見回っていた地区を見張っていた他の鬼殺隊隊士から醜鬼の出現報告があり、現場に急行する剣至と木乃美だが着いた時には終わっていた。
「醜鬼が消えた?」
「はい。あの子を守りながら戦っていたんですが突然消えて……」
戦闘していた隊士から事情を聞くと見回っていた隊士が悲鳴を聞いて駆けつけると霧の中で醜鬼に襲われる女子高生を見つけて助けに入ったとのこと。
霧の中で視界が悪い状態で不利だったが2、3度打ち合うと醜鬼の方から姿が消してしまったらしい。
「すぐに引いたのか?」
「はい。2、3回打ち合いをしただけで霧と一緒に姿を消しました」
「霧と一緒にか……」
隊士の話に引っかかりを覚えて考える。
「どうしました?」
「いや、霧と一緒にってのが気になって」
その時、ふと視線を感じて振り返ると視線の先には山があり、その中腹には霧がかかっていた。
「多々良さん!着いてきてくれ!」
「は、はい!」
剣至が山に向かって走り出し、木乃美もそれに続く。
数分で山に到着したがさっきまで森にかかっていた霧はなくなっていた。
「何かあったんですか?」
「この山にさっき霧がかかっていてそこから視線を感じたんだ」
「視線を?」
剣至が木の葉を触ると全く湿っていなかった。
それであることを思いつく。
「………確かめてみないとな」
「どうかしましたか?」
「いや、今日はこの辺りを重点的に警邏しよう。もし霧を見たら1人で行動しないで俺を呼んでくれ」
「分かりました」
その後、醜鬼と鬼の出現が見られず朝になった。
2人は藤の家に戻り、いつも通り訓練を行なう。
「よし、やるか」
「よろしくお願いします!」
いつも通り木乃美が攻めて剣至が守りに入っていたが途中で木乃美は構えを解いた。
「どうした?」
「何回か手合わせをしましたけど武藤さんから攻めたことってありませんよね?一度、武藤さんの攻めの姿勢を見たいです」
「……そうか、分かった」
剣至はそう言うと拳を構える。
「……ッ(やっぱり構えを取るだけ全然違う!)」
気を引き締め直して木乃美も構える。
僅かな瞬間、静寂が2人の間に漂うがすぐに剣至が動き出す。
剣至の拳は的確に木乃美の首を狙い、突きを放つ。
木乃美もその拳を避けてカウンターをしようとするが、剣至はそれを狙っていたかのように腕を掴んで木乃美のバランスを崩すと背後に回り込んでその首を腕で締める。
「ぐっ……!」
木乃美が逃れようとするが剣至の腕力が凄まじく振り解けない。
(なんて腕力……!能力無しだと振り解けない!)
木乃美は仕方なしに体を揺り動かして剣至の胴体を蹴って逃れて振り返って体勢を整えようとするが、既に剣至が目の前にいてその首に手刀を添えていた。
「まだやるか?」
「……参りました」
木乃美は悔しそうにしながらも降参した。
2人は休憩がてら端に座ると、剣至は木乃美にスポーツドリンクを差し出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます。……やっぱり武藤さんは凄いですね。刀を主に使っているのに素手でもあんなに強いなんて。拳法が主力の私なのに少し自信をなくしちゃいました」
木乃美は笑みを見せながらも少し落ち込んでいた。
「多々良さんも凄いよ。昨日俺が指摘したところを直して戦法も変えてきた」
「あ、ありがとうございます」
「でも、その後はすぐにまたワンパターンになったから柔軟な戦法を考えるようにしないとな」
「はい!……なんだか武藤さんと話していると励まされますね。なんだかお兄さんができたみたいで」
「お兄さんか……」
その言葉に剣至は一瞬複雑そうな顔になるが気づかれないように戻す。
「そう言われるのは嬉しいな。俺も妹ができたみたいで新鮮だ」
「えへへ……それならお互い様ですね!そういえば武藤さんは魔都で主に活動しているって聞きましたけど休みはあるんですか?」
「あるさ。君たちと同じで魔都で過ごしているよ。基本的に移動のことも考えて六番組で仕事をしているよ。後はこっちで応援が必要な時は来ていたりするな」
そんな他愛もない話をして、時間を過ごしていると木乃美は登校の時間になる。
「じゃあ私は学校に行きますね。いってきます!」
「いってらっしゃい」
木乃美を見送り、剣至はまた捜査資料を広げる。
(……霧の出現に関する記述はなし。聞き込みをするか)
剣至も身支度を整えて、事件があった周辺に聞き込みをしに向かった。
○
その頃、木乃美は学校で授業を受けていたが連日の夜通しの警邏に眠気が襲ってきていた。
(眠い……いけない!集中しないと!)
