異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第124話:その雷は希望を射貫く

「ッ逢魔!?」

 

 逢魔が切り裂かれて、そのまま遠くに放り投げられる。

 俺を突き飛ばして庇った、馬鹿は――満足そうな顔で転がっていて、それに俺は。

 

「あ、呆気ナいネ――なラ、あとでデいいヤ」

 

 興味を失ったように響く声。 

 俺にすぐ向き直ったそいつは、無貌だった所に口だけ作り手でにっこりと笑顔を作った。思考をまとめないといけない、今すぐ逢魔を治さないと彼が死ぬ。

 また、誰かを失う――そんなのは。

 でも、この状況で取り乱すのはいけない。

 逢魔が繋いでくれたこの命、絶対にあいつを倒すために使わないと。

 

「――なぁ聞かせろ、お前殺して楽しいか?」

「エ、楽しイよ? だってぼクの力になるンだかラ!」

「そうか、ならここでお前は殺す。そして逢魔も助ける――だから、死ねよ」

 

 一呼吸。

 そして限界まで魔力を皆に送って、二人の原典に接続する。

 

「――神殺しの月狼よ月の権能を喰らえ。死瞳を持つ聖女よ、死を纏いて命を祟れ」

 

 告げるは二節。

 ……彼女らの原典に俺の魔力を送って、その力をより引き出す。

 

原典解放 (オリジンバースト)終末形態(モードラグナロク)】【死眼聖女(トート・ハイリゲ)】」

 

 逢魔と皆に即死耐性を付与する。

 ……まだ生きている可能性に賭けて、そしてもう彼が疲れないように。

 ルナの背中に月が浮かぶ、手足に冷気が纏われて――そしてバロールは、髪がより伸びて角が増えて瞳が二色に変わった。

 

 通常展開できない破瞳と死眼、それが両目に宿って――死壊の瞳が空に浮かぶ。  

 そして、本来の種族から神性が引き出されて、この場全てのモノが死んだ。

 周りの植物は枯れて、相手の体がぼろぼろに何度も崩れては壊れる。

 ルナ達には耐性を付与したから良いが――なかったら今頃俺達ですら命を失っていただろう。

 

「それ、何? 欲しイよ、ほシいな! お前を喰えば、僕にも出来るよね!」

「――今からするのは蹂躙だ。お前が死ぬまで殺し尽くす」

「それは、いいね、楽しそう――ぎゃっ」

 

 その瞬間に相手はまた死んだ。

 ルナによって凍らされて、砕かれたんだが――炎を出しながらも再生してまた俺達に向かってくる。

 

「あはは、遊ぼうよ――英雄!」

「うるさいな、ほんと」

 

 詠唱魔法は悪手。

 ……隙は無いし、原典解放で魔力が足りない。

 それにだ――こいつを殺す術を考えると、確実に当てないといけないから。

 

「死ねよ、今すぐに」

 

――――――

――――

――

 

 微かに残る意識で、目の前の光景を見続けている。

 殆ど限界まで削られた魔力、一歩も動けそうにないし――何より動けば死ぬと分かる。俺が抗う術はなくて、目の前に仇がいるのに、何も出来ないのは悔しい。

 

(俺が誰か庇うなんてな――あぁほんと無様で笑える)

 

 ……体が冷たい。

 霊真の魔法で延命されているのだろうが、それが余計に悔しい。

 でも、なんでだろうか? 気付いたらあいつを庇ってて、あいつを倒す機会を棒に振ったのに、この結末に満足してて。

 今俺が見える光景が、どうしてかとても綺麗で、憧れすら抱けてしまって。

 

(あぁ、そうか――俺が夢見てた英雄ってこいつだったのか)

 

 仲間をサポートして、仲間と共に困難を乗り越えて、どこまでも全てを乗り越えるそんな英雄。シャクラの話を聞いてこいつを知って、違和感はあった。

 でも、今なら確信する。

 ――俺は、ずっとこの英雄に憧れていたんだって。

 きっとだ。こいつは勝つだろう――あぁ本当に短い間なのに、会って間もないのに、心を許せたのはそのせいだ。

 

 シャクラは、死ぬときどんな気分だったんだろうか。

 いや、分かるな――不安なんだ。こいつを、霊真を一人残すのは。

 月の狼が相手を殺し、首狩り蝙蝠が何度も切り裂き――即死の異常を押しつける。

 そこに俺の姿はなくて、きっと勝てると思えるが……それで、いいのだろうか?

 

(いや、ちげぇだろ。なわけない、こいつ一人に押しつけて? このまま勝つ?)

 

 ふざけるな。

 それは、あいつに頼り過ぎだ。

 ――動け、動けよ俺の体。一瞬でいい、あいつのために隙を作れればそれでいい。

 だから、力を貸せよ――インドラァ!

 

「――任せろ小僧、貴様の負担は吾が持って行こう!」

 

――

――――

――――――

 

原典解放 (オリジンバースト)――【黒龍殺しの雷英神(インドラズ・ヴリドラハン)】」

 

 その時、聞いた声は逢魔のものだった。

 視線を向ければ、傷が治りきり今まで以上の魔力を纏った彼が姿を現した。

 

金剛杵(ヴァジュラ)!」

 

 無貌に、獄雷が迫る。

 一撃で体の大半を蒸発させたその攻撃は、見た限り魂すら削りきった。

 万全の状態で降り立った彼は、俺の横に並んで言葉をかけてくる。

 

「おう霊真。どうした驚いた顔して……というか泣きそうだけどマジでなんだお前」

「生きてたのかよ」

「――まぁな、あぁあれだ。策があるんだろ? 決めようぜ?」

「ッ勝手だな、あんた――バロール、宿り木を!」

「はい、レイマ様!」

 

 今の一撃で形を保てず再生が間に合わないのか、無貌はまだ動かない。

 だから使うならこの一瞬のみだ。

 

「九の世界の最下にて、待ち受けるのは死者の園。命の終わりを知らぬ無垢な者へと、ヤドリギの祝福を与えましょう――これは、不死殺しの祈り一矢」

 

 バロールの手に、弓矢が握られる。

 そして――それが詠唱の後放たれて、相手に死を植え付けた。

 

「なニ、した!?」

「さぁな、自分で理解しろ」

 

 ダメージはないこの技。

 ……それを受けたそいつは、激昂と共に俺達に迫ってきたがルナとカマソッソによって阻まれる。切り裂かれて、凍らされて、完全に動きが止まった時。

 

「合わせろ逢魔、行くぞ」

「――了解だ、一気に決める倒せるんだろ?」

 

 返答は笑みを浮かべて、そして――俺は、この一撃に全てをかける。

 

「楽土守りし英傑は、霜の巨人を打ち砕く。万雷掴む我が神威、謡い称えて語り継げ――これはそう、終わりを与える雷神の鎚!」

「――吾は季節を殺めた簒奪者、愚かなる民達へ水の恵みをを与えよう。龍を穿った吾の名は黒龍殺しのヴリトラハン!」

 

 ……魔法を、混ぜる。

 俺達の雷が、同時に放たれ混ざり合って。

 

「ハウリング・アルマ――」

「シバルヴァジュラ!」

 

 それは巨人を殺す銀色の雷鎚。

 ――そんな俺達の攻撃は相手を飲み込んで、デミ・ニャルラを一欠片すら残さず消滅させた。

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