あれから数日経ち宿儺は自宅にて、家族に朝食を振る舞っていた
「悠仁の料理は本当に美味しいからねぇ、朝から年甲斐も無くワクワクしちゃうよ」
「父さん、その評価は嬉しいが気恥ずかしい故、母さん達の前では無しで頼む」
「そうなのかい?皆も同じ様に褒めてると思うけど…」
「母さんの場合はからかいが含まれるし、まどかの方は誇らしいと感じる故、表情を崩さなくて済む」
「アッハハ!そっか、分かった2人だけの時に褒めるね」
「そう言う事でも無いのだが…………」
宿儺が家族の中で最も尊敬する存在、それが鹿目知久である
優秀だがじゃじゃ馬な母を諌められる唯一無二の男
宿儺は父の料理を超えたと思っていない、単純な技量で言えば上かも知れない、しかし、込める愛情や心に伝わる温かさは真似しようと思っても中々再現出来ない
「それじゃ、ママを起こしてくるね。まどかもそろそろ起きてくるだろうし」
「相分かった、此方ももう出来上がる」
父とそんな会話をしていた折、眠たげな目を擦りながら妹まどかがリビングに顔出した
「噂をすれば何とやら・・・おはよう、まどか。悠仁の手伝いをしてあげて」
「おはよ〜、パパ、お兄ちゃん、うん分かった」
父はリビング出て母の部屋と向かう
「ねぇねぇ、最近巴さんとはどんな感じなの?」
「?、別に何も無い、一緒に出掛けるくらいだ」
「デートじゃん!お兄ちゃんやる〜!」
朝から兄の告白に興奮を抑えきれない、家族以外はその辺の虫でも扱う様な態度を取る兄に雪解けが訪れたのだ、安堵も大きい
「男女が共に出掛けただけでデートとは少々安直だぞ、まどか」
「イヤイヤ、お兄ちゃんは全然分かってない。このまま行けば孤独死直行だよ?、巴さんみたいな超優良物件に巡り会えた事に感謝しなきゃ」
「何故俺がマミに感謝せねばならん、定期的に俺の料理を食わせてやっているのだ。感謝されどもする必要は無い」
「うぁー、それ、モテないどころか人としてヤバいよ、まさかお兄ちゃんが……私が巴さんにフォローいれてあげるから安心して」
「おい、待て、どうしてそうなる?」
自身の兄で無ければ、見捨てていたかも知れない
家族に対しては機微の変化にも気付くし、不器用ながら兄なりの愛情表現も分かる
其れが他人となると途端に駄目になる、生まれながらに身体に不思議な模様があるのと人相が悪いから同級生だろうと兄に話し掛ける人物は少ない
それは別にいい、問題は外見に囚われず話し掛けてくれる人に物凄く無愛想な事だ
同じ小学校に通っていた時でさえ、兄が先生や連絡事項以外で他人と話しているのを見たのは片手で数えられるレベル
話したいけど空回りしているとかの可愛い話じゃない、単純に興味が無い、それだけ
兄の寂しい未来を防ぐ為、これまで幾度となく機会を(家族協力の下)設けたが全て失敗
そんな中で数ヶ月も付き合いが続いている巴マミは鹿目家にとって希望の星
兄に春を迎えさせる、そんな試みのもと巴マミには鹿目悠仁のあらゆる事が伝えられている
「そうよ悠仁、まどかにフォローして貰いなさい」
父に起こされた母が共にリビングに入って来る
「あっ!ママおはよー」
「おはよう母さん、それとどういう意味だ?」
「おはよう、悠仁、まどか、どうもこうも其のままの意味よ」
「なに?」
「悠仁アンタもうすぐ13になるんだよ、いい加減交友するって事を覚えなさい」
「……以前から言っているが友人が一人たりともいない訳では無い、ならば問題無いだろう」
「私だって無理に友達を増やせって言ってんじゃ無いの、悠仁を見てずっと興奮してる子とか、悠仁に小間使い扱いされて喜んでる人とかしか居ないのは不安になるわ」
「アレらが鹿目家に危害を加える事は無い」
「友達が危害を加えてくるかもしれないっていう前提を持ってる時点でダメでしょうが」
「しかし……」
「しかしも、だっても、でもも、あるか!なんでそう言う変に頑固な所は私に似ちゃったのよ」
悲痛な声を上げる母、頷く妹、苦笑いをする父
言われてばかりは癪なので反撃を開始する
「頑固云々を言うなら母さんだってそうじゃないか、今週からやっと産休をとったのであろう?、もっと前から休む様言っていたのに」
「それは引き継ぎとか色々あんの、裏方だろうと出来る事は多いの」
「母さんが居なくなっただけで、回らなくなる会社の方が問題だろう。弟に障ったらどうする気だ」
「大人は自由な分、責任があるの。我儘言わない」
「ほぉ~、母さんがそう来るならコッチだって考えがある」
「ふーーん、言ってみなさい」
「弟に余計な脂肪を吸収させない為、甘味などの間食を減らす」
「っ!、悠仁!」
「まだ言うようなら、他にも制限をつけさせて貰う」
どんどん白熱していく母子の言い合いにアタフタするしか無いまどか
誰もこの戦いをどうする事も出来ないと思われた、その時
バン!
