異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第114話:災禍の黒龍VS雷霆掴む英雄神

〔なんだこれ、なんだこれ? なんだこれ!?〕

〔大怪獣バトルで草〕

〔なにこれぇ?〕

 

 コメントが阿鼻叫喚に包まれていた。

 過去類を見ないほどの速度で流れて、盛り上がりなんてレベルを超すほどに負荷が掛かる。

 三人称のカメラに捕らえられるのは、巨大な黒龍と逢魔が戦う姿だ。

 目測で二十五メートルはあるその龍は、動くだけで全てを破壊し尽くす。水を操りブレスを吐いて、爪で薙ぎ払い、この場の環境を現れただけで変化させた。

 

 冬であり乾燥した夏として語られるヴリドラというこの黒龍は、まさに自然現象を神格化した存在。彼女という神がいるだけで、世界は変革する。

 

「まったく姉の扱いが酷くないかな、流石に対価は貰わないとねー」

 

 イリーガルの面々を転移させながら安全な場所に送るのはメルリの仕事だ。

 転移魔法で意識を失っている者や降参した者を1カ所に集め、彼女は彼等の戦いを見守っていた。

 

「本当はこいつらを助けるなんてしたくないけど、レイマの頼みだしぃ? まっ後でいっぱい精気貰お!」

 

 鼻歌を奏でながらも、彼女は巨大な魔法陣を展開して倒れた者達を守るための結界を張った。ミソロジア最高峰の魔法使いによる結界は、一瞬で起動されこの場にいる者を守ってくれるだろう。

 

「あの貴方は?」

「ん、私かい? 私は、レイマのお姉さんさ! そういう君は、うんヒーラーだね。確かレイマの旧姉だっけ?」

「なんだろう、負けちゃいけない気がするな」

「え、そもそも勝負にならないから諦めた方が良いよ? 私が唯一無二のレイマのお姉さんだから」

 

 結界を張り終えて、一仕事を終えた風に息を吐くメルリに対して……霊真のギルドマスターである泉華が話しかけたのだが、相変わらずの様子で返された。

 

「ねぇ、綾音ちゃん……この人は?」

「えっとぉ、変な人?」

「むっ? 私はエルフでサキュバスなお姉さんだぜ? 忘れて貰っちゃ困るよ?」

「…………ギルマス、これは無視で頼む。今はそれより霊真達だ」

 

 結界の側には【イリーガル】を全滅させ終えた【ヴァルシア】の皆がいる。本来ならこの隙に魔石を破壊すれば良いのだが、そんな暇などなく――そもそも巻き込まれたらいけないという共通認識の元で安全地帯に集まっていた。

 

〔目が離せねぇ!〕

〔なんだこのバトル!?〕

〔これが、Sランク……〕

〔いや、その範疇を超えてるだろ〕

 

 風が蠢き、水が脈動し、霊真のサポートによって何重にも強化されたヴリドラが暴れ回る。逢魔の雷は彼によって阻まれて龍には届かない――今ダンジョンの中はあれだけ氷獄に落とされていたのに、今や豪雨に満ちる環境へと。

 

――――――

――――

――

 

 魔王という厄災との決戦間際のことだ。

 俺とパーティーメンバーである四人に、各国の主戦力を加えたメンツで魔物の大群に挑んでいた。

 

 数万を超え視界を埋めるそれらは壁のように俺等に迫り、徐々に戦力を削っている。正面で俺を守ってくれていた戦士であるガルダはあまりのキツさに一度戻って、声をかけてきた。 

 

『ッレイマ、このままだとジリ貧だ。指示を頼む』

『正面突破が理想――だけど、魔力の温存考えると……』

『レイマ様……ここは私が囮に、大規模掃討なら適任ではないかと』

『駄目だルフェル、誰一人欠けさせない』

 

 状況は最悪。

 ここを切り抜けるとならば、召喚獣を何人か置いていき任せるしかないが――あの糞魔王の事を考えると、一切の戦力は落としたくない。

 相手の群は、全部がSランク超え。

 最早その括りに入らない化け物達が集まって、俺達を潰しに来ている。

 

