突然、日本に現れた門は異世界『魔都』に繋がった。
魔都は日本に女性だけに異能の力を与える桃という大きな恩恵を与えたが、それ以外に『醜鬼』と呼ばれる化け物を日本に呼び寄せてしまった。
魔都の管理、そこから現れる脅威に対応するために桃による異能を持つ女性で構成された『魔防隊』が結成された。
日々、活躍する魔防隊だがそれとは別に日本の人々を護り、救う組織があった。
彼らの名は『鬼殺隊』。
かつて人を喰らう悪鬼を討ち滅ぼした彼等は再び結成され、今日も人々を護っていた。
○
繁華街の一角に外からでもBGMが漏れる程盛り上がっている店があった。
ホストクラブのようで地下にある店では煌びやかな服を着た男性たちが女性たちをもてなしていた。
女性たちは酒を飲んでいるのか楽しそうにしているが目に光がなく、普通の状態ではなかった。
その店舗に繋がる地下への階段を降りる男の姿があった。
男は黒い軍服の上に真紅の羽織を着ており、その腰に刀が差してある。
店前のセキュリティが怪しく思い、入り口の前で止める。
「何か用で?」
「アンタらには関係がない。邪魔だからどいてろ」
無理矢理通ろうとするとセキュリティが肩を掴んで止め、男はセキュリティを睨む。
次の瞬間、入口の扉をセキュリティと共に吹き飛ばし男が店に入る。
突然の事態に店の人間たちは驚くが客である女性たちは虚な目でホストたちを見ていた。
男はホストの中でも一際高級なスーツを着たホストに目を向ける。
「お前がここのNo.1だな?」
「と、突然なんなんだぁ?扉を吹き飛ばして入ってくるとか礼儀がないなぁ!」
この店のトップであろうホストは狼狽えながらも男に怒鳴るが、男は気にした様子もなく男を見据える。
「……ここに通っていた複数の女性が行方不明になっている。お前らの仕業だろう?」
「何言っちゃってんの?ホストにハマった女が金欲しさに風俗に落ちて消えるなんてザラにあるだろうが。勝手にハマって勝手に消えただけで俺らはかんかーねーなー」
ホストは馬鹿にしたような物言いで答える。
女性差別なことを言っているのにホストが侍らせている女性たちは顔色一つ変えずホストを見上げていた。
「お前たちが喰ったんだろ?この悪鬼が」
「はぁ?あっきぃ?俺らのことを醜鬼とかと間違えてる?まぁ、女どもを食いものにしてるのはあってるけどさぁ!」
ホストの顔は話すたびに悪辣に歪んでいく。
男はもういいと言わんばかりに息を吐き、羽織を翻して刀の柄を握る。
「もういい。お前らは滅殺する」
「ッ!お前やっぱり鬼殺隊かぁ!!殺せ!お前ら!」
ホストの言葉と共に他のホストたちの肌の色は普通の人間とは異なる色に変わり鋭い牙と爪が生えて、正に鬼と言った形相に変貌する。
飛び掛かるが男は駆け出すのと同時に刀を抜いて、一瞬で複数の鬼の首を刎ねる。
更にすれ違い様に刀を振るって、次々と鬼を倒していく。
やがてNo.1ホスト1人になり、男は見据えた。
「ぐっ……!クソが!せっかくいい狩場を作ったってのに……!」
「……最後にお前に聞きたいことがある。『
その言葉にホストは一瞬驚いた顔になるがすぐに嫌らしい顔でニヤつく。
「あの方のことをお前ら人間に言っても関係ないだろ!」
ホストの体は色が変わり、筋肉が膨張して異形の姿になる。
側にいた女性の首を掴んで盾にするように前に出し、その鋭い爪は首に僅かに刺さって血が流れている。
「動けばこの女どもを殺す!嫌なら刀を……!」
鬼が言い切る前に男は鬼の目の前に目に見えないほどの速さで移動し、独特な呼吸音が響く。
「血の呼吸 壱ノ型
その言葉と共に振るわれた刀は紅い軌跡を描き、鬼の首を切り落とした。
吊り上げられた女性が落ちる前に抱き止めて地面に寝かせる。
鬼は何をされたかも分からず、塵となって消え、それを一瞥した男は刀を鞘に納めた。
男の名は『
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剣至はその後にきた警察、救急隊、鬼殺隊の後方支援部隊である『隠』の面々に事後処理を任せてその場を離れようとすると、独特な音とともに背中に抱き付かれた。
「けーんくん♪」
良い匂いとともに背中に柔らかい感触がくると振り向く。
「天花?何でここにいるんだ?」
天花と呼ばれた美女は魔防隊の六番組の組長であり、その能力は空間を操る『天御鳥命』である。
「何でって大切な恋人を迎え来たんだよ?さっ、私達の愛の巣に帰ろ♡」
頬を赤らめて、正に恋する乙女の表情の天花とは打って変わって剣至は呆れた顔になる。
「愛の巣って……俺の家だろ?勝手に荷物を持って来やがって」
剣至と天花は恋人関係だが天花の行動はかなりぶっ飛んでおり、困っていた。
具体的には恋仲になるために薬を盛って関係を迫ったり、勝手に自分の私物を剣至の家に持ち込んだり、魔都にある自身の住処である六番組寮に剣至の私物を持って行ったりと様々だ。
「じゃあ帰ろうか」
「……わかったよ」
いきなり迫られたことに最初は迷惑していたが天花の献身的な接し方や、ある目的のために協力してくれる。
そんな天花に剣至は惹かれていき、文句は言うけれど天花なことを愛おしく思っている。
剣至は諦めて、天花に腕を組まれて引き連れられながら歩き出す。
すると天花は顔を近づけて剣至にしか聞こえないように話し出す。
「京ちんのところが人型の醜鬼らしきものと遭遇して戦闘になったみたい」
「っ!……そうか、京香のところがか。戦闘はどうなった?」
「副組長と組員が負傷したけどそこまで激しい戦闘にはならずに相手が撤退したらしいよ。ちなみにこれはまだ魔防隊のみしか回ってない情報だから」
天花の言葉に剣至は神妙な顔付きになる。
「そうか……他の柱に知られる前に何とかその人型と接触したいな」
「難しいだろうねぇ。人型は魔防隊に恨みを持っているだろうから。いつかは現れるかもしれないけど。こうなったらいつ現れても駆けつけられるように私の寮で生活しなくちゃね♡」
「うん……いや、普通に家に返して欲しいんだけどな」
「ふふっ、今日は寝かさないからね♡」
真剣な話をしていたのに途中から欲望を隠さない天花に剣至は少し呆れるが気にしないことにした
他意がありまくる天花と諦めた様子の剣至は共に転移し、姿を消した。