異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第109話:ブチ切れ同好会

 命名式に集まっていた冒険者が帰されてから時間が経ち、大和さんを除いた俺を含むSランクの面々に加えて呼ばれた式が集まっていた。

 部屋の空気は冷えに冷え、全員の表情はどこまでも暗く……その中でも。

 

泉華(せんか)、私を今すぐ【ヴァルシア】に入れろ」

 

 過去類を見ないくらいに感情を露わにしていたのは、ラウラだった。

 解放すべきではない吸血鬼の力が漏れて、赤黒い羽が形成される。足下には魔力により底なし沼のような赤いものが出来て――そこから武器が生えかけていた。

 

「それは、ごめんねラウラちゃん出来ない。今入団させるのは一番リスクがある」

「関係あるか? 私は、今冷静でいられる気がしない。それに私は無所属だ何の問題もないだろう……でなければ、ここら周辺を破壊しそうだ」

 

 この世界で人気のある夜騎士の力ではなく、ミソロジアの吸血鬼の力を抑える気がないのか一言喋るごとに圧が増す。

 その言葉に嘘はなく、最後の理性が飛べば本当に暴れ出しそうだ。

 俺のために怒ってくれてるのが分かるせいで、彼女を止める権利はない。

 

「……落ち着けラウラ、気持ちは同じだ。我等に出来る事はない」

「お前は、私にそれで落ち着けと?」

「そうするしかないだろう」

 

 宥めてくれるカイザーに視線を向ければ、彼の腕は龍化しており……握り込んだせいか爪が皮膚に食い込んでいる。

 流れる赤い血に、我慢してるのが見て取れて……他の人にも視線をやれば、椿さんなんかはずっと無表情だった。

 

「どう、するの……泉華?」

「やるしかないよ。それに日程を考えると……もう告知されるだろうね」

「そうなったら話題性は抜群で、それこそ賑わうだろうな。なにせ最新の英雄と露出がなくて信者の多いあいつがメインになるだろうからな」

 

 今まで黙り込んでいた式が、そう言ってスマホのページを開き見せてきた。

 そこにはダンジョン庁の公式ページが映っており、大々的に【イリーガル】VS【ヴァルシア】と書かれている。

 

「式殿は、落ち着いてるでござるな」

「一人は冷静なのがいないとな――で、親友は戦えるのか?」

「…………やらなきゃ駄目だろ」

「義務感なんて聞いてねぇよ、お前が戦えるのかを聞いてるんだ――ギルド対抗戦は揉め事の解決と定期的な娯楽として配信される場だ。ダンジョンとは違って、人対人が唯一許されたコンテンツ……お前は人を傷つけられるのか?」

 

 鋭くて、何より冷たいその言葉。

 親友の言葉も心配していることも全部分かる。俺の性格を考えて、人と戦えるのかを聞いているんだろう。

 

 俺の力を知ってるからこそ、想ってくれるからこそ、出ただろうそれ。

 案じてくれて、次の言葉が伝えられたが。

 

「お前はサモナーだ。召喚獣に任せるでも――」

「いや……戦うぞ、俺はあいつらにこそ人を傷つけてほしくない」

 

 それに対する俺の言葉は決まっていた。

 今回の対抗戦は別れる前の大和さんが伝えてくれたが、政府が保有するダンジョン内で巨大な魔石を防衛する戦いだそう。

 

 当たり前だが、俺は召喚獣達と戦った方が強い。

 皆と共に戦って勝利を掴む生き方。きっと皆は、俺が頼めば戦ってくれるだろう。それこそ何が相手だとしても。

 

 だけど、それは俺が嫌だった。

 今回の相手は人間だ……きっと彼女らの力を借りれば勝つことは出来る。暗殺に長けたリコリスを喚べば悟られずに終わらせれるだろうし、ソルの魔法で一掃できる。

 ルナを頼れば全てを凍らせて破壊する事も、バアルに任せればそれこそ速い。

 メルリなんかは良い例だ。あいつは現状喚べる仲間の中でこういう事は大の得意であり、カマソッソを喚んだ場合は……どんな数でも相手できる。

 

 でも……それは、彼等に人を傷つけさせることに繋がってしまう。

 ミソロジアという世界で、どこまでも悪と言われた彼等。

 偽善と言われようとも、俺はそんな彼等が、今この世界で英雄として語られ始めたあいつらに誰かを。

 

「逢魔って人と戦うのは、正直心配だ。だってあの人は凄く強いのが分かるから――でも、今回は俺の力だけで戦うよ」

 

 だから今回の覚悟はそれだ。 

 こうなってしまった以上、負けられない理由が沢山ある。

 霊真に体を返した時のために【ヴァルシア】での居場所を残さないといけない。この戦いでは皆の力は使えない。

 

「……だから大丈夫だ。心配すんなよ皆」

 

 安心させるためにも、出来るだけ笑う。

 ぎこちないかもしれないが、少しでも皆の気が楽になれば良いからと。今回の発端は俺だから皆に苦労をかけたくないから。俺一人が、頑張れば。

 

「はぁー……ほんと、記憶失っても変わらないね霊真君。すぅぐ、一人で頑張ろうとする。それ、本当に悪い癖だよ」

「そうだな。おい親友、今回はギルド(・・・)対抗戦だ。五郎や他の皆は参加できねぇけど、俺と綾音に泉華さん――それこそ【ヴァルシア】の皆だっているんだぜ?」

「うん……背負う必要なんてないよ」

 

 だけど皆は……この世界で俺と関わってくれる人達は、どうやらそれをさせてくれないらしい。泉華さん達は、そう言って俺に手を差し出して――優しく笑ったんだ。

 

「任せてねラウラちゃん達、霊真君には絶対に無茶させないから」

「それならば任せるしかないだろう。だがあれだぞ泉華、負けたらレイマは攫う」

「……ちょっとそれは、黙秘でござるラウラちゃん」

「式に綾音、友を頼む。我とヴァルキュリアが乱入しないようにせいぜい足掻け」

 

 ……なんでだろう。

 俺は異物のはずなんだ。それなのに、なんでここまで――。

 

「じゃあ方針は決まりだね、目下やること――【イリーガル】をぶっ潰す」

 

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