異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第18話:彼岸少女

 目が覚めると、そこは見知らぬ部屋だった。 

 薬品を置いてある棚があり、見渡せば簡易的な病院みたいな内装をしている。

 

「……俺、倒れたのか」

 

 柔らかい何かの上に寝させられているし、見上げれば天井あるし……多分倒れたんだろうとそう結論づける。記憶を探れば、マインドダウンの様な現象に襲われたことを思い出し……。

 

「【アナライズ】……って熱あるのかよ」

 

 状態異常とまでは行かないが、かなり熱があることが分かった。

 体温計とかないし、詳しいことは分からないけど……暫くは安静にした方がいいだろう。

  

「あ? というか……魔力が減ったわけじゃ無い?」

 

 解析魔法で理解したが、俺の魔力の容量はまだ全然残っていた。

 ……それこそ全力で戦っても三十分は保つくらいには――だからこその違和感を感じながらも、分からなかった俺は考えることを止めてもう一度周りを見渡した。

 

「リコリス……いるか?」

 

 召喚解除を出来てなかった彼女を呼べば、すっと気配が虚空から。

 紫黒の髪色をする少女の顔には虚ろな印象を抱かせる琥珀色の眼がある。少し高めの身長、俺が贈った黒いドレスに身を包む彼女は無表情だった。

 だけど、少し揺れる瞳から……心配してくれていることを悟れる。

 

 そんなこの世界では初めて会う彼女は、リコリス・ヒュドロスという名を持っている――種族としてはアルケー・ヒュドラというものらしく、少し特殊なヒュドラらしいというのが本人談。

 

「いるよ……大丈夫?」

 

「多分? というか、どうせお前診てくれただろ?」

 

「うん……そう。症状は魔力回路が開いた知恵熱だった。子供に起こりやすいあれ」

 

「……あー、異世界で最初に経験したアレか」

 

 思い出すのは異世界に召喚された時のかなり最初の出来事。

 ……魔力を覚醒させた時に発症する風邪みたいなもので、かなりきつかったのを覚えてる。

 

「――でもおかしくないか? 俺、この世界で目覚めてすぐ魔法使えたぞ?」

 

「魂が体に馴染んだからだと思う……多分」

 

「微妙にわからねぇ……」

 

「魔法がもうちょっと使いやすくなったって思えば良い」

 

「……ん、了解」

 

 それだけを話た俺は、少し黙り込んでしまった。

 ……理由としては異世界ぶりに話すから何を言えばいいか分からなかったってだけなのだが……やっぱり気まずい。

 

「手、握って?」

 

 そうやって何も話せないでいると、俺が横になるベッドに腰掛けた彼女がそんな事を言ってきた。

 

「……急になんだよ」

 

「お願い」

 

 ……圧すら感じるその言葉に、断れる様な雰囲気じゃないし――と俺は彼女の手を握った。久しぶりのひんやりとした手の感触、懐かしいこの行為に……リコリスは満足そうだった。

 

「やっぱり暖かいね」

 

「いつも思うけどさ、これの何がいいんだ?」

 

「内緒」

 

「……別に良いけど、誰か来たら姿隠せよ」

 

「分かってる当然」

 

 そう言って、微笑むリコリス。

 いつも無表情の彼女の珍しく変わる表情に少しびっくりしてしまう。

 そしてそのまま少し時間が進み、何か言おうと思ったんだが――先に彼女が口を開いた。

 

「ねえ……もう死なない?」

 

「……まぁな」

 

「ならいい――もう会えないのは嫌、手を握ってくれないの寂しかった」

 

「…………ごめん」

 

 やっぱり感じる罪悪感。

 ……俺の処刑の瞬間にリコリスがどんな事を思ったのかは分からない、けどこの表情を――悲しげな声音を聞くと、俺は謝罪しか出来ない。

 

「なら約束、また私の手を握って――貴方の熱を感じさせて」

 

