星見雅(偽)   作:─────

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「……っはぁ、ふぅ……」

 

荒れた呼吸を整えながら、暁は刀を鞘に収めた。

ここは対ホロウ特別行動部のメンバーのために用意された稽古場のような場所で、以前に雅と暁が破壊しかけた場所でもある。

たった一人で刀を振るっていた暁は疲労からか、それとも頭に浮かぶ様々な雑念からか、その刀を鞘に納めてその場を去ろうとした。

その時

 

「……暁雅、ですね?」

「お前は?」

 

彼女の行手を阻むように稽古場の入り口から一人の男が入ってきた。

彼女が星見雅ではないと知っている時点で、かなり上の立場の人間であることは明らかだ。しかし暁は彼のような怪しげな空気を漂わせる男と会話をした覚えはない。男は親しげな印象を与えようとしたのか、ぎこちない笑みを浮かべて彼女に歩み寄った。

 

「私はあなたが想像するような立場の人間ではありません。ただ、そのような立場の方からあなたの境遇を伺ったのです」

「……そうか。その()()()()()()()()()立場の人間はどこにいる?守秘義務違反の疑いで処分をしなければならない」

「それはお話しできません。その代わり、あなたに一つだけ提案をしに参りました」

「提案?」

 

暁は眉を顰めて男を睨みつけ、警戒する態度を隠そうともしない。

しかし、男は不敵に笑いながら言う

 

「そう、あなたにとってとても魅力的な提案です。あなたと星見雅を分つ絶対的な力、妖刀の力を……その手に収める気はありませんか?」

 

暁雅は、その瞳を見開いた。

男は口角を釣り上げ、話を続けた。

 

───────────────

 

「─────ょう?──課長?」

「……?なんだ?」

 

星見雅として会議に出席する予定の暁が心ここに在らずという状態だったために、柳が躊躇いがちに声をかけた。

 

「そろそろ会議の時間ですよ」

「……あぁ、そうだな。すまない、少し考え事をしていた」

「考え事、ですか?」

「あぁ、私のこと、そして……母上のことだ」

 

それを聞いて柳は閉口せざるを得なかった。

星見雅と暁雅の話す母上のこと、というのは完全に別人の話だ。

だが、行方不明となっている母への想いは、故人として母を悼む星見雅以上にわからない。

考え事というのはその行方を案じてのことか、一人残されたことへの怨嗟なのかすらわからない柳には、何も口を出すことはできない。

 

「そうですか」

「……あぁ。彼女は私に、自分らしく生きろと言った。──母は、今の私の選択を許してくれるだろうか……」

「……えぇ、きっと」

 

それ以上、柳がかけられる言葉はなかった。

彼女の瞳に渦巻く思索に、柳が気づくことはできなかった。




一応これだけは言っておきます。
バッドエンドにするつもりはありません
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