異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した最強召喚獣たちの愛が重すぎる~   作:鬼怒藍落

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第95話:かつてを想って

 ミソロジアという悲劇に溢れた世界、吸血鬼の姫として生まれた私は……吸血鬼の中でも上位の真祖の原典を持って生まれた。

 

 私の一族の中でも数世代に一人しか覚醒させることが出来ないその原典。

 それは……私に呪いを与え、孤独へと追いやったんだ。

 

 ――吸血鬼。

 それは他種族の血を主食とする魔物に近い種族。

 強力な魔法や能力を持つ代わりに他者に依存しなければ生きることの出来ない呪われた種族だ。だけど、真祖という力を持った私はそれに依存する必要が無く――どこまでも崇められてはみ出し物として異物として生きていた。

 

 私を産んだ母は言った……。

 

『貴方は神に選ばれた者だ』

 

 私を育てた父は言った。

 

『お前は吸血鬼という種族を支える者だ』

 

 同種族の友達なんてものは作れず、常に強者であるかとを求められて、どこまでも、自由がない生活。世界を支配し、神話を統べようとする魔王に対抗するためと私は一人孤独に生かされた。

 何より、常に怯えられて……別の生き物を見るような視線に晒された。

 それが子供の時の記憶であり、私の始まり。

 ラウラ・ドラクレアという吸血鬼の幼い頃の記録だ。

 

――――――

――――

――

 

「――ラ――ラウ――ラウラ!」

 

 私を呼ぶ声がする。

 どこまでも必死に、縋るようで泣きそうな――そんな声音で聞こえてくる。

 体を揺らされ、軽い微睡みから目を覚ませば……目の前には心底不安そうな霊真の顔があった。

 

「……む、どう……したレイマ?」

「起きたんだな? 急に倒れたんだぞお前……明らかに不調だよな」

 

 冷静を装っているが、声が震えており明らかに動揺していることが分かる。

 私が倒れたという点で嘘をつくわけがないだろう事から、それは事実なんだろう。心配をかけてしまった事と、最近起こってる発作に付き合わせたことで返答に困ってしまった。

 

「……悪いなレイマ、私も理由は分からない」

「嘘だな、右手を隠す癖でてるぞ」

「…………そこは気を使って無視してくれ」

「駄目だ。それで何があったんだ? お前が倒れるなんてよっぽどだろ?」

 

 痛いところを突く。

 ……ルフェルにも指摘されたが、私は誤魔化す時に右手を覆う癖があるらしい。忘れていたが、長い付き合いのこいつはしっかり覚えていたようだ。

 そういうときの勘の良さはあまり発揮してほしくないが、誤魔化すのは無理そうなので素直に白状することにする。

 

「最近、原典の浸食が激しくてな。多用した影響か種族が変わりつつある……それの反動で眠ることが増えてるいるだけだ」

「だけって、それは大変だろ――というか俺が血を与えたからか」

「レイマ、使ったのは私の意思だ。だから貴様は気にするな」

「……いや、でも」

「別にいいし気にするな、これは受け入れてることだ種族が変わるのは甘んじている。それに貴様に迷惑はかけたくないからな」

 

 無意識に守ると誓った相手にそう言ってしまう。

 ……本来なら言うべきではないのに、こいつの血が欲しいという本能からかそんな言葉が口から出た。

 こいつの性格を知ってるからこそ、ずっと想ってきて見てきたから……悪とされる原典がこいつの血を飲ませろとその言葉を吐かせる。

 

 気付いたときにはもう遅く、それを言ったことにより……レイマは吸血鬼の特性から私の身に何が起こっているのかを察したのだろう。

 

「お前、血を吸わない代わりに睡眠選んでるよな?」

「…………おい、だから気付かないでくれ」

「なんで言わなかった?」

「言っただろう? お前に迷惑をかけたくない」

「………ほんっと、お前変わらないな頑固なラウラのまんまだよ」

 

 そこでこいつが何を思っているか分からないが、それはお前もだろうとは言えなかった。だって、最後までこいつを見届けられなかった私にその資格はないから。

 

「深くは聞かないが、椿さんを守るためだろ受け入れてるのって」

「……あぁ、そうだな。最近のダンジョンは明らかに位が上がっている。それを考えると、強くなる必要があるだろう?」

 

 今度は手を隠さないように意識して、私はそれらしい理由でレイマと話す。

 頭に血が上っているだろう今のこいつなら気にしないだろうからだ。

 

「ならなおさら俺を頼ってくれよ、魔力与えるくらいならいくらでもやるし……血も、元のこいつには悪いけど吸うぐらいなら……」

「……だから気にするな、寝れば問題ない」

「それこそ駄目だろ、ダンジョンの中で倒れたらどうするんだよ」

 

 霊真指摘はもっともだ。

 ……最近は睡眠回数も増えているし、ダンジョンの中で眠ったら最悪。

 だから血を吸った方が良くて、早急に吸血鬼に戻った方が良い――だけど、吸血という行為はレイマを傷つける行為で、出来ればそれはしたくない。

 それも、今飲んでしまえば自制が効かないとも分かっているからこそ――絶対にそれだけはしたくなかったのだ。

 

「私の我が儘だ。どうかこれは見逃してくれ」

「あぁもう、ほんとそういう所が頑固だよな…………嫌だけど分かった。その代わり暫くダンジョンに潜らないでくれ、それと次ながく眠ったら絶対に伝える事。その時は俺も覚悟するから」

「ほんとうに貴様は変わらないな――だが分かった。その時は貴様を頼ろう」

 

 あぁ……本当に、こいつはどうして変わらない。

 裏切れたはずなのに、ずっと頑張ってその先でああなったのに本当にどうして……他人のために動けるんだ。

 

 私は知っている。 

 こいつがこういう人間だってことは。

 でも自分を大事にしないこいつはどこまでも前に進めてしまうこいつは、きっと何があっても変わらなくて。

 

「そうしてくれ。じゃ約束だ、ちゃんと伝えろよ?」

「あぁ、もう破りたくはないから伝えるぞ」

 

 だから私は守ると決めたんだ。一緒に進むと決めたんだ……今度こそ、こいつを守り切るために、私は強くならないといけない。

 ……そのために、もっと私は原典を受け入れないといけないのだ。

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