今日はクリスマス。
アビドスでもその寒さは健在だ。
「うへ〜、皆メリークリスマス!」
私、小鳥遊ホシノは後輩たちに囲まれながらクリスマスの1日を過ごした。
クリスマスパーティではプレゼント交換会やクリスマスケーキ、レクリエーション……どれも充実したものだった。
「……ユメ先輩」
私はベットの中で今は亡き先輩の名前を呟く。
「一緒にクリスマスを過ごしたかったな……」
妄想が膨らむ。今日のクリスマスパーティーを先輩と一緒にできたら……と。
「クリスマスプレゼント、先生にはクジラのぬいぐるみって言ってたっけ」
私はそんな寂しい気持ちを紛らわすために先生に聞かれたプレゼントを独り言つ。
「私は……本当は……」
だんだんと意識が薄れていく。きっともう体が限界なのだろう。クリスマスを子供のようにはしゃいだ結果だね。
「ホシノちゃん」
「……えっ?」
私の意識は現な状態から冷水をかけられたかのように覚醒する。それもそのはず、聞き間違えるはずがないこの声は先輩、ユメ先輩の……!
「メリークリスマス!だね!」
「先輩!」
「ひぃん!ホシノちゃんいきなり大声を出さないでよ!ビックリしたぁ」
「何で先輩が?どうして……」
「サンタクロースから言うには『クリスマスプレゼント』だって!ほらこれ見て!今日は私はトナカイさんだよ!」
ああ、なんて……なんて残酷なんだろうか。
「ユメ……先輩……ううっ」
「うわっ、ホシノちゃんいきなり抱きついて……ふふっ」
ユメは自身の胸に飛び込んだホシノの頭を優しく撫でる。赤子のように泣くホシノが泣き止むまで撫で続けた。
「こんなプレゼントがあったなんて……先輩と再び会えて嬉しかったです」
「私も嬉しいよホシノちゃん!」
「……でも、先輩は次の人にプレゼントを渡しに行くのでしょう?」
そう。私だけのプレゼントではない。先輩はキヴォトスの皆のプレゼントを配るトナカイなのだ。一瞬でも先輩に会えたことを喜ぼう、それ以上を私が望むなんて……
「ちょっと待っててね!」
「……えっ、先輩?」
ユメは窓の外に身を乗り出して誰かと話している。楽しそうに、ときには両手を前にして頼み込んで。
「ホシノちゃん!サンタさんが今日だけはここにいていいって!だから一晩中お話しよう!私とホシノちゃんだけのクリスマスパーティーだよ!」
なんて晴れやかな笑顔。
私の目には再び涙がこぼれ落ちる。
「ほ、ホシノちゃん、ほら!プレゼントのぬいぐるみだよ!『うへ〜』って笑って!後輩たちの事とかホシノちゃん自身のこととか聞きたいからさ!」
「……はいっ!ありがとうございます、先輩!」
ホシノはユメからもらったクジラのぬいぐるみを思いっきり抱く。
ホシノはユメと叶えられなかった夢を叶えたのだ。迎えることのなかったクリスマスを。
「"メリークリスマス、ホシノ"」
プレナパテスとプラナは2人のクリスマスパーティーを尻目に次の日生徒の元へと向かった。
そこからしばらく。
『ホシノさん、セリカさん、ノノミさん、アヤネさん、シロコさん……あと残るは1人……ですね』
「"久々に三人が揃うね。あの時の私は色彩に囚われてたからね……こうしてゆっくり話すのは久しいな"」
『はい……行きましょう、シロコさんのもとに』
二人はプレナパテス時空のシロコの元へと向かった。
「ん、そう言えば今日はクリスマスだったっけ……」
シロコはガラクタを売ったお金でケーキを一つ買った。とても1人では食べられないホールのケーキを。
「これだけあれば先生の分も……」
シロコは自身の住む家に帰ってきた。そこには祭壇と荒んだアビドスの校章、プレナパテスとの写真、遺影があった。
「メリークリスマス……皆」
「"メリークリスマス、シロコ"」
「!?先生……どうしてここに」
『私もいます。先生はクリスマスの奇跡で今日だけここに来ることができたのです』
「"そう。だからシロコにもクリスマスプレゼントを……"」
「ん、なに?」
「"はは、クリスマスケーキをと思ったんだけどね。ここの私は事前に聞けなかったから私がケーキを買ってきたんだけど……被ったね。これならA.R.O.N.Aの言う通り七面鳥を飼っておくべきだった……"」
並んだ2つのケーキは同じものだった。
「同じものを買うなんて奇遇だね」
「"そうだね……どう?これからささやかなクリスマスパーティーでも、幸い飲み物も買ってきたんだ"」
「……する!」
プレナパテスはそう言って袋からオレンジジュースを取り出す。シロコは子供のように目を輝かせ応える。
「"ここでの出来事とか聞かせてよ、私も興味あるからさ"」
「話す。ここにはケーキが2つもあるから、食べ終わるまで話そう」
「"そうだね、そうしようか"」
『食べきれないのでは……?』
三人は2つのクリスマスケーキを前に他愛もない話をしながら聖夜を過ごすのだった。
『きっと、こうやって私たちに過ごす時間をあげるためにここの先生は……』
「"ありがたいことだね。2人とも、クリスマスの奇跡に乾杯"」
「『乾杯』」
プレナパテスとプラナとシロコはささやかなクリスマスパーティーを開くのだった。
いつかプレ先生救う話を描きてぇな。