異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第112話:蹂躙

「だ、誰か生き残った奴は状況を!」

 

 氷獄に落とされた拠点の中では僅かに残った者達の怒号や悲鳴が飛び交っていた。あまりにも無茶苦茶すぎたあの魔法に、誰もが正常な判断を下せない。

 

「逢魔さんが奥で止めたから被害は半分で済んだ!」

「意味分かんねぇよ! というか、食らった奴は!?」

「完全に凍結してる……意識はあるけど、これどうすんだよ!」

 

 攻撃は一発の筈だ……でも、だけど。

 こんなのを迎え撃てとか聞いていない。簡単なはずだった。そもそも、ここに来るまでの道中にはこれでもかという程の爆弾を仕掛けたのに――。

 

「一樹さんからの指示だ! Aランクを二人含めた十八人で【召英殿(ヴァルハラ)】を迎え撃て! あの大技を撃ったんだ魔力なんて残ってるはずがない!」

「数で囲め、流石のアレも数には勝てない!」

 

 一気に十八人が拠点から出ていき、【召英殿(ヴァルハラ)】である霊真を迎え撃つように出撃したのだが、そこから見れた光景は悲惨なものだった。

 氷獄……初めて見るはずなのに、そう思えてしまうほどに冷えた氷の世界。

 吐く息は出した側から凍り付き、肌は震えて気を抜けば寒さにやられる。

 たった一発の魔法が起こしたこの光景に、冒険者である自分たちの常識が崩れる音すら感じてしまう。

 

「そもそも、どこから……撃たれたんだ?」

 

 そうやって、誰かが一言漏らした瞬間だった。

 極大とも言える魔力の塊のような気配がこっちに急接近してきたのだ。そいつはかろうじて残っていた爆弾を食らいながらも、姿を現す。

 

「けっむ……これ、魔法使いのスキルか?」

 

 これを仕掛けたのは、特殊ジョブとされる軍師を持つ蛇ケ崎一樹(じゃがさきいつき)だ。

 魔法使いの派生でもあり、様々な罠やエンチャントを得意とするこの戦いにおいて最高に相性がいいとも言える存在。

 彼は、このダンジョンに事前に幾つもの罠と監視魔法を用意しており【ヴァルシア】に対する作戦を立てていた――霊真を襲った罠もBランクの冒険者すら吹き飛ばせると豪語するほどに魔力が籠もった物の筈だった……のに。

 

「そんなに受けて、なんで生きて!」

「っとやっといた。なんだ。当てる気ないから出来れば避けてくれ――サンライズ・エクスプロージョン」

 

 

 焔が走り爆撃が地面を伝って、奥の拠点までの道を一気に破壊する。

 進行上に立っていた者は全部が全部吹き飛ばされて、余波だけで意識を失う者が大半。霊真はそれを確認したあと、気にすることなく進んだ。

 

「っし、奥に進むか」

 

 

――――――

――――

――

 

『これは凄いよ! 短期決戦狙いだね!』

『あの時の魔法か、流石に出力は落ちてるがえげつねぇな……』

『というとなんだい、お爺ちゃん?』

『あれは、Sランク相当のゴライアスを一撃で殺せる魔法だ。誰かが生きてる時点で、相当威力抑えてるぞ(ぼん)は』

『わぁお、流石霊真君だぁ!』

 

 配信を見ている者達の間には止めどない興奮と驚愕が押し寄せていた。

 映っているのは普段の配信では見られないような、異次元の魔法と爆発の中を突貫する霊真の姿。

 

 詠唱を始めた時点で配信越しに感じられた魔力で湧いて、次に発動された大魔法に歓声を上げた者すらいる。

 

『というか凄いねサモナーが出していい威力じゃないってアレ』

『戦いてぇな』

『気持ち分からないけど、今度頼めば良いんじゃない』

『ふぁ~あ、そうするか』

『どうしよう皆、大和のお爺ちゃんのやる気がゼロだぜ!』

 

 興奮する江奈に対して、心底冷めた目で一応の解説をしてくれる大和。

 だけど、そんな対極な二人とは裏腹にコメント欄はかつてない盛り上がりを見せていた。加速して湧いて、何より流れる速度が尋常じゃない。

 

 〔フォォォォォ!〕

 〔あたおかすぎてまじで草ァ!〕

 〔ずっと笑ってる〕

 〔なにがどうしてこうなった?〕

 〔爆撃続きすぎぃ!〕

 