「……約束する」

 

「うん、ならいい」

 

 それからまた暫く、今度は気まずさはなく……ただ彼女と時間を過ごした。

 時間が少し過ぎて……ただ何もせずにいると、急にこの部屋の扉が叩かれ聞き覚えのある男の声が聞こえてきた。

 

「親友、起きてるかー?」

 

「起きてるぞー! ……またなリコリス」

 

「家までは隠れてる」

 

「あー了解……」

 

 そうしてステルスとは違う技術でその場から気配を彼女が消せば、丁度良く式と綾音が入ってきた。

 綾音の手には飲料水らしきものが入ったコンビニの袋が握られていて、「大丈夫?」という言葉と共にそれが手渡される。

 

「はいスポドリ……あと起きてて大丈夫、霊真?」

 

「あぁ少し熱あるっぽいけど、意識ははっきりしてるぞ」

 

「よかった……屋上で倒れたって聞いたとき、凄く驚いたんだよ?」

 

「悪い……なんか気づいたら倒れてた」

 

「朝は調子よかったのにね……」

 

 貰ったスポドリを少し飲み、感謝を伝えながらも俺は喋らない式の方を見た。

 

「……なぁ式は大丈夫か?」

 

 怪我でもしたのだろうかと、少し心配になりながらも彼の顔を窺えば、バツの悪そうな表情で式は言う。

 

「いや、俺は平気だぞ……ただ」

 

「ただ……なんだよ」

 

「いや……あー責任感じてるんだよ」

 

「なんでだよ、式がなんかしたか?」

 

 言われたんだが、まじで分からなかった。

 ……責任ってなんだ? 逆に俺は屋上から抜けたわけで感じるなら俺の方だと思うだが……。

 

「はぁ親友らしいな……あれだよ、病み上がりなのに任せて悪かったなって」

 

「それかよ、気にすんな俺も風邪引いてるなんて思ってなかったし、それこそ倒れるなんて分からないって――ほら、あれだろ馬鹿は風邪引かないって言うし、それに俺が風邪引くの珍しい……だろ?」

 

「それ気づいてないだけだろ……あぁ心配して、損したぞまじで」

 

「俺が風邪程度でやられるかって」

 

「だよな、お前はホント強いし」

 

「それよりさ、俺は今日帰れるのか? 先生来ないんだが……」

 

 そういえば気になってた事はそれ、結構な時間をリコリスと過ごしていたけど一向に先生が来る気配ないし、帰れるか心配だったのだ。

 

「あー大丈夫だぞ、熱下がったら帰っていいって伝言貰ってる――まぁこの様子なら俺達が送れば帰れるだろ」

 

「……いいのか?」

 

「いいって――じゃあ、帰ろうぜ親友」

 

――――――

――――

――

 

 この世界の人間達と触れ合う彼を見る。

 ……私を見つけてくれた唯一の人間を、誰も触れられなかった私に愛情を注いでくれた大事な主の姿を。

 

 ずっと冷たかった世界に熱をくれた愛しい人。

 ……彼が元の世界で死んだ瞬間、それは失われたと思って世界を滅ぼそうと思ったけど、こうしてまた会えたのだ。

 

 言葉を交わす喜びを、触れあった暖かさを、殺すことしか出来なかった私に与えてくれた大事なレイマ……そんな彼をもう二度と、絶対に失いたくない。

 

 彼の敵は殺すから、もうあれを見ないために……私の全てを、魂を、嫌いだった毒の権能すら駆使して彼を守ろう――例え世界を毒に沈めようとも、英雄たらしめる魂が曇ろうとも、彼を守るために全てを注ごう。

 

「レイマは優しいから、全部私が受け入れればいい」

 

 私は生命に対する原初の殺戮者。

 どうしようもない程に腐ったただの屑だけど……大切な人の穢れを全て引き受ける者になりたいな。

 

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