異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第82話:姉なるもの(偽)VS姉なるもの(真?)

「合図はいるかい?」

「いらないよメルリちゃん!」

 

 仲が良いのか悪いのか、そんなやり取りから始まった喧嘩。

 普段は杖を使わないメルリ珍しく杖を展開し、言の葉を紡ぎ出す。

 

「顕現するは地獄の具現、灼熱溢れる炎熱の園、さぁ巨神達よ世界を赫で彩ろう――灼熱地獄(ムスプルヘイム・)巨神の進軍(タイタンパレード)!」

 

 開幕ブッパとも言えるような魔法行使。

 これは魔法の深奥。世界を塗り替える結界魔法……最上級の魔法の一つであり、己の心情世界を展開する禁忌の一つ。

 それを見ながらもすぐに他の仲間に指示を飛ばして身を守ることを優先して貰った。

 

「あとで――説教……」

 

 遠い目になりながらもそう呟いて……もう止められ無さそうなので、傍観するしか無かった。

 ムスプルヘイム――それはスルトという巨人が守る巨人の園、あまりの熱にこの世界で生まれた者以外は燃え尽きるとされる神話の世界。

 俺が使える魔法もその名を冠しているが、この魔法はあまりにも規格外であり、生者に対する毒なのだ。 

 

 世界が塗り替えられ最初に動いたのは赫の巨人。

 剣を持った十を超える巨人の群れに、炎で出来た数多の獣達。

 それは意志を持ってグラムへと攻撃していく――だが、いくら最上の魔法で作られた生物でも、世界を支える最強種には届かない。

 

「……悉く斬り伏せる」

 

 発され、聞こえたのはその一言。

 無手の彼女が腕を振るうだけで、巨神は倒れる。

 剣という機能が備わった彼女は、武器を持たずとも全てを切り裂く怪物だ。

 

「どこ狙ってるの?」

 

 数いる巨神の中でも一際大きい鷲の巨神、それが彼女に熱風を放ち燃やそうとしていくが、範囲攻撃は悪手であり……避けられた末に。

 

「堕ちて」

 

 彼女の手に現れた剣により両断される。

 ……現れた鷲の巨神は今いる世界の基準で言えば、確実にSは超える化け物だ。それを一瞬で斬り伏せるのがグラム。

 相変わらずの規格外な強さに笑いながらも、互いに本気を出してない現状に頭が痛くなってきた。

 

「メルリちゃん、これじゃ終わらないよ?」

「そんなの分かってるよ? ――だからこれを準備した」

 

 メルリの声が反響するように多く聞こえる。

 何があったかと思い空を見れば、グラムを囲うように幾つものメルリがいて……全員が同じ魔法を唱えていた。

 

「絶ッ対一日独り占め! 狂い啼く終末の雷霆(ハウリング・アルマトール)

 

 本来なら四節以上の詠唱を持って放たれる最上級の魔法、それをいとも簡単にしかも分身全員で放つ荒技。トール(雷神)の名を冠するその技は、名に違わぬ破壊力を持ってグラムへと迫る。 

 

 俺の召喚獣の奴らでも……これを喰らえば殆どダウンするだろうし、防ぐのは最上位クラスのは奴らで無きゃ不可能。

 だがまぁ――その最上級の中でも特にやばいのがグラムであることを考えると。

 

絶対切断(アブソリュート・トメーシス)

 

 無傷の上に……反撃さえ出来るのが彼女だ。

 

 分身が一刀のもとに全て切り裂かれ、それどころかこの場に満ちていた魔法すらも両断される。

 

「これでっ私の勝ち!」

 

 最後に残っていたメルリに向けて剣の腹で殴りかかるグラム。

 素の耐久が貧弱な彼女はそれを喰らえばひとたまりも無く、決着だろうと誰もが思った。

 

「君相手に正攻法で挑むと思うかい? で、どうだったかな私とのお人形遊びは!」

 

 倒れた分身から魔力が溢れて、その魔力がグラムを拘束する。

 完全にグラムの動きを封じた上に余った魔力が魔法陣を形成した。

 そこから現れるのは一本の槍、彼女の原典に記されてる反則級の魔法の一つ。

 

「ははははっ喰らってよグラム! 神槍――ラスト・グングニル!!」

「馬鹿メルリ、ほんとにやり過ぎだ馬鹿!」

 

 もう手加減とか自重とか全部忘れた彼女。

 頭のおかしい魔力による攻撃は、この世界を揺らしながらもグラムに迫った。

 人の魂の中でラグナロクというかアルマゲドンというか、本当に二人きりの最終戦争を始める二人、余波で殆どの召喚獣がぶっ飛んでるし、どう収拾を付ければ良いのだろうか?

