異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
「せっしゃまんぞく」
「……俺等の財布が」
「我の一日目の小遣いが」
綾音と一緒に式達と合流すれば、そこには満足そうにお腹を撫でる椿さんと絶望顔の親友とカイザーがいた。
何があったかをラウラに聞いてみれば、三人は軽いゲームをし勝った方が全額負担するという勝負を行ったようで、見事式とカイザーが負けてかなりの金が椿さんの腹の中に消えたらしい。
「二人はどうした?」
「……椿にじゃんけんで挑むからだ。あいつの動体視力に勝てるわけないだろう」
「それじゃんけん成立してるか?」
「……ラウラとはよくやるでござるよ、動き予知じゃんけん」
何だろうその高度なじゃんけん。
確かに椿さんの身体能力なら出来そうではあるし、ラウラもそういうことをやるか聞かれればやるので違和感はないが、それはじゃんけんなのだろうとちょっと疑問。
「はぁ、何やってんだよ」
「……何やってんだろうな」
「祭だし何かゲームをしようとした我が間違っていた……」
そうやって哀愁を漂わせる親友達に、俺はどう言葉をかければいいか分からなかったが、ドンマイとだけ伝えておくことにした。
「あ、そういや霊真達は何してたんだ?」
「一緒に祭回って射的してた」
「なるほどな、だから綾音はでかい箱抱えてるのか」
「中身まだ見てないから何か分からないけどね。大きいし楽しみ」
気になるが流石にこの人混みでは開けるわけにはいかないし、今度写真でも貰おうとか思いつつ……俺は笑う皆を眺める。
楽しそうに祭で過ごし、気兼ねなく遊ぶ。
――異世界でもう味わうことが出来ないと思っていた日常の景色。ダンジョンなどがある平行世界だが、こうやって過ごすのは穏やかで。
「……楽しいな」
ふと、そんな事を呟いてしまった。
本来だったらこんな事を考えてはいけない。
俺はこの世界からすれば異物であり、この世界の霊真の体を借りてるだけだから。
この日常が来るまでにあったとても濃い日々、過ごした時間は二ヶ月ほどだが……皆大事な仲間で、一緒にいたい大事な友達。
「…………俺は、返すんだよな」
それはずっと、それこそ常日頃から考えないようにしている事。
召喚獣の皆が過ごせる場所を探す。そして、この体を霊真に返す――それが、俺の目的で今俺が頑張る意味だ。
そう言い聞かせていると、皆と話していた綾音が此方を向いて。
「どうしたの霊真?」
「いや……なんでも、ちょっと飲み物買ってくるわ」
気付かれる前に、見透かされる前に、俺はその場から一度離れる。
入り口付近にあった冷えている飲み物を買いに向かい……一人でいたくて、離れた波打ち際を歩き始めた。
「あーしんど」
防波堤を背に座り込んで一人こぼす。
流石に露骨だったかもしれないが、それでも皆が心配してる姿が見たくなくて、ネガティブな思考だけが頭を巡る。
「…………気にしないようにはしてるんだけどな」
直視しないといけない現実。
皆が責めないから普段は忘れていられるが、ふとこういう瞬間に思い出す。
だって……この場所に本来いるのは、こっちの霊真で。
「せっかくの夏祭りに辛気くさい顔してもつまらないですよ?」
「ちょっ冷た!?」
悪いことばっかり考えていると、ぴとっと……なにか冷たいものが頬に当てられた。急な出来事に驚きながらも顔を上げれば、
「……えっと、あんたは?」
魂まで見透かすような真っ直ぐな宝石のような瞳、それに少し驚きながらも現れた彼女に正体を尋ねる。
「私は麦わら帽子のお姉さんです、よろしくお願いしますね」
「……それじゃあ正体分かんねぇよ」
「ふっふふ、まだ好感度が足りてないので名前は未解禁ですよ?」
「初対面の人には好感度はないだろ」
「あーそれは盲点です……まぁ、そんな事は置いておいて……貴方はこんなお祭りの日にどうして一人でいるんですか?」
「……なんでそんな事聞くんだ?」
日が暮れて、夜の帳が降りる江ノ島の一角。そんな人混みから離れた場所で、項垂れる男に話しかけてわざわざそんな事を聞く意味が分からない。
「うーん、散歩してたら寂しそうな君がいたからですかね。放っておくのは嫌ですし、お話聞こうかなーって」
「もう戻るから気にしないでくれ」
「ふふ、嫌です。そんな辛気くさい顔のまま戻られてはお祭りに失礼ですよ?」
「……変な人だな」
「え、酷くないですか?」
口に出さないように思っただけなのに、自然とそう呟けば彼女は見て分かるように項垂れた。
「むぅー傷付きました。これは話を聞かせてくれないと癒えませんよ……という訳でなにがあったか聞かせてください、愚痴でも何でも聞きますよ?」
「…………強引すぎるだろ」
こんなに誰かにぐいぐい来られるのは久しぶり。
とりあえず分かることは、彼女は極度のお人好しだという事。
だってあれだぞ? 彼女も言ってたが、せっかくのお祭りで会場から離れた場所で項垂れる男の悩みを聞こうとする人がお人好しじゃないわけが無い。
それにこういう人は、話すまで離れないだろうし……それになんだか彼女には話していいと思えて。
「えっと初対面の人に話すには重いんだけどさ、友達といていいのかって悩んでて」
「それは何でですか?」
「……それは、えっと――俺が、本来いちゃいけないからで」
「もしかしてそう誰かに言われたんですか?」
「いやそういうわけじゃ無いんだけど、この場所には相応しい奴がいたんだよ」
不器用に……普段自分の事を吐き出さないためか、あまり要領を掴めずそうこぼす。言ってからの後悔だが、やはり重かったなと思ったんだが……。
「ふーむ、私はその友達さんじゃないから何も言えないんですけどね……でも一つ聞きます。貴方の友達は、そんな事を言う人ですか?」
「――絶対言わない、と思う」
「ならですね、それを信じれば良いと思います――そもそも、貴方は友達と離れたいんですか?」
それを言われて、少しはっとする。
いつか返すのは決まっている。だけど、だからって――離れる理由は確かにない。
それに……言われてみればそうだ。あいつらは俺がいていいって言ってくれて、何より俺のために怒ってくれるような皆だから。
「ふふ、少しすっきりした顔になりましたね――では、戻ると良いですよ? 友達さん達も待ってますでしょうし」
「……ん、助かった。えっと……改めて聞くけどあんたは?」
「そんなに聞きたいのなら仕方ないですね、私はレヴィです……えっと、名前解禁のための好感度が足りなかった分は、明日補填してくださいね」
「それはどういう?」
「え、話を聞いた対価に私とお祭りをまわって貰うので?」
好感度の補填って何だろうと思ってきてみれば、帰ってくるのはその言葉。
話したとは言え、聞くと言われて対価を求められるのはちょっと変な気がする。
「……なんでだよ」
「私に対する報酬ってことで納得してください」
「あんたやっぱり変だろ」
「だから酷くないですか!?」
でもまぁ、少し肩の荷が下りたのは事実だし……無償ってのも違和感がある。
だから俺はここで一度約束し、お祭り二日目である明日は彼女と一緒に過ごすことが決まった。