異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
海の底に降るように……俺達は淵海の学校に足を踏み入れる。
最初に俺達を出迎えるのは、学校の昇降口。
暗闇の中には精巧に作られた少しボロい昇降口があり、上に灯る仄かな灯りが不気味で堪らない。
「……え、既に怖くないか?」
「――――」
雰囲気がやばいその景色。
耐えきれずにそうこぼせば、横の椿さんは絶句しており……俺の袖を掴んで身を寄せてきている。
このお化け屋敷に入る時の説明で途中出口はないらしく、最後まで探索しないといけないという仕組みだ……つまりは、詰み。
どれだけ怖かろうと逃げられず出られないこのお化け屋敷で、俺達は生き残らないといけない。
き~んこーんか~ん――コン。
進むしかないので昇降口に足を踏み入れれば、突如として小学校ぶりに聞くようなそんなチャイムに殴られた。
違和感しか覚えられないような鈍い音。
ザーザーと砂嵐が混じったデジタルチャイムに気持ち悪さを覚えつつ、頭を揺らすような雑音が恐怖を駆り立てる。
そして――学校らしくというか、次の瞬間に地の底から響くような。
『――忘レ物をした生徒ハ速やカに、荷物ヲ持ッて――下校しテ下さイ』
校内放送が、俺達の耳に届いた。
雑音が混じったその放送。スピーカーからは激しい音割れとキャッキャと笑う子供の声が混じって聞こえ、始まって間も無いのに既に帰りたくなる。
『繰リ返しマす――忘れ物をかか、異臭シてくだ――祭』
とりあえず進まなきゃ終わらない。
案内だろう矢印に従って、俺達は進む。最初は階段を上るようなので一歩一歩警戒するように進んで二階に辿り着く。
まだ何にも襲われてないのに、雰囲気が出来ているせいか既に怖く……辿り着いた二階の廊下には明るければ怖くないだろう小学校の景色が並んでいた。
「れ、霊真殿……そ、外」
「……ひっ」
窓の外、見える景色はこの学校のグラウンド。
何処も彼処も見える盛り土、その上には石が置かれてそれはまるで墓場のよう。
しかも、それだけではない。グラウンドを徘徊するのは、海の生き物を崩したような異形の群。
「……椿さん、俺等生きて帰れるかな」
「分からないでござるぅ」
薄くぼやけた白い魚。
腐食して溶けた様な化け物もいれば、足が人間の腕の蛸が居たり、人魂を灯す
「うわぁ、流石に怖いですねー」
嫌に楽しそうなレヴィさんの声で現実に戻って来れたが、あのままだと絶対にこの場所で動けずにいた。
「ささ、ずっとここに居てもつまらないので先行きますよー」
「レヴィさん強すぎるだろ」
「決めた今日はラウラと一緒に寝るでござる」
時々聞こえる子供の微笑、頻りに響く楽しげな足音。
どこまでも続く暗闇からはかごめかごめと歌がして、まだ明確な恐怖が出てきてないのに怖すぎる。
「……あれ、なんだ?」
二階の廊下の床に落ちてる何かに不意に気付く。
近づいて拾ってみればそれはノートの切れ端。元は自由帳の一ページだっただろうそれには何も書いておらず、ただ真っ白だったのに。
『あそ……ぼ?』
急に滲んだ赤い文字が浮かび上がって、直後真後ろから少女の笑い声が――。
「ひっ」
「わぁお、これは予想外ですね」
「ッ――――逃げるぞ二人共!」
魔法を使って身体能力を強化して、椿さんを腕に抱えてレヴィさんを背負って走り出した。
「怖い怖い、マジでやばい!」
それからも俺達は天井に張り付く女性や、ボロボロな子供の幽霊に遭遇したり、どうしても進まなきゃいけない状況が作られたり、色々なギミックを解きながらも進んだりして、忘れ物とやらを見つけてから約三十分。
「はぁ……はぁ――もう、無理」
「ひぐっ、ぐず――れいまどのぉ」
俺は瀕死で椿さんはガチで泣いて、残り百メートルという文字が見えるが何も安心できない。レヴィさんはずっと楽しそうだが、ずっとなにかを気にしてるようで。
「……あ、これ以上は仕掛けは前にはないっぽいですね。進みましょうか」
「信じるぞ、マジで信じるからな?」
軽いから苦ではないが、ずっと椿さんを抱えているのと恐怖でもう限界。
とりあえずゆっくりと警戒しながらもまた進み……残り五十メートルを切ったところで――後ろから足音が。
「――正直予想してたぞ!」
「あははー前からは来ないっていいましたのでー!」
そのまま走りきり、俺達は出口から出て休憩スペースでぐったりとする事になってしまった。
「もう二度と、お化け屋敷いかねぇ」
「………………拙者もでござる」
「流石に最初はやばかったですねー」
それから暫くのこと、綾音達が出てくるのを待って全員で合流して感想会。
アレが怖かったとか、ここ凄かった等で盛り上がる皆を前にして、俺と椿さんが最初の紙のギミックが一番怖かったと言えば。
「え、そんなのなかったよねラウラ?」
「あぁ、記憶にないぞ」
「――え?」
式とカイザーにも確認を取れば、同じようにそんなのはなかったと。
一気に引く血の気、何故か膨らんでるポケットに手を伸ばして中からなにかを取り出せば。
『また……来てね、お兄ちゃん』
……その後の記憶はない。
ただ起きたときには夕方になっていて、俺は人生で二度とお化け屋敷に行かないと誓ったのだった。