柱合会議から数日後、剣至は遠征の準備をしていた。
これから一番組に出向いて、管轄地区の合同調査を行なうことになっている。
しかし、なかなか準備が進んでいなかった。
何故なら天花が背後から抱きついて離れないからだ。
「あー、天花?そろそろ離れてくれない?」
「いや。しばらくケンくんと離れてしまうからケンくん成分を補充しておきたいの」
「なんだよその成分……」
天花は拗ねた顔で剣至に更に体を押し付けて話しかけてくる。
「やっぱり調査中はあっちで寝泊まりするの?私が迎えに行けばここから通えるのに」
「それは無理だ。合同調査するのは一番組とだけど調査する場所は現世なんだ。ここからは通えないんだ」
「そう……」
天花は露骨に残念そうにするので剣至は天花の頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。
「ん……じゃあ我慢するね」
「あぁ……よし、できた」
「じゃあ一番組に行こ」
剣至は天花の能力で魔都の一番組寮に向かった。
○
転移が終わると一番組寮の目の前に到着しており、そしてその前には一番組組長『冥加 りう』ともう1人が待っていた。
「りうさん。お久しぶりです」
「冥加組長、お久しぶりです」
「久しぶりだね。剣至、出雲組長」
3人は互いに挨拶をして、天花は自分の寮に戻ることにした。
「じゃあねケンくん。また迎えに来るから」
「あぁ、送りありがとうな」
天花は剣至を愛おしげに見つめながら手を振って姿を消した。
「ふむ、出雲組長と付き合っている噂は本当だったのかい。仲が良くて喜ばしいね」
「ははっ、恥ずかしいところを見せましたね」
りうは世間話をしながらも剣至を注視する。
(ふむ……恋人にかまけて鍛錬を怠っているかと危惧したが杞憂だったね。……以前より闘気が練り上げられている。流石だね)
剣至から僅かに漏れ出る闘気から以前より実力を上げていることを把握して内心で唸る。
「んで、りうさん。この子は?」
「あぁ、紹介がまだだったね。挨拶しな」
「押忍ッ!副組長の多々良 木乃美です!よろしくお願いします!」
元気いっぱいに木乃美が挨拶し、その様子に剣至も笑顔で挨拶する。
「ああ、こちらこそよろしく。しかし、まだ高校生くらいなのにもう副組長なのか凄いな」
「いえ!私なんてまだまだです!」
元気で謙虚な木乃美に剣至の中での好感度がグングン上がっていく。
「この子は私がスカウトして鍛えた秘蔵っ子さね。次期組長だよ」
「そりゃ凄い」
3人は組寮に入り、今後の話をしようしたが剣至が待ったをかけた。
「打ち合わせする前に
「……そうだね。旦那も喜ぶよ」
りうに案内されて訪れたのはりうの自室でそこには仏壇があり遺影が飾ってあった。
剣至は線香をあげて手を合わせる。
「もうあれから8年も経ったのか。早いもんだ」
「はい……」
剣至は遺影を悲しげに見ながら呟いた。
○
応接室に移動して今後の話をすることにした。
「基本的に調査は木乃美と行なうことにしてもらうよ。魔都を組長と副組長の両方で空ける訳にはいかないからね」
「はい」
「木乃美、アンタはもうすぐ組長になるんだ。今後鬼殺隊とは連携を組むことが多くなることだし剣至から色々学びな」
「はい!」
次に剣至は調査資料を広げる。
今回の事件は一番組の管轄である東北地方で起きた事件だった。
十数名の男女が行方不明になっており、最初に鬼殺隊が捜査をしたがその隊士たちも行方不明なってしまった。
次にその土地を管理している一番組が調査と警護に出たがその組員も行方不明になってしまった。
事態を重く見た鬼殺隊と魔防隊は合同調査をすることになったのだ。
「時間帯は夕方から夜にかけて行方が分からなくなっているみたいです。鬼の仕業なら活動するのは夜限定なので、今から夜まで聞き込みをして夜からパトロールをしようと思います」
「こちらで気になることは行方不明者が出るたびに一瞬門の反応が出ることだね」
「一瞬すぎて何処に出現しているか分からないんですけどね」
「………とりあえず現世に行って調査しましょう」
剣至が立ち上がると木乃美が緊張した様子で声をかけてきた。
「あの!紅柱さん!現世に行く前に少しお時間いただいてもいいですか?」
「名前でいいよ。柱なんて肩書きだし」
「ありがとうございます!では、武藤さんと呼ばせてください!それで一度手合わせをお願いしてもいいでしょうか?」
「手合わせを?」
「それはいいね。2人が主体で動くんだ。お互いに実力を知っておいた方がいいだろう。それに木乃美は柱の実力を知らないしね。胸を貸してやってくれ」
「分かりました」
3人は一番組にある道場に移動して剣至と木乃美は道着に着替えて対峙する。
(師匠の元弟子で、鬼殺隊の中でもトップクラスの実力者。その実力、見させてもらいます!)
