異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第163話:黙示録解放

 ……声が、聞こえた。

 消えたはずのベヒーモスの声だ。

 耳を疑って、そのまま声のした方を見てみれば……そこにいたのは、それこそ童話のお姫様のようなドレスに着飾ったベヒーモス。

 腕に灰色のガントレットを身につけた彼女は、俺の顔を見て微笑んで。

 

「ますたーの泣き顔ゲット、聞いてたとおり泣き虫だね」

「……シエ、ル?」

「うん、ますたーのシエル・ベヒーモス。強くなってさいとーじょー」

「いや、おまえ――何したんだよ」

 

 彼女の存在は、何倍にも膨れ上がっていた。

 元々終末召喚をしたから枷はなくなっていて、メルリが手伝ってくれたのもあって制限なんてなかったが、今の彼女はさっきよりもずっと強い。

 

「一か八かの賭け、最初の攻撃食べてみて全身で取り込んだらいける気がしたからやってみた」

「説明なってないぞ、それ……」

「今度詳しく話す、とにかく……今の私はパーフェクトシエルちゃんだから、全力で妹をボコす。それにね、名前貰っちゃったから、いっぱいお礼する」

 

 ふんすと鼻を鳴らして、彼女はもう一度笑った。

 とても楽しそうに心のそこから嬉しそうに、伝えたばかりの名前を誇って……そのまま力を解放する。

 

「ふははははッ面白いぞ、終末獣が仲間にいたときは驚いたが――まさか、まさかだ黙示録の獣を、あの陸の魔獣の存在を塗り替えるなんてな! あぁ、これが見たかった! 今余は気分がいい! だからこそ、加護を与えなければな!」

 

 力を解放するシエルを見て、今までずっと傍観していた……とうより観戦するだけだったポセイドンが高らかに笑い俺に加護? のような者を与えてきた。

 どくんと、体が跳ねる。

 体の中に宿った、熱い熱に……魔力が急激に回復していく気配を感じる。

 

「本来は直接交わって馴染ませる気だったが、魔力を溜めていたときに自傷しておいてよかったぞ! いいか英雄、今の貴様は我が流した神血(イコル)を取り込み魔力の制限が消えた状態だ! 存分に暴れ――怪物を終末蛇を打倒するのだ!」

 

 そういうポセイドンの腕には、スパッと切ったような自傷痕が、余程深く傷つけたのか金色の液体が、いや血液が滴り落ちている。

 そういえば、レヴィさんの血を魔力にして取り込んでいたときになんかやけに変換される魔力が多いと思ったけど、この神そんなことしてたのか……。

 

「助かるけど、相談しろよ」

「止めそうだったからな!」

「はぁ……ほんと、礼は言うけどさ」

 

 心底深い溜息を吐き、第二波を放とうとするリヴァイアサンを見る。

 この神の言葉を信じるのなら、今俺は全盛期以上に魔法が使えるどころか……相当な無茶を出来る状態。なら、彼女をレヴィさんを倒すためにも。

 シエルを見て傍観していたレヴィさん、そんな彼女に届けるためにも俺は。

 

「【サモン】ディアベル・サタン」

 

 俺がミソロジアで辿り着いた、もう一つの奥義を使うことにした。

 それは、原典を宿した者達と契約し続けた俺だから辿り着けた一つの極致であり、反則技の一つ。制限時間もあり、使えば最悪三日は寝込むだろうが目の前の相手を倒して明日を迎えるためならば――。

 

「ディア、久しぶりだしさ……ちゃんと出来るか分からないけど」

「皆まで言うな、むしろ一番乗りでテンションが上がる!」

 

 召喚したディアと心を通わせる。

 ……魔力を同調し、魂を共鳴する。

 ディアと俺の境界を緩めて行き――そして唱える。

 

「【原典接続(オリジンコネクト)サモン・インストール】」

 

 ディアの体が解けていき、俺の中に溶けていく。

 そして、直後に俺に変化が現れ悪魔の角と翼が生えてきた。

 

原典解放(オリジンバースト)――【憤怒を謳う神の敵対者(モードアポカリプスサタン)】」

 

