星見雅(偽) 作:─────
「……私は彼女に、多くの無理を強いた」
星見雅は、少しだけ目を伏せて言った。
「彼女は私と似ている、ただそれだけの理由で彼女の人生を私の影にしてしまった。……いつか、彼女の怒りを私が受ける日が来るのだろうと思っていた」
そう言って、星見雅は目の前の戦いを見やる。
自らの影であった少女が、
「〝私を殺す〟とまで言われるとは思っていなかったが、それを私に言わずにアレに言うということはつまり……、彼女はそれだけで赦すつもりなのだろう」
彼女が考えた通り、暁雅はあのドッペルゲンガーを殺す、ただそれだけで星見雅への負の感情全てを清算するつもりだった。
「……だから、この戦いは水を差さずに見守っていて欲しい」
星見雅は六課の仲間へ、そう嘆願した。
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……キリがない。
幾度切り結べども互いに一撃すら与えられない。
これが星見雅、なんと高い壁だろう。
切り結ぶほどに、自らの内にあった感情を理解してゆく。
羨ましい、憎い、許せない。
傍から見れば理不尽な恨みつらみが、私がこうして生まれ変わって、星見雅が他人だと自覚してからずっと、彼女へと向けていた感情の半分以上を占めるものだった。
「……ハ──」
知らず、笑いが溢れる。
理解してしまえば簡単なことだ。
私は一度、正面から彼女とぶつかるべきだった。
だというのにその機を逸して既に殺意へと膨れ上がっていたこの感情、それすらも捨て去る機会を、私は今ここに得たのだ。
「──ハ、ハハハ!」
刀を右手で構えて突貫する。
振り下ろされたドッペルゲンガーの刀を左手で
「─────!!」
ドッペルゲンガーは声にならない叫びをあげて、私の左手から──私の左手に傷を残しながら──無理やり刀を引き抜く。
そして鍔迫り合いとなったその時、ドッペルゲンガーの刀から炎が吹き出した。
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その光景に、星見雅は目を見開いた。
ドッペルゲンガーは他人の能力や容姿をコピーする、そうしてコピーされた妖刀『無尾』。
そこから噴き出した狐火が暁雅を包んでいる。
妖刀まで完全に模倣されると考えていなかった彼女は少しの焦りを見せ、大事となる前に助けに向かうかと悩んだ。
……その時、妖刀の狐火が暁雅の刀へと吸い込まれていく。
「……ここは?」
暁雅は、気がつけば見知らぬ空間にいた。
「……それほどに私が憎いか?」
目の前で彼女にそう問うたのは星見雅その人だった。
「……あぁ」
「何故?」
「私はお前が
「支離滅裂だな」
「私は、お前と同じになれると信じてた。……だけど、お前はどこまで行っても別人だ。──私はお前になれなかった、憧れて……現実を叩きつけられた。これは理不尽な怒りだ、わかってる……でも、それを晴らすために私はお前を殺す」
すると、暁雅の前に立っていた星見雅の姿が消え、いくつもの人の声が重なったような不協和音が彼女に語りかける。
「「面白い、良いだろう。我ら偽りなれど、お前の刀に宿り力を貸してやる」」
凄まじい熱が暁雅を包んだ。
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「……これが、妖刀の力」
ドッペルゲンガーから噴き出した狐火は暁雅の刀へと収束し、その刀身が蒼い炎に包まれた。
雅のソレとは違い、色相応の高温を放っているらしく、狐火が撫でた地面はその一部が溶解してゆく。
ドッペルゲンガーは、刀を水平に構えて暁へと肉薄する。
「──ハッ」
暁雅の瞳に、狂気にも似た光が浮かんだ。
彼女の口が不気味に吊り上がる。
暁はドッペルゲンガーの一撃を避けると同時にその脇腹を蹴り上げた。
転がったドッペルゲンガーは、妖刀の力すら奪われた自身の不利を悟って、最後の一撃の用意をした。
狙うは首、切り裂くことさえできればその後に負けようとも道連れ、そんな狙いの刀は掴まれて逸らされ、暁の足に突き刺さった。
刀が引き抜けるよりも先に、暁雅の刀がドッペルゲンガーに突き刺さり、狐火が内側からドッペルゲンガーの存在そのものを焼き尽くしてゆく。
同時に暁の刀に宿っていた狐火も消え去ってゆく。
「……さよならだ」
暁のその言葉は自らが打ち捨てた感情に向けたのか、それとも消え去ってゆく
……彼女自身にすら
青い火って赤い火より高温なんだよって初めて聞いたのは小学校か中学校なんですが、なんかびっくりしますよね