異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第160話:同格なんだぞ、べヒ子ちゃん!

 蛇は幾月、幾年、幾星霜。彼女は親より任された終末を管理しながらも……退屈を埋めるために多くの者を打ち倒す日々を過ごしました。

 

 願いは様々。

 富だったり、名声だったり、異性だったり、家族のためだったり、自分のためだったり、病を治す――などなど。

 

 ですが、最強の獣と呼ばれるその蛇を倒せる者などおらず……彼女の退屈は埋まらぬまま。それどころか、彼女を前に散った者が残した宝が溜まっていき、より多くの者が彼女に挑むようになりました。

 

 あまりに強大な蛇の討伐は不可能。

 しかし、願いというものを前にして止まらぬのが生者であり……彼女の前には屍が積み上がります。

 

 いつしか怪物は、気付いてしまったのです。

 この世界には私を倒せる者などいないと。

 ――だから、彼女は、蛇はこう言ったのです。

 

「私が知らないものをくれた相手に全ての願いを叶えましょう」

 

 変わった試練に、それならばと今まで以上の者が彼女に群がりました。

 金銀、財宝――という言葉が軽くなるほどの宝の山。

 彼女が暮らせるだけの領地に、不自由のない住処になる巨大な城、彼女を支えることが出来るほどに多くの召使い。

 だけど、それには興味がなくて――ただただ無為に過ぎる日々。

 あまりに退屈で、あまりにつまらなくて、なにも叶わなかった彼女は――ある時、姿を消したのです。

 

………………。

…………。

……。

 

「ッ――きっついな」

 

 別の神殿に足を踏み入れて、また体験する追想。

 彼女の――それこそレヴィさんの記録を体験した俺は、かなりの疲労を感じながらも神殿の一角で腰掛け休む。

 今皆は外で魔物と戦っているし、時間がないという事で俺だけでいたんだが、その時にちょんちょんと肩を誰かに叩かれた。

 

「ますたー水いる?」

「助かる……ってなんで出てるんだよベヒ子」

「妹? がいるから」

 

 疑問符を付けるようにしながらもそう言ったアラクネが作っただろうゴスロリ姿の彼女。答えになってないようないつも通りの言い方。とりあえずなにか知ってそうなのでベヒーモスに色々聞くことにした。

 

「レヴィアタンって私の対だから、実質妹」

「……そういえば神話的にはそうだな。それで?」

「妹を窘めるのは姉の役目という事で、私を使って欲しい」

 

 真剣な眼差しに普段のような少しふざけた感じではない真面目なその言い方。同格存在という事もあってなにか思うことがあるのか、しっかりと覚悟をしている感じ。

 

「あの子は真面目すぎだから背負いやすい、滅ぼした世界の事も全部覚えてるし……とても優しいの。だから甘え方ぐらい覚えていい、ので一回ボコる」

「どうしてボコるに繋がるか分からないけど、頼っていいのか?」

「そんなの当たり前、というかますたーはもっと皆を頼るべき。新参の私だけどそれでも皆と同じ気持ちだよ。あ、でも一つお願いがある」

 

 ドヤ顔を噛ました後で、そう続けた彼女。

 そして座る俺の膝に乗り、俺の顔を見上げるようにしてこう頼んできた。

 

「お洒落したいから髪結って、あと名前頂戴」

「二つじゃねぇか」

「我が儘は言った方が得」

「はぁ最初のはいいけど、名前は……ちょっと考えさせてくれ」

 

 正直、それを言われて驚いてしまった。

 それは、彼女と関わってずっと考えていたことだから。この世界で勝手に仲間になって、皆と仲良く過ごす彼女にいつか渡そうと思っていた事だったから。

 でも、今は急だったこともありそう誤魔化してしまった。

 

「むぅ、その心は?」

「どうせなら真面目に考える」

「――ますたーらしいね」

 

 頼まれたので髪を結う。ツインテールにして欲しいということなので、頼まれたとおりの整えて……そのまま俺は彼女に言葉をかけた。

 

「なぁレヴィさんのことどう思ってる?」

「真面目で可愛い私の妹、考えすぎで背負いすぎ……あと優しい」

 

 それは、なんとなく分かってしまう。

 過ごした時間は少しだし、会ったのも数回。 

 だけど、その中でみた彼女の表情や言葉にはどれも嘘を感じなかったし……何よりそこにあった俺への心配を偽物だなんて思いたくないから。

 

「昔ね、あの子と一緒に絵本を読んだんだ。内容は普通の女の子が幸せになるお話、強くもなくて、恐れられることもない、変哲のない女の子が恋をして笑う絵空事」

 

 立ち上がって結われた髪を撫でる彼女は、大切な宝物を取り出し語るような優しい声音でそう言った。

 

「私は退屈だったんだけど、あの子は何度も読んでって頼んできて、そのたびに笑うの。私達は滅ぼすだけの存在なのに、普通の女の子になんてなれないのに……それでもそんな物語の女の子に憧れて――ねぇ、ますたー今回最後のお願いなんだけどね」

 

 そして、彼女はベヒーモスはあるお願いを口にした。

 それはずっと彼女の記録を見て、思っていたこと。一人でいた彼女に対して感じていたことだったから。

 

「任せろよ、今の俺は欲張りなんだ」

 

 ベヒーモスを安心させるためにも、俺はそう言って笑い……彼女と共に神殿を後にした。

 

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