剣至が先日の聞き込みで行方不明と突然現れる不自然な霧が何らかの関係があると見て全ての隊に見回りながら霧の行方も追うように通達した。
そんな中、街中を見回りをしていると装着していたインカムに通信が入る。
『紅柱様!こちらC班です!複数の醜鬼と交戦中!』
「分かった。苦戦しそうになったら連絡をくれ」
『了解!』
「醜鬼の出現か」
霧の発生に気づいた途端の醜鬼の出現を不審に思った剣至だが、また連絡が入る。
『紅柱様。E班は複数の通常醜鬼と遭遇。対処します』
『こちらA班、醜鬼と遭遇して現在交戦中です』
次々と入る醜鬼との遭遇に標的が動き出したと分かり、各自に連絡しようとしたときに木乃美から連絡がはいる。
『武藤さん!目の前で特殊醜鬼が民間人を攫いました!追跡して救助します!』
「特殊醜鬼?多々良さん待ってくれ!それは……!」
言葉を続けようとしたがノイズが入って通信が取れなくなってしまう。
「くそ!アイツらの狙いは多々良さんか!」
瞬時に敵の思惑に気づいた剣至はその場から風のように駆け出し、木乃美の反応が消えた場所まで走った。
○
一方、木乃美は目の前で女児を攫ったモグラ型の特殊醜鬼を追っていた。
しかも周りには突如濃い霧が立ち込めてきて目の前の特殊醜鬼の姿も見失いそうになっていた。
(この霧って武藤さんが言ってたもの……!早く助けなきゃ!)
地面を隆起させながら移動するモグラ型醜鬼は目の前で歩いていた女児を大きく口を開いてひと呑みにして攫ってしまった。
素早く地中を移動する醜鬼に木乃美は追いかけるのに精一杯で手出しができずにいており、霧の中へと誘い込まれてしまった。
やがて地面がアスファルトからで土の地面へと代わり、周りには草木があり林の中へ来てしまった。
すると一層に霧は濃くなり周囲の状況も分からなくなってしまい、醜鬼も見失ってしまう。
「まっ……!」
醜鬼がいなくなった先に手を伸ばそうとした瞬間、すぐ横から通常醜鬼が襲いかかって来た。
(いつの間に…!?)
いつもなら接近してきた醜鬼の気配は必ず気づける筈だが、木乃美はこの時は気配が全く察知できなかった。
そのまま体当たりされて吹き飛ばされるとそこには隠された門があり、魔都へと移されてしまう。
「くっ!」
すぐに体勢を整えていつでも迎撃できるように構えるがそこも霧が周囲に立ち込めており、状況がわからなかった。
(この霧のせいで周りの視界どころか気配すら分からない!?)
異常な霧のせいで不利だと判断した木乃美はまずは霧から離れることが1番だと考えてその場から走り出した。
いつかは霧から抜けれると考えていたがいくら走っても霧は続いていた。
「……っ、ふぅ………ハァッ!!」
木乃美は焦る気持ちを落ち着けてその場で気合いを込めて能力を発動させると周囲の霧は霧散する。
すると晴れた場所には先程目の前で攫われた女児が血まみれの状態で倒れていた。
「君!大丈夫!?」
「ぅぅ……ぃたいよぉ……」
酷い怪我だが意識があり一先ずは無事だと安心する。
簡単な応急処置をしようした時、周りの霧が次第に木乃美たちを囲うように集まってくる。
「霧が……!くっ!」
深い傷だけ処置をして女児を抱えて走り出す。
とにかく霧がない場所へと走り出すがすぐに行く手を霧が阻む。
「この霧しつこい!……上へ!」
木乃美がその場で跳躍して安全な場所を探そうとしたが地表を見て唖然とした。
「そんな!?」
見渡す限りの地表が霧に覆われており、逃げ場がなかった。
想像以上に不味い状況に愕然としてしまう木乃美の下からモグラの醜鬼が地面から飛び出して木乃美を襲いかかる。
「邪魔!」
『ギャウッ!?』
女児を抱えているため、全身の強化をしてしまうと女児にもエネルギーの余波を与えて怪我をさせてしまうために全身の強化はできないため、足だけを強化して蹴り飛ばす。
再び地面に着地した瞬間に今度は背後から切り付けられた。
「ぐぅっ!?(また気配が……!)」
痛みに耐えらながら背後にいた通常の醜鬼を蹴り殺す。
倒したことで少し安心した瞬間にまた背後から醜鬼に襲われる。
気配も音も感じることが出来ずに攻撃を受けてしまう。
「くっ……!」
それを機に次々と醜鬼から襲われる。
怪我人を抱えているために片手と両足だけを強化して、戦うが予測不能の攻撃にどんどん追い詰められ、焦ってしまう。
