異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~ 作:鬼怒藍落
……よし学校に行こうと思った日が、完全に休日だった事ってたまにあるよな?
家から出て数十分後、誰もいない学校から帰宅した俺は……何をするわけでも無く、その日は勉強する事に決め……時間を潰していたのだが、ずっと机に向かっていたことで限界を迎え……ルナのことが気になり、彼女を召喚する事にした。
「あれ、ますた? 急にどうしたの?」
「いや、ほらラウラの件から呼べてなかっただろ? ……心配で」
「優しいね、ますた――でも大丈夫、会わない限りはなんとか抑えられると思う」
異世界でラウラとルナはかなり仲良かったことを知っている。
彼女に師事し近接戦闘を学んだという背景や、何より親友と呼べるほどの間柄だった事までも俺は覚えている。
他人に心を許さない彼女だから……それがどれほどの事かを理解しているからこそ、俺はこの件に口を挟みにくかった。
……だって、ラウラが死んだとき一番取り乱したのは……ルナだから。
「なぁ……ルナ、今日一緒に出かけようぜ?」
そんな彼女の心中は完全に察せないが、少しでも気が晴れればなと思って俺はそう言った。すると耳と尻尾を揺らした彼女が一瞬で反応して、
「ッ! 良いの! ……私、ますたの世界を見たかったんだ!」
「あぁ、まあ少し服は変えて貰うけど――今のままじゃ際どいし」
「じゃあ待ってて、すぐ着替えてくるから一回戻して? 十分で準備するね!」
そういうことになったので、俺は一度彼女を魂へと戻して……十分間待機し、着替え終わったルナと対面した。
着ているのはワンピース。
……新品同然の青いそれは、完全に彼女用に作られたと言えるレベルで似合っており……凄く可愛らしい。
「そんなの持ってたか? しまった覚えもないし」
「アラクネさんが作ってくれたんだ! せっかくのデートだしって凄く早く!」
「流石アラクネ、仕事人だな」
蜘蛛の召喚獣のアラクネという女性。
彼女はよく俺の召喚獣達の服を作ってくれる職人気質の女性で、暇さえあれば女性召喚獣の服をワイルドハントと共に自分の糸で拵えている。
その裁縫の腕は二人合わせて最高峰であり、俺の召喚獣達も愛用している魂の中のサービスの一つ。趣味でやってるのも分かるし、日に日に服が増える恐怖もあるが、せっかくの現代だし今度カタログを渡そうと、ルナを見て思った。
「……じゃあ出発なんだが、何処行こうか?」
「えっとご飯食べたり、あとね……前にミソロジアで言ってた映画っていうの見たい! 絵が動くんでしょ!?」
「じゃあ市街地の方行って……映画館で見た後で食事でもするか」
「分からないから任せるよ、ますた!」
二人でバスを乗り継いで都心……新宿の方にやってきた俺達は、そのまま映画館に入り……ルナに見たいのを選んで貰って、久しぶりに売店へと行きポップコーンとメロンソーダを二人分買った。
気になるしとりあえず映画のパンフレットは後で買うことにして、入場までの時間を潰し、始まるまで待ったのだが……どうしてか、ルナが選んだのはホラーファンタジー的な映画であり、少し苦手な部類だった。
いや少しというのは訂正、めっちゃ怖かった。
「………………」
「あれ、ますた?」
「…………なんだ?」
「凄かったね、血がいっぱいだし出てくる狼格好良かったね!」
着眼点そこなんだ……と思うも、そりゃあ彼女は人間じゃ無いわけだし、そうだよなと妙に納得。今回の映画は、山奥の村に迷い込んだ人間達が狼を操る悪魔と戦う的なよくありそうなものだったんだが、かなり演出が凝っていて、めっちゃ怖かった。
「それにあの緑の飲み物、パチパチしてて美味しかったし……それにね、ポップコーンだっけ? キャラメル風味で楽しかったよ!」
「……まぁルナが楽しそうだったら良いわ」
「映画ってもっとあるんだよね? 長かったけどまたますたと……観たいな」
意外と思われるかもしれないが、ルナは結構異世界の頃から人間の娯楽が好きだった。だからか、映画に興味を持ったらしいし、また見ようと言ってくれる。
「そりゃあ勿論、他の奴らも誘って大人数で観たいな。恋愛系とかもあるし、アラクネさんとか楽しむだろうぜ?」
「……恋愛系はますたと二人きりを所望だよ。私がミソロジアで小説にはまってたの知ってるでしょ?」
「いや……流石に二人っきりは気まずいわ、特に恋愛は」
「むぅヘタレますた」
しょうがないだろ、ただでさえ割とルナがいることで注目されてるんだから……彼女もペルセウスの配信で映ったせいか、かなり知名度があるらしいし耳は隠して貰っているが、その容姿は圧倒的だ。普通に目立つからチラチラ視線を感じて鬱陶しい。
「わるいちょっと、手洗ってくる」
「ん――待ってるね、ますた」
――――――
――――
――
席を外して手を洗いに行ったますたを見送った私は少し考える。
……この世界は、ダンジョンというものがあるけどすっごく平和だ。私がいたミソロジアと違って、戦争も聞かないし魔物が溢れるということもあまりない。
相当生きやすいのか、こんな映画という娯楽すらあり……どこまでも平和で楽しく退屈そうな世界だった。ますたがいるからいいけれど、私は根本的に全てのものが嫌いだ。
「皆は良いけどね……だって同じだし」
……私と同じで救われた皆。形は違えど、ますたに寄り添われ、彼を認めて、彼を愛した仲間達。
彼は、ますたは、何処までも真っ直ぐで純粋で優しくて、誰かのために動き続けた大好きな人。
「だからこそ……私は全てが憎い」
……彼を裏切った人類も、彼を貶めた敵達も。
彼に試練を与えた世界そのものすら、全部が憎くて堪らない。全てが敵だ。全部を殺したい……氷霧に落として終わらせてやりたい。
この世界はますたの大切な人がいるし、まだ許せるけれど……異世界の者は全部が敵だ。殺す奪う絶対に噛み潰す――もしも彼を知ってるものが来たのなら、何処までも逃がさない――ラウラには八つ当たりのようになっちゃったけど。
でもあれは、レイマを置いて行ったのが悪い。
「敵が来たら魔狼の執着を――狩りを見せてあげる」
ふふ、あー……殺意が滾る。
心の底から、笑顔が満ちる……私はルナ・マナガルム。月を喰らった罪人で、ますたの大事な大事な召喚獣。
傷つけるもののには報復を、抗うものには絶死を持って――全ての命を喰らい尽くす。もう二度と、ますたが曇らないように傷付かないようにあらゆる敵は私が殺す。