異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第143話:微かな時間で微笑んで

 ……夜の事だ。

 長かった花火大会も終わり、夜も遅いという事で江ノ島に泊まる事になったのだが、妙に眠れなかったので浜辺までやって来た俺はその場所を歩いていた。

 波の音に耳を澄ませて、風に揺らされる。

 深夜の海辺で誰もいない中を歩いていると、ふと背後に気配を感じた。

 

「ふふ霊真さん、また一人なんですか?」

「……そう言うレヴィさんもな」

「ふふ私は夜中に現れる麦わら帽子のお姉さんなので!」

「だからなんだよそのキャラ付け……」

「だって私のあいでんてぃてぃですから!」

 

 見て気持ちいいくらいのドヤ顔で彼女は言う。

 少し暗いというか……落ちていた気分だったけど、その顔を見て少しだが気持ちが和らいだ。自分でも驚くくらいに彼女に気を許してるのが不思議ではあるが、それは多分、彼女の人柄故だろう。

 

「さてさて霊真さんはなんで一人なんですか? 何かありました?」

「ちょっとな、夜風に当たってみたかった」

「まぁ雰囲気良いですからねー、夜の海に優しい風……それに私!」

「最後のいらないぞ」

「がーん、それはショックです! こんな美少女あまり会えませんよ?」

「自分で言うな自分で」

 

 こってこての反応を返されながらも、彼女の反応が楽しくてついつい言葉を返してしまう。

 

「それで、何を悩んでいるんですか?」

「バレるか?」

「そりゃあもう、バレバレのバレですよ」

「……やっぱり鋭いよなレヴィさん」

「そりゃあ私ですので!」

「…………はぁ」

「なんですかその溜息は!?」

 

 そりゃあまぁ、うん。

 いちいちリアクションが大きいからなんだけど……それを口に出すわけにはいかないので、俺は口を噤んだ。

 

「ふっふふ、私は鋭いので言われる前に当ててあげますよ」

「それは凄いな」

「そうでしょうそうでしょう! ――まぁ率直に言いますが、霊真さんは」

 

 そこで風が吹いた。

 一際大きい、何かを攫えるくらいの強い風だ。

 何かを言いかけていたレヴィさんの被っている麦わら帽子が宙に舞う。そして、次の瞬間俺が目にしたのは――。

 

「……角?」

「ありゃりゃ、こんなタイミングで見られるとは予想外ですね、本当はもうちょっとお喋り楽しみたかったのですが」

 

 そこに隠れていたのは、白い角。

 グラムの白銀とまではいかないが、真っ白く人には絶対に生えていない部位。

 瞬間感じるのは、いままでどうして気付かなかったんだと言えるくらいの巨大すぎる魔力――それこそ、初めてベヒ子と対峙したときに感じた圧倒的な暴の気配。

 

「まぁ、見られてしまったのと好感度が上がったので自己紹介ですね」

 

 いままでと変わらない態度で彼女は笑う。

 優しく微笑んで……だけどそこに狂気を隠して。

 

「私は……嫉妬の魔王、レヴィ・リヴァイアサン。貴方の中にいるだろうベヒちゃんの同僚というか、まぁ同類の終末獣ですね。今回は【終末海域オケアノス】の顕現と共に遊びに来させて貰いました」

 

 そのダンジョン名を知っている。

 それは、逢魔と共に攻略した【天華】で聞いたものだから。

 何なら……俺が攻略しようとしていたもので――。

 目の前の彼女は笑う、それこそ初めて会った時の優しい微笑みで。だけど……その背には、確かな蛇が見えていた。

 

「改めて、私が送るのは挑戦状です。ミソロジアの英雄様、貴方に試練を送ります」

 

 鈴のような声音で彼女は言い放った。

 少し背を屈めて上目遣いで俺を見上げて――そして。

 

「試練は一つ、私の打倒。最強の蛇である私をどうか打ち倒してください……じゃなきゃ日本は沈みますので」

 

 そんな爆弾を俺へと与えて、彼女は魔力を高めていった。

 ぐぐーっと背を伸ばして、「よし」と呟き……獰猛にいままでとは違った笑みを浮かべる。空気が変わった、何より回り全てに圧がかかった。

 

「じゃあまぁ試練の前にちょっとだけウォーミングアップを――やりましょうか」

「――ッ【サモン】ディアベル・サタン」

 

 次の瞬間に、俺は意識を切り替えて――与えられた情報から、現状喚べる仲間の中で最も守りに長けた召喚獣を喚び出した。

 嫉妬の魔王、リヴァイアサン。

 その存在はミソロジアで仲間によって語られていた。

 

 憤怒のサタン曰く――最も体躯に優れた者。

 怠惰のフェニックス曰く、金剛石の如くの心臓を持ち、何者にも打ち砕けない者。

 強欲のマモン曰く、背中には盾鱗の列が密に並び、口には恐ろしい剣歯が並ぶ者。

 そして暴食であるバアル曰く――地の上にそれに並ぶものは他になく、恐れというものを知ることがない最強の獣だ。

 

「きはっ――まさか貴様と対峙するとはな嫉妬の蛇!」

「サタン君は予想外なんですが……それより何ですかその服装」

「趣味だ、格好いいだろう!」

「すっげぇダサいですね!」

 

 急に呼び出したせいで普段の格好のサタン。

 白地のTシャツには「すげぇあくまー」と気の抜ける文言が書かれている。

 前回のバーベキューの時は戦う必要がなく、制限をかけて喚んだのだが……今はそんな事を考える暇はない。彼を喚んだ時点で、他の仲間は喚べず任せるしかないが。

 

「契約者よ、久方ぶりの共闘――扱いきるがいい!」

「あぁ、分かってるよ」

 

 サタンの装いが変わる。

 ……黒く歪んだ角が背中まで広がり伸びて、露出していた腕には黄色い線が浮かんで脈動する。背からは鉤爪が付いた黒い翼が広がってその身に黒色の鎧を纏った。

 

「あははは、予想以上ですね霊真さん! 他の子達もいるんですか!」

「――出してる余裕ないけどな」

 

 思考はまとまらない。

 彼女が敵だという事実が認められない自分がいるが、それでもここで戦わなければいけない気がするから。

 

「本当に、まさかの楽しみですね――嫉妬対憤怒、大罪決定戦でもしましょうか!」

 

 最低限の配慮なのか、この場所に結界が貼られる。

 いや、これは違う。

 周囲を守るための結界ではなく、十全な力を出すためのものだ。冷や汗が体を伝う――ベヒーモスはただ宙を見るためだった。だけどレヴィさんは違う、明確な敵として俺に立ちはだかっている。

 

「【ウェポンサモン】レーヴァテイン。任せるぞ、ディア」

 

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