 

――

――――

――――――

 

 敵の拠点に侵入して、俺はダインで残っている【イリーガル】の面々を氷付けにする。ここまでやる必要があるかとも思ったが、逢魔……というか【暴殺雷鬼(カーネイジ)】を相手にするのを考えると、他者の被害を防がないといけないから、出来るだけ凍らせておこうの判断。

 

〔死屍累々〕

〔氷結地獄〕

〔英雄降臨〕

〔焼肉定食〕

 

「まじで誰だ今の!?」

 

 この状況で、一瞬だけコメント欄に目を通せば……そこには訳の分からないコメントが一個あった。

 

 ツッコんでしまったが、一度冷静になるためにも周りを見る。

 あぁ、この光景はまるで異世界の再現だ。

 後半の冒険で、何度も魔物相手に使った手段。

 攻城戦などの戦いでの慣れ親しんだ手法……まぁ、あっちは手加減する必要なかったけど。

 

 とにかく、【ヴァルシア】の拠点の大きさを考えると……そろそろ魔石がある部屋だけど……。

 

「でだ。さっきから尾行してる奴……そろそろ出てこい」

「……なんで、分かるんだよほんと」

「って――どっかで見たことあるな、あんた」

「覚えてるのかよ……俺は龍牙。とにかくだ俺は敵だぞ? 戦えよ【召英殿(ヴァルハラ)】」

 

 そう名乗る彼は、剣を構えてこっちを見た。

 どこかで見たことあるのは覚えているが、確かこいつは。

 

〔馬鹿降臨〕

〔馬鹿じゃん〕

〔あれ、でもなんか雰囲気ちがくないか?〕

〔勝てるわけなくね?〕

 

 そこで思い出せたが、確かこの人はあの龍塚にいた冒険者だった気がする。

 あの時は放って帰ってしまったが、無事だったのならよかった。

 ……あのパーティーの時にもいたけど、確かに雰囲気が違う気がする。

 

「俺なんかじゃ、お前に勝てないのは分かってる。でもな、俺にだって意地があるんだよ――だから【サモン】マジックカーバンクル」

「あんた、サモナーだったんだな」

「頼るのはやめたつもりだったけどな……でもさ、お前に挑むにはこいつがいないと駄目なんだよ」

 

 喚び出されたのは、兎のような小さい不思議な獣。

 額に虹色の宝石が埋め込まれたその獣は、龍牙にかなり懐いているのか甘えている。その姿は、少し調べたこいつの噂とは掛け離れていて――。

 

「さぁ、やろうぜ――いや違うな、お前に挑ませろ狩谷霊真ァ!」

 

 その時、彼に剣には炎が纏われて、カーバンクルが魔法陣を起動してそこから幾つもの弾幕が。それは彼と召喚獣の絆が感じられるような見事な連携。

 俺へと剣で迫って、それの補佐としてカーバンクルが魔法を使う。

 

 何度か剣戟を交わし、カーバンクルの追撃を避けて――俺は素直に。

 

「すげぇじゃん、あんた」

 

 この戦いが始まって、初めての……純粋な感嘆。

 この人に何があったか分からないけど、俺はこの戦いで初めて気が楽になった。

 

「――だけど、すまん。勝たないとだからな。行くぞ、ダイン」

 

 待っていたと言わんばかりに、ダインが魔力を食う。

 そして、俺はこの部屋全体を凍らせるように魔法を使って――相手の、龍牙の動きを止めた。

 

「ちくしょう、こんなに遠いのかよ!」

 

〔馬鹿が格好いいな〕

〔よく、挑んだよ〕

〔……サモナーだったのか、こいつ〕

〔トドメは刺さないのか?〕

 

 足を凍らされて地面に縛られる龍牙に俺は声をかけようとした。

 この先には多分逢魔がいるし、この戦闘音も聞かれてるだろう。それを考えるといつ奇襲が来ても、おかしくないわけで――。

 

「ッ危な、突っ立てるなよ馬鹿!」

 

 考えを巡らせる最中、俺に向かって一発の魔法弾が。

 それに威力は無いが俺を吹っ飛ばすには十分――何がと思って、龍牙を見ればそこには爆破された部屋があった。

 

「おや、どうして邪魔するのですか龍牙君?」

「しら、ねぇよ。地獄に落ちろ、副マスターが――」

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