 続くように黒のコートに包まれて……俺とディアが合体した。

 手を横に薙げばその瞬間に手の中に、黒い大剣が握られる。俺から溢れ出した魔力が、神の造物とされるリヴァイアサンの神域を侵していく。

 世界の侵蝕、悪魔が最も生きやすい魔界と呼ばれる環境へと変質し、息をするだけで魔力が回復する場所へと置き換わった。

 

「みんな、これで今は最後だから――俺等に任せてくれよ」 

「またみんなでバーベキュー、バアルにご飯は任せようね」

 

 皆からの言葉はない、ただ……こくりと頷いた綾音達を見て。

 勝とうって思えたから。

 あぁどうしてだろうか、レヴィさんが笑ったような気配がする。いや、きっと楽しんでいるのだろう。だって、魔力が高まっている――俺が侵蝕した世界を塗り替えるほどの神威が溢れていく。それほどまでに彼女は今、生きている。

 

 そして開戦――俺の魔法が起動して、目の前へと転移した。

 手を振り上げれば、絶対特攻を持った剣が数百本生み出されて突貫する。

 それに合わせて、ベヒーモスが巨体を殴ればそれだけで揺れて……何百メートルも蛇は吹っ飛んだ。

 

黙示録解放(アポカリプス・バースト)――レヴィ・リヴァイアサン!」

 

 吹っ飛んで血を吐いたと思えば、彼女はシエルと同じように何かを解放した。

 その存在が圧縮され、戦乙女のような装いになった彼女の手には槍。そんな彼女は、俺達を迎え撃つように空を飛ぶ。

 

「使う気なったんだ、でも遅くない?」

「遅くないですよ! あぁ、ほんと――こんな時をずっと待ってました! 全力で戦っても長く続く、一撃一撃が重くて怖くて、生きてるって感じします!」

「そうかよ――なら続けないとな!」

 

 何百もの魔法を使う、空を舞い水を飛ばし槍で攻撃してくる彼女をシエルと共に迎え撃ち、何よりも全力で彼女に応える。

 

 簡単に終わらせてたまるか、絶対に勝ちたい。

 俺の中に次々沸いてくるそんな思いの数々。

 勝ちたい、負けたくない、それらがもう限界に近い体を何度でも動かしてくれる。感じる痛みは長引く度に鈍くなって。

 

 体が軽い。血肉が滾る。

 頭が冴える。呼吸すら忘れてしまう。ただただ目の前の相手に勝ちたくて、こんな最高の初戦で、どうしても負けたくなくて、俺は時間を忘れて剣を振るう。

 本来俺は、この戦いで楽しんじゃいけないはずなのに――でも、そんな事が気にならないくらいにこの戦いに熱中する。

 

 残った魔力など知らない。

 痛みなんかどうでもいい。

 ただ動け、体を動かせ、目の前の相手はまだ動けるだろう。心の底から楽しそうに、俺と対峙しているだろう。ならそれに答えるしかないのだ。

 

 ただ今の俺は彼女に勝ちたい。

 そんな思いだけが沸いてくる。斬って防いで切り裂いて、何度も何度も彼女を打倒するために前へ前へと――。

 俺は――勝ちたい、何が何でも彼女に勝ちたい! 負けられない! シエルと共に、この試練を突破して、仲間と共に――レヴィさんを連れて、帰るんだ!

 

「終末の時来たれ、我こそ神への敵対者――怒りの日、黙示録の時、命は終わり世界は新生する――あぁ、これこそが我が意思と知れ!」

 

 八節もかかる詠唱文。

 意志を告げるそれを唱えて放つ、サタンという悪魔の王の最終項。

 原典終局という名を持つ、必殺を――彼女に贈ろう!

 

原典終局(オリジン・フィナーレ)――【憤怒の日(サタンズ・ディエスイレ)】」

 

 それは、隕石だった。

 俺の全魔力が籠もった星殺しの一撃、存在を終わらせる奥義。

 それは――レヴィ・リヴァイアサンという存在を飲み込んで……。

 

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