なんとか女児だけでも助けようと必死に抗う。
そして目につく攻撃から防いでいると死角からモグラ型醜鬼が大口を開いて飛び掛かってくる。
『グアァッ!!』
凶悪な牙が並ぶ口でこのまま噛まれれば確実に致命傷になってしまう。
(しまっ……)
一瞬のことで固まってしまい、反応が遅れてしまう。
しかし、その瞬間霧の中を駆け抜けて現れた剣至がモグラの首を切り落とした。
「武藤さん!」
「多々良さん!無事か!?」
「……っはい!誘拐された子も怪我をしていますが無事です!」
一先ず無事を確認できたことに一安心して刀を構え直す。
『その服に刀……お前鬼殺隊だな?』
四方八方から聞こえてくる声に剣至たちは警戒する。
周りの霧が動き出し剣至たちの目の先にある大きい岩の上に集まり、人の形を作っていく。
やがて集まった霧は浅黒い肌で角を生やした異形の男になり、岩の上に座っていた。
「お前が今回の首謀者か」
「……あれが醜鬼ではない、人喰い鬼」
剣至は鬼を睨み、木乃美は初めて見る異形種に驚く。
「お前はおよびじゃないんだよ鬼殺隊。今回の獲物はそこの女だ」
鬼は傷ついた木乃美を指差し、至る所から流れる赤い血を見て舌舐めずりする。
「いいねぇ。いい血の匂いだ……この前喰った女より上物だぁ……!」
鬼のその言葉に木乃美が焦ったように反応する。
「この前の……!それって
「多々良さん、落ち着け。鬼に心を乱されるな」
剣至が落ち着かせようとするが止まらない。
最後の行方不明者であり、木乃美がお世話になった先輩である彼女は魔防隊では殉職扱いになっていたが木乃美は少しの希望を持って質問する。
「あー……結構喰ってるからどれか分かんねぇな」
「私と同じ魔防隊の
「2週間前……あーあの女か!覚えているよ。こいつのことだろ?」
鬼が岩に隠してあったものを取り出す。
それは人の腕であり、その腕は魔防隊の制服を着ていた。
「あまりに美味いからよ。勿体無くて少しずつ食べているんだわ」
そう言って鬼はその腕にかぶりつき貪り喰う。
それを見た木乃美は腹の底から怒りが沸き起こり、震えながら鬼を睨みつける。
「く、そっ……!お前……!!」
木乃美は抱えていた女児をその場に置いて、鬼に向かって走り出す。
「許さないッ!!!」
「待て!多々良さん!」
剣至が制止するが木乃美には聞こえておらず、全身を強化して一撃で葬ろうと拳を振るうが、鬼は余裕の笑みを崩さない。
木乃美から放たれた黄金のオーラが鬼を貫くが、その鬼は体が霧に変化して霧散する。
そしてその霧は木乃美の体にまとわりつくように形になって再び実体化して木乃美の腕と首を掴み上げる。
「ぅあっ……!?」
「スンスン……お前、この前の女よりいい匂いだなぁ。やっぱりここの桃を食った女の中でもお前ら魔防隊の女は別格だ。熟成されているような美味そうな匂いだ。そう考えるとこの前の女は前菜として最高だったよ」
「っ!お前だけは……絶対に!」
鬼の残酷な言葉に木乃美は悔し涙を浮かべて反撃しようとするが首と手首に鋭い爪が食い込んで動けなくする。
「吠えても何もできやしねぇよ」
鬼が更にトドメを刺そう力を込めた瞬間に上空から剣至が刀を鬼に目掛けて振り下ろす。
しかし、鬼はまた体を霧に変えて逃れて、剣至は木乃美を横抱きに抱えてその場から離れて女児の元まで戻る。
「大丈夫か、多々良さん?」
「大丈夫です……アイツは私が倒さないと……!!」
木乃美は傷だらけの体を起こして、またあの鬼に挑もうとする。
木乃美は怒りで相手のことが見えなくなっており、このまま行けば無駄死になってしまう。
「このままやってもジリ貧だ。一旦体勢を整えて……」
「だけど!アイツは……!!」
立ちあがろうとする木乃美の肩を強く掴んでこちらを向かせる。
「
名前を力をこめて呼んで、意識をこちらに向かせる。
いつも優しげな表情で見てくれていた剣至とは違って真剣な表情に木乃美は少し面を食らってしまう。
「このまま戦っても負ける。仇を取りたいなら、何ができるか考えろ」
剣至に言われて木乃美は少し深呼吸して落ち着かせる。
「すいません、焦りました。もう大丈夫です」
「よし、なら2人であの鬼どもを倒すぞ」
剣至は刀を構える先には多くの醜鬼を従えた鬼がこちらを見ながら下劣な笑みを浮かべる。
「話し合いは終わりかぁ?そろそろコイツらも腹が減ってきたからよ。この六道の鬼、