異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第108話:因縁つけられ対抗戦

 踊り終わって……顔を見合わせれば、それが少し可笑しくて互いに笑った。

 最初感じてた恥ずかしさはもうないけれど、今は別のなにかがあって。それが余計におかしくて周りの視線を気にせず笑い合った――次の瞬間の事だった。

 パチパチと妙に芝居がかった拍手が会場に響く。

 

「流石はSランク冒険者、【召英殿(ヴァルハラ)】殿だ――素晴らしいダンスでした」

 

 現れたのは見知らぬ冒険者、何人かの男女を連れて現れたその人達。

 中には見覚えのある男性がいて、それに思考が一瞬持って行かれつつも……正対の形を取られる。

 俺達のダンスが終わったことで静寂に包まれたその場所で、その冒険者らしき男の声はよく響いていた。

 

「……貴方は?」

「私ですか? 私はギルド……【イリーガル】副ギルドマスターをしている蛇ケ崎一樹(じゃがさきいつき)という者です、以後お見知りおきを」

 

 胡散臭い笑み、此方をなめ回すような気持ちの悪い視線を覚えながらも二・三個言葉が伝えられる。

 目に見えて分かる悪意に、少し身構えつつも……俺が返事を悩んでいると、この場に誰かが近づいてきた。

 

「ねぇどうしたの一樹君、君がこういう場所にいるのは珍しいよね」

「あぁ丁度良いですね、泉華殿」

 

 彼女が来たのを見て、笑みを深める一樹という男性。

 それに泉華さんと綾音と共に怪訝な顔を浮かべてしまう。明らかに狙ったようなタイミングでの接触とその言葉に、穏便に済ませようとしたのか泉華さんが喋ろうとしたが、それを遮るように彼は言葉をかぶせてきた。

 

「私達【イリーガル】は、ギルド【ヴァルシア】に対抗戦を申し込みます」

 

 そして、そんな事を要求してきたのだった。

 理解できないその言葉、俺が初めて聞くそれに困惑していると泉華さんが鋭い声で言葉を返した。 

 

「どうしてかな? それは、揉め事があるときの制度だよね……せめて理由を言ってくれると助かるんだけど」

「理由は幾つかありますが、政府からの依頼……いえ指令が主でして。配信を一回もしてない、実力不明のSランクを私達で試せというもの、なんですよね」

「なにそれ、私達は聞いてないけど」

「それは今回のメイン行事ですので、サプライズというわけですよ。でも皆様も思うでしょう? 本当に【召英殿(ヴァルハラ)】殿は、Sランクに相応しいのかと」

 

 あくまで冷静を装うように、そう伝えられる言葉の数々。

 周りに視線をやりながらも、俺達を糾弾するように続けていく。

 

「それは、どういうことかな?」

「急に現れたSランク、操る召喚獣はどれも化け物だらけで、明らかな危険分子。現代の冒険者にも関わらず配信という手段を使わずに一切の発信をしようとしない――さぁ、いったい【ヴァルシア】は何を企んでいるのですかね」 

 

 ……思考が冷める。

 俺だけが何かを言われるのはいいが、あろうことかこいつは……皆のことを化け物と言った。しかもそれだけじゃない、霊真の居場所だった【ヴァルシア】さえも疑って、周りに問いかけるように言葉を続ける。

 

「考えてもみてくださいここ数年で急成長したギルド【ヴァルシア】。在籍するAランクも多く、規格外とされるSランク冒険者が現時点で三人もいる。そんな過剰な戦力を集めて、どれだけのダンジョンを占領するつもりですか? ダンジョンとは資源でもあり成長の場……それを独占するつもりにしか思えませんよね?」

 

 静かな会場でよく響くその声、同調を求めるようにして発せられたその言葉。

 畳みかけるようにして、どこまでも自分たちが正しいと言いたいような態度で。

 

「だからこそ、私達に依頼が来たのでしょう。国内屈指のギルドである【イリーガル】に。私達に貴方達と戦えという依頼が、私達なら試せるという信頼の元で。それとも、あれですか? やはり【召英殿(ヴァルハラ)】殿に実力は無いと?」

