1人の手が9人を救い、学校を救う   作:霊璽

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Ep.03 廃校騒ぎ

Ep.03 廃校騒ぎ

 

〜龍也side〜

 

ピピピッピピピッピピピピピッ

 

目覚まし時計の無機質なアラーム音が部屋に鳴り響く。

 

「もう朝か。」

 

午前5時30分

 

ジャージに素早く着替え、水分を少し取り、玄関にてランニングシューズを履く。

 

部かに入らない分、自分でしっかりとトレーニングをしないとすぐに体が鈍ってしまう。

 

まだバスケットコートの場所を確認できていないから今日は走るだけの予定だ。

 

ドアを開けて外に出ると、もう4月だと言うのにまだ少し肌寒い。

 

「まあ走るのには丁度いいか。」

 

軽く屈伸や伸脚などをして身体をほぐす。

 

「そろそろ行くか。」

 

ゆっくりと走り始めた。

 

 

 

「懐かしいな、ここ。」

 

目の前には昔まだここに住んでいた頃によく来た神田明神。

 

長い階段は健在していて、少し嬉しさを感じている。

 

「にしてもまさかここにバスケットコートが出来てるとは思わなかった。」

 

そう、長い階段『は』今も変わっていないのだが、階段を降りたところにハーフコートの広さのバスケットコートができていたのだ。

 

確か俺の記憶ではここは確か誰かの駐車場だったような気もするんだが。

 

「まあ細かいことはいいか。これでボール使った練習もできるしな。」

 

練習場所が確保できて一安心した俺は、学校に遅れないようその場を後にした。

 

 

 

 

 

朝教室にSHR(ショートホームルーム)の10分前につくと、教室には日直しかおらず、黒板にデカデカと

 

『緊急集会 講堂に集まれ!』

 

と書かれていた。

 

『大雑把だな、おい』とか思いながら、荷物を自分の席に置いて講堂へと向かった。

 

 

「緊急集会ってなんだろ?」

「さあ?」

「理事長が結婚したとか?」

「コラコラ、理事長の娘この学校にいるでしょ。」

「それもそっか、あはは〜。」

 

上級生と思われる(リボンの色から判断)生徒の話しを聞く限り、どうやら誰も内容は知らされてないらしい。

 

講堂の中は『緊急集会』だと言うのに緊張感の欠片も無い。かく言う俺も緊張感など微塵も持ち合わせてないのだが。

 

キーンコーンカーンコーン

 

SHR開始のチャイムが鳴る。

それが合図と言わんばかりに講堂の中が一気に静かになる。

 

少しの間沈黙が続いたが、『コツ、コツ、コツ』というヒールの音がその静寂を破った。

 

何回か音が続いた後、理事長が壇上に登った。

 

相変わらず若い。しかもさっきの話から類推するになんと高校生の娘を持ってるとのことだ。信じられない。

 

『皆さん、おはようございます。』

 

「「「「「おはようございます」」」」」

 

理事長の挨拶に全校生徒が反応する。

 

『今日集まってもらったのは他でもない、学校の今後のことです。』

 

先ほどまでとは打って変わって、理事長が真剣な面持ちをする。

 

『音ノ木坂は伝統ある学校です。』

 

1年生に学校の伝統でも説くのか?でも2、3年生もいるし、それはないか……。

 

『ですが、近年入学者数は年々減少しています。』

 

確かに俺らの学年は2年生よりも20人、3年生よりも40人少ない。

 

『そこで、理事会での協議の結果、今年の入学希望者の結果如何によって、音ノ木坂高校は生徒募集をやめ、廃校になることが決定しました。』

 

は、廃校?突然過ぎて頭がついていかない。周囲の生徒もざわついているが、どうやら理解が追いついていないようだ。

 

その時だった。

 

「えええええええええええええええ!」

 

やたらと大きな声が講堂に響いた。ふと周りを見ると、1人の女生徒が立ち上がっている。その女性とはそのまま後ろに倒れこんだ。

 

「穂乃果!」「穂乃果ちゃん!」

 

その両隣に座っていた生徒が咄嗟にフォローする。

 

理事長もその叫び声に驚いたようで、話を中断してしまっていたが、咳払いを1度した後、話を再会した。

 

『ですが安心してください。あなたたち1年生が卒業するまでは廃校にはしません。』

 

『安心』という言葉とは裏腹に、理事長は少し寂しそうな顔をした。

 

『皆さんは、これからの学年生活を悔いのないものにしてください。今日の話は以上です。』

 

理事長はお辞儀をすると、北時と同じようにヒールの音を鳴らしながら帰っていく。

 

それが合図となり、生徒たちも解散し始めた。

 

「それにしても、廃校ねえ……。穏やかじゃねえな。」

 

俺も教室へと戻った。

 

 

 

〜穂乃花side〜

 

 

「はっ!?」

 

飛び起きるとそこは保健室。

 

「な〜んだ!さっきのはやっぱり夢だったんだ!」

 

学校が廃校になるなんて夢に決まってるよね!

