの男も……」

 

「吉田も、被害者なんです。わかっていたのに、止められなくて……あの子は、あんなことに……」

 

「詳しく聞かせて貰えますか?」

 

 洋子は頷いて、息子のことを話し始めた。

 

「吉田はいい子でした。言いつけをしっかり守る子だし、悪いことなんて全然しない……けど、あの人は厳しくて……いいえ、今考えると虐待だったと思います」

 

「どういうことですか?」

 

「……勉強ができなかったり、子供の些細な失敗を執拗に責めるんです。脅したり恫喝したりして、注意したらこっちが怒鳴られるから……如月さん?」

 

 如月の思考が、一瞬停止する。悪だと断じていた相手の前提が、いきなりひっくり返ったのだから当然だ。それは、自分がされていたことと同じだから。

 

『どうしてこんな問題もできないの!? わからない? ふざけないで!! できろって言ってるの!! できなきゃおかしいのよおおおおお!!!』

 

『障害ィ? 学習速度が遅いィ? 関係ないわよそんなの!! 覚えられないのはお前の自己責任よ!!! 泣いて許されるとでも!? 貴様には本当に反吐が出るわね!! どうなってもいい? それじゃあ、今すぐに殺してあげましょうかぁ!?』

 

「……あいつも、なのか?」

 

 決意が揺らいだが、すぐに無理やり引き戻す。だとしても、吉田が害悪であることに変わりは無いのだから。

 

「如月さん……?」

 

「い、いや。なんでもありません、それで?」

 

「学校でもずっと、イジメを受けてて……誰も止めなかったし、警察もまともに取り合わなかったみたいで……あの日、スッキリして帰ってきたのは、多分……」

 

 そこで如月は、さっき大希が話していたことを思い出す。彼が言っていた名前は……『松田』、『秋月』そして『鈴木』だった。全部、苗字が同じだ。もし、そうだとしたら。

 

「……俺は、被害者をやろうとしてたのか?」

 

「えっ、如月さん……どうしたんですか?」

 

「その……他には、ないですか?」

 

 自信を失いながら、如月が尋ねる。そこで洋子は……とんでもないことを、口にした。

 

「今思えば、あれが最後のトドメだったんだなと思います。あの障害者事業所で、お弁当を持っていかせてもらえなくて、胃腸の酷い病気になってそれから……」

 

「その事業所の名前は?」

 

「確か……『アクティング』です」

 

 如月の中で、パズルが完成した。全ての辻褄が合った。如月は、彼のことを知っている。あの日片山に言われている様子を、見ていたから。

 

「……ごめんなさい。ありがとう、ございました」

 

「えっ、どこに……如月さん!?」

 

「あの人は、俺の……同族……」

 

 やったことは、復讐。足がつく方法か、そうでないかというだけ。敵に冷酷なのは、如月と同じだ。周りに敵しかいなかったのも、同じだ。そして、何より……アクティングの、生き残り。片山と自分の家族の、被害者だ。

 

「俺はどうすれば、いいんだ……」

 

 そう言いながら……如月は、逃げるようにその場を後にした。




さぁ、お前はどうする。
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