異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第159話:神殿めぐり

 これは、海より遠くに語られるずっと昔からある、怪物の御伽噺。

 あるところに最強の獣と称される蛇がおりました。

 その獣の肉体は美しくて力強く体格に優れ、心臓は石のように硬く、腹は陶器の破片を並べたようで、背中には盾鱗の列が密に並び、口には恐ろしい歯が生えていて。

 一度くしゃみをすると光を放ち、その両目は朝日のよう。口からは炎が噴き出し、鼻からは煙を吹き、その息は炭に火を点ける。

 海を鍋のように沸かし、深い淵を白い髪のような光の筋を残しながら泳ぐ。

 どんな武器も彼女をを貫けず傷つけることが出来ない。地の上にそれに並ぶものは他になく、恐れというものを知ることがない。

 彼女と戦いそれを屈服させることは出来ず、見るだけで戦意を失うほどでした。

 

 ある時、退屈だった怪物は言ったのです。

 

「私の討伐を成した者の望みを叶えましょう」

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 ポセイドンに案内されこのオケアノスに存在する神殿を巡り、魔力消費の観点からルミア達を戻しつつも一つ目の神殿に足を踏み入れたとき、そんな物語が頭に過った。時間にしてはほんと少しだが、これは――レヴィさんの序幕だ。

 

「おい、親友……大丈夫か?」

「あーあぁ、多分大丈夫」

 

 他の皆を見てみる限り何もないようだが、様子のおかしかった俺を心配してくれる親友。突然のことで驚いたが、どうして俺だけなんだろうと。

 

「おっその様子だとやはり同調したようだな、流石は英雄」

「……何をした? カス神?」

「吸血鬼娘よ、余は何もしてないぞ? 強いて言うなら確認だ。それに、これは攻略に役立つからむしろ褒めるべきではないか?」

 

 くははと笑うポセイドン。

 蒼くとても美麗な神殿の中で、感じる頭痛にやられる俺を覗くそいつは得意げな顔をして、そのまま説明を始める。

 

「このオケアノスは元は余のものだが、もう既に蛇の神威に侵され変質していてな、余が用意した試練が消えた代わりに何故かアレの記録保管庫となっている。本来なら見る必要などないが、そこの英雄ならば知りたいだろう?」

 

 見透かすように、それこそ魂を覗かれるような感覚を覚えながらも――その言葉に言い返すことが出来なかった。一方的に彼女の記録を目にするというのは負い目を感じるが、知らなければいけないことは沢山あるから。

 

「しかし同調できるとは言え、やはり貴殿はイカれてるな! どんな内容であれ本来あれだけの怪物の記録なんて常人が耐えれるわけがない。侵蝕ぐらいはされると思ったが、流石と言うべきか?」

 

 軽く、本当に軽く。

 起きる可能性の一つであったろうから、そう言っただろうこの男神。

 褒めているのだろうし、その言葉には悪意はなかったのだろう。だが、それだけで改めてと言うべきか、人と神の視点の違いを感じてしまう。

 

「おいそんな、危険なことを説明もなしにやらせたのか?」

「ん? なにを怒ってるのだ人間? 生きてるのなら別にいいだろう?」

 

 一触即発、式の怒りからか魔力が炎となって漏れてるし綾音に関しても抑えられないのか冷気が溢れている。ラウラを除く二人は無表情になっているし、大和さんも顔が一切笑ってない。

 

「あ、そうだ怒らせてしまったようではあるしいいことを教えよう。あの蛇に関してだが、早々に殺さぬとこの星は押し流されるぞ?」

「……本当か?」

「嘘をつく利点がないだろう? あの蛇は黙示録の一柱――存在だけで世界を侵す怪物だ。性質は何処まで行っても滅びを招く、終末機構の歯車の一つ。こうしている間にもその影響は外界に及ぶだろうな」

 

 言い放つのは、そんな起こるであろう未来。

 一瞬言葉を疑うも、その直後に起こった現象でそれが嘘ではないと悟ってしまう。

 何が起こったかと言えば、一瞬だけ強大な魔力がこのダンジョン自体に放たれて、レヴィさんの存在を感じたのだ。

 

「丁度良くて助かるな、まあ今のは蛇の存在が増した故の現象だ。あの蛇は未だ完全に顕界出来ていない。意趣返しとしてオケアノスを結界に転じさせ抑えてはいるが、完全に格を戻せばこの神域は壊れ、世界が海に沈むだろうな」

 

 笑いながら面白そうに語るその内容を咀嚼しようとしてるのか、仲間達は黙っているが……沈黙が続く中で式が口を開いた。

 

「何がそんなに面白いんだよ、お前」

「逆にだがこの極上の――それこそ、他の神話体系の最上級の怪物、それは世界を終わらせる可能性を孕んでいて、廃棄世界の英雄は一度負けてるという逆境だ。こんなの面白いに決まっているだろう!」

 

 絶望を与えようとしての言動……いや、こういう性格の奴は召喚獣の中にもいるがその中でもぶっちぎりに終わってる言葉の数々にドン引きしそうだが。

 こいつはそれだけじゃない気がする。

 ずっと思っているが、この神には悪意がない。

 それどころか言葉の節々から煽るようなというか……期待のようなモノが籠められているように感じてしまう。だから俺は、純粋な疑問としてこう聞いた。

 

「なぁ、あんた……なんでオケアノスを結界に変えたんだ?」

「む、そんな事か? そんなのはお前を識ったからだ」

 

 何を当たり前の事を、みたいな感じでそう言われ……ポセイドンは、そのままテンションを上げてこう続ける。

 

「英雄が生まれない廃棄世界で、宙の魔王が支配したあの終末の世界で、誰よりも諦めず、試練に挑み――どこまでも前に進んだ至高の英雄を、そんな貴様を読んだからに決まっているだろう?」

 

 そこには重い感情と期待が込められていた。

 あまりにも純粋な憧れと好きな物語を語るようなその態度。

 そこには子供のような羨望が籠もっていて、何よりも真っ直ぐな熱があった。

 

「救われるはずのない者を救った。怪物という者を英雄に昇華させた――そんな誰よりも他者に寄り添った善性の怪物に余は興奮した、憧れた。だからもっと輝かせたくて、試練に成ると決めたんだ――役目は奪われたが、それならば加護を与えこの男を手助けするのは当たり前だ」

 

 ……今度こそ、全員で絶句した。

 俺はそのなんか、もう言葉にしたくない期待とかそこら辺に。

 他の皆が何を思ってるか分からないが、多分きっと一致してるだろう。大袈裟な仕草で俺を語ったこの……なんだろうポセイドンに何を言えばいいか分からなくて。

 視線を送り助け船を求めてみれば、皆が次々に口を開く。

 

「つまりあれか、こいつは厄介なプロデューサー気取りだよな」

「あってると思うよ、式。うん、凄く言葉を選ばないで言うけど、キモいね」

「うわぁ……えっと霊真殿お祓い行かぬでござるか」

「これ存在的に一番滅神した方がいいだろ、禍津神の方がいいぞこれというか……どうしたらこうなれるんだよ」

「我が友よ、相談乗るからこのダンジョン帰るぞ……」

 

 そして俺には哀れみの視線が向けられて、それどこから魂の世界からドン引きするような気配が無数に感じられる。

 なんだ、これ。俺この神と一緒に過ごすの嫌なんだけど。

 

「さぁ、ではでは先に進むぞ! 語れたから気分がいい!」

 

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