 

 

 

「ら〜んらら〜んらら〜ん」

 

廃校が夢で良かった〜!だって廃校になっちゃったら編入試験なんて私受かる気がしないもん!

 

「いや〜足取りが軽い!あ、おっはよ〜!今日もいい天気だね〜!」

 

廊下ですれ違ったクラスメイトのヒデコ、フミコ、ミカの3人に手を振りながら挨拶する。

 

3人とも微妙な顔をしていたけどなんかあったのかな?

 

「穂乃果、いきなり大丈夫?」

「元気なのはいいことだけど………」

「絶対勘違いしてるよね…あれ。」

 

足取りが軽いよ!

 

ほら、ここに廃校の張り紙なんてな……

 

「えええええええええ!」

 

夢と同じ場所に廃校の張り紙が……いや、もっと大きな『廃校』の張り紙が……。

 

「あれ、夢じゃなかったんだ…」

 

 

ガラガラガラガラ

 

 

うぅ、足取りが重い……勉強どうしよう?

 

「どうしたの、穂乃果ちゃん?」

「この世の終わりみたいな顔してますよ。」

 

絶望している私を迎えてくれたのは幼馴染みのことりちゃんと海未ちゃん。

 

「だって学校が無くなるんだよ……うぅ」

「穂乃果ちゃん、すごい落ち込んでる……そんなに学校が好きだったなんて」

「違いますよ、ことり。あれは勘違いしてるんです。」

「勘違い…?」

 

いつもなら海未ちゃんの言葉を聞く余裕があるけど、今日は全くない。

 

「どーしよー!全然勉強してないよー!」

「……へ?」

「だって、廃校になっちゃったら別の学校に行かなきゃならないんでしょ!?受験勉強とか、編入試験とか!」

 

そりゃ2人はいいよ、優秀だし!

 

「やっぱり……」

「穂乃果ちゃん、私たちは卒業できるんだよ?」

「数学とか、英語とか……へ?」

「私たちが卒業するまで学校はなくなりません!」

「それ本当?」

 

 

〜龍也side〜

 

 

集会が終わった後、担任の瀬野先生に呼び止められ、何故か理事長室に放課後来いと言うお達しを受けた。

 

そんなこんなで今理事長室の前に来ている。

 

コンコンコン

 

「は〜い。入っていいですよ。」

「失礼します。」

 

ガチャ

 

扉を開けると、そこにいたのは理事長だけではなかった。

金髪の女生徒と、紫がかった髪の色をした女生徒が立っていた。

 

「わざわざごめんなさいね、龍也君。」

「いえ、別に構いません。それで、用件はなんでしょうか?」

「龍也君、あなたには生徒会に入ってもらいます。」

「「なっ!?」」

 

理事長の言葉に驚いたのは俺だけではなかった。金髪の女生徒も驚いていたのだ。

 

「待ってください理事長!なぜ入学したばかりの1年生を生徒会に!?」

 

俺が理事長に聞きたかったことを先に聞かれる。

 

「彼、部活動に入らないらしいの。」

「お言葉ですが理事長、それのどこに問題があるのでしょうか?部活動に入部する義務は無いと思うのですが。」

「確かに、当校にはそのような義務はありません。ですが、男子生徒は何らかの部活に入り、男子生徒同士の交流を持つのが当たり前の状況になっています。現に、今の2、3年生の男子生徒は、全員が部活動に所属しています。」

 

金髪の女生徒は納得がいかないようで、少し顔をしかめていた。

 

「彼のためにも、彼を生徒会のメンバーとして迎え入れてはくれませんか?」

「………」

 

彼女は理事長の言葉に対して黙秘を続けていた。

 

その時、先程までは何も言わずに黙っていた紫がかった髪の色の女生徒が徐に口を開いた。

 

「ええやんエリチ。丁度男手も欲しいと思ってたところやし。」

 

どうやら金髪の女性徒のあだ名は『エリチ』というらしい。

 

「……分かりました。」

「ありがとう、絢瀬さん。それじゃあ龍也君、これから頑張ってね?」

 

俺が何も言わない内に全てが決まってしまった。かといって、俺が意見できるわけがないのだが。

 

「はい。精一杯やらせていただきます。」

「いい返事ね。それじゃあ絢瀬さん、今日の話はこれで終わりですから、今から彼に色々と教えてあげてください。」

「分かりました。それでは失礼します。宮地君、でいいかしら?生徒会室まで案内するからついてきてください。…希、行くわよ。」

「うん。理事長、失礼します。」

「失礼します。」

 

三者三様、それぞれがバラバラに挨拶して理事長室を後にする。

 

こうして俺は生徒会員になった。

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