異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第121話:因縁具現

「ついたが、ボスの情報を共有しとくぞ――このダンジョンのボスはアビス・クロリスっていう……まあ、花の女神の名を冠した化け物だ」

 

 更地になったダンジョンを進み、辿り着くのは巨大な扉の前。

 厳重に閉ざされたボス部屋に入るその前に、逢魔によって齎されるその情報。

 名前だけでの判断は出来ないが、ミソロジアでの知識に当てはめるのならば花を司る女神。神話の記述を考えると、彼女の楽園には花の姿に変えた人々が住んでいるとされている。

 

「そいつの特性は?」

「数百種を超える植物を使った状態異常、阿片を発生させる植物の生成、部屋全体を操った対処不可能な攻撃――あとは、花に変えた人間と魔物の兵隊だ」

「了、解だ……なぁ逢魔、目的は達せそうか? 今のところ目標の姿はないけど」

「いなかったらそれでいい。だが、それでもあいつだけは倒した方が良いだろうな。半年間放置されたこいつがどこまで育ってるか分からねぇし」

「――分かった。戦力は足りるか?」

 

 現状のパーティーはルナにバロール、それに逢魔と俺。

 部屋の大きさはまだ分からないが、相手がデカいのならばそれに合った対策できる召喚獣に力を借りないといけないだろう。

 それに、一撃だけならいいがソルの力を適所で借りなければいけないだろうし……それだけの相手にバロールを通すなら、原典解放(オリジンバースト)も視野に入れよう。

 

「一掃は出来るだろうし、お前の仲間のことは知ってるが……一撃で殺さないと厄介なのが多い」

「それならあー、シバルの力を借りるか」

「あの時の奴か、確かにあれは適してるだろうな」

 

 そういう事になったので、軽く念和した後で許可を取ってシバルを喚び出した。

 前の反応を考えるに逢魔がいるから心配だったが、今回喚び出したシバルはなんというか少し穏やかというか……。

 

「……よろしく頼むぞ小僧、そして隠れてる馬鹿もな」

「勝手に死んですまんだってよ、とにかく背中任せたぞカマソッソ」

「まぁこれで挑むか――準備は良いか皆?」

 

 頷かれ……そして俺達は扉を開く。

 踏み入れるのは植物に覆われる神殿。奥に辿り着くまでの道には幸せそうな顔をした人間の死体が幾つも並んでおり、それは美術品のように置かれていた。

 

「……趣味悪いな」

「――ここまで揃える奴は初めてだな、かなり成長してるとみていいだろ」

 

 感じるのは明らかな嫌悪。

 こういう趣味の奴は異世界にもいたが、久しぶりに見ると堪えるものがある。

 しかも何が酷いって、その体には魔力が宿っており微かに生きていて……魂を閉じ込めている事を嫌にでも理解してしまった。

 

「……バロール」

「はいレイマ様、看取りましょう」

 

 ……バロールの異世界での異名は、死の聖女。

 魔物を狩りその命を見送って、何百年もの間たった一人で誰かの死を看取ってきた過去を持っている。見たものを殺してしまう、バロールの力。

 どんな者でも魔力次第で殺すことが出来るそんな呪いを持った彼女の本質は善性。死ぬことが出来ない者に祝福をと、たった一人で生きていた彼女だから、この光景に思うことがあるのだろう。

 

「……霊真、壊すとあいつ強化されるが」

「関係ない倒すだけだ、ひとまず解放させてくれ」

 

 死せぬ者へと祝福を、魂を持つ時点で基本は受けてしまうバロールの死瞳。

 彼女によって視られた花死体は、糸の切れた人形の様に崩れて魂が解放される。

 

「……どうか、安らかに眠って下さい」

 

 この数を一気に殺したバロールは、軽く祈って……俺へと振り返った。

 彼女の顔は少し悲しそうで寂しそうで、だからこそ――いつもの様に言葉をかける。少しでも彼女の気が晴れるようにと。

 

「お疲れ、バロール」

「はい、こういうのは久しぶりですが……ちゃんと送れたでしょうか?」

「大丈夫だぞバロールお前の死は優しいからさ、きっと大丈夫だ」

 

 そうして、ボスに挑む前に黙祷を捧げる。

 ルナもシバルも軽く目を瞑り、少しの時間が経った瞬間に逢魔が何かに気付いたのか……一気に魔力を解放した。

 

「霊真、おかしい――壊した時点で攻撃が来るはずだ」

「いるのか?」

「寝てるだけかもしれないが、警戒はしてくれ」

 

 そう、短く告げられた瞬間の事だった。

 耳をつんざくような悲鳴が、聞こえてダンジョンの奥から女性の悲鳴が。

 

「ヤダ、ヤダ! カザッテタダケナノニ! ナンデ、ウバウノ!? ヤメテヤメテヤメテェ!」

 

 何かを引きちぎるようなえげつない音、俺達が急いで奥に進めば植物の体で出来た魔物が無機質な何かに遊ばれていた。

 真っ黒い無貌の化け物、腕には巨大な爪が生えており――それで魔物を切り刻むそいつは、顔がないのに嗤ってる。

 

「――あい、つは」

 

 そこで初めて、逢魔さんの声から感情が消えた。

 何を思ったかは分からない、でも――次の瞬間に発された殺意と魔力に怯んでしまう。極雷、青く光るそれは周りに無機質に放射され、方向性を持って放たれる。

 

「――滅びろ、デミ・ニャルラァ!」

 

 だけど、その攻撃は――こっちに気付いたソレが振り向いた途端に喰われた。

 ばっくりと……大きな口が広がって、あの一撃を無効化したのだ。

 

「インドラ? ぁ、あノ時の、僕のインドラ。ねェネぇ、チョウダイその原典を。大丈夫、ダイジョウブ上手くボクが使ってあげるから。ねェ綺麗に殺してあげるから」

 

 異質なのに流暢に聞こえるその声、口がないはずなのに発せられるその言葉は――頭に響くように俺等に届く。

 

「ネぇ、だから――君を食べサせテよ、インドラ」

「――お前だけは、殺す」

 

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