星見雅(偽)   作:─────

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私と星見雅の貸切となった訓練室に木刀を打ち合う音が響く。

片方が打ち、もう片方がそれを弾く永遠にも思えるような応酬が始まってそろそろ30分は経とうとした頃、木刀を打ち合っていた私と彼女の距離が離れ、二人とも同時に木刀を下げた。

 

「……大分上達したな、剣の才能まで私に似ている。今のお前なら、本気の私と互角に戦えるかもしれん」

「何が互角ですか、まだ私は今の貴方にも勝てないというのに」

「そうか?私からすれば十分に強いが」

 

彼女の言葉が嫌味なのか本気なのか、その冷静な表情かはわからないが、私の知る彼女の性格からして褒め言葉だと信じることにしよう。

 

「それで、今日の“私”はどこに行くんですか?」

「午後から会議があると柳が言っていた」

「……それ、私が行って良いんですか?」

「あぁ、六課に関することならば〝仲間と共に話し合う〟と、私個人に関する話ならば〝会議に関係がない〟で通せる。少し前にお前自身が言っていたが?」

「そういうことではなくて、会議くらいは本人がしっかり参加した方が良いのでは?と言っているんです」

「日々の修行の方が大事だ」

「…………そういうことにしておきます」

 

そうして、私は星見雅として会議に出席し、先ほど星見雅に言われた通りの私が編み出したテンプレートと、時々違う言い方を挟んだり、議案について質問をしてみたりしてなんとか乗り切った。

 

「……またあなたに出席させたんですね?」

「これも仕事の内だ」

「それはそうですが……はぁ、まぁ良いです。緊急の招集です、来てくださいますね?()()?」

「……あぁ」

 

──────────

ホロウの内側にて

 

「ちょっと数が多いんじゃない!?」

「多いよ〜!そろそろ蒼角もお腹ぺこぺこ〜!」

「皆さん、あと半分です。辛抱してください。……無事ですか?課長?」

「……あぁ」

 

突如活性化したホロウにて、ホロウの拡張を阻止するため大量発生したエーテリアスの処理に追われる私たち。

今回の任務は私たち六課にのみ任せられ、そのほかには誰一人入り込まないようになっていた。

その只中で、柳さんが私に声を掛けてくる。

 

「……不満げですね」

「前にも言っただろう?私は武道よりも書類仕事が得意だ」

()()と遜色のない動きをしながら、良く言うものです」

 

こちらを見てくすりと笑った彼女を尻目に、私は刀*1を握り直した。

 

──────────

そうして、約一時間後

三桁を超えるのではないかと思えるほどの数のエーテリアスとの激闘を終えて、私たちは帰路についた。

 

「……にしても、ずいぶん強くなりましたよねぇ、()()

「世辞は辞めてくれ。私はまだ足元にも及ばない」

「いやいや、本物と遜色ないですって、そう思わない?」

「うんうん!すっごく強いと思う!」

 

悠真さんと蒼角さんは私を褒めてくれているが、実際には私はまだ本当の星見雅の半分ほどの力もない。

私はもっと、強くならなければならない。

そんな私の思考を阻むように、大きな腹の虫が鳴り響く。

 

「……何か食べに行こう。私の奢りだ」

「えっ、いいの!?」

「あぁ、好きなだけ食べると良い」

 

影武者になって星見家から多額の報酬を頂いているのは良いが、プライベート時間が少なく使い所がないため、私の貯金の使い道はもっぱら蒼角にご飯を奢り、それらが綺麗に彼女の幸せそうな口元に消えていくのを鑑賞することだった。

 

「……あまり甘やかすものでは─────」

「一仕事終えた後だ、少しくらい良いだろう」

 

昔から自覚してはいるが、私は常々身内に甘い。

そんな私に、柳さんもため息を吐いているが、こればかりはもう切り離すことのできない性根だ。

 

「……わかりましたから、そんな捨てられた子犬のような顔をしないでください」

「…………そんな顔をしていたか?」

「課長は本物より表情豊かですよ。本物のポーカーフェイスを見慣れてる人じゃないとわかりづらいですけど」

 

彼女の言葉に、悠真さんと蒼角さんも頷く。

 

「……武人としても、影としても、未熟」

「……?何か言いました?」

「なんでもない、それよりも食事だ。何がいい?」

 

蒼角にそう問いかけると、彼女は楽しそうに、しかし悩ましげにうーんと唸り始める。

私たちはそんな彼女と共に、今夜の食事を目指してホロウを出たのであった。

*1
影武者となった次の日、星見雅の扱う刀のレプリカを渡された

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