『おい、戦友――残るなら()だ』

『……駄目だろ、あんたも魔王戦には必要だ』

『この中で一番殲滅が得意なのは吾だろう? それにだ。一撃の火力なら並ぶ者はグラムクラスのみだ。故に全霊を持って道を拓く、だからあの屑はお前達に任せたぞ』

『でも、この数で生き残れるわけ――』

『はっ吾を舐めるなよ? 元より貴様は頼らなすぎだ。今ぐらい、我が儘を許せ』

 

 覚悟はしているようだ。

 何度も見た死地に向かう者の顔、ここまで何度も一緒に戦った戦友のそんな頼み。嫌だって言いたかった。止めろとも……でも、今はそんな甘い考えで戦えるわけがないから。

 

 状況を考えてヒーラーであるルフェルは必要で、ガルダも犠牲に出来ない。

 シュラもイザナも俺のパーティーの主力であり、魔王戦には必須。故にこの場に残すのは――。

 

『――死ぬな、また後でな』

『はっ追いつくぞ、精々吾が来る前に終わらせろ』

 

 それが彼との最後の会話。

 ……最終決戦で生き残ることの出来なかった。一人の戦馬鹿との記録だった。

 

――

――――

――――――

 

「くははははッ楽しいなァ戦友!」

「俺は楽しくねぇよ、馬鹿シャクラ!」

 

 俺の前で、人の形をした雷が轟いている。

 そいつが魔力を使えば、腕の中で槍の形を取って、幾百もの雷がヴリドラを討たんとして迫り狂う。

 

「そもそも今どっちだよ!?」

「半々だな、吾が半分逢魔の小僧が半分だ」

「――ほんっと、お前は人に迷惑かけすぎだろ!」

「了承は得ているぞ? ……今までの礼だから好きに暴れろとな!」

 

 こいつは、シャクラは――白兵戦に至っては俺の全盛期より強い。

 召喚獣との戦いでは上回る事は出来るものの、今の弱体化している俺では勝てるかどうかも怪しい。だけど、それは相手も同じなようでミソロジアと同じ出力の魔法は使えないみたいだ。

 

 豪雨の中で、シャクラという名の雷霆が鳴り響く。

 赤の瞳が雲の中で輝いて、迫る魔法の気配に寒気を覚えた。

 

「――吾は季節を殺めた簒奪者、愚かなる民達へ水の恵みをを与えよう。龍を穿った吾の名は黒龍殺しのヴリトラハン!」

 

 それは、原典の一項目。

 インドラという英雄が、ヴリドラを殺したという伝承の再現だ。

 これは不味い、多分だがこれが彼が放てる最高の技。原典解放(オリジンバースト)をしないで放てる彼の奥義。何度もこれに救われたからこそ、自分に放たれる恐ろしさを知っている。

 

 だからそれを打ち消せる技となると、俺に取れる選択肢は一つしかない。

 原典解放は不可能――それはこの場にいる者を殺してしまうから。 故に俺は言葉を紡ぐ。彼に今の俺の力を見せるために!

 

「世界を包みし晴天は邪黒の鱗に閉ざされた、母なる海は爪牙(そうが)によって切り裂かれ、世界に(そび)えし山嶺(さんれい)を嘆き龍の顎が喰らう!」

 

 使うのは代理詠唱。

 俺が魔力を肩代わりして、ヴリドラの必殺で相殺する。

 

黒龍穿つ銀色の金剛杵(ヴリドラハン・シルバヴァジュラ)

魔を統べる邪龍よ、災禍以て世界を喰らえ(ヴリドラズ・アスラ・ディサイズグラトニー)

 

 ――白銀の雷が轟いて一直線に放たれる。

 対して、ヴリドラという存在そのものが魔力を解放する。

 災禍の名の下に空に光が灯って流星が逢魔を狙い、空間に溶けた邪龍が百の群となって逢魔を喰らわんとして蠢き始める。

 

 

 瞬間、衝突――そして。

 射線上にあった全てが、ヴリドラに飲み込まれた。

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