ここは、雄英高校モニタールーム。
雄英の教員総出で、試験演習場内を飛び回るドローンからの映像を精査し、受験生たちの実技の採点を行う。
ちょうどプレゼントマイクが試験開始の合図を終えて、モニタールームへ一旦戻ってきた。
「今年もすごい個性がたくさんいるな。」
「ああ!そうだな、ブラド。お、あいつは講堂での試験内容説明で目立ってた、超絶真面目なリスナーじゃないか!?」
映像には、一体のロボットに飛びかかり、顔面に蹴りを叩き込んだあとにその勢いで体を反転させて隣のロボットにまで飛んでいき、同時に二体のロボットを無効化してしまった、メガネの受験生が映されていた。
彼は、持ち前のスピードにより威力が上乗せされた蹴り技を中心に、着々とポイントを重ねていた。
「あっちなんかもすごいぞ。メガネのやつほどスピードは足りていないが、危なげなく確実にロボットを破壊している。」
別の試験会場からの映像には、ツルのようなもので関節を中心にロボットを縛り上げ、動けなくなってから地面に叩きつけるなどして、ロボットの破壊を続ける受験生がいた。
死角を生まないようツル状の髪を展開し、しっかりとポイントを獲得している。
「、、、今年はレベルが高いかもしれないな。なかでも、、あいつは、何だ、、戦闘のセンスがずば抜けているな、、」
「どんな中学時代を過ごしてたんだよ!!すげえぜ、あいつは」
「でも、、」
「ああ、、、」
「「、、どう見ても『
正面のモニターには、ロボットの残骸の上に一人立って吠えている、すごい笑顔(凄い笑顔、、?)の受験生がいた。
彼の両手付近では、バチバチと爆発が起こっている。彼は、試験時間の3分の1ほどまでにすでに受験者の平均を優に越えるようなポイント数を稼ぎ、そこからとどまることを少しも知らず、現在他を寄せ付けないトップのポイント数となっていた。
「どの演習会場の受験生たちもうまくやっているみたいだね。、、でも、、本番はここからなのさ。」
ポチッ
******
現在40Ptまで稼ぐことができた。
でも、演習会場が違っていたら、私はもっとポイントを稼いでいるはずだったと思う。
、、、というのも、あの死ねや君が、演習場内のロボットを片っ端から狩り尽くしているからだ。超困る。
ロボットが現れ私が照準を定めたときには、すでにもう横からの爆発でロボットが吹き飛ばされている。横取りというやつ。
でも誰も彼に声かけられない。やめてよとか、落ち着いてとか、言いづらい。ちょっとでも気に触るようなことを言ったら、あの爆発がこっちに向きそうだから。
うん、そういう顔してるもん。こわい
とか言いつつ、彼の戦闘力は格上だと認めざるを得ない。
ヒーローらしい目立つ個性なうえ、見た目だけではなくその汎用性や威力も申し分ない。爆風をいかした移動や細かな立ち回りなど、センスすらずば抜けている。
機動力、破壊力、反射、動体視力、地形の把握。すべてがこの受験会場の中でトップクラスだろう。
もし試験の減点項目に「『
すごいなあ、世間にはこんな子がいるんだ。やっぱり雄英ってすごい。
そう思っていると、真後ろのかなり遠くで、低い、地震に似た轟音がした。
振り返ると、さっきまで日向だった場所がすべて日影になっている。その影を作り出した張本人。あれは、、、、
「0Pt!!!!」
とんでもない大きさのロボットが、突然演習場の真ん中に現れた。
東京の高層ビルかというくらい。巨大な腕で大きな道の両側に生えている建物をつかみ、センサーをギラリと光らせていた。
足の、震えが止まらない、、。
私の左右を、逃げてくる受験生たちが次々と走り抜けていく。
私も逃げないと!
