異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
大体一日二話更新します
第126話:おとぎばなし
これは、海より遠くに語られるずっと昔からある、怪物の御伽噺だ。
あるところに最強の獣と称される蛇がおりました。
その獣の肉体は美しくて力強く体格に優れ、心臓は石のように硬く、腹は陶器の破片を並べたようで、背中には盾鱗の列が密に並び、口には恐ろしい歯が生えていて。
一度くしゃみをすると光を放ち、その両目は朝日のよう。口からは炎が噴き出し、鼻からは煙を吹き、その息は炭に火を点ける。
海を鍋のように沸かし、深い淵を白い髪のような光の筋を残しながら泳ぐ。
どんな武器も彼女をを貫けず傷つけることが出来ない。地の上にそれに並ぶものは他になく、恐れというものを知ることがない。
彼女と戦いそれを屈服させることは出来ず、見るだけで戦意を失うほど……。
そんなある時、退屈だった怪物は言いました。
「私の討伐を成した者の望みを叶えましょう」
そんな言葉をきっかけに多くの者が彼女に挑みました。
幾月、幾年、幾星霜。彼女は親より任された終末を管理しながらも……退屈を埋めるために多くの者を打ち倒す日々。
願いは様々。
富だったり、名声だったり、異性だったり、家族のためだったり、自分のためだったり、病を治す――などなど。
ですが、最強の獣と呼ばれるその蛇を倒せる者などおらず……彼女の退屈は埋まらぬまま。それどころか、彼女を前に散った者が残した宝が溜まっていき、より多くの者が彼女に挑むようになりました。
だけど、あまりに強大な蛇の討伐は不可能。
どんな英傑も、偉人も、怪物も、神でさえ彼女を倒すことは出来なくて。
しかし、願いというものを前にして止まらぬのが生者であり……彼女の前には屍が積み上がります。
いつしか怪物は、気付いてしまった。
この世界には私を倒せる者などいないと。
――だから、彼女は、蛇はこう言ったのです。
「私が知らないものをくれた相手に全ての願いを叶えましょう」
変わった試練に、それならばと今まで以上の者が彼女に群がりました。
金銀、財宝――という言葉が軽くなるほどの宝の山。
彼女が暮らせるだけの領地に、不自由のない住処になる巨大な城、彼女を支えることが出来るほどに多くの召使い。
だけど、それには興味がなくて――ただただ無為に過ぎる日々。
あまりに退屈で、あまりにつまらなくて、なにも叶わなかった彼女は――ある時、姿を消しました。
それが、とある蛇の一幕。
御伽噺でしかなかったはずの、独りぼっちの物語。
誰にも救われることのなかった可哀想な怪物の断章だ。
そういえばコミック・アーススターとニコニコ漫画の方で、コミカライズ連載中です。
コミック・アーススター
https://comic-earthstar.com/episode/2551460909616516847
ニコニコ漫画
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