異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
「で……突入するのはいいんだが、これ入った瞬間に海の中とかないよな?」
船を操縦し、辿り着いたのは海の上に出来た蒼い神殿。
突入する前の俺達はそんな式の言葉に顔を見合わせて、その可能性にちょっと扉を開けるのを躊躇した。
だけど中に入らない訳にはいかないので、少し悩んだ後で俺が先行して扉を開けて入ってみれば……そこには絶海が。
「うわぁ……流石のファンタジー」
幾つもの島や沈んだ岩に崩れた神殿……そこに広がっていたのは完全無欠の海上世界であり。どう考えても現代の光景とは思えない。
ペルセウスがボスであった【星の大海】とは違う、リヴァイアサンを軸としたその神域にはかなり濃い魔力が充満しており、ミソロジアを近くに感じた。
「これ中も船で進むのか?」
「そうだったら厳しいね」
「さっきみたいな目に遭うのは勘弁でござるよ?」
俺が入ったことにより、続けて式を先頭にして綾音と椿さんが足を踏み入れる。
この神殿内に船を入れるのは無理だし、一応俺の魂の世界から船を取り出せばなんとかなるかもしれないが……椿さんが言ったように、またクラーケンやカリュヴディスとかに襲われたらたまったものじゃないので、どうしようかと考える。
「って、この海水なんか変だな」
とりあえず使い慣れた魔力感知で周りの魔物を探そうしたんだが、海水そのものに魔力反応があったのだ。初めて遭遇する現象、不思議に思いながらも試しに足を付けてみれば何故かその場所に立つことが出来て……。
「なんか、歩けるっぽいぞ」
「そうか? ……む、本当に歩けるな!」
「なわけ……ってマジかよ」
俺が見本を見せるように海水の上で歩いてみれば、僅かに目を輝かせたカイザーがこっちに来てテンションを上げ、式は半信半疑だったようだが、自分が歩けたことでそう言う。
「移動は問題なさそうだな……しかし海の上を歩くなど、ミソロジアでもないぞ」
周りには幾つもある大小の島々、遠くにはさっきも見たとおりに神殿がある。
この海上世界を探索し尽くすのは不可能だと思えるほどに広く、ボスのレヴィさんを見つけるのにはかなりの時間がかかるだろう。
それに、この海水の特性か魔力感知は使えない。
食料の心配はないとは言え、ダンジョン内で野宿なんて危険なことは出来ないので、急ぐ必要はあるだろうが。
「とりあえずだよご主人、魔物来るよ?」
外にいた全員が入ったことで、門が完全に閉まった。
出入り口であった神殿も消え、その瞬間からあり得んばかりの敵意が俺等を襲い……そこら中から鳥の声や、あまりにも綺麗すぎる異質な歌声が響き始める。
「ッ早速かよ状態異常対策は俺がやる、その他のバフ任せたぞ式!」
「了解……とりあえず耐久系で様子見だな」
ローレライ対策に【睡眠耐性】を付与すれば、合わせるように式が防御系のバフを周りに使った。
一旦火力で押し進めるよりも、攻撃力の高いハーピー対策だろう。
この【終末海域オケアノス】に来るまでに遭遇したハーピーの特徴を考えるとそれがいいだろうし、綾音達ならそれで十分なはずだから。
「戦闘開始だ、ひとまず乗り切るぞ!」
空を見上げればそこにはハーピーの群、四方を囲むローレライは俺等が眠らないことを悟ってか魔法に切り替えて攻撃をしてくる。
鋭利な水の刃が飛んできたのを見て、俺はすぐにダインスレイブを取り出して周りに冷気を展開し攻撃を防ぐ。
相手の、それこそ待っているレヴィさんの戦力を考えれば、温存をしなければいけない、だからこそ最小限の魔力で切り抜ける作戦。
魔物を倒しながらも海上を歩いて前に進み、遠くの神殿を目指す。
一旦目印になりそうなのはそこぐらいだし、何よりあそこからはこの魔力を感じる海水では阻害出来ないほどの魔力の塊があったから。
「ッデカいの来るぞ!」
神殿まで残り数百メートルほどの所で感じた気配、ハーピーやローレライ達が一斉に散ったかと思ったら、そいつは海の中から現れた。
それは、角を持つ巨大な白鯨。
ただただ大きく、有り得ないくらいの魔力を持つそれ。
突進するだけで全てを破壊しかねないサイズの化け物は、島一つと表現した方がいいほどに大きく俺等を見た瞬間に飲み込もうとしてくる。
「ちょっまず、ルミア爆破できるか!?」
「流石に無理かなーぼく食べられちゃう」
「あ、ちなみに僕も無理だよレイマ……あれ焼き尽くすのは流石にね」
綾音達に視線を向けてみれば、流石に無理みたいな表情を浮かべているし……一気に絶体絶命に。あの巨体を両断するのにはそれこそレーヴァテインで魔法を撃たないといけないし、何より時間がない。
回避は不可、撃退も破壊も無理。
喰われたら終わるだろうし……と急な襲撃者に覚悟をしたんだが、その瞬間に。
「やっと現れたな食料が! 神去流奥義――一刀千風天津!」
「一時休戦だな英傑。絶技――穿ち貫く三叉槍《アブソリュート・トリアイナ》」
聞き慣れた声が聞こえたかと思えば、瞬く間に白鯨に大穴が空き粉々に切り裂かれて、そのまま海に落ちてった。そしてその奥から、見知った気配の持ち主が現れる。
「って、なんで霊真の坊達がいるんだ?」
現れたのは……なんか若返った大和さんと、金髪蒼眼の凄い美女。
片手に三叉槍を持つその女性は、俺を見た瞬間に笑みを深めて……俺が大和さんにツッコむ前にこう言ってくる。
「おお漸く来たか廃棄世界の英雄!」
そしてそのまま人目を憚らず俺に抱きついてきたかと思えば、簡単に俺を支えてぶんぶんと上下左右に振り回す。
「くはは、軽い軽いぞ! もっと食べたらどうだ?」
「いや、あんた……誰だよ」
「ん、余か? 余の名はポセイドン、オリュンポス十二神に名を連ねる海と地震を司る男神だ!」
一応、その存在は知っている。
ギリシャ神話における下半神筆頭で、アルゴル曰くのアブソリュートカス。
でも……目の前の美女は、明らかに女性だし、なんか事前に知ってる情報と全く違うのだ。
「えっと、りありー?」
「あぁ、いかにも余がポセイドンだ。というわけで英雄よ、まだこの体では経験がないのだが交わってくれると嬉しいぞ!」