眠気を振り払おうと頭を横に振るうが授業に集中できずに外を見ながら、剣至のことを思い出す。
(武藤さん、優しかったな……先輩っていうよりはお兄ちゃんとかの感じで。武藤さんがお兄ちゃんだったら……)
木乃美は若干まどろむ意識で妄想してしまう。
帰ったら労わってくれる剣至、学校や魔防隊であったことの相談にのってくれる剣至、遊びに付き合ってくれる剣至、優しく頭を撫でてくれる剣至。
「って、私なに考えてるの!?」
「多々良!授業中だぞ!」
「す、すいません!!」
昼休みになり、木乃美は特に仲がいい万倉 江真と昼ご飯を食べながら先程のことを話していた。
「木乃美どうしたの?珍しく居眠りしちゃった?」
「ハハ……面目ないです……」
「で?何かあったわけ?」
「……実は」
木乃美は少し考えて鬼殺隊との合同捜査のことは話さず、剣至について話した。
「なるほどその同僚男性が気になってるわけだ」
「気になってるってわけじゃ……」
「それって恋じゃない?」
「こ、恋ッ!?」
年頃の女子の話は恋愛に繋げたくなるもので江真にそう言われて木乃美は分かりやすく顔を赤くして慌ててしまう。
「とうとう木乃美にも春がきたかー」
「ち、ちがっ、そういうんじゃなくて!ただの職場の上司で!」
「でも、気になっちゃうんでしょ?」
「ぃ、いやぁ……」
「否定しないってことは脈ありだ!」
「そ、そんなんじゃないよぉ」
その後も木乃美は江真に追及され続けてタジタジになっていた。
○
放課後、剣至はいない間に調べたことで分かったことがあり報告していた。
「行方不明者が出た時に近辺で霧の発生が見られたらしい。今後、霧が発生したら俺にすぐに連絡してくれ」
「………」
「多々良さん?聞いてるか?」
「あっ、はい!聞いてます!」
学校でのこともあって剣至を意識して見つめていた木乃美に聞き返すと慌てて返事をする。
不思議そうにする剣至にバレないように顔を背ける。
「よし、じゃあ今日も手分けして警邏していこう」
「はい!」
○
霧が多く発生している魔都の一角で肉を喰らう音が響いていた。
「キヒヒ……!鬼殺隊と魔防隊の奴らが俺の狩場で探っているなぁ」
灰色の肌に腕と背中には穴が空いた突起物が複数、そして額には角が2本生えている。
明らかに人外であり、人を脅かす存在である鬼だ。
そしてその手には魔防隊の制服が通された腕が握られており、その腕は半ばで千切られて血が滴っていた。
「この場所が見つかるわけがねぇ。六道の俺とお前がいればなぁ」
鬼が千切れた腕を投げると地面からモグラに似た醜鬼が飛び出てその腕に喰らいつく。
「ジャアァァァ……」
「そういや探ってる奴らに美味そうな女がいたなぁ。次の獲物はアイツとしようか。なぁお前らぁ!!」
鬼が叫ぶと周りから醜鬼がゾロゾロと虫のように湧いて出てきた。