「宮地君、ここが生徒会室よ。」
普通の教室とは違って、蝶つがいで開けるタイプだった。まあそんなことはどうでもいいのだが。
「早く入りなさい。」
扉から少し離れて佇んでいた俺のために扉を開けてくれる。
先輩に扉を開けてもらっていることに少し戸惑いを覚えるが、言われるがままに生徒会室に入る。
俺に続いて紫がかった髪の女生徒が、続いて『エリチ』さんが部屋に入った。
部屋に入ったはいいが、どうすればいいのか分からない俺は、会議用に『コ』の字を90度反時計回りに回転させた形に配置された机の丁度中心に突っ立っていた。
俺の後に入ってきた2人は、お偉いさんのために用意されていますと言わんばかりの席に座る。
先ほどの会話から推測するに、『エリチ』さんの方が会長で、もう1人は副会長、もしくは書記長っぽいんだが……どうなんだろうか?
俺がそんなことを考えていると、『エリチ』さんの方から話しかけてきた。
「改めて自己紹介するわね。私は生徒会長の絢瀬 絵里(あやせ えり)。それでこっちが」
「うちは生徒会副会長の東條 希(とうじょう のぞみ)。よろしくね、龍也君。」
「宮地 龍也です。よろしくお願いします。」
一応改めて俺も自己紹介をする。
「今日は何もすることはないのだけれど、何か聞いておきたいことはあるかしら?」
「そうですね……活動頻度と生徒会の人数を教えて欲しいのですが。」
「そうね、昼休みは特に活動しないわ。放課後は一応ここに顔出してね。メンバーは3年生は私たち2人、2年生は4人よ。顔合わせはまた後日になるわね。」
突き放すような口調の絢瀬先輩。
(俺、なんか失礼なことしたっけ?)
「ほらほらエリチ、そんな突き放したような言い方するから宮地君が怖がっとるよ?」
「……別に突き放してるつもりはないわ。」
「エリチ」
東條先輩に諌められ、絢瀬先輩は苛立ちを隠せずにいた。
絢瀬先輩は溜息をひとつつき、手元にあった資料を纏めると席を立って俺の方に目を向けた。
「今はあなたに手取り足取り教える暇はないの。仕事は力仕事だけでいいわ。その大きな体で役に立たないなんてのはやめてね、洒落にならないから。」
それだけ言うと、資料を持ってドアの方へと歩き始めた。
「エリチ!!」
東條先輩が絢瀬先輩を諫めようと大きな声で呼びかけたが、全く反応せずにドアを開けてどこかへ行ってしまった。
「ごめんね、宮地君。エリチは本当は優しいんやけど、今日はちょっと…」
「絢瀬先輩は真面目な方なんですね。」
「真面目過ぎるくらいなんよねぇ…」
「アハハ」と苦笑しながら人差し指で頬を掻く。
「それで、今日は仕事とかあるんですか?」
「ん〜、今日は特にないから帰ってええよ。」
東條先輩が掌をこちらに向けて振ってくる。どうやら本当に仕事はないようだ。
「分かりました。それでは今日は失礼させていただきます。」
「うん。じゃあまた明日来てな。」
俺はぺこりと一礼すると、そのまま部屋を後にした。
〜希side〜
「宮地 龍也君、か…」
先ほどまでいた男の子の名前をつぶやく。
「全然読めん子やな…」
私はそれなりに観察眼はある方やと自負してる。言葉を交わしてみればその人の人となりがある程度分かる。
でもあの子のは分からんかった。何を考えてるのか、何に興味があるのか、はたまた何をしようとしているのか、全くもって読めない。
机の上に置いていたタロットカードを引いてみる。私の大切なタロットカード。これで彼のことを占ってみよう。
「死神の逆位置…」
死神の逆位置が表すのは『孤独、孤立、再生の時期』
「ダメやな、さっぱりや」
私は引いた死神のカードを元に戻した。