「……なんでそうなるのかな、一樹君」

「だって、考えてもみてください。Sランクとは、至高の存在。そこに至る道のりは覚醒したからと行って辿り着けるものではなく、映り込んだ配信のみで戦う者が至って良い場所のはずがない、私は八百長にしか見えないのですよ。だから私達が試すのです」

 

 それが彼の言い分だった。

 一方的にあくまでダンジョンという財産を守るように、この現代の環境を利用してそう告げて。そして、それは最悪の形で逃げ場を無くされる。

 この状況で感じる既視感が……俺の呼吸を乱して、言葉を紡げさせなくする。

 

「実力があるのでしょう? それならば私達と戦っても問題が無いはずです。それに、これは政府からの正式な依頼、断れるとお思いで?」

「――おい、さっきから聞いているが、俺にもその話は届いてないぞ? どこからの依頼だ?」

 

 割って入ってくるのは大和さん。

 そこに安心感を覚えて少し荒くなる呼吸で彼を見れば、その表情は無に近かった。だけど魔力が怒り故に漏れているのか、この場所にあまりに重い圧がのしかかる。

 

「おや【防人】殿、ちゃんと依頼書は貰ってますよ? 今出しましょうか?」

 

 だが、それを受けても表情を崩さないそいつは一枚の依頼書を取り出して、大和さんへと手渡す。

 

「チッ――利益しか考えねぇ蛆共が」

「これは正式な依頼なのですよ、だから【ヴァルシア】には断る選択肢などは無い。それにです。見たいでしょう皆様も、本当にこの男がSランクなのかを」

「……私を置いて話してほしくないんだけど、大和のお爺ちゃん見せてくれる?」

 

 大和さんから渡される依頼書。俺の感情を感じてか、召喚獣達の怒りが伝わってくる。だけど、こんな場所で今解放するのが一番の悪手だから。なんとか、制御しつつ泉華さんを見れば彼女は持つ書類に力を込めていた。

 

「【イリーガル】が勝った場合、霊真君をそっちに所属させる? 受け入れるわけがないでしょ!」

「はて、書いてあるとおり見合った報酬は支払われるでしょう? ただただ実力を示せば良くて、例え嘘でも私達が鍛えるのですから。それともやはり八百長ですか?」

「――ほんっとうにふざけてるよね!」

 

 この状況で、誰も動けない。

 政府の依頼なのは間違いないそうで、それに背くのは出来ないから。綾音達も、他の冒険者も――そして、当事者である俺が最も動けなくて、トラウマに触れられて。

 

 異世界で裏切られた時とは別だが、似通うものがあって。何より怒り狂う召喚獣達を抑えるのに精一杯で、呼吸が苦しくて……そしてそれを俺の近くの綾音にだけは見られたくなくて。

 

「そもそもこんなの事を、逢魔君が許可するわけが!」

「いや、許可は出した。悪いな……泉華」

 

 そして、人混みの中から金髪の――あの時にダンジョンで出会った男が現れて、そんな事を口にして、すぐに俺に視線を向けて――逢魔はあの時と同じ態度で言葉を投げる。

 

「で、断れねぇとは思うが……どうすんだサモナー」

 

 突っぱねるような言葉。

 召喚獣を宥めながらのせいで頭痛が酷いが、それでもなんとか言葉を返さないといけない。

 

「ッ受けるしか、ないんだろ?」

 

 これの発端は俺だ。

 断ればあいつの、霊真の居場所である【ヴァルシア】に迷惑が掛かる。

 そもそも逃げられる状況ではなく、もうこれは決まっていることだから。

 

「霊真君!?」

「そうだな、話が早くて助かる。長々やるつもりもねぇから手短に言うが、今回の対抗戦は防衛戦だ。せいぜい頑張れよ。それと帰るぞお前等。もう用はないだろ」

「そうですね逢魔。日程は三日後、政府のダンジョンにてお互い頑張りましょうか」

 

 

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