しかし、私は見つけてしまった。
0Ptが向かっていく先の足元に、二人の受験生が動けないでいたのを。
一人は気絶しているようで、もう一人は右足を怪我していて、気絶している方を運べないように見えた。
「ごめん!あんたがウチをかばったから、、!!」
そう声が聞こえた。
気がついたら私は、二人に向かって走り出していた。
すぐに正気が戻ってきた。なんで走り出してるんだ、私は!なんの戦略もないし、あんなでかいやつを退ける手段なんて一つも思いつかない。
あの二人を助けて逃げるだけのスピードも私にはない。
でも、私の足は止まらなかった。
どうにかしてあの二人を救ってみせるしかない。
私以外にもう一人でも動ける仲間がいれば!
ロボットへの時間稼ぎと、二人の救助、手分けができれば!!!
、、ん、ピンときてしまった。
そう思って私は、スピードを落とさずにそのまま、人生で最も大きな声でこう叫んだ。
「ばくはつのやーーーつ!!!!来ォーーーーーーーーい!!!!!!!」
おそらくこの試験会場トップ、死ねやくんの力を借りないとだめだ!!
多分この試験会場で一番うまく立ち回っていたのはあいつで、最も負けず嫌いなのもあいつだ。あいつの目は、絶対1位を取るまで挑み続ける人の目だ。
そんなやつが、ポイントを稼がないといけないという試験のルールに囚われて、0Ptに挑まないと思う?あんなにでかい、挑戦すべき壁が現れた。少なくとも逃げるような選択はしていないだろう。
彼を信じて、「(お願い!!!!!!)」と強く願った。
その瞬間、向こうから、断続的な爆発音とともに、ものすごい速さで彼が飛んできた。先程までとは比べ物にならない速さで空中移動している。移動の衝撃で、周囲の瓦礫が舞っている。
私は足は止めないまでも、そのスピードに圧倒された。あんな速さ、さっきまで見せてなかったのに!、、、死ねやくん!!!
「(あの速さなら、二人を抱えて十分に離脱できるだろう!!それなら手分けできる!私の役割は、ロボットの足止めだっ!!)」
怪我をした二人の横をすり抜け、ロボットへ向かってさらに走っていく。
ロボットの目、というか赤いセンサーのようなものがこっちを向いた。
さすがにあのロボットにトラックがぶつかっても、吹き飛ばされるのはトラックのほうだろう。よくても表面の装甲が、薄い金属板がへこむ程度だ。
だから私は、ロボットに向かって両手を突き出し、10本の指すべてを前に向ける。
右手の5本の指、左手の5本の指、そのすべてをロボットの右膝へ向けて、照準を合わせる。
これまで、右手の人差し指のピストル型でしか、個性を〈放出〉したことはない。
でも、10本の指すべてが、あれと同じピストルだと思えばいい!!!
まさに
実技試験説明会の最後に、あのDJの先生が言ってくれた言葉を思い出す。
__「かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った!
『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」____
「さらに向こうへ!!!!〈トラック〉っっ!!!」
ロボットの膝の部分に、計10台分のトラックがクラッシュするほどの衝撃が与えられる。
0Ptの足の関節は、横方向からの非常に強い衝撃により、折れ曲がることで破損した。
片足の関節が不自由になったくらいで0Ptロボットは止まらないし、倒れもしてくれない。
それでも、ほんの一瞬でも足止めを行うことはできたはずだ。
指がじんじんと痛む。それでも、ロボット速度は多少落ちたはず!あとは、私も逃げるっ!!!!
、、と思っていたら、なんと、目の前で、0Ptが、バランスを崩して真横にずてーんと倒れていった。
「、俺に!指図すんなやゴラァ!!!!!」
私が右のひざ関節の破壊を試みた瞬間、あの死ねや君は、後ろの二人の救助なんて全くお構いなしに、0Ptの顔面を左側から持てる最大の火力の爆破で攻撃し、0Ptのバランスを崩して転倒させてしまったのだ。
破壊まではできなくても、これは大きな時間的有利を生み出した。後ろの二人を連れて、十分逃げられる時間が生まれた。
「死ねやくん!!!!!ナイスコンビネーションっ!!!!」
ぐっ、とサムズアップ。
「っるせえ一人でできたわ!!!死ね爆破して殺す!!!!!」
っええぇぇ〜〜、、、、、こわ、シンプル暴言
私はそのまま後ろの二人を運ぶために走った。
二人を運んで少ししたところで、試験終了の合図があった。