 

「……来なさい、魔剣グラム」

 

 そして槍が迫ったが――次の瞬間には、神槍は両断された。

 グラムの手には、自分の名を冠した最上級の魔剣が一つ。

 世界そのものの様な気配を持つその剣は、圧倒的な存在感と禍々しさを放ち、空間をねじ曲げるほどの圧を放っている。

 

「次で決めるから」

「ふっ上等だよ」

「決めるな、もう闘技場とか原型残ってないから――あの聞いてるか二人とも!?」

「レイマ君は黙ってて、今お姉ちゃん大事なところなの!」

 

 あ、一応返事はしてくれるんだ。

 そう思いながらも……もう何しても無理そうなので、俺は今ある全部の魔力を使い、とりあえず仲間を守るためだけに結界を張った。

 

 

「我は世界を支えし調停者! イーサーが目にした我が神威、汝らの生命を称えよう! 始まれよ世界、新星の輝きが命を紡ぐ! 我が真名(しんめい)は始原と剣」

「我は原初を殺めし簒奪者! ミーミルの泉に捧げた我が眼、汝らの研鑽を嘲笑おう! 終われよ世界、来たる黄昏が汝を屠る! 我が真名(しんめい)は死と戦争」

 

 あ、決めるってそういう……。

 余計に俺の目は死に、訪れる結末に心が終わる。

 彼女たちが放つのは文字通りの必殺……それも、原典に記される最終項を解き放つ正真正銘の奥義だ。

 

原典終局(オリジン・フィナーレ)

 

終局を謳う(カタストロフィ・)原初龍魚(ノヴァバハムート)!」

戦争と死、遍くを滅ぼす(ヴォルヴァアウズ・)黄昏の空(ラグナロク)!」

 

 一つは己の存在そのものをぶつける奥義、もう一つは黄昏色のビーム。

 それがぶつかり合ってことで、爆発が起き……ると思った刹那のこと……。

 

「そこまでだよ」

「やり過ぎだぞ馬鹿姉二人」

 

 今までずっと起きてこなかったか、面白がって傍観していただろう二人の女性の声が耳に届いた。 

 グラムの技は、同じぐらいに巨大な存在を解放する技に相殺されて……メルリのビームは魔法であった故に、褐色肌の女性に喰われる。

 

「いくら何でもやり過ぎだ。この世界壊す気かよ」

「……グーちゃん落ち着いて、あとで時間取って貰お?」

 

 現れたのは、深紅の髪色をした金眼の女性と褐色肌の露出の激しい白髪の女性。

 召喚獣の中でもバハムートと同じクラスの頼れる仲間の彼女たちは、流石に疲れたような声音で二人に説教して、俺へと振り返った。

 

「久しぶり王子様……止めたよ、偉い?」

「よぉ久しぶりだなレイマ」

「助かった――まじでありがとう、ラーヴァにアンラ」

 

 最初に話しかけてくるのは童話のお姫様のような衣服を着たラーヴァ・テュホン、とても優しい声音と笑顔で俺に話しかけてきて、褒めて褒めてと強請ってくる。

 それに合わせて俺を見下ろすのはアンラ・アジ・ダハーカ。

 自分の主神の原典すら喰らったという過去を持つ、俺の魔法に対する切り札である彼女。男勝りな性格で愉悦大好きな彼女だが、よく止めてくれたなと感謝した。

 

「とりあえずレイマ、今回のはお前のケア不足だ。反省して、時間取れ」

「……はい、ごめなさい」

「でもアーちゃん、やり過ぎたの反省必要だから止めた私達の方がご褒美あっていいと思うんだ」

「それもそうだな、と言うわけで構えレイマ……そしてオレと戦え」

「……了解、とりあえず暫く何もないから皆と話すわ」

「おう、そうしろそうしろ。じゃあまずオレからなー!」

 

 そして、二メートルの身長はあるアンラに抱きかかえられて、そのまま彼女の住居に放り込まれたんだが、抑えきれなかったらしい召喚獣の皆が突撃してきたことで、そのまま宴会みたいなことになったのが今回の結末だった。 

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