異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
「やれ、押し倒せ! いけマスター! バロールでもいい!」
「なぁカス兄、今ここで喧嘩するか? 見守るって賭けでなったよな?」
……バロールと花見を終えて、教会までの道を一緒に歩いていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。一つは、言われた言葉で分かるがバイコーン――もう一つが。
「えっと、声的にユニコーン様達……ですよね」
「あぁ――まぁー、うん」
チラリと横目で見てみれば、そこにはピンクとミントが混ざったようなグラデーションの髪をした一本の角が生えた少女がいた。
だぼっとした袖が余ったパーカーを着ている彼女、片手にはでっかい本を持っており、今にもバイコーンに振り下ろしそうな勢いだ。
「え、なにかな相容れない妹よ? 賭けに負けた僕だけど、欲望には正直に生きても良いだろう?」
「……一回くたばれよ、わたしは純愛が見たい」
「はぁー? 不純も言葉的に純愛ですけどぉ? なんならちゃんとやることやった方が純愛だとおもいますぅー!」
「おい喧嘩するか、今から?」
「はっ受けて立つよ、二本角の僕に勝てるとは思わないことだね!」
俺等のことをこっそり尾行してたはずなのに、喧嘩に発展する馬兄妹。
取っ組み合い引っ付きあい、互いの顔を引っ張り合う角が一切関係のない喧嘩が始まり……数秒でバイコーンが負けた。
「ふっ、そういえば僕の身体能力は
俺等に観察されながらも、哀愁の漂う顔でそういう阿呆は……なんというか一周回って清々しくさえ思える。
「えっと、勝者……ユニ?」
「え、あ……うあぁぁ、み、見てたんですかレイマさん?」
「あーまーそりゃあ、あれだけ騒がれたら」
「す、すいませんせっかくのバロールさんとの……で、デートだったのに」
その言葉に恥ずかしがりながらも、さっきとは豹変しているユニコーン。
兄であるバイコーン以外には基本こういう感じの彼女は、見られて恥ずかしいのか本を巨大化させてその後ろに隠れながらもこっちを見てくる。
「あ、そういえば最近ユニはなにしてるんだ?」
「さ、最近は……レイマさんがくれた漫画? を見て自分でも書いてます。話には聞いてましたけど、実物はこの世界で初めて見たので」
「へぇーいいなそれ、今度見せてくれないか?」
「む、む、む……むりです。レイマさんだけには!」
……なんかめっちゃ拒絶されたので、見られたくないと判断した俺はそれ以上は追求しないようにする。それにしてもと、一度ユニのことを見る。
目に引くのは彼女が持っているメルリに貰ったという魔導書……無限にページが増え、いくらでも書き込めるとか言う能力を持ったその本は、前に見たときよりも数百ページ程分厚くなってるように感じた。
「あ、あまり見ないでください……恥ずかしい、です」
「ユニ様対面では初めまして……ふふ、とても可愛らしい方なのですね」
「わわわ、わたしごときがそんな言葉もらっていいんですか……えっと、えへへへ。バロールさんの方が綺麗ですし凄くエロいと思います!」
「え、エロ? ねぇレイマ様、それはどういう意味……あの凄い顔ですが大丈夫でしょうか?」
さりげなくというか、すっごくぶっちゃけるユニコーン。
清純を司り癒やしを与える幻獣である彼女の内面はわりと知ってるが、すげぇ簡単に言えば、オープンむっつりスケベ。
召喚獣の皆の衣装が結構過激なのもアラクネの機能美と似合う衣装を作る拘りと、ユニの
「ユニあんまりバロールにそういう言葉をかけるのは、止めてくれると助かる」
「あ、すいません……本音が」
「尚更自重してくれ……」
「た、確かにそうですよね。バロールさんはムチで無知の方が美味しいです」
「…………」
バイコーンとユニって本当に兄妹だよなと口には出さないが心底思う。
彼女にそれを言えば本気で否定しそうだから言わないが、割と否定できる要素が少ないよなぁ……と。
「無知って……
「では聞きますバロールさん。夜レイマさんが教会に来て何してもいいと言ってきました――何をしますか?」
「えっと、答えなきゃダメですか?」
「はい、これは確認なので」
少しむっとして反論したバロールに対して、いつもと違ってキリッとした目で饒舌もなり、そう聞いている。いつになく押しの強い様子に、バロールは押されながらも、なにかを想像して顔を赤くした。
「そ、その抱きしめて貰い……たいです?」
「しゃぁぁぁぁー! ほら、レイマさん解釈一致ですよ!」
俺にもダメージを与えながらも、そんな事が気にならないレベルの声量で叫ばれて鼓膜にダメージが。バロールの体も跳ねているし、ちょっと怖い。
「吠えるな、怖いから」
「です、けど! この押しが強いのに無知なシスターって絶滅危惧種なんですよ! あぁ、わたし――満足です。バロールさん、このままでいてくださいね、よきラブコメをください。あ、出来れば十五禁ぐらいがベネベネですね!」
「徹頭徹尾怖いから落ち着けユニ」
豹変し、早口でそう言うユニに対してバロールはずっと疑問符を浮かべ……俺はと言うと凄い頭痛。本当に兄妹だなぁとか思いながらも、俺は幽鬼のように迫る黒い影にそこで気付いた。
「妹よ……バロールにはちゃんと色々知ってもらわないとダメだと思うんだよね! それに僕を放置したのもいただけない。そして何より、君に不純を教えるよ」
「ちっ生きてたのかカス兄――まて、何するつもりだよ!?」
「不純大好きな僕らしくね皆の欲望を、具現化するのさ! さぁマスター! 頑張ってね!」
ゆらりと……魔法を溜めながら現れた駄馬。
彼は俺に向けて渾身の魔法を放ち……俺が煙に包まれた。
「ッけっむ」
ぼふん……という間抜けな音。
周りが煙に包まれ数秒で晴れはしたものの、次に見えた景色に絶句した。
そこにいたのは、二桁には届かない数の……俺だった。無表情のそれらなのだが、俺が認識した瞬間に逃げ出して――一気に周りに散らばった。
「え――いや、え?」
「僕の秘術の幻術を作ってやった新魔法だよ! 最初に辿り着いた相手の欲望と妄想を汲み取って叶えてあげる最高傑作の幻術さ!」
「…………え?」
与えられる情報は、そんなもの。
その瞬間、本能的に嫌だったのと――この先に混乱を考えて、すぐにでもその幻術を破壊しないといけないという使命にに駆られる。
「おま、バイコーンあとで説教!」
「ふははは、嫌だから逃げるね!」
獣の姿ににすぐさま変身し、頭おかしい速度で逃げる駄馬。
この先も被害が増えると察した俺は、すぐにバロールに謝りユニに乗せて貰って、あの阿呆を追いかけることにした。