木乃美は鬼殺隊の人と会うのは初めてで、りうからは相当の実力者だと教えられているが会って見ただけでは分からなかった。
「あの鬼殺隊の人は刀を主に使って戦うと聞いているんですが本当に素手で始めてもいいんですか?」
「ああ多々良さんは素手がメインなんだろ?なら最初は合わせるよ」
「……分かりました。では、よろしくお願いします!」
木乃美は少し侮られたと思い一瞬顔を顰めたがすぐに引き締め直し構える。
(どのように来るのか分からないから最初は様子見で……)
そう考えて少しずつ距離を詰めようとした瞬間には目の前に剣至の拳があった。
「ッ!?」
「本気でかかってこい。俺の実力を知りたいんだろ?」
「ッ!ならこっち行かさせて貰います!」
木乃美が鋭い拳と蹴りを正確に剣至の急所に目掛けて放つが全て捌かれるか、防がれる。
(こっちが攻め続けているのに全部防がれる!それに徐々に追い込まれている!?)
木乃美は状況を打開しようと強い打撃を放つ。
しかしその手首を掴むと襟を掴んで背負い投げをした。
「ぅくっ!?」
「最後少し焦ったな。隙が大きかったぞ」
(実力を見させて貰うなんてとんでもない……!試されてるのは私だ!)
2人はもう一度立ち直し、向かい合う。
「すいませんでした!鬼殺隊の人たちの実力が分からず、心の中でどこかで侮っていたのかもしれません。次から……」
木乃美は自分オリジナルの拳法の構えを取るとその手にはエネルギーのオーラが纏わり、形作られて爪のような形状になる。
「本気でやらせて貰います!!」
木乃美の目が変わったのに気づいた剣至は壁にかけられた木刀を手に取って構える。
「………」
「………ッ」(木刀を構えた瞬間纏う空気が変わった。隙がない……!)
様子を伺っていた木乃美だが埒が開かないと考え、前に出る。
(考えるより動いた方が私らしい!)
「虎爪烈斬!!」
木乃美が攻撃を連続で繰り出して剣至を追い詰めようとするが、剣至は木刀を上手く使って捌いていく。
「くっ……!」(こんなに攻撃しても掠りもしないなんて!)
(上手いな。攻撃するたびに間合いを変えて自分が優位なところに立とうとしている)
何度か打ち合っていると木乃美の攻撃が剣至の頬を掠めて、剣至の目つきが変わり呼吸を深くする。
(呼吸の音が大きくなった?)
木乃美が疑問に思った瞬間、剣至は深く踏み込んで斬撃を繰り出す。
「ぐっ!?」(攻撃を出す隙がない!)
防ぐのに精一杯な木乃美の隙をついてその喉元に向かって木刀を振り、寸前で止めて勝負をつけた。
「……参りました」
木乃美が負けを認めて、礼をする。
「やるな多々良さん。攻撃を防ぎきるつもりでやっていたのに少しもらってしまった」
「いえ武藤さんこそ凄いです!こっちが攻めているのにずっと有利だと思いませんでした」
お互いに健闘を称え合っていると見学していたりうが近づいてくる。
「どうだい剣至、うちの秘蔵っ子は?」
「流石です。将来が楽しみですよ」
「ふふっ、そうだろう。木乃美もいい勉強になっただろう?」
「はい!自分がまだまだと改めて思いました。……あの武藤さん、もし空いている時間があれば少しの間だけでも稽古をつけてもらってもいいですか?」
「ああ、今回は長くなりそうだからな。隙間に一緒にやろう」
「はい!ありがとうございます!」
互いの実力を見せあった剣至と木乃美は現世に調査に赴いた。