気づけば、多くの人が病室の周りに集まってきていた。
病室の壁には大きく穴があき、隣の部屋とつながっている。
ちょうど隣の病室には人は数名しかいなかったようで、壁の崩壊に巻き込まれた人はいないようだった。
うん、いや、え、、何があったの、、?
私が人知れず、”一人ヒーローごっこ”をしていたところ、突然、轟音とともに壁がなくなった。
まるで私が一人でごっこ遊びしていた恥ずかしい様子を、隣の病室の人に暴露するかのように。
「(とか言ってるけど、たぶん、、、)」
うん、たぶん原因は、私、だろう。
というのも、私が今、まさに今、これまでに経験したことのないような、流動的な何か、エネルギーのようなものの流れを体の中に感じているからだ。なにか、ナ◯トだったらチャクラみたいな、エネルギーが体中を巡っているような感覚がある。特に、蜂に向けた右手。
汗がとまらず、心臓の鼓動がはやい。
何が起こったのか、もちろんさっぱりわからない。全然説明できない。
でも、たぶん目の前の惨状は、わたしが引き起こしたものだ。なにか、大きな力みたいなものを体の中に感じている。
さっきの一瞬、
私の頭の中で、急にトラックにはねられた瞬間の記憶が膨れ上がってきた。
だんだん思考がトラックに圧迫されていって、頭の中が大きなトラックで埋まっていって、頭痛に顔をしかめていたら、、、どーーーん。。
目の前の壁はもうなかった。
向こうの病室の人も、あとから集まってきた人も、もうみんな目がまんまる
「
と言いながら、壁の崩落から30秒も経っていないのに、すぐにヒーローが窓から入り込んできた。
オレンジ色のマントをまとい、何やら口髭がとても長いヒーロー。
うーん、あまり街中では見たことない。
とはいえ、到着のあまりの速さに、プロヒーローの実力の高さがうかがえる。
「ともみ!!!!!!」
あれ、今度はお母さんが廊下から走ってきた。
わたしは体中包帯ぐるぐる巻きだし、目の前の壁はぼろぼろだし、めちゃめちゃ心配されているようだ。
「お、お母さん、、。、わたし、壁、ぶっ壊しちゃったかも、、、・」
「、、、、、、、、ほえ?、、?」
******
どうやらお母さんは、交通事故の知らせを聞いて家から飛んできて、受付で私の病室番号を確認していたところ、病院の上の階から非常に大きな音がして、とりあえず私の病室にかけこんだらしかった。
夏休みの宿題がぐしゃっと入れられていた私のリュックにあった生徒手帳から、母に連絡が行ったらしい。
事故だけでも驚きなはずなのに、病室行こうとしてたら轟音。さすがに母がかわいそうだ。
「トラックにはねられたって聞いたし、病室には穴が空いてるし、本当に心配したんだからね!!!?」
あとでこう言われてしまった。ごめんなさい
そのあとてんやわんやあって、壁はヒーローに一瞬で復元され(さすが超人社会である)、私は警察の事情聴取を受けることになった。
髭のヒーローのあとに別のヒーローが呼ばれ、そのヒーローの個性で崩壊した壁を鑑定したところ、私の個性痕が残っていたらしい。
「これやったの、、、たぶん、、私??、ですかね?」
無個性だった私にはこんなことを引き起こしたのが私なんて半信半疑だったが、私の体の中の謎の力の感覚も、状況証拠も、私が犯人だと言っている。
トラックに跳ね飛ばされて打った頭は特に異常がなかったため問題ないらしいが、交通事故による、全身打撲&かなり様々な部位の骨折&内臓へのダメージ、の治療と、個性の発現と暴走による個性検査のため、私はさらに入院することとなった。
壊してしまった壁の修繕費とか、ヒーローの手を煩わした的なお金は、なんでも「個性の発現による暴走」、つまり事故として、国から保険が降りるらしい。
とてもらっきー!
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場所は変わって検査室。
「おそらく、あの衝撃は、ちょうど壁にトラックが突っ込んだようなものでしょう。」
「ん?えっとそれってどういうことですか?」
「双葉共美さんが、壁への衝撃の前に、トラックの想像で頭がいっぱいになったってお話されていましたよね?だから、頭の中のことを具現化したとか? ただ、病室の中にトラックの破片とか、一部分のようなものは特にありませんでしたから、トラックが具現化されたとかじゃなく、衝撃だけが壁に伝わっているという感じですね、、」
「な、なるほど、、(私が事故で体験したトラックの衝撃だけを再現したってこと、?)」
「ただあの衝撃は、確実に共美さんの『個性』によるものでした。」
「ほ、ほんとうに、すみませんでした、、」
病院の、壁を、ぶっ壊してしまったのだ。
人を巻き込んでいたかもしれない。
お医者さんは、
「いえ、だいじょうぶですよ。ヒーローが直してくれましたし。ただ、人にぶつけてはいけないものだということは、確実に、絶対に、確かです。個性の訓練は、人のいるところでは、できれば家の中でも避けたほうがいいでしょうね、、」
と言っていた。
で、ででですよねぇ、、、としか返せなかった。
母の個性は、『
自分の心の中で、「〈シャッター〉」と念じると、目の前の様子が写真のように切り取られて、絶対に忘れないらしい。
私が生まれた瞬間、小学校の入学式の日、運動会、卒業式、、すべて思い出は、頭の中にあるそうだ。
愛を感じるな♡
父の個性は、『テレパシー』
父が考えていることを、ぼんやりとだが、他の人の頭に送ることができるらしい。具体的な言葉や、細かい描写までは難しいそう。また、自分から一方的に送るだけであって、人の心を読んだりすることもできないそうだ。
でも、どちらの個性も、壁を粉々にするようなものでは全くない。
どちらかの個性が発現したわけではなさそう。結局あまり参考にならず、私は自分の個性の制御をどうすればいいものなのか、わからなかった。
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一ヶ月後、病院から無事に退院し、
(やっぱり病院は本当にすごい。治癒系のえぐい個性のお医者さんやその他の医療従事者がそろいまくっている。トラックにはねられて、全身大怪我の私が五体満足で帰ってきているのがもうすごい病院のすごさを感じる。)
学校でクラスメートから囲まれた。
みんなすっごい心配してくれた。いい友人たちや。
一ヶ月の間に、私は療養しつつも高校受験の勉強をすすめ、進路について決心をした。
どの高校に決めたかって?
想像がついているでしょう。
そう、 雄 英 高 校 だ。