柏手が反響する
普段菩薩の如き父の眉間にシワがいき、明王の様相になる
「はい、もう終わり、折角悠仁が用意してくれたご飯が冷めちゃうでしょ、悠仁とまどかは学校あるんだから話をするなら夜にしなさい」
会社では右に出る者は居ない程の豪傑である母、魑魅魍魎が跋扈する平安において呪いの王とまで称された宿儺
「「はい、ごめんなさい……」」
その両者が頭を下げ、冷や汗を流す
鹿目家の法を司りし存在に逆らうなど出来やしない
「うん、宜しい。さっ!ご飯食べよう!」
先程と同一人物とは思えない程、温かな空気を一瞬で作り出す
宿儺は思う、己にとって鹿目知久は虎杖悠仁の祖父に相当する
そんな人物の遺言なら、あぁなってしまうのも無理ないと
「ご馳走様でした、先に行くねお兄ちゃん」
宿儺より一歩早く食べ終わったまどかは足早に家を出る
「待つんだまどか、途中までは一緒なんだ。出るなら共に……」
「いいよ、巴さんがいるでしょ?多分そろそろ来るだろうし」
「そうだね、片付けは僕がやっておくから、巴ちゃんと行きなさい」
「……分かった」
「パパには素直なのにぃ、差別は良くない」
「差別ではなく区別という物だ、俺は今の母さんの在り方を好んでいる、だからこのままが良い」
「へいへい、車に気をつけなさい」
「じゃ、おっさっきー」
「「「いってらしゃい」」」
まどかが先に家を出る、宿儺は式神に思念伝達する
「(
「承知致しました、悠仁様」
一本角を持ち、3mはある巨躯の黒い熊、両手首には宿儺と同じ呪印が赤色で描かれている
まどかの後ろについて、一緒に出ていく
「(
「「はっ、我らの身命に代えましても御両親を御守り致します」」
人程の背丈に隼の頭で山伏の格好した二足歩行の鳥人、両足首には宿儺と同様の呪印を持つ、祈葉
2mを超える肉体に、黄緑色の体色、横に長い瞳孔がある蛙、肩の部分に呪印がある、恵樂
両名は誇らしげに他の式神にアピールしつつ、父母の隣に陣取る
鋭い牙の白い狼で体長は2m、額に呪印を持ち反転術式を使用可出来る式神、斑尾
立派な二本角と筋肉質な体躯、頬に呪印があり四脚の鹿で前述と同様反転術式が可能な式神、頼鹿
「承知致しました、何かあればご連絡下さい」
「悠仁様の御家族に傷なんて残しません」
老成した精神を持つ2体は、落ち着いた声音で悠仁の命令に従う
他の式神達は自身の強化の為に既に出払った
宿儺は見届けた後、家を出る
「行ってきます、父さん母さん」
「「行ってらっしゃい悠仁」」
父母の優しげな瞳を背に、朝日を浴びる
宿儺が前世で得られなかった平穏が此処にある、呪いの王と呼ばれた怪物はもういない
日常回です
式神達のモチーフは他のファンタジー系の漫画アニメ等のキャラです
書いてて実感するのは、色々足りてねぇ
どなたか書けるお方はいらっしゃいませんか?