異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第153話:暴食の魔王

気付けば喇叭が鳴っていた。

 黙示録を告げるその音が、魔王の降臨を称えるその音色が鳴り響き……全ての空気が死んだ。圧のみが全てを支配する。

 

 異様、異常、異質。

 あまりにも暴力的で気味の悪い気配が満ちて、海から出たぼくはその存在を見てしまった。

 

「ルミア殿!? まだ霊真殿を助けてないでござるよ!」

「悪いね、侍女子……離れないとぼく等死んでるんだよ」

 

 ありえない……とそう思った。

 だってあの馬鹿の性格を考えると、その存在だけは喚ばれないから。

 だけど、同時にぼくは知っている……ぼく達召喚獣にある天秤はご主人の命で傾くことを。

 

 空を見上げれば、羽化直前の繭がある。

 鎧が脱げて変質しているのがわかり、破壊するなら今だろうという事も理解している。だけど、あの馬鹿の事を考えるとこれはご主人を救うためで――。

 

「……あとでご主人から説教だぞ、暴食」

 

 あぁ、魔王の降臨だ。

 暴食を司り、全てを貪り喰らう……怪物が目覚めるぞ。

 

「いいかい、侍女子。いまからぼく等も戦うけど、阿呆みたいな戦闘になるから覚悟してくれ」

 

 繭が溶けていく。

 その中からは光が溢れ、降り立つようにソレは現れた。

 バアルと同じ顔の六対の白い羽を持つ大天使の様な姿。手には白い手袋を着けていて、どこかの伯爵の様な紳士的な装い。だけどその気配は圧倒的に魔に寄っており、見るだけで不快感が漂ってくる。

 

「いい空気だ。腹が減る。だがその前に、王に群がる蠅を片付けなければいけない」

 

 一言発され、次の瞬間にしゃくりという音が響いた。

 あいつの魔法の気配。海にいたはずのクラーケン達が空へと放り出され、そのまま青い炎に包まれ死んだ。

 

「ウェルダンだ――次は海月か」

 

 主を取り込んだカリュヴディス。

 海の中から逃げる気配を感じたが、あいつの前でそれが許されるはずがなく……距離を喰われて引き寄せられて、その体を取り出したナイフで両断された。

 

「あぁ――我を打倒せし王雄よ。久しぶりの邂逅、あまりにも嬉しく思うぞ」

 

 歓喜に打ち震え、涙を流す暴食の魔王。

 ご主人を魔法の繭で囲み完全に守りに入った彼は、海にいるぼくと空を飛ぶベルフェに視線をやってきた。

 そこに含まれるのは未知への興味のような値踏みするような気色の悪い視線。

 

「色欲に怠惰か……まったく、王の周りは楽しいな。此度の敵が同胞とは」

「一つ聞くんだけど君の記憶ってどこまで残っているんだい?」

「記憶? そんなものを相手に話してどうする? そもそもだ、私と王の大切な記録を他者に伝えるわけがないだろう?」

 

 この存在はご主人の末路を知ることがない。

 だってずっとバアルの中に封じられていたからだ。

 というか忠誠心があるのは聞いていたけど、ここまで崇拝しているとは想定外だ。ご主人の命は守るようだが、この様子だとそれ以外は敵だと思ってるだろう。

 

「では始めようか、蠍と不死鳥は珍味でな……今から楽しみだ」

「はぁ、全く……あとでご主人には癒やして貰わないと困るかな、これ」

「ルミア、指揮は僕が執るよ……友人達、気を抜いたら死ぬから頑張ってね」

 

 気配だけでただ事じゃないことを悟ってくれたんだろう。 

 各々が武器を構えて、彼と対峙した。羽が広がり、その両手にはナイフとフォークが握られて、魔王戦が始まった。

 

「さぁ、食事を始めようか――あぁだから。王に習って、この言葉を贈らせてくれ。いただきます……と」

 

 蠅の食卓が広がっていく。

 バアルが持っていた嵐の国を汚染した技だ。

 能力としては食地場であり調理場であらゆる調理を再現して、それを試練として敵に課してくる結界魔法。

 

「まずは手を洗おうか、でなければ食卓にすら上がれない」

 

 ベルゼブブの周りに数十本を超える水の槍が現れる。

 それは一つの命なんて簡単に刈り取れそうな程に鋭利で歪な魔力を纏っていた。

 槍を構えて魔力を込める……魔法である以上は壊せるはずだから。

 そうしてぼくは一気に跳躍して前に出て、見える範囲の魔法全てを破壊した。

 

「ふはっ、侍女の姿のくせに身支度を整える事すら許さないとはな!」

「そんなのいいからご主人の執事を返してくれないかい?」

「無理だな、別側面との契約でな敵を喰らうまで私は帰るつもりはない」

「そもそも僕達敵じゃないんだけど……大人しく帰ってくれないかい?」

「敵ではない、か。だがそれはあり得ぬだろう? 仮に仲間だとして、王を危険に晒す者に存在価値などないのだから。それなら私が間引かせて貰おう」

 

 やっぱりこいつは危険だ。

 価値観が合わないとか、強いからではない。ただ純粋に魔王であり、原典そのままの怪物。バアルが嫌うのも頷けるというか、確かにこんな歪な鏡を見せられた怒るに決まっている。

 

「最初は斬るのが基本だろう?」

 

 空に浮かぶのは剣……ではなく鋭い包丁。 

 それが無数に落ちてきて、ぼく達に襲いかかる。質量を伴った錬金術で創られただろうそれは、存在を持ってしまっていることから破壊が不可能で……その速度も相まってぼく達のことを傷つけにかかる――のだが、その全ては龍の突撃で破壊された。

 

「なぁ、貴様がベルゼ・ブブなのか?」

 

 龍に跨がる黒髪の少年。

 ご主人がこの世界で得た友人だという彼は、怒りを露わにしながらもそう聞いた。

 

「あぁそうだとも、お前は……龍の力を宿しているのか、面白いな」

「貴様のことはバアル師匠から聞いている……だから言おう、師匠に体を返せ」

「師匠か……私もバアルではあるが、敬わないのか?」

「我の師匠は、バアル・ワイルドハントのみだ! それにだ貴様が我の師匠な訳ないだろう、師匠は仲間を傷つけない!」

 

 激昂してそう言いきって、彼は体を龍化させた。

 全身が銀の鱗に覆われて、とても綺麗な槍を持って、赤い眼光で魔王を睨む。

 

「これ以上師匠の顔で暴れるのなら、我が相手になろう!」

「そうか……ならば抗え、王の敵よ!」

 

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