異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
「で、どうだ
茶化すようにからかうようにして、俺は大和さんにそう聞かれる。
この場にいるのは綾音にラウラと椿さんそして泉華さんであり、一応カイザーがいるくらい。
「ちょっとタイム下さい」
「紗綾でも良いぞ?」
「もっとタイム下さい」
タイムを要求したらなんか選択肢が増えた。そしてその時の大和さんの声はマジトーンで余計に考えが固まる。
今頃下の階ではダンスが行われてるだろうが、その中心で踊れというのは酷というか……それにそもそもだ。
なんかさっきから中がうるさいというか、魂の世界が騒がしい。
意識を向ける余裕がないから一瞬だけの確認、それを見た限りではメルリの外出用の魔法陣付近で大規模な魔力行使の気配を感じる。
それを考えるに下手に……というか誰かを選んだ時点で詰む。
「ねぇ今何の話してるの?」
「綾音嬢? ……と椿はどうした?」
「次は、声を、かけ……ます」
「気にしなくて良いよ、それより霊真は何を躊躇ってるの?」
「そりゃ、ダンスパーティーで坊が誰と踊るかって話だな」
「……ふぅん、へぇ」
空気が凍り、冷気が漏れる。
無意識だろうが、俺の足下に氷が伸びて……それどころかちょっと凍る。
極寒の冷気が場を支配するこの場所で、俺の視線は泳ぎ助けてほしくてカイザーをみる。
「む霊真、せっかくなら我と踊るか? どの踊りも習得済みだぞ!」
カイザーらしいがそこで出される助け船。
あまりの優しさに俺はその手を取ろうと言葉を出そうとして、口を開こうとした瞬間だった。
「――ぐっ何を椿、さん」
「空気読むでござるよ」
鋭く冷たいその声音。
椿さんがカイザーの後ろに回り混み、次の間にはカイザーはそのまま床に倒れた。
何をしたかは理解できないが、力なく倒れた友達に言葉をかけたい……でも、この状況では無理そう。
「ねぇねぇ霊真君、お姉さんはいいからね」
話が勝手に進んで、狭まる選択肢。
椿さんの方を見れば、そこには姿が無くカイザーまでもが消えたいた。
そんな状況で踊るとならばラウラか綾音なんだが、選ぶなんて事は出来ないし――何より、それをするのは俺じゃないような気持ちに苛まれて。
「む、選ぶも何も私達と踊れば良いだろう?」
「ラウラは良いの?」
「久しぶりに踊りたいしな、それに一人だけという制約などないだろう?」
「なら、それでいいかな? じゃあよろしくね、霊真」
あれ、俺の意思は?
喉元まで言葉が出かかったけれど、それならばと覚悟を決めた。
これで断るってのが一番最悪だし、俺と踊りたいと伝えてくれた二人にそれをするのはあまりにも酷いから。
「……あぁ、よろしく頼む二人とも」
――――――
――――
――
「結構時間も経ったよな? じゃあ、ここからは主役の時間だぜ?」
そんな煽り文句から始まって、俺はラウラと一緒にダンスが行われてる中心に立たされていた。
数百を超える人の視線を受けながら胃を痛めつつも、まったく動じていない様子の相変わらずなラウラに少し笑う。
「何故笑うんだ?」
「いや、お前らしいなって……ちょっと気が楽だわ」
「なんだそれは、まあいい踊るぞレイマ?」
「――ははっ仰せのままに、お姫様」
「ふっ畏まるな馬鹿」
踊るのはこういう場所に合わせて社交ダンス。
それこそだ、異世界で何度も叩き込まれたのを思い出しながらも、ラウラにリードされながら踊っていく。
異世界で……いや、この世界でも貴族の血筋のラウラはやはり上手くて、俺か支えようと思ったけど、全然駄目で。でもそれが彼女らしくて、何より懐かしさを感じられた。
「懐かしいな、あれから上手くなったな?」
「まぁ機会はあったからな、お前に教えられた以上は下手に出来ないだろ」
軽く言葉を交わして……言葉にしずらいが、安心感すら覚えて俺はそのまま彼女と時間を過ごして。
「さぁ、次は綾音の番だ――行ってこい、レイマ」
「あいよ――まあやるだけやってみるわ」
「なに、気にするな。上手かったぞ」
なら安心だな。
それから俺は軽くなった心で待っていた綾音の前へと歩き、音を遠くに感じながらも彼女と視線を合わせた。
「…………」
「…………」
ちょっと立ち尽くし、お互いが無言。
少し頬が膨らんだ綾音にかける言葉を探すが、キザったらしい言葉を彼女にかけても笑われそうだしと思考を巡らせる。
「……ダンス上手いね」
「そりゃ、な」
というか、あれだ。
なんかやばい程に緊張してきた。
……ラウラとは踊り慣れていたから良いけれど、よく考えれば綾音を踊りに誘うなんて考えたことなかったし、そんな機会を想像したことも。
でも、こんな状況で踊らないなんて彼女に恥をかかせるだけなので。
「はぁ――綾音、今からの俺は忘れてくれ」
それだけ伝えて、覚悟を決めて。
俺は綾音の宝石のような紅い瞳を真っ直ぐ見つめた。
目の前で膝をつき見上げるようにして微笑んで――彼女のためだけに言葉を繋ぐ。
「――
出来るだけ顔に出さないようにしつつ手を出して、そのまま彼女の返事を待つ。妙にゆっくりと感じる時間の中で、速くなる鼓動が凄くうるさい。
周りの視線が余計に気になる。格好付け過ぎてないだろうかと、恥ずかしくなる。
白いドレスを纏う彼女、見上げた顔はほんのり染まって、か細い声で「ずるい」と聞こえたと思ったら――。
「ふふ、喜んで」
俺の手に重ねられた白い手。大切なそれを俺はぎゅっと包み込み、指を絡ませる。
何でだろうか? 踊り始めればびっくりするほどに息が合って、なんだかそれが楽しい。
「あはは、楽しいね」
「……かもな」
動きを合わせて、相手を想う。
最初は遠慮がちだったけど、俺に身を任せてくれるのか寄り添う彼女は見惚れるほどの笑顔だった。
「ねぇ、霊真。私、踊ったの初めてだよ」
「上手いぞ」
「ふふ、ありがと。私ね、霊真と踊れて楽しいな」
いつもは凜々しい彼女、だけどその時の笑顔は。
「綺麗だな」
「ッ――馬鹿霊真」
口にしてしまうほどに、綺麗で儚げなほどに可愛いと思えた。
それに対する返答はそんな一言。いつもからかってくる彼女の珍しい照れた表情がなんだか嬉しくて。
「むぅなんで笑うの?」
「え、笑ってるか?」
「やっぱり、ずるいな」
彼女の白髪が揺れて、音に合わせて足が踊る。
大きな広間で、俺達は周りの視線すら忘れ去って――ただ今は、彼女との時間を楽しんだ。