異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第71話:方向音痴の実質逢瀬

「えっと、用事があってきたけど、人多すぎて迷ったと?」

 

「……うん、ほんとはもっと早く来る予定だったけど、ご飯美味しくてぇ――気づいたら、迷っちゃって……スマホの充電無くなっちゃって、連絡も無理で」

 

 しっかりとしたイメージのある紗綾さんは、ベンチに座りながらも完全に弱り切った様子でそう言ってから……俺が手渡したオレンジジュースを飲むことで落ち着こうとしていた。

 

 いつものスーツ姿では無く、所謂清楚系? と言えそうな服をしていて、初めて見る眼鏡姿の彼女、こういう格好もするんだなと思いつつも、喋れるようになるのを待つ。

 

「あ、このオレンジジュース美味しい……」

 

「……落ち着きました?」

 

「うん、ありがと霊真君。うぅ今日大事な日なのに、なんで私は抜けてんるだろ」

 

 落ち着いてはくれたみたいだけど、ネガティブになってる彼女の元気はあまりなかった。励まそうにも何を言えばいいか分からず、それにまだ詳しく聞けてないから助けるのも難しく、どうすればいいか選べなかった。

 

「とりあえず、どこに行きたいんですか?」

 

「えっと、今日来るアイドルの特設ステージの近くに行きたいんだ……私ちょっと手伝いで仕事頼まれてて……」

 

「相変わらず大変そうですね――えっと、会場ってここですか?」

 

 スマホの地図アプリを開いて覚えている会場の位置を彼女に見せる。

 ……あっているらしく、紗綾さんはこくこくと頷き「ありがとう」と言って一人で向かおうとしたのだが……。

 

「また迷いそうですし、一緒に行きませんか?」

 

「え、いいの? ……あ、でも今日文化祭じゃないの?」

 

「そうですけど、うちの屋台完売しましたし……俺も迷子で暇だったんで」

 

「…………霊真君、方向音痴だったんだ」

 

 意外……と呟きながらも、一緒に行くことにしたのか彼女はベンチから立ち上がる。そしてそのまま、俺が立つのを待ち、

 

「うん、じゃあお願い。頼らせて貰うね!」

 

 そういうことになったので、俺は地図を見ながらも彼女を連れてこの人の多すぎる新宿で目的地に向かうことにした。

 

「…………これ、あれですね人の流れ的にちょっと遠回りするかもです」

 

「一応まだ一時間ぐらいは余裕あるから――大丈夫そうかな?」

 

「了解です……というか、気になったんですけどダンジョン庁の人ってアイドルの仕事も手伝うんですね」

 

 彼女は政府のダンジョン庁の人ってのは知ってるし、実際俺の今の担当だ。そんな彼女が冒険者とは関係なさそうな、アイドルの仕事を手伝うというのがあまり想像出来なかった。

 

「………………あー、えっとね知り合いから手空いてないかなって頼まれて、断れなかった感じかなぁ」

 

「へぇ、凄いですね。確か今日来るアイドルのクシナダさんって、大人気アイドルって聞きますし」

 

「霊真君、アイドル興味あるの?」

 

「いや式……というか親友がアイドル好きで、最近もめっちゃ布教されました」

 

 この日のためというか……このダンジョン祭が始まるまで数日間、俺は式による連日の布教活動で、かなりクシナダっていうアイドルに詳しくなっていた。

 それこそデビュー曲から最新曲まで暗記させられ、コールも割と完璧になるくらいには……。

 

「式君がアイドル好きなのが一番びっくりしたよ」

 

「まあ意外ですよね……あいつ色々なもののオタクですし」

 

「へぇー本当に仲いいんだね二人って。あ、綾音ちゃんもだよね?」

 

「まあ、そうですね」

 

「いいなー私、普通の幼馴染とかいなかったし」

 

 一緒にいるのに喋らないのは気まずいし話しかけたのだが、プライベートで初めて話す割には案外話せてよかった。今日最初会った時とか、完全に落ち込んでいたし……少し元気になって良かったと。

 

 それからも少し歩きながらも、俺達は他愛ない会話を続けていたのだが――一瞬地面が揺れ、その後にかなり大きめの地震が襲ってきた。

 咄嗟なその現象に態勢を崩す紗綾さん、倒れないように腕を掴んで――なんとかこっちに引き寄せる。

 

「ッ――大丈夫ですか!?」

 

「あ、うん――ありがと、霊真君」

 

 転ぶ前に支えられたから怪我は無かったが、強く掴んでしまったせいで跡が出来てないか心配だ。幸い地震はすぐに収まったが、最近よく起こっている地震の中でも一際大きく、被害は無かったが俺の中で少し不信感のような嫌な予感が。

 なぜなら、この地震が起こる瞬間に、ほんの一瞬だけ魔力を感じたから。

 

「――霊真君? 怖い顔してるけど大丈夫?」

 

「あ、すいません――っと会場ももうすぐですし、そろそろ大丈夫ですか?」

 

「あ、うん! ここまでありがとね――あ、よかったらこれ」

 

 会場付近という話だったので、ここまで案内した俺はかき氷屋台まで戻ろうとしたのだが、そんな俺に紗綾さんは何かを手渡してきた。

 

「これ、最前列のチケット。よかったらクシナダのライブ見に来てよ、四枚分もあるから一緒にどう?」

 

「いいんですか?」

 

「案内してくれたお礼だよ? 誰にも言っちゃ駄目だからね?」

 

「分かりました……じゃあ後で行かせて貰いますね」

 

 そういうことになったので、俺は式と綾音のメッセージグループにすぐ戻ると伝えて、手土産を持って親友達の元へと向かった。

 

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